「色闇」

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貴くも妖しい色香を持つ美貌の男娼・月弥。盗賊の二代目、犬神の早太郎としてかつて江戸を騒がせていたが、闇の司法官を務めている牙神尚照に正体を見破られてしまう。捕らわれ、犯されたあげくに、密偵となることを強要された月弥は、牙神によって火盗改方・中郷主膳の許に送り込まれる。月弥は中郷に抱かれるようになり、牙神への憎しみを募らせるが―。官能の美を描く、至極の愛の物語。

山藍作品四作目。
最初に一言、この話好きです!他の三作(角川文庫)に比べて官能美や凌辱描写は控え目なんだけど、とても面白かった。勧善懲悪の大江戸捕り物譚が実は結構好きなのかもしれない。あさのあつこは苦手だけど『弥勒の月』は好きだったしな。宮部みゆきの時代物にでも手を出してみようかしら。

この話、なんと最初から最後までラブラブなんですよ!山藍先生なのに!(笑)
あらすじには「憎しみを募らせるー」とか書いてありますけどなんのその、この月弥が有り得ないぐらい可愛い!凄まじい美貌を持って気丈に振舞う十六歳の色童なんだけど、これが牙神やその仲間の四人衆から言わせれば「犬っころ」も同然なのね。子獣がシャーっと生え揃わない牙を剥き出しにして必死に威嚇しても、牙神から見れば「愛い奴」でしかないのよね。その関係にとっても萌えました。そして牙神がカッコイイんだ。月弥が自分のことを憎んでいるのは重々承知していて、いつ裏切られてもおかしくない関係だという認識もある。でも、ぎりぎりの部分で月弥は自分を裏切らないという自信もある。とにかくとっても男気に溢れているんだよ。優しいんだか鬼畜なんだかよくわからない趣味嗜好の牙神だけど、月弥に色惚けしているのが微笑ましい。そんな牙神の睦言を最初は全然信じていない月弥の心が堕ちるまでを、息もつかずに一気読みしてしまいました。最後の牙神の台詞が素晴らしいんだ。「月弥、おれと恋の闇に堕ちてみるのも、悪くはあるまい?」
耽美で流麗な文章の中にこんな掻き口説くような文句が出てくると、ときめきも一入でございます。

この本にはもう一編「狗」という話が収録されています。「色闇」の前夜譚というべき「狗」は、月弥が牙神によって手負いの獣とされた後に、陰間として潜んでいたところを再開して密偵として仕えるまでが描かれています。「色闇」では詳しく語られなかった「屋形船での吊るし責め」が出てきます。牙神と「四人衆」のやり取りも面白いし、これだけで立派な時代小説が出来上がりそう。吊るし責め描写も良かったのですが、個人的になぜか最も悶えたのは、すすきの原で文字通り追い詰められる月弥でした。なんだろう?青○が好き、なんてことはないのですが、草いきれの匂いや、逃げ回るうちに草で傷つく肌や、追手がじわじわと迫ってくる恐怖が官能的でした。これまた最後の文章が好きなので引用を。「すすきの原に這わされ、女犬の姿に押さえ込まれた月弥は、狼にむさぼられ、明けてゆく空の下ですすり鳴きつづけた。」
山藍先生は「すすきの原」という言葉の効用を意識して使ったのかしら。とにかく凄いなーと感心しきりでした。好きです、すすきの原。

受けが虐められない(?)、ラブ要素が強い山藍先生もいいですね!
内面の描写が控え目なので、一般書の腐読みをしているような感覚に軽くなりました。もちろんエロはエロできちんとあるのだけど(笑)楽しい読書でしたー。

それにしても山藍作品絶版が多すぎるよ。もっと読んでみたいのに!

「王朝恋闇秘譚」

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時は平安王朝時代。高貴な家に生まれながら、政変に巻き込まれ離ればなれになった綾王と吉祥丸の兄弟。寺から寺へ高値で売買され高僧に体を捧げる笛人に身をおとした兄のもとに、ある日雅な文が届く。今宵、お迎えに参ります、と。しかしそれは巧妙に仕組まれた罠だった。時代に翻弄された美しき兄弟の確執の行方は?そしてあの日の慟哭の別離の真相とは?めくるめく禁断の官能と真実の愛とを描き切る究極の耽美世界。

山藍作品三作目です。とりあえず店で買える角川文庫から攻めてみた次第。
当然のように近親相姦だとか、瑣末なことは全然気にならない耽美世界。山藍先生は耽美作家であられるわけですが、その力量は他のジャンルでも十分発揮できるのではないでしょうか。不勉強のため時代考察とかよくわかりませんが、調度装飾から言葉遣いまで、これだけ真に迫った世界観を作りだすって感服してしまう誠実さです(耽美小説を下に見るわけでは決してないのですが、それにしてもここまでやるかという驚きが)。お話全体の流れは『アレキサンドライト』とほぼ同じように感じたので、そんなに萌はしなかったのですが、数頁に一回はある濡場はこれまた美しい凌辱で大変満足しました。奇をてらった責めは・・・琵琶や桜の異物挿入かな?4Pに見えなくもないラストの濡場も凄かった。腕、疲れるだろうに。
平安時代って雅な人たちが色恋のことばっかりに心を砕いていたイメージです。男色や色事は「秘めてこそ」という私の好みからすると、『王朝』はちょっと違うかなと。でもそれよりも大きな理由が「中童子(稚児)」「笛人」「陰間」というように前提として春を鬻ぐ身分であることが食指が動かない理由かなと。上手く説明できないのですが、「稚児愛」ってあまり好きではないのですよ。どうしても女性の代替物っていう考えが抜けなくて。対等な関係の極北じゃないですか。男と男でなくてはいけない物語が見たいのよね。今では一ジャンルを形成している「遊郭物」を読みたくないのも、「花嫁物」、「女装物」があまり好きではないのも似た理由からです。結局のところ「オンリーワン主義」が好きなんだろうな。心だけではなく身体を開くのも生涯あなた一人、みたいな。はは、どこの歌謡曲だ。

そういえば卒業論文で『雨月物語』の「青頭巾」を研究しました。何年も前のことなのであまり覚えていないのですが、とにかく身分の高い僧が稚児を愛するあまりその稚児が亡くなったあと死姦をした挙句死肉を食べた為成仏が出来ずに苦しんでいた―という話です(たぶん)。「稚児愛」好きなんじゃん!?って感じですが、違うんだよ。私が「青頭巾」を卒論に選んだのはとっても下らない理由だったんです。「晴天シリーズ」の菅野彰が『海馬』の1巻で短大の卒論に「青頭巾」を選びカニバリズムについて熱弁した、という文がずーっと頭の隅にありまして、「yoriさん、決まりましたか?」とおじーちゃん先生がモゴモゴ聞いてきたときに咄嗟に「あ、青頭巾で・・・・」と答えてしまったんですね。そんなもんです文学部。
余談ですが、子供の進学に口を出す親にはならないと思いながらも、もしも子供が「本が好きだから」という理由で「文学部に行きたい」といったら私は結構な勢いで反対します。姫野カオルコがエッセイで「大学の文学部の機能というのは本当にどーしようもなくて・・・そもそも文学部というのは本来芸術大学に属しているべき学科なのである」と書いていましたが、全面的に賛成します。本は一人で勝手に読めばいいから、ね。
「青頭巾」を研究したからって別に稚児愛に造詣が深くなったわけでもないあたりが私らしいですが、就職が決まらない鬱々とした時期に、死体を食べた高僧と一体化しよう、とか呟いて妄想を繰り返していたことは楽しい思い出です(嘘)。そんなことしてるから就職が決まらなかったんだけどね。

「アレキサンドライト」(山藍紫姫子)

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流れるような黄金の髪と怜悧に煌く緑潭色の瞳を持つ美貌の貴族シュリルは、隣国の軍人、マクシミリアンに捕らえられた。彼は、妹を死に追いやったシュリルに復讐を企んでいたのだ。シュリルは贖罪のため、マクシミリアンにその身を差し出す。想像したこともない屈辱に翻弄され、貶められるシュリルだったが―。憎しみと禁断の愛に彩られた、官能の美を描く衝撃の耽美ロマン。

昔「花夜叉」を読みその世界観に圧倒されつつも、どこか受け容れ難い気持ちがあった山藍作品。
凌辱大いに結構ですが、最後には一つの「愛」を見せて欲しい・・・という私の好みからは「花夜叉」はちょっと遠かった。この「アレキサンドライト」も昔パラパラ読みして(正直に云うと凌辱場面のみ読んでいた(笑)ちっともどんな話か覚えていませんでした。おぼろげに「両性具有」という言葉だけが頭にあったぐらい。
しかし今回読んだら、すごく面白かった。
そして、愛が、愛があった!山藍先生の話って、もしかして他の作品にも「愛」があるんですか?(私は山藍作品を何だと思っているのか)いや、団鬼六的世界に愛がないなんて心の狭いことは言いませんが、なんというかハーレクインロマンス的な「愛」が欲しいのですよ。この「アレキサンドライト」は何から何までいちいちロマンチックで、こんな素敵なお話だとは・・・本当に目から鱗です。
昔は「両性具有」についてはそんなに萌を感じませんでした。やはり、女性器がある存在というのは「同性愛」の物語を求めてたどり着いた人間にはハードルが高かったようです。今回は・・・ああ、大変なことになっているなと(笑)二輪挿しが当然で凌辱に次ぐ凌辱。それなのに有り得ないぐらい美しい描写。官能美を体現する為に産み落とされた「シュリル」という存在が、本当に遺憾無く発揮されていて・・・山藍先生凄いよ。「両性具有」についてはやっぱり「萌える」とは言い切れないものがあるのですが、それを語るだけの知識がないのでやめておきます。小野塚カホリ「ぼくはね」(『虜囚』収録)が、私が知る唯一の「両性具有ものBL漫画」でしょうか。あの話も好きだった。
一番好きな凌辱シーンは馬上での場面です。危ないだろマクシミリアン・・・と内心突っ込まずにはいられなかったという理由で(笑)あと、ラモンが可愛い男でびっくりしましたね。最後の捨て台詞なんて特に。「私が結婚しないのはあなたのせいだ!」って。本音にしてもカッコ悪すぎて愛しく思いました。
確かに官能小説です。「ある意味おじさんの読むエロ小説と同じ(by Cさん)」です。しかしそのエロも申し分ないエロな上に、最後にはきちんと愛によって孤独な魂が救済されるという素晴らしい大団円!私はとても満足しましたよ。

「耽美小説」ってこういうものだと改めて思いました。
もう少ししたら他の作品も読んでみます。今すぐはお腹いっぱいでムリなので(笑)
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