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「いとし、いとしという心 2」かわい有美子 

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屈指の名門旅館の跡継ぎである兄の陰で、ひとり鬱屈した思いを抱えていた千秋。彼にとって、素直で愛らしい隣家の幼馴染み・侑央は唯一の救いだった。侑央が兄に恋い焦がれてさえいなければ―。侑央を抱きしめ、兄に似た声で侑央の耳に甘くささやく。「目ぇ、閉じとき。そしたら兄貴としてるみたいやろ?」大人気の「いとし、いとしという心」待望の続編!すべての因縁が始まった高校生編と大量書き下ろしを収録。

あまりに萌え悶えて、頭が痛くなりました。

前作(感想はコチラ)では、気持ちが通じたようで通じていない不思議な幕切れを迎えた「いとし」。じわりじわりと狐と兎の心が重なっていく様を堪能しました。面白かった!

終始一貫して腹黒く計算高く性格が悪く描かれている千秋ですが、前作にも増して彼の事が好きになりました。どんなに強かになっているとしても、幼少を知るユキや周囲の大人達にとっては「可哀相な子供」であった千秋。千秋自身は苦々しい記憶であると同時に、「ユキちゃんの同情を引けて都合が良かった」ぐらいに思っていそうですが、現実はきっと違ったのですよね。辛かったし、寂しかったのだと思う。ユキが記憶している痛々しい千秋の姿に、えーと、悶え死ぬかと思いました(笑)兄に対抗してコンポを買った経緯なんて、萌え転がる勢いでしたよ(ユキが気づいているというのがたまらない)。
前作ではあまり言及されなかった二人の関係を変えた過去の件が高校生編として描かれます。千秋が、なんてゆーか見事なまでにヤンデレで・・・少々ゾッとしたのも事実。ユキの気持ちを改めて想像するととても痛いですね。信頼していたお兄ちゃんに性的な悪戯を仕掛けられたも同然なのですから。ユキの心が千秋から離れるのも当然のこと。賢くすべてを俯瞰するような目線を持つ千秋が、それだけは予測出来なかったと後悔する姿もまたツボでした。いつかユキの気持ちが自分に向いたら―とデートプランなどを想像する千秋の浮かれようと、計算が狂ったあとの悲壮感を伴う決意を速攻でした千秋の姿もツボでした。最後、泣くかなと思った千秋が涙をちらとも見せなかったのも良かった。

要するに、千秋がとても好きだと云いたいだけのような気がしてきたぞ(笑)

そういえば、前作を読んだ時には「この千秋がよくまあユキを一旦諦めた(手離した)ものだ」と思ったのですが、なけなしの優しさを総動員させた結果だったのねと納得しました。10年気持ちを寝かせるだなんて、千秋ちゃんは怖い子です。離れていた10年にお互いに何があったのかを、過不足なく描いてくれるかわいさんの文章力に今回も感心しきりでした。すべてが明かされるわけではないけど、読者が二人の人生に思いを巡らす空白がちゃんとある。う~ん、唸ってしまうぐらい上手だ。

10年という年月をかけて変わったのは、頑なだったユキの心の方なのですよね。幼馴染への叶わぬ恋心に倦み、摩耗していたところに確かに千秋は付け込んだ。でも、ユキは誰かと抱き合うことを望んでいたんですよね。何も知らずに一方的にされていた高校生の時分のように清廉ではいられないし、本当は欲望だって人並みにあるのを無理矢理押し殺していたところを千秋は開放したのだと思う。これはもう、千秋の粘り勝ちだよ。自分に向けられる「恋情」が同情でも兄の身代わりでも、いっそ流されただけであっても、ユキが隣に居ればそんな瑣末なことはどうでもいいと思っていそうな千秋が本当に大好きです。

前作の曖昧な締め括りもかなりツボだったのですが、今作の幕引きもまた大変なツボでした。
「待つのは地獄」と微笑む千秋と堕ちる覚悟を決めたユキ。有名な都々逸「三千世界の鴉を殺し―」が直前に出てきて効果的に使われています。前作の感想でもチラっと書いた「世継ぎ問題」「嫁取り問題」、その他諸々の「格式云々」が二人の行く手にはいつまでも付き纏うことになるのでしょう。それでも、二人一緒に地獄へ行こうと「約束」をする姿に萌えて頭がおかしくなりそうでした(危ない)。「指きり」を高校生の頃にも「口止め」という意味でしていた二人。10年を経てその意味合いが見事に変化しましたね。閉じられた世界に入ってしまったように受け取れるラストですが、腹黒い千秋と意外に図太いユキのこと。力技で地獄を天国に変えてしまうような気もします。地獄の沙汰も恋人次第ということかな。

前作はストーリーと雰囲気に酔い、今作は千秋萌えとなりましたがとても好きな作品です。
良い本を読みました♪

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「いとし、いとしという心」かわい有美子

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京都の格式ある名旅館「井筒屋」の若き当主が亡くなった。彼を密かに恋い慕っていた侑央は悲しみにくれる。一方、葬儀で帰省してきた当主の弟・千秋は、次男として当然経営を継ぐと思われていたが、旅館を売却すると言い周囲を驚かせる。かつて一途に兄を想う侑央の想いと秘めた欲望につけこみ、関係を持っていた千秋だが、今度こそその心ごと自分のものにするため、侑央にある提案を―。乱れる心と身体は誰のために…書き下ろしあり。

大変面白く読みましたが、妙に息が詰まります。
喪服(葬儀)から始まる話という部分が個人的なツボであり、また幼馴染の執着愛(片思い)物という、これまたツボを押さえられた話なのですが、読んでいて本当に息苦しかった。
しかしその息苦しさが段々癖になってくるから不思議。

ここに描かれている京の町がどのぐらいの信憑性を持っているのか、残念ながら知る術を持たない俗人ですが、「立てるべき筋を立て、通すべき顔を通しておかないと」という書き下ろしの一文に、これまた息が詰まって仕方がなかった。土地に進んで縛られて生きる人たちの強かさが、伝統と格式を誇りを持って守ろうとする頑強さが、なんとも湿気を帯びた空気で文面から立ち昇ってくるような。昔「ぶぶ漬けでもどーどすか」「一見さんお断り」という言葉の意味を知った時に感じた寒気に近い感覚がよみがえりました。

しかし読むほどに、京の町が纏う空気が艶を帯びて二人の関係にねっとり絡みつくような感じがしてきて、なんとも上手な作品だなと感心しきりでした。かわい作品は2作目。「進行性恋愛依存症」の二人にまったく感情移入出来なかった上に萌なかったのですが、とにかく硬質で美しい文章を書く方だと思っていたのです。個人的に文章の美しさを重視する傾向があるので、「マジ」「ヤバイ」や「・・・」「―」などが多様されている作品はそれだけでちょっと萎えます。美しい文章とともに京言葉も調度品や着物の描写も、何一つとして嘘がなさそうなのが凄いですね。が、「本物」を知らないくせに変な話ですが、たとえこの京都がファンタジーでもまったく構いません。いい大人が「ちゃん付け」で呼び合うのも、絡みつくような京都弁でおりなされると、現実味が薄れて傍観しているこちらが興奮してしまう様な耽美さを生み出します。「あかん―」とか、それ全然嫌がってないから!!かくも方言とは恐ろしい(素晴らしい)ものですね。男性の方言萌えがわかりますよ。一応標準語圏内(細かく言えばどの地域にも方言はあるのですが)育ちの私には羨ましい限りです。

自分を蔑ろにし続けた場所に戻って何が残るの。しかも手に入るか入らないかも確かではないユキの心ひとつを拠り所に!といつの間にか千秋のことばっかり考えていました。
でも、よくよく考えてみると(みなくても)、すべて千秋自身が選択したこと、望んだことなんだよね。かなり屈折しているのに卑屈ではない千秋が無性にカッコよく思えてきました。「強かな狐さん」ですか。京の町には多く生息していそうですね。対するユキも泣いてばかりの可愛い子ちゃんなのかと思いきや、いつまでも亡き想い人への気持ちを核に持ち続けてはいますが、決して弱い人ではない。流されているようでも、肝心の部分は受け渡さない(渡せない)芯の強さを持っている。
上手く言えないのですが、私この二人の関係がかなり好きです。どちらも半分報われないのに、微妙な綱渡りを二人でしている共犯めいたところがあって、とにかく個々の芯が「強い」。
そういった事を考えたときに気が付いたのですが、旅館を残す残さないはともかく、千秋は決してユキが「逃げない」確信があったから、人生を変えるような勝負にも出たんですね。ユキは本当の意味で「逃げない」。京都の町で家族経営の商の主人をしているという現実から、絶対に彼は逃げないでしょう。それが彼の矜持だから。たとえいつか互いに妻をもらい、子を授かる日が来たとしても、ユキが姉小路の店主である限りは千秋の隣に居続けることになる。千秋はそんな未来すら予見しているのかもしれないと思いました(後継ぎ問題とは無縁ではいられないでしょうし、30手前の男が)

ユキの心は結局亡き想い人に向かったまま、千秋の気持ちにすら半分気がついていないという幕切れでしたが、これはこれで不思議な余韻があって好きです。想いが通じて甘々になるよりも、この作品には相応しいように感じました。読み終わったあとに「ほぅ」と一息ついてしまうような、そんな作品です。
と、思ったら続編があるらしい。うーん、どうなるのかしら。千秋が報われて欲しいような、すれ違ったままでいて欲しいような・・・。ああ、でもユキの乱れっぷりがツボなので、更なる「素質」を期待してしまいます(笑)

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Author:yori
気がつけばいつもそばにBL.猫かぶってみても、結局たどりつくのはそこなのです。感想は基本的にすべてネタバレ注意です。拍手&コメントありがとうございます。拍手コメントは該当記事のコメ欄にてお返事いたします。リンクフリーですがご一報頂けると嬉しいです。

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