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「最果ての空」英田サキ

最果ての空 (shyノベルズ)最果ての空 (shyノベルズ)
(2009/12/09)
英田 サキ

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警視庁公安部外事第一課第四係の刑事であり、ウラに属する江波郁彦は、ある日、秘匿追尾していた男に尾行を見破られるという失敗をおかしてしまう。そしてその日、上司に呼び出された江波は、そこで警視正、篠塚英之からある事件の班員に指名される。篠塚は若くして公安部部長に次ぐ地位にあり、一見穏和だが常に冷静で、なにを考えているのかわからない男だ。江波はある事実から篠塚に反抗にも似た感情を持っており…!?事件にはできない事件を追う、男たちの静かな闘いの物語。

珍しく長いこと積んでいた本をようやく読了しました。
昨年末に刊行されて話題になったこともあり、彼の選択やその他諸々の流れについては、ほぼ知っていました。知っていながら放置を続けたのは、私には恐らくこの作品を楽しんで(納得して)読むことが難しいのではないかなと思っていたからです。周知の通りこの作品は「エスシリーズ全4巻」「デコイ全2巻」のスピンオフという位置づけにあり、それらの作品を通して「篠塚英之」という男が歩むことになったお世辞にも幸いとは云えない人生を知っていなければ、あまり意味がない作品です。篠塚への思い入れ自体もそこまで強くなく(幸せにはなって欲しかったけど)、また「エス」はともかく「デコイ」がどーしても、どーしても、小説として好きになれなかった(正直に云うと作品中で起きている出来事にまったく興味を持てなかった=つまらなかった、のです…)私には、刊行前から篠塚さん←(余談ですが彼には何でか「さん付け」をしたくなります)が受けても攻めても、きっと深い感慨を抱かずに読了してしまう予感がしていたのですよね。あともう一つ正直に云うと、私は英田さんとの相性がどうもよろしくないようで、その「合わない」感じは、英田さんの根本にある考え方や物事の捉え方がきっと私のソレとは違うのだろうという感じの合わなさだったのですね。アングラ系の話だから考え方が偏っていると云うわけではなく。それでも新刊が出れば気になるし、こうして手に取りもするわけですが、そう、単純に期待をしていなかったのですよ。
でも、刊行後に方々で見聞きした感想はとても素晴らしいものばかりで、これは是非とも「デコイ」を再読してから読まなければと心に決めていたのです。で、再読出来たかと云うとモゴモゴ……なわけですが(笑)もういいよ!読むよ!篠塚さんごめん!と思いつつ手に取ったのが数日前でした。

ふー、長い前置きで申し訳ないです。
結論から云えば、私は英田さんを見くびっていたとしか云い様がなく、えーと、土下座まではいかなくても頭を下げたい気持ちでいっぱいです。「デコイ」、そのうち再読します。

確かにこれは前6冊がなければ(BL小説界では)成立しない物語でした。
強固な意志をもって孤独を選択する男を描き、それ以上でも以下でもない話だからです。
「篠塚英之」という男ならばきっとそうするだろうという読者の期待や予測を作家が過不足なく表現して、「恋愛」を描くことが前提(お約束)とされているBL小説で、恋愛を選択しない男を描き読者を納得させてしまった。もちろん恋愛は人生の総てではないし、世の恋愛至上主義に決して沿う事が出来ない自分の姿もよく知っている。でもだからこそ、その事実を敢えてBL小説のスピンで描いた事、そうして与えられた作品が文句なしの傑作だったという事実は、読者として本当に得難い喜びだと思います。

頑ななわけではない、閉じているわけでもない、只、彼は知っているのだ。
もしくは、知っているという意志に縛られているのだと思う。
一時の慰めに他者を選んだとしても、結局人は「孤独」であるということを。
妻子を亡くし、義弟を庇護下から失い、部下を失い、これでもかと奪われ続ける人生を経てもなお、彼は他者を選びはしなかった。孤独に生きることは確かに寂しい。それはもう疑いようもなく寂しいことだと、彼は知っている。でも、その孤独を埋める為に求めてはいない他者と添う事は、口で言う程容易ではないのだ。当たり前のことだ。

だから私は篠塚さんが江波を選ばなかったことにとても納得をしている。
これ以上失うものはないだろうと思われた彼の人生から今作でも一人、大事な人が去ってしまった。だけど去るばかりではなく、江波、新しい生命との出会いが彼の身に起きた。彼の人生はそうして続くのだろう。願わくば、頂きを目指す彼の横に、いつか彼自身が求める人間が添うときがくればいい。だけどこなくてもいい。人がどう思おうと、篠塚さんが自分の納得する人生を歩んでさえいてくれれば、それでいい。

今更ながらの感想だったので、作中で起こる事件はおろか江波のことすらすっ飛ばしてしまいましたが最後にひとつだけ。お別れのキスに大人のキスをしてあげた篠塚さんには惚れました(笑)。江波という未熟な若者を相手に置いたのも上手だなと思いましたね。これが神津や浅川のような人物が相手だったら、彼の心にもう少し波が立ったような気もしますね。だけどそうはならないのが人生というもので、若い江波はこの先もドカドカ踏みこんでは蹴散らされて強くなればいいと思います。
「義兄」といえば私には某義兄殿のイメージが強すぎるのですが、名前に縛られているにしても、二人の姿は重なりました。前にも書いたのですが、羽海野さんが同人誌に某義兄を指して書いた「意志のオバケ」という言葉が大好きで、篠塚さんにも当てはまる言葉だと思います。不自由そうな姿が哀しくも美しい。ラストで引用される和歌といい、結びの情景といい、どこまでも美しく静謐な作品でした。だけどその中に生きている男たちの抱える様々な種類の熱は十分に伝わってきました。

素晴らしい作品でした。


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気がつけばいつもそばにBL.猫かぶってみても、結局たどりつくのはそこなのです。感想は基本的にすべてネタバレ注意です。拍手&コメントありがとうございます。拍手コメントは該当記事のコメ欄にてお返事いたします。リンクフリーですがご一報頂けると嬉しいです。

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