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「純情な人のように、さよなら」西江彩夏

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「あんたを愛してる。絶対にあんたを手に入れてやる」
恋人は顔がよくセックスが楽しめればいい、そんな考えを持つエリート医師の柚木を無理やり抱いたのは、不遜な俳優・前岡。互いに恋愛感情はないはずが、時々年下の男が自分を想って言い放つ言葉に戸惑いを隠せない。しかも過去のトラウマのせいで、愛に臆病な柚木の心は、その想いを拒み続けてしまう。寂しさや本心を隠したまま、柚木はある決意をするが・・・?


山のあなたの空遠く 身体からはじまる恋もあると BLのいう

ガラにもなくパロってみました。
そう、BLだもの。っていうかBLじゃなくても普通の小説も、っていうか友人知人も、そんなことは「よくある話」だと人は云う。遠い、遠いよ~と叫びたくなるのは置いておいて。
たぶん私は西江さんの小説でそれを読みたくはなかったのだなぁ。一読者がそんな身勝手な感想を抱いてしまうぐらい、「ナルシスト」の作り(プラトニックグルグル)が異色だったのよね。BL的な話もちゃんと書けなければ作家として食べていけないであろう事情もわかるので、「これもあり、でも次回作に期待!」という結論を先に伝えておきます。

恋愛がいかに個人のメンタル的な強さに支えられて成立するか、ということを読んでる間考えていました。まんだ林檎先生の「LOVE SONG」収録「あなたが幸せになれた日々の理」の―自分のコトが好きじゃない人に本当の恋はできないんだぜ という言葉に深く肯くのですが、それでも自分のことを好きになれない人はいるし、常に全力で自分のことを好きでいられるかと聞かれれば、否と答えるしかない。ただ重要なのは、自分のことを他人から愛されるに足る人間だと思っているかだと思う。実際がどうかなんて一切まったくもって関係なく、ただ自然に(力技でも)そう思えることが私の思う強さかなと。自分のことを好きじゃないと、自分のことを好きな人のことも信じられないのよね。「こいつ何で俺のこと?」って、柚木もしつこいぐらい繰り返していたし。黙って素直に愛されてりゃいいのに、それが出来なくなる。グルグルグルグル一人相撲。いや、西江さんのキャラクターって、本当グルグル思考ですね(笑)柚木はグルグル思考なのにストイックとは無縁だから性質が悪いというか、前岡もよく柚木を執念深く追いかけたよな~と若干呆れました。この前岡が結構BL的な「攻め様」で、私にはちょっとよくわからない人だった・・・。

自己保身と自己愛はとてもよく似ているけど、まったくの別物なのよね。
自分と似た部分のない前岡に愛されて、柚木は少しずつだけど変わっていった。エリートであるとか、二枚目であるとか、自分の価値を外的要素のみに自ら留めてきたフシがある柚木は、身体と心を絆されてこれから幸せになるのでしょう。

作中にあった「偽善だって善は善。嘘だって優しい嘘は人に優しい」的な意味の台詞に、これまた深く肯くのですが、同じことを藍川さとる(古張乃莉)先生も「晴天なり。」で云っていたのを思い出しました。今をトキメク人気作家様にこんな物言いは失礼だと承知ですが、西江さんのメンタルは、なんというか、近い感じがする。えーと、自分に。読んでいて爽快だとか楽しいとかではないのに、目が離せなくなるのはそんな理由の気がしました。


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「恋愛・教師 Color of Snow」西江彩夏

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「好きになれなんて言わない。だからあと少しだけ、今だけ、側にいたい」雪が降る夜、佐々井は恋人に振られて混乱する年下の同僚・井瀬崎に抱きしめられていた。井瀬崎は、普段は温和で優しいが、同性の恋人の存在を知る佐々井を避け続ける片想いの相手。嫌っているくせに、佐々井は必死に縋る腕の強さに拒むことができない。彼に触れてもらえる嬉しさと罪悪感を素直になれない態度に隠したまま、佐々井は体を重ねてしまうが―。

最初に一言、とても面白かった。読んでる間中眉間にしわ寄りっぱなしだったので、面白いと云うとちょっと語弊もある気がしますが、この話は私が今まで読んだBL小説の中でも一番「痛い」話かもしれない。
BL小説の「イタさ」というのはトラウマだったりトラウマだったりトラウマだったり(笑)、それ以外でも普段の私の日常とはどうもかけ離れている問題による「イタさ」が主だと思うのです(三角関係とか元彼とか当て馬とかムリヤリとかね)。それが「他人事」であるからこそ、得られるカタルシスというのが心地よくてBL読んでいるのだなと思うわけです。しかし、「恋愛・教師」の痛さは何と云うか、すごく身近にあるような痛さでした。まるで親しい友達の話を聞いているような近さがあった。眉間にしわ寄せて考えたのは、兎にも角にも恋愛にはこういった側面だってあるのだという核心を突いているなということ。この二人がしていることって「痴話喧嘩」にすぎないし、元彼である義兄の存在は攻めの中で大きいとはいっても直接恋愛関係に絡んでくることは徹底してない。
問題は、どこにもない―ように一見して思えなくもない二人なのですよね。
でも違う。好きな人と居たって、一瞬満たされていると感じられたって、その直後には云い様のない不安に襲われる。「幸せ」の基準を自分で決めることが出来ないから迷う。でもBLに出てくる「攻め様(笑)」のように常に愛を直截的情熱的に語れるような人は現実にはそうはいないから、そして相手も同様の不安に襲われているとしたら、陥るのは不安の無限ループなわけで。
私は結局のところ自分のことは自分でどうにかするしかないと思っている節があります。相手に何かを委ねているような足場の不安定な感覚が好きではないし、幸福を人に決めてもらおうとすれば、価値は揺らぎまくるのも当然のこと。自分で「大丈夫」と思わないとやってらんない。でもそれって口にするのは簡単だけどとても難しいのですよね。相手がいる「恋愛」という状態だとなおのこと難しい。
これは、そういった恋愛を上手に出来ない二人の話です。二人ともグルグルになりながら、それぞれの回答をやっとこさ出していて、そのゆっくりした段階に私もゆっくりですが、この話がとても面白いと感じるようになりました。いや、最初から面白かったのですが「痴話喧嘩だけで終わり!?」と前半を読んで思ったので。この話は後半がなければ成立しないと思います。

西江さんのキャラクターって前作の「ナルシストの憂鬱」を読んだ時にも思いましたが、内に抱えている葛藤と、外に表れる性質が似ていると思う。みんな不安で優しい人ばかり。「ナルシスト」の山田のようにデフォルメされたキャラが誰一人として出てこない「恋愛・教師」は、本当にすぐ隣にある「一見幸福な二人の恋愛話」のように感じました。でも恋愛をしていれば幸せというわけではない、では結婚をしていれば安心なのか、という問いにも義兄という人物をもって応えてくれました(余談ですが、この義兄があのような選択をした過程が知りたい。本編に増して「痛い」話になるのは予想出来るけど、やたら気になる人物でした)。何をしていたって問題は結局のところあるのですよ。それを省いたような幸福な話が多い中(もちろん幸福な話は好きですけど)、敢えてのグルグルを終始描き続けたこの小説は、やたらと私の琴線に触れました。
正直、この話の3人が抱えていた依存・共依存・同情云々よりも、「ナルシスト」の山田が抱えていた問題の方が私には断然身につまされる物だったのですが(笑)、普通の人が抱える内面のちょっとした傷に迫る力を持った作家さんだと思います。
西江さんは、もしかしたら西江さんにしか書けない小説を書く人かもしれない。
そういった作家さんに出会えたことは小説の読後感とはまた違う次元でわくわくします。
次回作が楽しみ!

「ナルシストの憂鬱」西江彩夏

お洒落フレンチに負けない為にもBLを!というわけのわからない気合いから出掛けの供に選んだ作品です。これがすっごく面白かった!あちこちのブログ様で評判がいいなーと思っていたのですが、攻めが「クレーマー」、受けが「家電量販店店員」という部分に引っかかりを感じ(サービス業なものでクレーム客には良い感情がありません)手を出すのを躊躇していたのです。
もう一気読みでした!しかし一番良い場面で待ち合わせ時間になってしまい、しかも改札で立ち読みしていたら友人達がいつの間にか目の前に居たという。恥ずかしい!

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「絶対に恋になんかならない!」精悍で色男、職業・司法書士。だけど性格は、自意識過剰なナルシスト。藤中にとって山田は、外見だけは好みな尊大で横暴な隣人だ。しかも初めて出会って以来、お人好しで面倒見の良さが災いしてか、なぜか山田の世話を焼くはめになってしまう。さんざん山田に振り回されげんなりしていた藤中だが、二人の距離が縮むたびに、山田の素直で嘘を言わない真摯な言葉に心がときめいて…。

最初は単純に傍若無人のジャイアニズム全開男山田と、お人好しで日和見主義のクレーム処理員藤中のやり取りと対比が面白いと思って読んでいたのですが、山田の超難ありな性格の背景が出てきたあたりから、印象がガラっと私の中で変わりました。これはすごく、すごく切実な問題を孕んだお話だと思います。その切実さと、一見して戸惑う様な問題の在処も含めて、とにかく私好みのセンシティブな話でした。センシティブでプラトニックなんて、結構珍しい話だと思います。
山田は恋愛(セックス)が出来ないんです。その理由が最初は「本当に愛した結婚を考える人とだけする為」とあって、まあ変わった男の価値観だからと藤中同様に私も思っただけでした。そういった幻想(?)は小学生の頃は当然だと思っていたし、今現在私の近くにそういった考えを通している人というのは見受けられませんが、居たとしても変ではない。
でも、山田の抱えている問題はもっと根が深かったんだよ。「ナルシスト」という言葉は言いえて妙というか、正確なんだけどちょっとズレているような、でもその通りだなという良い言葉だと思います。山田はとにかく自分を晒すのが怖いんですよ。怖くてたまらないの。だから、恋愛が出来ない。セックスが出来ない。恋愛なんて自分を晒す行為の最たるものでしょう。セックスなんて未知の世界の時はあんだけ怖ろしくて恥ずかしくて仕方がないものはないって感じでしょう。そういった葛藤というのはもちろん30にもなる大人の男が抱えるものではないと一般的にはされている。でも山田は抱えてしまっていたんだよ。藤中のことが好きなのに、恋愛が怖いのね。乙女のような悩みと葛藤というとなんだか滑稽だけど、出会って恋してエッチして―という恋愛小説の手順を当然のこととして消費していた私は、山田の抱える葛藤に若かりし頃の自分の葛藤を重ねましたよ。他人に自分を晒す行為とは、本当に恐ろしいものであったんだよなと。そして、その問題を抱えたのが「攻め」側というのがこの話の面白いところだなと思いました。恥じらいの乙女は女の子の役割(特権?)であって、本来ならBL的には「受け」側の役割なんですよ、たぶん。お姫様が優しい王子様に懐柔されて心も身体も開いてゆくというのが一連のロマンスでしょう。でも王子様になりきれない男の人だってきっといっぱいいるわけで、男の人に半ば強制的に押し付けられる「役割」のようなものについてまで考えてしまいました。
山田のような人にはもしかしたら、藤中のように優しく他人に合わせがちな人は向かないのかもしれません。もちろん藤中の優しさと忍耐がなければ山田が彼に惚れることはなかったのだけど、二人でグルグルになっている様子には「似た者同士」特有の袋小路を感じて切なくなりました。似た者同士というと語弊があるけど、身動きが取れなくなってしまった状況と、その状況を打破することが出来なかった二人それぞれの思いやりを考えると、山田と藤中はまったく違う種類の人間だとは思えないのですよね。暫定恋人から恋人になって、でもやっぱりセックスは出来なくて、そのうち関係自体がギクシャクしてしまう二人。ダメなのか、このままダメになってしまうのか?BLだからそんなことはないだろうと思いながらも、最後の最後までハラハラドキドキしてしまいました。

大きな事件が起こるわけでもないシンプルな恋の話なのに、1対1の人間の関わりを濃く描いていて本当に面白かったです!良い本を読みました。
ひとつだけ注文を付けるのならば、藤中は男前設定ではなくて地味顔設定だと個人的にもっと萌えました。綺麗でないと山田の目には止まらなかったかもしれないですが、カラーの「どうしてだ。君は可愛いじゃないか」という甘い台詞がよりキュンとするなと思ったので。




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Author:yori
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