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「永遠の昨日」榎田 尤利

永遠の昨日永遠の昨日
(2010/11)
榎田 尤利

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02年刊行作品の新装版。ずっと読みたかったのだが絶版ということで諦めていたので嬉しい。
有名な作品ゆえにあらすじは知っていたし、その結末も想像していた通りのものだった。

夜中に読み始めてまわらない頭の隅にずっとあったのは、どうして榎田さんはこんなに真摯に生と死に向き合うことが出来るのだろうということだった。「魚住くんシリーズ」を読んだ時も思ったのだが、近しい者(冷たいようだが、愛する近しい者かな)の死を未だ経験したことのない私には、生と死のうわべを浚うだけで語ることは出来ないような気さえする。なんだろう、「リムレスの空」との刊行時期が近いことに驚いたというのもあるのかな。一人の作家が、エンターテイメントを信条としているであろう作家が、まるで「書き足らない」とでもいうように生と死を見つめていたことに…驚いて(言葉が見つからない)しまう。

でもその一方で創作物は生と死の物語と無縁ではいられないと思っている。感情を揺り動かす根源的なテーマだからというよりは、生ある人間を創作してしまったらそこにはもれなく死がくっついてくるのが必然だからだ。だから、生きること死ぬことを描くフィクションが多いのは当たり前。日頃は敬遠している「死を描き涙を誘うらしい小説」を老若男女問わず書くことが出来るのは、そういうことなのだ。


以下、ネタバレ注意

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「はつ恋」榎田尤利

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事故が原因で2度目の高校生活を送る久我山。大人びて冷めた瞳の久我山に、担任の曽根は親身になってくれる。うっとうしい教師だったはずの曽根を知るにつれ、その甘い声をもっと聞きたくなってしまう久我山。胸が痛むほどのこの想いに名前があるとすれば―恋。しかし曽根には恋人がいるうえ、自分はただの生徒にすぎないと知り…。それでも彼を守りたい。未来を変えるために、今、恋をする。

ようやく読みました!お、面白かった!
あらすじを読んだだけでは絶対にわからない物語の「仕掛け」も含めてとても楽しく読みました。
これはネタバレしない方が良いのかな?知らなかったらとりあえず「そう来たか」と驚くことは必至でしょうね。以下、感想未満ですがネタバレ注意です。

私も大人と云われる年齢になり、たまに学校の先生の事を考えます。特定の先生を思い浮かべるにはあまり先生と親しい関係を結ぶ生徒ではなかったのでアレですが、あの頃の先生達と近い年齢になって見えてくるものというのは確かにある。すごくある。今の自分に中学生の相手が出来るかなんて想像するだけで足が震える事態だし、高校生の悩みに応対出来るかなんてまったくもって自信がない。一部の不祥事ばかりが耳に入る世の中ですが、確実に尊敬に値する職業だと素直に思います。
あの頃は、先生は揺らがないというか、迷わない完璧な大人であって欲しいと思っていました。そんなわけないのは頭ではわかっているのに、親以外で一番身近な大人にはやっぱりちゃんとしていて欲しかった。でも学校生活の中で見えるのはカッコイイ姿ばかりではないわけで・・・なんというか、「教師も人間」という当然のことを本当には理解しようとしていなかったと思う。反発も迎合もしなかった私は、「はつ恋」で津田のイジメを見て見ぬふりした生徒達の「無関心」に一番近かった。そうそう、私は一度も「先生になりたい」と思ったことがない人間ですが、一番の理由が「簡単に人に面と向かって嫌いと云われてしまう職業だから」なんです。私がそうだったように、子供って簡単に先生のことを「好き 嫌い」で話すでしょう。自分の世界に関わる大人に対して他に言葉をまだ持たない時期なんですよね。その残酷さに、私の心は間違いなく折れると思う。
3年間嫌いだった中学の担任と同い年の現在。私の身に久我山と同じことが起きれば、恋に落ちはしなくても確実に見る目は変わるでしょうね。逆に変わらなかったらそれはそれで怖い。

成長したからこそ理解出来ることがある。そして恋をする。すごく素敵な話だと思いました。
恋愛部分が急ぎ足という感想をちらほら拝見しましたが、私は良かったと思います。後日談までキスしかしないのも良かった。急展開に次ぐ急展開&SFファンの人はちょっと首を傾げそうな気もする「仕掛け」ですが、やっぱり榎田さんは小説が上手だなぁと再確認しました。「犬より」の感想でも書いたけど、作中のAという人物にある事象が起きた場合にAの内面にどのような変化が起きるか。これが榎田さんは本当に、本当に上手い。平易な言葉の羅列なのに、人の感情の機微に有無を言わせぬ説得力がある。ええ、久我山の恋する想いに久しぶりに目頭が熱くなりました。

良いものを読みました♪

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「普通のひと」

hutuunohito.jpg
コンビニのおにぎりなら『赤飯』。それがマイルールの花島光也は、ある夜、最後のひとつの赤飯おにぎりを見知らぬ男から譲ってもらった。『お洒落』よりも『誠実』という表現が似合う、でも、どこにでもいるような男だ。数日後、編集経験があると偽って入った出版社で光也はその男、的場宗憲と再会するのだが!?普通に生きてきたはずが、恋した相手が同性だったら?臆病な大人たちに贈る、思わず恋がしたくなる物語!『普通の男』『普通の恋』に書き下ろし『普通のオジサン』も収録。

久しぶりに「ノンケ×ノンケの話を読んでいる」と思い、感想&本棚を見返してみたのだけど・・・ノンケ×ノンケの話って実は少ない?私の嗜好が偏っているの?一方がゲイorバイ(突発的な男性経験が過去にあり)設定の話が多い中で、ここまで完全なノンケ二人が恋に落ちる話というのは逆に珍しいのかもしれない。おかしいな、BLなのに。『魚住くん』と同じレーベルから出版していた榎田さんの絶版本ということで、とても楽しみにしていました。が、ここまで業界事情てんこもりの話だとは・・・。お陰で余計なことをいっぱい考えてしまいましたよ。

本当に出版業界の流通事情というのは遅れている&超適当もいいところでして、読みながら何度も深々と頷いてしまいました。昔は「取り寄せ」に二週間?いや、今も版元によっては余裕で1ケ月かかりますって。ヒドイところだと注文受けた商品を出庫し忘れていましたとかもある。客に乱丁落丁本を投げつけられたことだってあるし、入荷の遅い本について文句を言われたことは数えきれない。とにかく出版社&取次の不手際というのは書店にダイレクトに被害がくるわけよ。あと、私はあんまり営業に優しくない書店員ですが、それなりの理由があるの。毎回毎回同じ注文書の同じタイトルを「置いていただけませんか?」と営業しに来られても困るわけ。そんなに良い本なら他店の実績を表にして持ってくるぐらいしてよ。「3冊でいいので・・・」って、棚に差しても平積にしても困る冊数の提案をしてくるなー。その前に大前提としてレジの前に立たないでよ!接客中だってば。
ああっ、ただの営業へのグチになってしまう。
だから、的場のような人はとても良い営業さんなのです。周辺の競合店情報から、うちの店の客層分析、売れる本は他社でもおススメしてくれるというね。たまにいらっしゃるんですよ。そういう営業さんは信頼して棚作りの手伝いまでしてもらいますって内容に全然関係ないですね。

「普通」への宣戦布告。物語を飛び出た榎田さんの主張を勝手に感じましたけど、どうだろう。
ここまで二人が「普通の男」だと、榎田さんの力をもってしても「そんな簡単にはいかないかなぁ」というのが実は正直な感想なんです。当然あるはずの葛藤が省かれた話が多い中で、「大人になってから突然同性、しかもノンケの人を好きになったら」が主題なわけで、恋愛の名のもとに超えてしまう壁は人それぞれだと思うけど、トラウマに頼るわけでもない真っ当な二人の性格ではどうにも想像が難しかった。お互いノンケで女性も普通に好きというのがなんとも。こんなふうに言うとマイノリティーには「理由」があると思いたい自分に気が付いて心底嫌なんですけどね。所詮は狭い世界で生きていることを痛感します。
でもそれこそが、榎田さんの挑戦に感じました。
「普通ってなーに?BLで普通の人を書くと普通じゃなくなってしまう?」と。
榎田さんをそんな穿った眼で見てはいけないかしら?しかしどうにも試されている気がしてしまったのでした。あと、木下さんの挿絵のイメージで勝手に思い込んでいたのですが、決してセンシティブな話ではないですね。真面目だけどコミカル。山田ユギさんの挿絵でゲイバーのやり取りが浮かびました。予想外に純粋に楽しめなかったのですが、榎田さんだから面白いですし、愛やら恋やらはいっぱいです!

余談ですが同時に『恋愛犯』(凪良ゆう)、ストーカー攻め記憶喪失妄執愛ものという「そんな無茶な」という話を読んでいて、こっちの方には「有りだな」と思ってしまった自分に笑いました。

「秘書とシュレディンガーの猫」

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シュレディンガーを正しく指摘したひとりに全財産を相続させる―亡き祖父の遺言を聞くため古い屋敷を訪ねた舘を待っていたのは、風変わりな猫探しの遺言と初めて会う従兄弟、それに祖父の美しい個人秘書、雨宮だった。金と権力を信じる舘は、遺言の内容にうんざりしながらも屋敷に滞在することを決める。一方、雨宮は初めて会ったときから、舘のことが嫌いだった。それなのに、舘の挑発に乗ってしまい…!?甘くてほろ苦い大人の恋。

そもそも人を信じるって何?と思うわけですよ。
信じる 信じない その二択で物事を考える意味がわからん。
好きか嫌いかで考えた方が世の中ずっとシンプルで良いと思います。

楽しんで読みましたが、内容や萌えよりも上の点で引っ掛かりを感じてしまいました。
それと・・・人類の半数を敵にまわしそうで怖いのですが、私、猫が好きじゃないんです。舘と同じで「怖い」ぐらいは普通に思っています。だから、本物の猫への愛が溢れていた話でもありましたが、ちょっと入っていけませんでした。あっ、面白いことは面白いです!それは本当に。やっぱり榎田さん上手だなーと思いますもん。ただ、前の2作があまりに良かったので過剰に期待してしまったのかも。あとは、ほら、猫だし(重要)

改めて気が付いたのですが、このシリーズって結構な「倒錯物」ですよね。人をペットとして派遣するんだもの。デリヘルの変化形高級バージョンなわけで。買う方も派遣される方も、どこか歪んでいる。どこかしら壊れた人間に魅力を感じるので、その点からいくと「猫」は「犬」や「獅子」に比べると人物の歪み具合が物足りなかったように思います。設定だけでいけば雨宮の方が「獅子」の千昭、「犬」の倖生よりも不幸だと思うのですが、榎田さんの魅力である説得力に欠けたかなーと。ギャップ萌には驚きましたけどね!シュレディンガーの正体は謎ときでも何でもないので、清廉潔白な秘書様の夜の顔は予想外でした。「お金が好き」という舘は途中から気のいい兄ちゃんにしか見えなくなり、ラブが全開したあとは甘いお茶菓子のような仕上がりでした(笑)

信頼する必要がない相手として猫を傍らに置き続けた老人を思うと、切ないような、複雑な気持ちになります。信頼は100から0だけど、好きは100からいきなり0にはならないと思うんですよ。大きな好きの中に小さな嫌いがあって全体を形成しているイメージです。だから、雨宮にも「信じている」ではなくて「愛している」と云えればいいじゃないか、と思いましたとさ。

榎田さん、次は何を読もうかなー。

「獅子は獲物に手懐けられる」

久しぶりにポンポンBL本感想が続いていますね。
年末年始に大量に読んだ分を、やっとこ咀嚼できそうです(笑)

pet2.jpg
先に読んだ「PET LOVERS」第二弾!シリーズですが前作はまったく関係ありません。

「他の男を気にしてる場合か?俺だけ見て…俺だけ感じていろ」呼吸器内科の医師である鶉井千昭は、ある夜、自宅で突然見知らぬ男に襲われた。それが会員制デートクラブ『Pet Lovers』のライオン、蔵王寺真との出会いだった。足首に見えない鎖を繋がれている千昭と、金で愛を売る不遜なライオン、真。千昭の義兄の企みの下、不本意な出会いを果たしたふたりだが、いつしか強く惹かれあうようになる。しかし、ある過去が千昭を苦しめ…究極のビースト・ラブ。

好きです。が、この話は「好き」と云うことをちょっと躊躇してしまいます(云うけど)。
いくら「可愛い受けが可哀相な目にあって、攻めに助けられる話」に萌を感じるとはいっても・・・この話の暴力描写と義兄(深見)の悪人っぷりは酷い。愛でもなければ憎しみでも最早ない、只のストレスの捌け口としての虐待。榎田さんの暴力描写は読んでいて本当に痛い。それを千昭が甘んじて受けなければならない理由までが、嘘。千昭がこんな男にヤられなくて本当によかった。あまりに深見が気持ち悪いので、シンのカッコ良さが霞んでしまうじゃないか!それにしても千昭の受難具合が半端ではなく、あそこまでされてやっと噛み付くことが出来たというのも酷い話。だって10年も只の奴隷だったわけだから。おまけに母親が・・・。でもまあ、お姫様が無体な目に遭えばあうだけ読んでいる側は「早く助けてあげて!」となるわけで、作者の思うつぼですね。
お話的には前作程の感動は覚えなかったのですが、とにかく榎田風「シンデレラ設定」に悶えました。無垢(本当の意味で)な千昭と百戦錬磨のシンの金銭による身体の関係、何もかも諦めたような千昭の瞳の奥に宿る獣の火、百獣の王の異名を取るシンの神々しいまでの強さ。そういった関係性が悉くツボでした。志水先生の絵がまた美しくて!ふてぶてしいシンの魅力が全開です。
さすがだなーと思ったのはやはり「動物の喩え方」でしょうか。最初は「ガゼル」に喩えられていた千昭の本質が実はシンに負けず劣らぬ「ライオン」だったということ。シンの支えがあったとしても、最終的に深見との直接対決を乗り越えたのは千昭であることが嬉しかったです。攻めに助けられるだけの受けなんて、面白くないですからね。

改めて、このシリーズ好きです。
最新刊の『秘書とシュレディンガーの猫』も楽しみだわ。
プロフィール

Author:yori
気がつけばいつもそばにBL.猫かぶってみても、結局たどりつくのはそこなのです。感想は基本的にすべてネタバレ注意です。拍手&コメントありがとうございます。拍手コメントは該当記事のコメ欄にてお返事いたします。リンクフリーですがご一報頂けると嬉しいです。

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