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「遠くにいる人」ひのもとうみ

遠くにいる人 (ショコラ文庫)遠くにいる人 (ショコラ文庫)
(2011/04/09)
ひのもと うみ

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家具工場に勤める佐倉治樹は、本社から移動してきた上司の小田島達朗に恋をした。彼の素行の悪さを知る治樹の幼馴染は、小田島だけは止めておけと何度も言うが、地味な治樹にとって華やかな小田島は憧れずにはいられない存在だった。そして小田島はなぜか事あるごとに治樹をかまい、特別な優しさを向けてくる。期待してはいけないと思いつつ、治樹はその幸せを受け入れはじめるのだが…。

久しぶりに感想を書こうとしたら書き方を忘れてしまったよ。
しかし決まった書き方などあったわけでもないので見切り発車でいきたいと思います。
*後日加筆修正しました

正真正銘の表紙買い。そうしたらこれが面白かった!
オレンジの夕焼けに身体はおろか視線すら絡むことのない人物、その間にある『遠くにいる人』という題。これ以上ないくらい二人の関係性を表現していて素晴らしいと思います。雑誌掲載時の扉絵をそのまま表紙に持ってきたそうですが、大成功している。松尾マアタさんは昨年『嘘つきは紳士のはじまり』で話題になりました。そこで描かれていた英国上流階級の「大人の恋愛」については、多少の反発を感じなくもなかったのですが(お子様ですとも…)、良い挿絵を描く方ですね。

表紙にプラスして個人的な萌えポイントとして「場末の工場」という設定を意識している身としては、堪らないものがありました。おまけに地味で容姿にコンプレックスがある不幸体質な受け。このドン詰まった感じがね、好きなのです。治樹は自分の弱さをよく知っているのだけど、自己憐憫にひたるほど自己中心的にはなれない子なんだよね。過去の恋人達からあまりにも軽んじられてきた為、自分を可哀相だと思う価値すらないと達観してしまっている節がある。卑屈さやグルグル思考も過剰だと鬱陶しくなるのだけど、治樹はすべての上手くいかないことをちゃんと引き受けている子だから応援したくなる。そして彼がグルグルせざるを得ないことを攻めの小田島はあっさりやってしまうんだよね。小田島が最初から治樹の幼なじみである三津狙いで自分に優しくしていたのだと知ってしまったら尚更そうなってしまうのは仕方ない。優しいけど最低な小田島を治樹はそれでも諦めることは出来ない。だからといって積極的に動くことも出来ず、せっかくの誘いは三津の代わりだからと撥ね退けて小田島から逃げまくる。逃げると追いかけたくなるのは世の理というわけで。美しいものが好きと豪語していたはずの小田島は段々治樹のことが気になっていく。二人の間にある心理的な遠さ、立場的な遠さ、そういったものに臆する治樹の片思いが可哀相で可愛い。

小田島は苦労知らずの坊ちゃんのようだけど、そういった人に特有の鷹揚さは持ち合わせていてもひたすらに傲慢だ。彼は屈折しているわけでもなくただ鈍感だから平気で治樹を傷付ける。悪気がない無神経さって最高に厄介だよね。しかしこの話の面白さは攻めの小田島にあったと思う。小田島の傲慢で勝手な言葉に治樹が傷付く→小田島を避けるようになる→どうして避けられるのかわからずまた酷い言動を取る→また避ける、という自業自得の悪循環に陥る様子が、言葉は悪いかもしれないが「ざまーみろ」という感じで面白いのだ。そして思い通りにならない治樹に対して彼が語る言い訳(not嘘)や、精一杯伝えようとする本音の部分がすごくカッコ悪くて可笑しい。旅館をキャンセルした恨み節や、告白出来なかったのを治樹のせいにしちゃうところとか、「都合いいこと言ってんじゃないわよ~!」と苛々しながらも、バカみたいに正直な小田島が治樹同様可愛く思えてしまうんだ。傲慢であり得ないぐらい嫌な男なのにギリギリの魅力がある。もちろん、傲慢な男が見くびっていた相手に振り回され、骨抜きにされる様を読むのが気持ち良いというのもあるけれど、終始不思議と憎めない小田島だった。この人物造形のバランス感覚は珍しいのではないだろうか。こんな性格では今まで治樹とは違った意味で、「まともな恋愛」が出来なかったわけだよこの野郎!と思いつつ、だからこそ治樹のような「アヒルの子」に捕まったのだと考えると納得もいくのだ。遊び人ほどストンと大人しい人に落ち着くというしね。この男はもっと治樹に振り回されて、三津に苛められて痛い目を見るといいよ!

おまけのペーパーは治樹の良き友人であり小田島の小姑でもある三津の話。
ひのもとさんの魅力は会話の軽快さにもあると思う。ぽんぽん出てくる彼らの台詞はキャラに馴染んでいて上手い。
同人誌の方では長く活動されているようですがそれも納得です。

全体的にテンプレな展開ではあるのだけど丁寧で上質な物語に感じました。
今後も要チェック!良い本を読みました♪
  

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近況と感想

近況というほどのアレコレはありません、はい。通常営業で元気です。
先月は感想書きたいなと思いつつ、どうも考えがまとまらず散漫な読書になってしまった気がします。
というわけでまとめて感想です。本の題をタイトルにもってこれないのは切ないのでいい加減集中したい…。

ゴールデンビッチ (幻冬舎ルチル文庫)ゴールデンビッチ (幻冬舎ルチル文庫)
(2011/02/15)
玄上 八絹

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遺伝子操作で警察犬の能力を組み込んだ“犬”と呼ばれる人造人間。彼らは警察や公安の「人間」を主として危険な任務に就いていた。ある日、公安の窓際捜査官・灰原に下されたのは、狙撃で主を失いそのまま行方不明となった野良“犬”捕獲命令―。追手を翻弄し逃げ回る野良“犬”ゴールデンビッチが命を賭して主の仇を討つ覚悟だと気づいた灰原は―。
あまりにインパクトの強い題にタイトル買い。
実はゴールデンビッチという言葉を目にしてすぐに、一体どんなビッチなのよ!?と著者を調べてみたら玄上さんの「犬シリーズ」新刊ということで残念に思ってしまったのだ。なぜなら1作目の『しもべと犬』を読むのに非常に苦労した思い出があり(ごめんなさい)、設定が好きなだけにすらすら入ってこない文章が惜しくて仕方なかったから。しかし、今作はシリーズを読んでいなくても支障はなさそうだったので(もちろん世界観やリンクする登場人物への理解は浅くなるが)手に取った。そしたらもう!ビッチが可愛くて可愛くて、展開のぶっ飛び具合も面白くて夢中になってしまった。内容はあらすじ通りだが、ビッチと呼ばれることの哀しみが小説全体に漂っているんだよね。とても上手い言葉の使い方だと思う。復讐候補にハニートラップを仕掛けるという、彼のやっていることは正真正銘「ビッチ」の所業なのだけど、灰原が考えるように「愛されるはずだった未来」を奪った男達に、「同様の行為を施し地獄に落とす」ことで、受ける筈だった愛情を否定して振り切ろうとしているようにも見えるのだ。玄上さんの文章は、修飾語と被修飾語の関係が一読しただけでは飲み込みにくい部分が多いし、連発される比喩や大袈裟な表現も、恐らくは著者の中では回路が繋がっているのだろうが、ちょっと置いてきぼりをくらう気持ちになる。しかし今作はその苦手を補って余りあるぐらい面白かったです。そのうちシリーズに再挑戦したいな。

職業、王子 (幻冬舎ルチル文庫)職業、王子 (幻冬舎ルチル文庫)
(2011/02/15)
砂原 糖子

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綾高大地は親の借金のせいで大学を中退しレンタルビデオ店の店長をしている。ある日、来店したアラブ人の客・リインシャールは入会申込書の職業欄に「王子」と記入。なぜか王子リインに気にいられた綾高は、強引にアラビア海に浮かぶ島国へ拉致される。性奴隷が欲しかったと言うリインに犯されると思いきや、彼は綾高に挿入するよう強要し…。
偶然にもこちらの金髪王子様もビッチでした。
アラブBL小説は記憶によれば2作品目のはず。ちなみにもうひとつは沙野さんの『蝶宮殿の王子様』でした。今作はセオリー的なアレコレ(特に謎の媚薬!)を盛り込みつつも「アラブが襲い受け」という点でオリジナリティが光っているのかな。私は、日本から拉致誘拐異国へ~という流れがコメディだとはわかっていても怖くて仕方ないのですが(笑)攻めの肝の据わりっぷりが緊張感を緩和していたのでよしとしましょう。「攻め」だからと云って拉致誘拐の恐怖が薄らぐというのもよく考えると変な話ですが、つくづく「受け」が異国の地で攫われて~という展開は苦手かもしれないと思ったのでした。物語は後半のバタバタに登場人物の心情が若干押され気味になってしまった感がありますが、さすが砂原さん。楽しめました!ムクさんの王子様可愛い♪


GIANT KILLING(1) (モーニングKC)GIANT KILLING(1) (モーニングKC)
(2007/04/23)
ツジトモ

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現在18巻まで刊行。
数ヶ月前から周囲が(腐的な意味で)ザワザワしていたので気になっていた青年漫画。店でもずーっと平積みで売れ行きも好調だった。それでも手を出さなかったのは、「スポーツ漫画苦手~、サッカーよくわからんし~」というありがちな理由からだったのだが、バイトちゃんが購入したのをよいことに借りてびっくり。めちゃくちゃ面白かった。すぐに全巻大人買いしてしまったよ。
プロチームの監督を主人公にしたサッカー漫画ということで、いかに選手を、チームを、勝利する方向に持っていくかという点に集中している。さりげなく個々人にスポットは当たるのだけど、過剰なドラマや内面のアレコレは敢えて描かずに、試合に勝つためにどうするかを見せてくれる。戦略的な部分を前面に押し出した漫画といえば『おーふり』だけど、比べるとジャイキリの試合場面は要所要所のツボを押さえて魅せる場面だけを漫画にしている印象。だから、サッカーのなんたるかをまったく知らない私が読んでも楽しめる。そしてなによりも、登場人物がプロスポーツ選手であることが一番の魅力だと思う。チームに貢献してプロとしての義務を果たすことを皆懸命に考えている。自分の価値と仕事と金銭が直結しているとてもシビアな世界だ。そこにサッカーを楽しむという精神論が魅力的な味付けをしていて惹きつけられる。同じポジションの選手同士の葛藤や、体力的にも一番ノッていた時期は過ぎたベテラン選手の焦りや苛立ち。それでも、若手だから、ベテランだから、出来ること知っていることがきちんとピッチには等しく存在する。なんというか、すごくフェアな漫画だと思った。今更ですがオススメです!

で、肝心の腐的なあれこれですが…友人やバイトちゃんに予めカップリングを色々聞かされていたので先入観バッチリで読みましたとも(笑)正直に言うと、ジャイキリも私にとっては多くの作品と同様に「人が萌えて、自分も萌える」漫画でした。何の先入観もなく読んでいれば、「この2人で二次とかありそうだな~」とニヤニヤしつつもサイトを探したりはしなかったと思うな。しかし知ってしまうと二次は二次で面白いし、友人が萌えているのを聞くのはもっと面白いのでした。監督と犬っころとライバルチームのヤンデレ君っぽい子がお気に入りです♪続きが楽しみ!

青春♂ソバット 4 (IKKI COMIX)青春♂ソバット 4 (IKKI COMIX)
(2011/02/26)
黒娜 さかき

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ついに完結。
実はそれほど熱心に二人の行く末を見守っていたわけではなかったのだが、終わるとなれば気になるのが人情というもの。おバカな有田と小利口な白洲の友情以上恋愛未満の物語の顛末は、予想以上に素晴らしくて納得してしまった。「性春」とも呼べる下半身に直結した恋だか肉欲だかよくわからないモヤモヤがあって、相手が経験豊富なゲイで表向きはドライとなれば「身体だけでも…」となってしまう軽い気持ちにリアリティがあると思うのだ。彼らは私が「恋愛漫画(BL)として」読みたい高校生物の二人ではないのだが、結論は出ているようで灰色とも取れる本編ラストは大変好みだった。「青年誌だから」という括りで制限されたことも、特にないのではないだろうか。むしろ、愛やら恋やら永遠やらを大真面目に口にしない逆の意味での誠実さは、青年誌ならではの抑制の効果なのではないだろうか。
著者の後書を挟んでの番外編では大人になった二人が描かれる。本編ラストでも25歳の二人がチラッと描かれたが、番外編では35歳になっている。正直、私は、この番外編はなくても良かったように感じてしまった。それは有田の職業選択に「?」が残るというのもあるし、ホント個人的なことで申し訳ないのだが、白洲のプレゼントの結果は大変に迷惑だと思ってしまったのだ(募集採用教育がパー)…。モラル的な云々でリアリティがないのでは?と一読した後は思ったが、読み返してみるといかにも二人がやりそうなことという気もする。二人には第三者を交えて遊ぶ余裕があるのかもしれないし、失敗前提の壮大なドッキリだったのかもしれない。なぜまだ一緒にいるのか?という疑問にわかりやすい答えを与えてはくれないが、惰性でも名前の付かない愛情でも、そういった現実はままあるかもしれないという終わりだった。黒娜さん、お疲れ様でした。

<その他>
秀良子さんの『リンゴに蜂蜜』がすごくよかった!!なんてことはない日常漫画なのだけど、よかったよ~。西田東さんの『好きになるとこわれる』は相変わらずの西田さんクオリティ。どんどんどんどん男の人の色気が増量していくように感じられる。清水玲子の『秘密』最新刊も相変わらずの鬼畜な展開に「うわぁぁ」としか言えない。清水さんのお人形のような絵柄が物語の悲惨さを緩和しているとすら思う。薪さんなり青木なり、もしも作品中に好きなキャラクターが出来てしまったら凄くしんどい読書になるだろう。怖くて面白い漫画です。
現在読書中のタイトルは剛しいらさんの『座布団』です。実は、お話に引っかかりがなさすぎてちょっと難航中…。その間についに『F&B』1巻を購入。まだ購入すらしていなかった自分に笑うしかない。それらを手に取りつつも「軽~い恋愛小説が読みたいわぁ」などと思っているあたり迷走しているのかもしれません。




「恋を知る」月村奎

恋を知る (ディアプラス文庫)恋を知る (ディアプラス文庫)
(2011/02/10)
月村 奎

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月村さんの新刊は短編集でした。
BLで短編集というのは結構珍しいですよね。記憶にある限りだと、読んだことあるのは『窓』(水原とほる)『サミア』(須和雪里)だけかな。松田美優さんの『巧みな狙撃手』も短編集だと聞いたことがあります。でもこれらの作品は今回の月村さんに比べたら「中編」と云ってもよいぐらいかも。季節がらの月並な喩で恐縮ですが、小粒で美味しいチョコレートのような作品集でした。

「カーマイン」
お世話になっている友人のHN(Cさんお元気ですか?)でもある「コチニール・カーマイン」という顔料にちなんだお話。あの美しい赤は昆虫から採集されるのだという話も、確か伺って知っていた。自分のマイノリティ性をグロテスクな顔料に重ね、その赤を「キモチワルイ」と云われては凹みたがる主人公の自虐を、あっさりと覆す攻めが素敵だ。月村作品をそう多くは読んでいないのだが、自虐傾向にある受けと大らかな攻めの構図はよく見かけるように思う。何分、受けの性質に心当たりがありすぎてイタタタなのだが、これだけ短いと安心して読める。

「三年目」
お付き合いも3年目の岐路を迎えた恋人たちの話。似ていない者同士だからこそ起きる問題と、似ていない者同士だからこそ至ることの出来る解決方法がある。一緒に居る生活が長くなると互いの違いを確認する作業をたまに忘れてしまうものだ。喜怒哀楽の表現方法だってそれぞれなのに、そんな当然のことがわからなくなる。そしてケンカになると。うーむ、耳が痛い。大変教訓になりました(笑)

「賞味期限内にお召し上がりください」
同居をする、実は両想い同士のお話。こちらも性質の違いに寄る二人のすれ違いと歩み寄りを描いている。賞味期限の「食う」「食わない」を掛けているあたりに短編の上手さ(美味さ?)が凝縮していると思います。

「恋を知る」
書き下ろしの表題作。この話が一番好きでした。
先生と生徒の恋愛関係未満のお話。クラスで一番背が高くて恰好がいいと云われる主人公。誰も彼が欲しい言葉を与えてはくれないどころか、真逆の言葉を良かれと思って伝えてくる。そんな彼にとって「カワイイ」と云ってくれる先生の存在がどれだけ救いになったかを考えるとジタバタするぐらい萌えました。絆される直前の先生の台詞が好きだ。「安田が俺に寄せてくれているのと同じ強さで、俺も安田が好きだなんて、おとぎ話みたいなことは言わないよ―」 都合よいその場凌ぎの言葉で終わらせない誠実さがいい。彼にとっては嘘の方は優しかったかもしれないけど、それじゃあフェアじゃないものね。先生がキスをしたのもメアドを渡したのも私の倫理観からいくと反則なのだけど、許す!

「small things」
更に小粒なチョコレートの詰め合わせ的作品集。
収録作はいずれも微妙に発表年が異なるのだけど、月村さんの描く受けと攻めの関係性は徹底しているなぁと感じた。それは多分ずっと月村さんが持ち続けている荷物なんだろうね。どうにもならない自虐的な感情を抱えているらしい月村さんが私は好きです。

通勤時間でひとつ、仕事の休憩時間でひとつ。そんな風に気軽に読めるBL作品集があっても良いよね。ガッツリ読みたい気分の時にはそぐわないだろうけど、世の中には恋愛小説の短編集が溢れているのだから需要はあると思う。漫画でも強く印象に残っている短編は多いもの。水原さんや須和さんの既読作品は、短編集ならではの意表を突いた設定や展開にインパクトがあった。それに比べると月村さんは著者らしいカラーの作品で、初々しい恋心にキュンキュンと優しい気持ちになった。そういえばリブレから出ているアンソロ(「エロとじ」のことです…)でも、短編も上手いなぁさすがだなぁという作家さんは何人もいたのだ。作品集にするからにはある程度人気で有名な人じゃないと売上的に厳しいのかもしれないが、もっと読んでみたい。連作短編もいいよね!その中で人気が高かったカップルの話で長編が出来たりとか、普段とは逆のパターンでも面白そう。

言うは易しということですが、短編集好きにはたまりませんでした♪


「八月七日を探して」樋口美沙緒

八月七日を探して (キャラ文庫)八月七日を探して (キャラ文庫)
(2010/07/27)
樋口 美沙緒

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八月七日嵐の夜、事故で三ヶ月分の記憶を失ってしまった高校二年生の水沢涼太。けれどそれ以来、なぜか毎晩強引に抱かれる淫夢を見るように…。これは実際にあった記憶なのか?手掛かりは、生徒会役員で、長身の男―。密かに悩む涼太は、自分と親しい幼なじみで副会長の二宮恭一と、会長の三年生、北川和馬を疑うけれど!?二人から寄せられる想いと真実に揺れる、トライアングル・ラブ。

『愛はね、』が面白かった樋口さんの記憶喪失&高校生もの。
意識して避けている自覚はあったので仕方ないのだが、久々に高校生同士の恋愛を読んだ。
実はこの作品の前に同著者の『愛の巣へ落ちろ!』を読んでおり、こちらも高校生ものではあるのだが…私の好みを知るバイトちゃんに「こんなの読んでるの~」と見せたら「熱でもあるんですか!?」と驚かれたことからもわかるように…え~と、私のキャパを軽々超えたお話でした(モゴモゴ。昆虫擬人化というファンタジー部分は楽しめたのだが、終盤の騒動がちょっと地雷だったの…)

さておき。
高校生ものを避けていた理由として、私は何度か大真面目に「永遠が見えないから」と書いたと思う。
若い彼らの「不自由な世界」の先に待ち受けている「広い世界」に思いを馳せては勝手に切なくなっていたのよね。
でも、永遠なんて大人だって見えないし、誓った永遠はその瞬間だけは多分きっと「永遠」なんだよ。
何が云いたいのかよくわからないけど、先日また一つ十代が遠くなった感傷なのかもしれない(笑)

そして薄々気が付いていたけど、私が学生ものを避けていたのは思春期特有の痛々しさから目を反らしたかったからというのもあるのだよね。先日の日野ガラス作品でも書いたが、学生ものの一部につきまとう「劣等感」を目の当たりにするのが怖かったんだ。と同時に、それを描かない学生ものへの不信感があったのだ(あくまで個人的な気持ちなので悪しからず)。年若い彼らの抱える葛藤がすべて「劣等感」と繋がっているわけでもないし、外的な困難に振り回される葛藤をメインに描く話だって多い。それでも、私のキーワードはソレなのだ。もちろん青春のキラキラがメインにくる話を否定する気はないです。う~ん、自分が読みたい話を読んでも苦しいし、そうでない話はもっと苦しいといえばちょっとは伝わるかな…。

子供の頃って、自分と他者の境界がとても曖昧だと思うのだ。
人それぞれに向き不向きがあって、残酷なことだけど能力には違いがあって、差がある。
自分が好きなものを人も好きとは限らないし、逆もまた然り。
そういう現実に、ゆっくりと、或いは唐突に気付く世代が持つ、特有の暗さ。そんな話を読みたいなと思ったの。
そしてそれが高校生モノの醍醐味であるのならば、私はそういうものを萌えとして消費出来る時期にきたのかもしれないなと思ったのだ。長い思春期だったということなのかな。
要するに、高校生ものをもっと読みたいな♪ということです(そんな結論

以下手短に感想(未満)です。

『八月七日』は、記憶喪失設定(BLでは多いですね)に三角関係にミステリーという山盛りな内容ながら、主人公が持つ強い劣等感に引き込まれて夢中になって読んでいた。嵐の夜に校舎の階段から転落した涼太は、それ以前の記憶を3か月分失ってしまう。しかしそれ以来夜な夜な男に抱かれて喘ぐ自分の夢を見るようになる。リアルな夢の感触に、実際に自分は男とセックスをしていたのだと確信した涼太は、その相手を探し始める。
合意か無理矢理かという論点で語りながらも若干ブレがちだったのは、涼太自身が男に抱かれる自分を「無理矢理された方がマシ」なのか「納得した上で寝た方がマシ」なのか、どうもよくわからなかったからかもしれない。物語は誰が相手だったのか?という謎を軸に展開する。候補は二人出てくるが、ミステリー要素はそんなに強くない。
私が三角関係が苦手なのは、「当て馬」が本当に当て馬でしかない場合が多く不憫だからというのは建前で、つい先日Aさんに指摘されたように、「1対1のガチンコ勝負」を常に求めているからなんだよね。今作の彼の存在は、正直に言えば当て馬以上の役割は果たしていないように感じた。でも、表面的に伺える部分と実際に付き合うことで知る部分のギャップという点では、本命の彼とそう変わらない描かれ方をされていて良かった。

良太は寝ていた相手に強い劣等感を抱いていた。少しの能力の優劣が果てしない違いに思えたり、少しの経験の有る無しに途方もない差を感じたり、同じような立場存在だと思っていた人間が段々と遠くなってしまう。その、悲しさと卑屈な気持ちから更に自分で相手を遠ざけてしまった涼太の気持ちがよくわかる。

それでも彼らは高校生なのだ。どんなに完璧に見える男だってカッコイイだけで済むわけがない。
「記憶喪失」という設定を超えて、涼太が劣等感から一度は見失ってしまった相手を再発見する過程を描いた話だと私は受け取った。良い高校生ものだったと思う。


***

もっと早く書くつもりが、思いがけず企画的なことをやってしまったので遅くなりました。
今月は更新熱がきているような気がする。もとい、読書熱が戻ってきている!
楽しみな新刊が続きます。いっぱい読めるといいな♪


初心者にオススメBL小説10冊!

題のとおりの雑記です。
コンセプトは、「BLって面白いの?」と聞かれて「面白いよ!」と袋に詰めて渡す10冊(作品)
むしろお前が初心者だろ!という気持ちもあるのですが、BL界の隅の方に居る人間の云う事だと思って下されば幸いです。縛りは2点、現在入手可能であることと、一著者につき一作。広く知ってもらいたいということで、一応ジャンルというか部門に分けて考えました。考えただけでグダグダですが。

【ストーリー部門】
犬ほど素敵な商売はない (SHYノベルス164)犬ほど素敵な商売はない (SHYノベルス164)
(2006/06/26)
榎田 尤利

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言ノ葉ノ花 (新書館ディアプラス文庫)言ノ葉ノ花 (新書館ディアプラス文庫)
(2007/09/10)
砂原 糖子

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とりあえずこれを読め!!という気持ちで選んだ2冊。
読みやすく外れにくいという信頼度の高い作家さんだけに、榎田さんと砂原さんは一作に絞るのに悩みました。
既読の榎田作品で、最も「上手い」と思うのが私はこの『犬ほど』なのです。『魚住くん』では重すぎる(嫌いな言葉ですが)、『交渉人』では恋愛要素以外のエンタメ部分が出すぎている。男と男が恋愛をする「なぜ?」を通り越して人が人を求めてしまう切羽詰まった感情が描かれていると思うのです。インモラルな関係性の話でもあり刺激的な読書の快楽があると思います。ちなみに『執事の特権』と悩みました。こちらは私の好みが影響大なので却下。
砂原さんは『センチメンタル・セクスアリス』と悩みました。ファンタジックな設定で「恋におちる説得力」の強さが選んだ理由かな。恋愛小説には3タイプあって、「出会いから始まる話」「再会から始まる話」「関係から始まる話」に分かれると思うのですね。BLというのは男同士の恋愛の話なので、ゲイ設定が増えたものの、一番最初の「出会いから」の物語に説得力を持たせるのは結構難しいと思うのです。「好きだった彼と、昔関係があったあの人と―(再会)」「身体だけじゃなく心も欲しい、友達だと思っていたのに―(関係)」を説得力を持って描くのだってそれは当然難しい。でも、初心者に読んでもらうなら…と考えると、イチから関係が始まるこの2作品を選んだのでした。

【ハイクラス層のラブロマンス部門】
茅島氏の優雅な生活〈1〉 (幻冬舎ルチル文庫)茅島氏の優雅な生活〈1〉 (幻冬舎ルチル文庫)
(2009/04/15)
遠野 春日

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なんだその括りは?って自分で書きつつ思いましたとも…。
文字通り、市井の身からは想像もつかない天上人な御仁方のラブロマンスです。主従、身分違い含む。しかし困ったことに私自身がこのタイプの話をほとんど読んだことがない。だけどBLを語るなら外してはいけないような気もする。で、悩んだ末の『茅島氏』なのでした。私自身はそうでもないのですが、評判良いし大丈夫じゃないかな。コミックなら迷わず『憂鬱な朝』(日高ショーコ)なのに。イメージですが、この部門の大御所は和泉さんと岩本さん?実はお二方未読なのですよ、よよよ。

【ファンタジー部門】
蒼い海に秘めた恋 (ガッシュ文庫)蒼い海に秘めた恋 (ガッシュ文庫)
(2005/04/28)
六青 みつみ

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ファンタジーも数少ないながら外せない部門だと思います。私が『フレブラ』(松岡なつき)を読んでいたなら自信をもってススメたかもしれないのに、未読だから仕方ない。そして前項と同じくこちらもほどんど読んだことがない。それでもファンタジーなら六青さんのこちらをススメたい。受けにとって辛すぎる話が多い六青さんだけど、『蒼い海』の受けの受難はおとぎ話のお姫様的なので、初心者でも許容範囲かなと思うので(もちろん他の作品も好きです)

【アングラ部門】
さよならを言う気はない (SHYノベルス162)さよならを言う気はない (SHYノベルス162)
(2006/05/26)
英田 サキ

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別名【ヤクザ・闇社会・路地裏部門】です。探偵物もこちらに含むよ。好きなジャンルですが偏った選択になっている自覚はあります。英田さんなら『エス』や『DEADシリーズ』の方が人気だし評判も高いですよね。それでも、「ヤクザは壮大なツンデレである」と思っている私はこの作品をおススメしたいのです。だって天海が可愛いから。沙野さんの闇社会や中原さんの場末系を選択肢に入れることも考えたのですが、初心者向けではないかもなと却下。

【コメディ部門】
全ての恋は病から (白泉社花丸文庫)全ての恋は病から (白泉社花丸文庫)
(2010/03)
凪良 ゆう

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笑いのツボは人夫々な為悩みました。
パッと思い浮かんだのが凪良さんのコメディ作品。その中でも一番笑ったこちらを。

【性愛部門】
アレキサンドライト (角川文庫)アレキサンドライト (角川文庫)
(2006/02)
山藍 紫姫子

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やっぱりエロは外せない。そしてこの部門には絶対に崎谷はるひさんが来なくてはいけないと私は考えている。がしかし…ほっとんど読んだことがなく、既読の崎谷作品で好きと云えるのが『ねじれたEDGE』ぐらいなのですよ…。『ねじれた』は悪くないと思うけど初心者には…う~ん…と悩んだ結果の山藍さんなのでした。悩んだ結果としては明らかに色々間違っている気もしますが大好きなこちらを。愛とロマンのハード耽美官能小説。ラストのハッピーエンドさにクラクラしたものね、おススメ!バーバラ片桐さんや秀さん含むキラキラした表紙の文庫レーベルも考えたのですが、お相手は初心者。私でさえ店頭買いを躊躇うご本を貸すのは忍びないと却下したのでした。

【お貸しするよしみで、部門】
毎日晴天! (キャラ文庫)毎日晴天! (キャラ文庫)
(1998/09)
菅野 彰

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今までだって十分自分の好みを反映しているのだけど、「いいから読んで読んで!」と渡したい部門(なんだそれは)。しかしそういう本に限って相手の反応は芳しくなかったりするのよね、知ってるよ。永遠のマイベストBL、こちらは全作読んで欲しいなぁ。

【この作家は外せない?部門】
今宵、雲の上のキッチンで (ビーボーイノベルズ)今宵、雲の上のキッチンで (ビーボーイノベルズ)
(2008/07)
ひちわ ゆか

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明るくはないけどBLを語る上で外せないような気がする作家さん。大勢います。
まったくの私的感想ですが、たぶん剛しいらさんと谷崎泉さんは選択肢に入らないといけないと思うの。他にも吉原理恵子さん、夜光花さん、水原とほるさんも多作で人気な作家さんなので。センシティブ系の人気作家いつき朔夜さん月村奎さんも。そして、ひちわゆかさん。ということで(?)こちらを。人気作品なので大丈夫でしょう。個人的には『最悪』『キャンディ』の方が好きなのですが。剛作品は名高い有名作品を含め未読が多いのでお答え出来ず、不甲斐ないです。谷崎さんは某作品ギブアップ後ノータッチ、申し訳ない。その他刊行点数が多い人気作家作品も、初心者にこれを!というのは思い浮かばずなのでした。う~ん、難しい。


そして以下は部門分けをしてみたものの選ぶことが出来ずに断念したもの。
むしろコレを選ばないでどうするの?という感じが…。

【アラブ&花嫁部門】
こちらは絶対に入れないといけないよね!!でも読んでないから保留だよ、申し訳ない。
【制服(学生)部門】
漫画なら迷わず『同級生』(中村明日美子)なのだけど…小説だと候補が『17才』(菅野彰)ぐらいしか浮かばず断念。避けているジャンルなので私が知らないだけで名作が山のようにあるはず。
【お仕事部門】
シャレード文庫から何か選びたいの気持ち。しかし、すべてのBLは「お仕事小説」の側面を持っていると云っても過言ではないと思う中、これを!!というのが思い浮かばず断念なのでした。「マークスでよくね?」と思ったのはここだけの話です。


そして残る1冊(作品)はこちらの為に。


【ようこそ深淵へ、部門】
候補はズバリ木原音瀬と樹生かなめ(初心者向けというコンセプト丸無視?)
しかし、未だに自分が「こんな小説、こんな作家」と十分に表現出来ていない樹生さんは外します。というわけで木原さん。読みやすさだけを考えるなら『眠る兎』かなと思った。でもそれでは深淵へ、とはいかない。ではやっぱり『美しいこと』だろうか?それとも『薔薇色の人生』?悩んだ結果ポンッと思い浮かんだのがこちらでした。
COLD SLEEP (ビーボーイノベルズ)COLD SLEEP (ビーボーイノベルズ)
(2009/01)
木原 音瀬

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かなり激しい作品であるのは承知ですが、暴力やトラウマの先にある「二人で生きること」という結末が、思いの外私には幸福に感じられたのですよね。何より小説としてとても面白いと思うのです。


***

以上10作品でした。

なんだろう、この達成感の無さと湧き上がる無力感は(笑)
それは自分の読書量の少なさ&偏りに打ちのめされるからですね…。
発行年度で本腰入れてBL小説を読み始めた頃がよくわかります。
そして今更ながら、全然「初心者向けの」記事になっていないことに気付きました。不親切で申し訳ない。
改めて自分の中の「定番」と向き合う作業は楽しかったです。機会があれば漫画も考えてみたいな。


プロフィール

yori

Author:yori
気がつけばいつもそばにBL.猫かぶってみても、結局たどりつくのはそこなのです。感想は基本的にすべてネタバレ注意です。拍手&コメントありがとうございます。拍手コメントは該当記事のコメ欄にてお返事いたします。リンクフリーですがご一報頂けると嬉しいです。

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