「タンゴの男」

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「メロメロvol1」を読んだときから気になっていた作品です。
ゲイコミも全然読めるのでちっとも問題なかったのですが、ゲイコミとBL両方描く漫画家の門戸を広げた(開拓した?)出版社は大変偉大だと思います。内田かおるの筋肉毛親父は私にはちょっと甘過ぎて(ハートマークが飛び過ぎて)苦手だったのですが、岡田屋さんの筋肉隆々の男たちは素敵でした。


タンゴの男と呼ばれながら、本当の情熱を知らぬままに踊り続けてきたダンサー・アンジー。 ラテン人の母を持ちながら、祖父に引き取られ、今は日本人として暮らすヒロ。 アンジーは出逢いのひと目から沸き立つような欲望をヒロに感じる。男にはまるで興味のないヒロだったが、懐かしい故郷を感じさせるアンジーの包容力に、戸惑いながらも、いつしか心と体を開いてゆく・・・。男が男を愛する時を情熱のタンゴに乗せて描いた、著者初めての作品集。

タンゴダンサーの公演をテレビで観たことがありますが、尋常ではない色気と熱に畏れ慄きました。ラテンの男でしかもタンゴを踊るとなると、それはもう本当に色々な激しい「情」を一身に受けている業のようなものを想像してしまいます。愛情、欲情、激情、熱情、人間が生きていく上で必要な様々な「情」のマックスボルテージを常に浴びているイメージ。そんな人でなければタンゴの神様は降りてこないのではないでしょうか。自らの肉体で芸術を表現する人って昔から無条件に尊敬します。それは絶対に私が持ち得ない才能だから。運動神経やリズム感云々の問題ではなく、やはりその表現方法を選択したことに「業」のようなものを感じるから。私は遠くから眩しく光る舞台を眺めるだけでよいのです。

私の勝手なゲイコミ印象ですが、やはり「実用性」に重きを置いていると思うのです。もちろんそれは素晴らしいことだけど、ゲイコミやゲイ小説で私が萌えるかというとやっぱり何か違うのですよ。男が発情するような男を描きつつ、心も付いてきている岡田屋さんの漫画の括りはBLなんだけど、こういう方が漫画を発表する場がある(しかもゲイ&BL)のって本当に素敵だなーと思いました。
ただ、肝心の「メロメロvol1」に掲載されていた話が今回のコミックに収録されていなかったのです!「タンゴの男」の第一話なのですが、二話以降と微妙にヒロの職業設定が違うので、長期連載するにあたって組みなおしたのかなー?その一話だけで素晴らしい「短編」として仕上がっていたのでよいのですが、コミックに入らずに日の目を見ないのが少し残念だなーと思いました。正直に言うとですね、コミックよりもその「短編」の方が私の好みだったのです。ヒロのズルさと才能に振り回されるアンジーが素敵だったので。コミックは二人の内面(特にヒロ)を掘り下げているのでそれはそれで面白かったからよいのですが。
今後も楽しみな作家さんです。

「青猫屋」

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絶版になった永遠の名作!

知る人ぞ知る、とまではいきませんが個人的にこの本に思い入れが深い人というのは多いのではないでしょうか。絶版になったのが本当に残念な記憶に深く残る1冊です。12年前の本なのに、書店で見つけて図書館で借りて古本屋で入手したのを昨日のことのように覚えています。

並行して書いていた仕事&読書日記があるのですが、この本を紹介しようとして何となく躊躇しました。それは私がこの小説に、確かに耽美で妖しい雰囲気を感じてしまったからだと思います。

異界の扉が静かに開き始める。優れた歌を創ることが無上の名誉であり、人々が歌の呪力を恐れる不思議な町があった。その町で呪力を持つ歌を消すのが人形師「青猫屋」廉二郎の裏の仕事。ある日、48年前の歌仕合の勝敗の判定を依頼された彼は、消えた歌の探索の果てに摩訶不思議な事件に巻き込まれた―。夏の一夜の見せ物小屋は夢か現か幻か。いつとも知れぬ懐かしい日本で男を惑わす妖しい生き物たちの謎。第8回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

その魅力を言葉で伝えるのはとても難しいです。
廉二郎と頓知気の男所帯も魅力の一つなのですが、それだけではない本当に不思議な力がある小説です。次回作が待ち望まれた作家さんだったのですが数年前にお亡くなりになられました。

思春期に好きになったものは永遠だと思います。
私は好きなものがあまり多い子どもではなかったので、こんな風にいつまでも好きといえるものがあるのは幸いなことです。

「おおきく振りかぶって」

新刊が発売されました。
やっぱり触れないわけにはいきません。私が昨年人生初、突如として二次にハマった野球漫画なんですもの。「腐女子向け」というのはとっても有名ですよね。捕手×投手CPが王道でしょう。しかし私はですね、4番×5番CPに夢中になったのですよ。熱しやすく冷めやすいので、原作の勢いに押されて妄想は鳴りをひそめましたが、池袋まで出向いた程でした(笑)
ちょうどその頃友人も偶然同じタイミングで同じCPにハマりまして、あの時の盛り上がりは凄かった。が、恐ろしいことに彼女は5番×4番だったのですね。俗にいう、これがCP相違による仲間割れか―という寸前でお互い引きましたが。私はリバに抵抗がない人間なのでどっちでも良かったってのもあります。

「おーふり」は高校時代を思い出します。まだ腐の仲間もおらず一人で悶々としていた頃うちの学校の野球部の美味しかったこと・・・。弱小だったのですが、イケメン揃いだったのですね。男だけの世界があんなに眩しく見えたことはないです。M君とU君のいちゃつき具合とか尋常じゃなかったし!(こんなん言ってもあの頃の友達は誰もわかってくれないんだ・・・)
「野球部」って、私にとって現実で「萌えた」原点だと思うのですよ!だからそれを辛抱堪らんって具合に表現してくれた「おーふり」にくらくらきたのですね。やっぱりオリジナルのように夢中になることは出来なくて、今ではそういう読み方は出来なくなりましたが、純粋に素晴らしい漫画だと思います(説得力ないぞ)

「照柿」

ホステス殺害事件を追う合田雄一郎は、電車飛び込み事故に遭遇、轢死した女とホームで掴み合っていた男の妻・佐野美保子に一目惚れする。だが美保子は、幼なじみの野田達夫と逢引きを続ける関係だった。葡萄のような女の瞳は、合田を嫉妬に狂わせ、野田を猜疑に悩ませる。『マークスの山』に続く合田刑事第二幕。現代の「罪と罰」を全面改稿。

ただただ、全編通しての「熱」に脳内を侵された心持です。暑すぎた夏、という気が狂う一歩前(いや、合田に至っては半分狂っていましたし)の季節と、野田の働く工場の過酷な労働環境の描写に。
高村薫の子細に渡った描写力って凄まじいです。人物の感情については相変わらず硬いというか、最低限の説明しかしないのに、それを補って余りある状況描写。合田3部作を読み終わったら他の作品も読んでみたいと思いました。
「罪と罰」と帯にはありましたが、どちらかというと「カラマーゾフ」の方が相応しい気が・・・。父と息子という不変のテーマを盛り込んで結局父親の影から逃れることの出来なかった男の悲劇を描いたドラマだと思ったので。美保子という女は、男たちを正気と狂気の分水嶺に小指一本で突き落とす役割だったと思うのですよ。

合田、お前は一体いつからそんな不安定な人間に・・・。『マークス』では懊悩が深いだけの雄刑事だと思っていたのですが、病んでいたのですね。
お前は森に心配かけ過ぎなんだよ。そんなだから森は黙って島に行く決意をしたんじゃないか・・・。
やっぱり合田と森の関係が好きでした。だからもう少し最後に会話でも手紙でもいいから欲しかったです。加納の気持ちに合田が気づいていないとは思えないのですが、そういった面では繊細なのに鈍感で厄介な男だと思いました。合田、受けでも全然ありですよ(笑)泣かせてみたくなりました。

「キスだけでも―」と言った合田がツボでした。
女へのダイレクトな欲情。男って滑稽で美しいですね。

さて、『レディー・ジョーカー』いきますか!

「うつしみの手」「リアル1/2」

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明治カナ子を知ったのは書店の新刊台に『うつしみの手』が並んだときでした。
以来新刊はもちろん、掲載誌まで買うほど好きになりました。
たった4年前のことだけど、あのとき書店で明治カナ子を見つけたとき心のどこかで「見つけた」と思ったのですよ。そういうのありませんか?「自分が探していたものはこれだったんだ」という妄想めいた確信。『三村家』ももちろん好きだけど、最初がこの「リアル1/2シリーズ」じゃなければ、たぶん熱烈に好きにはならなかったと思います。

友人はこの頃の明治カナ子の絵を見て「死んだ魚の目」と評しました。
確かに一読せずに人物だけ見たらそう思うかもしれません。
でもね、恐ろしく暗い話もありますけど(『甘い針』の「志乃」とか)明治さんは基本的に明るい方で、そして明るい話を描こうとしているのだと思うのです。「明るい」という言葉は広義すぎるけど、決して不幸な話を描こうとはしていない。何所に着地するのかわからない浮遊感があるかと思えば、読後感は意外なほどに爽やかなんです。すんなりと「幸福のようなもの」の場所まで連れて行かれてしまう。プロットがしっかりしているのでしょう。
明治さんは元々男性向けエロ畑にいた方です(ずっと購入を迷っているのですがまだ読んでいません)。だからなのかエロの表現と性器の書き込みに容赦がありません。それも大きな魅力のひとつです。
BLなんだけど、初期の作品はすごく「JUNE的」だと思います。恋愛による関係性よりも、肉体を繋ぐことで精神の関係に何らかの作用を与える様を描き続けているというか・・・。

『うつしみの手』も前作『気持ちのゆくえ』(双子の攻めとのSM3Pの話。えげつない性描写と、繊細な感情描写が混在する不思議な話)もSMプレイが主です。身体を支配されることで、危うい精神を保っているような関係性を見せてくれます。なんて言っても今はなき『絶対麗奴』の作家さんですからね(昔よく古本屋で立ち読みしたなー)最近見なくなりましたが、本領はSMなのではないかと思っています。

「リアルシリーズ」は近親相姦の話です。義理の、という括弧付きBLは多いですが本当の兄弟もの。それまで近親姦は嫌だったのにあっさり読んでしまいました。今では全然平気に・・。

兄の手を借りてしか自分を慰めることができない陸。午睡の夢うつつの中、くり返される兄弟の淫蕩な遊戯に自家中毒気味な兄、潮。第三の男、谷口の出現で、リアルとアンリアルの境界が曖昧な、甘く閉ざされた世界に崩壊の足音が―。

一巻では潔癖症で夢遊病癖ある陸の脆さが描かれていますが、二巻では兄の潮の方が繊細で臆病な人間だということが描かれています。兄弟の秘密の遊びに依存していたのは結局兄の潮も同じで、潮の大学の先輩である谷口はいち早くその事と、潮の隠された願望に気がついていた。そんな兄弟が家という箱庭を出て、開いた世界に歩みだしていくまでが描かれているのです。

再読して、本当につくづく私の好みの話だと感じました。全編通して暗いトーンなのに、底の方はとても明るくて救済と希望があって、この作家さんにしか描けないような色がある。近親姦の葛藤がないのもそれはそれでよいのです。私の中の「JUNE」はそんな瑣末な(笑)悩み事とは無縁の世界だから。

『うつしみの手』の表紙がとても好きです。崩壊する塔から先に落ちていく潮を支える陸。崩壊するのは二人の世界であり家でもあるのでしょう。「大丈夫 ぼくの手は意外に大きいよ」と夢現の陸の言葉が思い出されます。早く大きくなって潮を守ってあげられるようになるといいな。

「マークスの山」

何でこんなに読むのに時間がかかったのか!
それはイチにニにも字がギッシリだから(笑)

高村先生の文章は鋼鉄のような印象を受けました。
冷たさと灼熱が混在している硬い鋼鉄。うん、好きですね。
直木賞受賞作ですが、これが大衆文芸ですかと言いたくなるような重量感のある話でした。

昭和51年南アルプスで播かれた犯罪の種は16年後、東京で連続殺人として開花した―精神に〈暗い山〉を抱える殺人者マークスが跳ぶ。元組員、高級官僚、そしてまた…。謎の凶器で惨殺される被害者。バラバラの被害者を結ぶ糸は?マークスが握る秘密とは?捜査妨害の圧力に抗しながら、冷血の殺人者を追いつめる警視庁捜査第一課七係合田刑事らの活躍を圧倒的にリアルに描き切る本格的警察小説の誕生。

警察小説であり犯罪小説であり山岳ミステリーでもあり・・・いやいや、面白かったです。
それにしても警察とは本当にこんな組織なのかい!?これがリアルだというのなら私は刑事という生き物がとても気になるぞ。友人が警察官に転職したので、早く昇進してもらって是非とも内情を聞きださなければ!ただ、犯人も動機も本当にそのままいくの?という感じで私としては最後にどんでん返し的な趣向を期待したのですがそんなものはなかった。精神異常者が殺人犯という図式がちょっと嫌だなと思ったのですよ。そして真相が一気に明らかになるのが「遺書」というのもなんだか腑に落ちないなーと。でも元になった殺人事件の真相よりも、「山」の不気味さが重要なんだよね。登山の趣味とは無縁ですし理解も出来ないのですが、これほど死と隣り合わせの「趣味」ってなかなかないよね。
そこに生まれる男たちの結束感たるや、きっと想像を超えるものがあるのでしょう。

この小説は、殺人(犯罪)を犯すことへの警鐘や憐憫が皆無なんですよね。情に訴えようとしていない。何というか、本当に徹底している。そういう部分が好きです。

さて、合田刑事ですよ!合田刑事!
好きです、合田。
読みながら何度「なんだこの面倒くさい男は!」とつぶやいたことか(笑)
この男が面倒な男なんだよ。捜査官の鑑のような刑事なんだけど、とにかく考えることが暗い。些細な事で不快になりすぎる。すぐ悩むくせに基本的に行動と思考回路は雄。肝心な私生活での感情の機微からは逃げっぱなし。典型的なワーカーホリックの33歳ですよ。そして異様に「警察とは」という全体構造への懊悩が深いのです。面倒くさいというか、生き辛そうな男だよ合田は。
180超えのノーネクタイ白スニーカーの短髪男が都内を全力疾走している姿を想像して悶えました。合田、走る走る。家に帰ってスニーカーをきちんと洗うところが可愛いというかなんというか。
そんな合田の相方として有名なのが、検察官で友人であり元義兄でもある加納ですね。妹と離縁した後も何故か合田の世話をかいがいしく焼く34歳。「貴兄」「小生」いう呼び名で交わされる手紙の数々。こんな33歳いないと思う・・・。この二人の過去や感情の吐露があまりないので、読者としてはとにかく妄想してしまうのよね。合田は絶対にバイセクだと思うし、加納はきっとゲイでしょう。離縁した妹の貴代子はそんあ二人の秘かな感情に気がついていたのでは・・・。合田は二人と交際するうちに、自分が本当はどちらの手を取りたいのか気づきつつも偽ってしまったのではないのかな、とか。

ここまで書いておいてなんですが、私は合田×加納ではありませんでした!正直に言うと、加納の存在する意味が物語内であまり説得力がなかった・・・。そこは3部作すべて読んだらまた違うのでしょう。

では、私が誰に萌えたのかってそれは森ですよ!森!「蘭丸」なんて綽名される合田のパートナー。アトピー持ちの30歳。この森が可愛いくて可愛くて・・・お前絶対合田のこと好きだろ~っていう読みしか出来なかったのですが間違っているのでしょうか?誰よりも強靭な精神で淡々と職務をこなす新人類として描かれていますが、山のおかげでアトピーが緩和されたことを喜んだり、合田の傍に常にいたり(仕事だから)と、私にはツンデレにしか見えません!その融通の利かなさが合田を苛立たせているし、森からすれば、合田のムラッ気と有能な捜査官の振り幅に苛立っているしでちっともラブな要素はないのですが、それでもなんか匂いました。
脳内では異動か海外派遣になった森が「最後に抱いてください。主任に女のように扱われたい」と半泣きで懇願するというシーンが・・・すみません、腐っていて。
合田ってバリバリ攻めだと思うのですが、内面は受けというか、押し倒されるのが似合う気がします。
他にも魅力的な人物がいっぱいでした。「ペコ」「又三郎」「十姉妹」「雪乃丞」「モヤシ」―あの、こんな綽名が蔓延する職場は単純にイヤなんですけど(笑)

さて、『照柿』読むぞー。

追記:映画のキャスト、合田が中井貴一ってどーなのよ

「恋の心に黒い羽根」

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ヤマシタトモコは『くいもの処明楽』のような終始明るい話の方が珍しいのだと知った作品。
そして、「この人はたぶんBLでなくてもよいのだな」と思った作品です。もちろん悪い意味でなく。
その後アフタヌーンの読み切りを読んで更に確信するのだけど(勝手に)、結局私が、ヤマシタトモコにBLを求めていないということなのかもしれない。
もちろん好き合っている可愛らしい話も好きだけどね。

表題の「恋の心に黒い羽根」は本当に衝撃でした。サドマゾの物語にこんな描き方があったのかという衝撃。Mの切実な叫びと、好かれたS(にわか)のやり場のない怒り。人を好きになるという行為は同じはずなのに、歪んだ性癖は想いを捻じ曲げる。

神経質で臆病で小賢しくておまけに女々しくて、ヤマシタトモコの描く男は格好悪い。
彼らの恋愛や人生から目が離せなくなるのはそこに、現実スレスレの関係性が描き出されているからだ。ヤマシタトモコは徹底して言葉で関係性を紡ぐ作家だ。

主人公の二神は、想いを寄せる中頭に挨拶代わりに「M発言」をして「豚!死ね!」と言われ身悶えるような青年。最初は彼らのやりとりが、どこにでもあるような仲間内の冗談のように感じられてあまつさえ笑いそうになってしまう。しかし、話が進むにつれて中頭が本気で二神を拒否し、否定していることがわかってくる。二神の「M発言」に覆われて決して晒そうとしない「好き」という感情が見え隠れする度に中頭は苛立ちを覚えるのだ。歪んだ性癖で本心を覆って逃げる二神に。

中頭にとって二神は理解不能の異星人のような存在なのだ。そこに好意が生じるわけもなく、ただただ見当違いな感情(欲望)をぶつけて見返り(S的な罵倒)を求める二神と、そのやり取りのリピートに憤る自分に痺れを切らす。
彼は二神を問い詰めて言うのだ。
感情を見せろ、性欲ではなく心を寄こせ。そうすれば自分の気持ちも動いたはずだと。
しかしゲイでもSでもない中頭の気持ちが自分に向くことがないのを二神はよくわかっていた。正面からぶつかって拒否されればただみじめなだけ。でも、「M」という性癖で覆った道化の自分は傷付かない。二神は性癖を「黒い羽根」と称して「黒い羽根はおれの心のジャマをする。・・・そのかわり・・・飛べるんだ」と伝える。この期に及んでもまだ性癖に頼る二神と自分を憐れむ中頭。夜道をバラバラに歩く二人に二神のモノローグが重なって終わる。

「きみに輪切りにされたい 串ざしにされたい 家畜みたいに扱われたい 
罵倒されて蹴られたい 冷たい瞳で見られたい きみに きみに きみに好かれたい 
どんなにみじめでも 羽がもげても」

いやいや、サドマゾをこのように描いたBLがあったかと!ヤマシタトモコ凄いよ!と感嘆したわけですよ。
普通なら中頭の感情に何らかの作用が働いて恋愛に落ち着くのがハッピーエンドかもしれない。でも、この話のハッピーエンドは、二神が中頭に本心を吐露した部分でもう充分なんだよね。Mの性癖とは別の純粋な部分でも自分はあなたが好きだと、無理やりにでも伝えることができて、それに中頭が答えることはなくても、理解してくれたのだから。夜が明けたら何かは確実に変化しているんだよ。

ラストひとこまのような笑える関係に(笑)
ポジティブかよって全読者の叫びでもあるから、本当に。
もうヤマシタさんはマジでシリアスと笑いのバランスが素晴らしい人です!

ちなみに短編集ですが、好きな作品が一番多い本です。
「悪党の歯」が特に好きかな。これっぽちもBLじゃないじゃない!というヤクザの話。素晴らしい。

『タッチ・ミー・アゲイン』の中にもサドマゾについての話がありました。その中の台詞が秀逸。
「愛されることに甘んじて何もしねーアホのドMと違ってな、サディストとゆーのは愛に積極的で優しいんだよ」
そのとおりかもしれない、とまたまた感心してしまいました。

「はつこいの死霊」

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全ての不幸の元は初恋の祟りである

「漫画が好き」という人には草間さかえを読んでと伝えたい。
読んだらわかるから。
すごいから。
BLだからなんて言わないで―

でも、わからない人には教えないの。もったいないもの。
BL漫画を読む人生でその出会いに心底感謝した作家の一人であり、おそらく一番圧倒された漫画家だ。そして『はつこいの死霊』はその中でも一番好きな作品。

浮気を繰り返す両親に嫌気がさしていた智はアパートの隣人である祐一と仲良くなる。
誰かを好きになることはない、無意味だ、という智に
「それでもきっと誰かを好きになるよ」と慰められた夏休みのある出来事。
それから10年後、初恋の死霊が息をふき返す―



癖のある絵柄と、奥行のある独特の構図。ノスタルジックな雰囲気に呑まれたらもうすっかり夢中でした。しかし、何よりも驚嘆したのはそのモチーフの使い方。「はつこいの死霊」というタイトルの元にもなっている言葉の由縁は、戦後に興った新興宗教(天元教)の教義―「恋慕の難」からきているのです。
その眼のつけどころにとにかく驚きました。
作中で大学生の祐一が中学生の智に語る「「初恋の祟り」の一節。
「水子に心当たりがある人間よりも、俺を含め初恋に敗れた人間の方が多い」
そう、初恋の気持ちってまさしく祟りのようだと思うのです。よく知りもしない相手のことを日がな一日考え、それこそ祟り殺せるのではないかというぐらい想ってしまう。
(はい、私も初恋には執着しまくった類の人間です)

母の浮気相手が祐一だったことから二人は音信不通になるのですが、それから10年の歳月が流れて二人は再会するのです。建設会社社員と埋蔵文化財調査センター担当者として。
一目で祐一に気がついた智に対して、祐一は智のことを忘れていた。
両親の離婚の原因になったという祐一の負い目と、建設会社の弱み(土地の曰く話)に付け込んで智は祐一に取引を持ちかける。それは「土地の曰くを黙っている代わりに、金曜から月曜までいいなりになる―」というものだった。
智の本意はもちろん両親の離婚などにはなく、ただ10年前のあの夏、祐一が戯れに智にしたキスにあった。智はその行為をきっかけに祐一への恋心に目覚め、それは初恋の呪縛として彼の身の内にあったのだ。しかし祐一はキスのことも覚えておらず、自分は同性愛者でもないと言う。
息をふき返した初恋の死霊は二人をどこに導くのか。

蕎麦屋の二階、ラブホテルが玄関の戸建、目隠しの屏風、背景や街並み、家屋がこんなにも生きている漫画はないです。そして人物を俯瞰した構図の素晴らしさ。草間さかえは本当に独特の才能を持っている作家さんです。
エロは少ない作品が多いですが、「はつこい」はいたすシーンが多くてそれも含めて好きです。「手籠にする」という言葉がしっくりくるような蕎麦屋と週末の陵辱は、冷静に考えれば祐一にとってはえらい災難なのだけど、尋常ではない色気にそんなことはどうでもよくなります。
台詞にも、ひとつも無駄な言葉がありません。
「ああいう声 会話より隣に抜けるから」
この人は一体何を読んで生きてきたのだろう。
こういう言語感覚を身につけている作家さんは尊敬します。

智とは違った意味でまた祐一も初恋に囚われている人間だったのですね。
「女性に本気になれなくなった」祐一が、それでも人恋しいと思っていることも中学生の智は何となくわかっていたのでしょうか。
「あんたはいつだって過去を振り払うのに必死で 今が等閑なんだ」
復讐なんかではなく初恋の気持から祐一を抱いた智。

「この先あんたが被る全ての不幸の原因の 俺のことを忘れるな」
「それでもやっぱり 俺の死霊はあんたにしか付かないよ」

そして迎える大団円には本当に感動しました。
草間さかえの素晴らしいところは、変幻自在に飛躍できそうな物語世界なのに、絶対に最後はBL的ハッピーエンドで幕をとじること。愛がある。BLへの愛がある。

あとがきにカバー下、サービス精神が旺盛なのも、嬉しい限りです。

菅野さんのこと

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ああ、間違って昨日書いた文を削除してしまいました・・・。
同じようなことを書くことはできても、それは嘘っぽいからやめます。

「ニャン太」の死を、菅野さんの気持ちに同じように寄り添って悲しむことはできないかもしれない。
でも本当に悲しくて、菅野さんがもう「大丈夫」と後書やブログに書いたときに感じた安心は、なんというか、とても大きかったのです。
親しい友人も猫が好きで、彼女もきっと愛猫を亡くしたらこんな気持ちになるのだなと思いました.
そう、よく知っている人の心が悲鳴を上げているのが辛くて堪らなかった。『海馬』で菅野彰に出会い、『毎日晴天』でその才能に泣かされ、いつの間にか彼女は私の特別な作家になっていました。『海馬』で当たり前のように菅野さんの側にいた「ニャン太」という存在は、一読者である私にとっても大きな存在になっていたのですね。
もう以前のように小説を書くことはないのかもしれない。『毎日晴天』を読んだとき、「こんな素晴らしい小説が存在するのなら、もう小説は必要ないのではないか」とまで思ったのです。それほど、あの、「人と人がともに生きることの素晴らしさ」を描いたお話が好きだったのです。ちなみに私は断然長男カップル(大人カップル)派でした。7巻にわたってキスと抱擁を繰り返しやっと結ばれた夜の、冷え切った闇の中に浮かぶ熱のような二人の想いが本当に本当に好きで、大人カップルの終幕だけでも菅野さんの声で「これにて」という区切りが欲しいというのが正直な気持ちです。そうしないといつまでも期待してしまいそうだから。
でも、今は菅野さんが「大丈夫」という声を聞かせてくれたことに感謝をして再会の日を気長に待ちたいと思います。

秀と大河に会いに小石川庭園に行った日が懐かしいです(笑)
暑い夏の日で、大学の帰り道でした。誰もいなくて、池の鯉をボーっと眺めていたのを憶えています。

「坂道のアポロン」

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大好き!
神経質な秀才君とバンカラ不良少年のジャズの香り漂う60年代青春グラフィティー!
1巻で薫と千太郎が屋上で出会うシーンを読んだときは「BL?」と思いましたがそんなことはなかった。いい感じに匂いはするけど、でも本当に直球の青春物語です。60年代ってこんな雰囲気だったのか!と全然知らないのに納得してしまう。小玉ユキは短編もよい話が多いし、好きな作家だー。
音楽を齧ったことのある人間なので薫の気持ちがわかるわかる。信頼できる友人と、音楽を奏でる楽しさと、そしてカッコ悪いけど真剣な恋愛と。
ああ、もうすべてが詰まってる感じだよ。いつの時代だってみんなちゃんと青春しているのだなぁ。

BLと違って万人におススメ出来るのがちょっと嬉しいかも(笑)

「李歐」

頽廃的とも違う諦念の底で乾いた男二人が出会った。
乾きは熱に変わり互いの人生を決定的なものにする。

そんな印象を持って読み始めた『李歐』(高村薫)でした。実はリベンジです。数年前に読んだときは一彰と李歐が出会ってから再会するまでの紆余曲折にダレて放り投げてしまったのです。柴田よしきの『聖なる黒夜』を読んだときからリベンジは決めていたのですが、どうもあまり好きではないようです。
まず、「中国大陸を目指すという壮大な夢」が私にはとてもロマンチックには思えなかった。
まあ、こんな時代ですからね(笑)
だから絶世の美男子という李歐も大陸の人間というイメージがあり、バイタリティに溢れた上昇志向の強い天才という普通の印象になってしまったのです。一彰の心理の方がまだ興味を引かれたかな。彼は幼少期にいわゆる「悪=拳銃」に出会い、結局その時から人生が決まってしまったのよね。圧倒的な悪の魅力に逆らうことが出来ず、自ら選んで迷うことなく堕ちてゆく一彰の姿の方が美しかった。ただね、一彰と李歐が精神的ホモセクシャルな関係であるならばそれを貫いて欲しかったし、女性を犠牲にするのはやめてくれーと思ったのですよ。

次は『マークスの山』を読むぞ!合田刑事が主役のこちらが本命です!

「さくらにあいたら」

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きれいで不思議なタイトルだなーと思ったら、童謡「蝶々」の「なのはにあいたら―」からきていたのですね。古街さんのデビュー作ですが、今まで読んだ中では圧倒的にこの『さくらにあいたら』が好きでした。(「洋K」も「オルタナ」も嫌いじゃないけどもう少し熱を直接感じたいというか・・・)

ガンコで不器用、しかもナイーブな高校生・神原はアイドル顔の同級生・松永に密かに恋している。でも、松永は付き合う相手をころころ替えて「恋の蝶々」と呼ばれる男。しかもノーマル。けれど、恋心を抑えきれなくなったある日、思わず告白してしまい・・・

高校生の今始ったばかりの恋愛って、先が見えないというか見えているというかで、結構冷めた目で見てしまうことが多いのですが、松永の言葉はそんな心理に十分すぎるぐらい訴えてきて、思わず涙しそうになりました。私もね、そういう言葉(「ずっと」「絶対」)には胡散臭さを感じるタイプなので。
だけど、この二人の始まったばかりの恋愛がうまくいきますように―とキュンとさせられてしまうし、古街さんてやはり上手なのだと再確認した1冊でした。

「なるほど じゃあ最後は俺ってことで」
恋の蝶々の着地点を、こんなセリフで締めくくるセンスが素敵です。

「赫蜥蜴の閨」

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誰が何と言おうと今年のマイベスト!


いや実際叫ぶぐらい好きなんです。このヤクザ本が。
この話が「好き」と言いたくてブログを始めたぐらい(笑)


高柳商事大阪支社長の高柳光己は、英国人の血が混じる端麗な容姿に美しい妻…と、誰もが羨む人生を歩んでいる。しかし、会社のために自分を利用する社長の養父や、我が儘な妻に振り回され、光己は鬱屈した日々を重ねていた。
ある日、光己は妻の浮気をネタに熾津組の若頭、熾津臣に強請られ、凌辱されてしまう。なぜか執着され、執拗に繰り返される行為に光己は理性を徐々に蝕まれていく。だが、次第に奇妙な解放感と安らぎを感じるようになり…。


『蛇淫の血』『蛇恋の禊』『蜘蛛の褥』から成る「岐柳組三部作(虫編シリーズ)」のスピン的作品です。 『蜘蛛』で沙野さんにハマったものの、子蛇組長がどうも好きになれなかったこのシリーズ。
しかしこの『蜥蜴』は本当に本当に私の好みにドンピシャでした。

私が求めるヤクザBLのすべてが詰まっていると言っても過言じゃないこの作品。
無体を働く理由も凌辱の内容も申し分なかった。
容赦ないヤクザ者、臣の粘りつくような関西弁と色気漂う「ザラッとした」声が耳元で聞こえてきそうですよ!(危ない)臣の台詞すべてを抜き出して堪能したいぐらい素晴らしい。関西ヤクザ最高です。エロも場末のラブホテル、スパンキング、衆人環視のセックス、そして山場の青姦。
どこをとっても素晴らしすぎて上手く言葉に出来ません(本当に危ない)

しかし!その臣以上に私を虜にしたのが受けの光己です。
この光己の何がいいって、とにかく強いんだ。
精神的にも肉体的にも本当に強靭で、ヤクザ物相手の負け戦に、気持ちの上では全然負けていない。身体を好き勝手にされながらも虎視眈々と挽回の機会を窺っている。その強かさにやられました。「攻めでもいけそうな受けを目指した」と沙野さんのブログにもあるとおり、光己が本当にカッコイイ。
受けに「抱かれたい」とか思ったの初めてなんですけど(笑)

そんな光己が一度だけ精神的に崩れて臣が光己を宅に連れ帰るのですが、その後のエロシーンといったらないです。騎乗位で腰を振る光己と光己のモノを握って臣が言う台詞が「コウちゃんの、デカくてエロいのう」ですよ!関西弁エロス!それまでも光己のモノがデカいという描写はあったのですが、受けの性器の大きさを強調することが、こんなにもエロいとは!!新しい発見でした。

エロだけを強調したいわけではないのですが、ヤクザBLの素晴らしいところは「エロとの両立が小説の中で丁度いい具合」なところではないでしょうか。自分で書いて成程と思っています(笑)
堅気のお仕事の人が拉致って凌辱なんて、その後の人生捨てるつもりですかって感じだもの。
どんな無体をしても「あー、ヤクザだからネ」で納得してしまうマジック!

しかし、只のエロで終わらないのが沙野作品の凄さ。
二人の気持ちが寄り添っていく過程が見事に書かれています。
臣のトラウマと光己の育ってきた環境と―その二つがうまい具合に絡んで、しかもその絡み方に臣の狂気的な一面を覗かせて・・・。
利用され、搾取され続けた光己は臣の手を取りこう思うのです。
「いつだって求めていたのは―現実を生き抜く力だった。そして、互いに力をそそぎ合って添い遂げられる誰かだった」

「愛している」「好きだ」なんて言葉は二人に似合わない。
ともに生き、ともに死ぬーそんな言葉がしっくりきます。
私の中では、臣の屍の前で納得したように微笑む老年の光己、という絵まで出来上がっていますとも。穏やかな死を迎えることのなさそうな臣と、その臣の側に添うことを決めた光己。二人の蜜月が少しでも長く続きますようになんて願ってしまいます。

ああ、好きだー

「艶漢」

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新書館が大プッシュする大型新人!!いろんな意味で凄いです。

ユルい着流しにノーフン(フンドシしてないってことダ)がちな妖艶系ぼんやり傘職人・詩郎と、だらしない人がぜんぜんゆるせない熱血正義漢(妹萌え)な巡査殿・光路郎が、世界の果てのまぼろしみたいな裏町でエログロ猟奇な事件に巻き込まれる! 眉目秀麗悶絶お色気アクション・パノラマ百貨店。絵とストーリーが放つこの阿片的中毒性! 大型新人・尚月地の処女作第一集、ドンッ!

ま、丸尾末広の世界をちょっとSFっぽくしたお色気満載の浪漫絵巻!なんだこれ!!
帯の西炯子先生の「もう絵に恋をすることはないと思っていました」という言葉も頷ける。
しかもギャグ面白いし!これは今後も大注目です。
あっ、ホモではありません。無駄にお色気満載の兄さんが出てきますがちっともホモ臭くありません。
新書館のこのバランス感覚が好きだー。

藍川さとる先生のこと

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新書館の「Wings」は不思議な立ち位置の雑誌だと思います。
BLでも少女漫画でもマニアでもない。
私がこの雑誌を毎月買っていたのは中学生の頃でした。
なるしまゆりの『少年魔法士』を読むために買い始めたのですが、自分の求めていたのはこういう漫画達だったんだなーとすごく納得したのを覚えています。
「Wings」は私になるしまゆり、西炯子、菅野彰、そして藍川さとるを教えてくれました。

『晴天なり。シリーズ』(藍川さとる)は続編を待望してやまない作品のひとつです。
藍川先生は現在は名前を変えて活動していますが、昨年の夏ごろに読み切り短編を書いたきり、また沈黙してしまいました。
二つの家族を中心に、それぞれの友人たちや恋人、日常の何気ない出来事を綴るシリーズです。言葉ひとつひとつがとても心に響いて、気に入った台詞を日記に書いたりしていました。それぞれが悩みを抱えていて、でも決して卑屈ではなくきちんと折り合いをつけて生きている。その凛とした雰囲気、物語の力強さにやられました。
全体的に思索的、哲学的で、藍川先生の『飛行少年』はその傾向がもっと強く出ている作品です。
中学生の頃に出会ったこのシリーズとこの漫画家は私にとって特別で、人生のベスト本というのを決めれば間違いなく上位に入ってきます。思春期のグルグル真っ只中の私は、随分この作品に救われたものです。文庫化されて3巻にまとまったので、たぶんもう続編はないのでしょう。連載が途中になっている話があってそれが残念です。単行本の過剰な内省まじりの後書が面白かったので、文庫にも入ればいいのにと思いました。

好きな話ばかりですが、「キレイなこと」にこだわる少年と、彼に反感を覚える後輩の「さかなのf」。吉峰家の悩める四女真由子ちゃんの初恋と、大人と子供の関係を真正面から描いた「ウィーカーセックス スピーカーセックス」。スポーツ万能少年に告白した少女の自分でも気がつかない胸の内「Sol・la」。他人との距離の取り方がわからない和樹の「異星人交差点」。選べば全部好きだ!


で、なんと11月に古張乃莉名義の単行本が出るという情報が!(一般ブログ様よりの情報です)
本当ならこんなに幸せなことはないです。
好きな作家の本がまた読める。
半分以上諦めていただけにとても嬉しいです。

「オルタナ」

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読み終わった後、「オルタナティブ=alternative」の意味を調べて呆然としつつ納得しました。

すごく残酷な恋の話だったように思います。
恋をすればそのすべてが正当化されるわけではないし、誰かを傷つけたらその分自分だって痛い思いをするんだよ・・・。古街さんのシンプルな絵だから涙や痛みも控え目に伝わってきますが、これは帯にもあるけど本当に「戦場」だよ。恋と戦争はすべてを正当化する、とはよく言ったものだ。

幼なじみの親友が男に惹かれている事実を知った主人公。彼は親友が惹かれている男の子を自分のものにする―。親友にずっとずっと密かに想いを寄せていた。親友の隣にいるのが自分以外の男だなんて許せない。三角関係の果てに行き着くところは―

代替物に選ばれた彼のことを一方的に憐れんではいけない。
なぜなら彼も恋という戦争に身を置く当事者の一人だったのだから。

恋って怖いな。

「図書委員の恋」

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年に一度の決算期の仕事を終え、本日は家で15時間ほど寝こけていました。
普段平日休みなので、一般の方と同じ週末休みでしかも良い天気だったりすると外出する気が萎えます。ひとがいっぱいいる・・・。

夜8時に活動開始してとりあえず本屋です。自分の行動範囲の狭さに凹まないように。

ふゅーじょんぷろだくと―あまり聞かない出版社です。東京漫画社、宙出版、茜新社、などなどのニューウェーブ系なのかな。
デビュー作のようですし、ニューウェーブ系は当たりばっかりだからと油断して新刊買いすると拍子抜けするような漫画もあるので、あまり期待していなかったのですが・・・いやいや面白かったです。

表紙と漫画の絵の印象がちょっと違っていて、私は断然漫画の絵が好みでした。
ちょっと粗い線と懐かしい感じのタッチで少女漫画のような―とにかくノスタルジックなよい絵です(意味不明ですみません)とにかく当たりでした!

同性を好きになってしまった少年の戸惑いが描かれる「図書委員の恋」。
こういう「恋愛以前」の心の葛藤って高校生らしくて好きです。
主人公の桜井君は友人のことが好きな反面、自分の気持ちに気がついてちょっかいを出してくる「オカマ」の少年に生理的嫌悪を抱いたりして。
このオカマの花村君がいいんですよ!桜井君が男の子が好きだという気持ちを認められないから、同族嫌悪で自分に「気持ち悪い」と言っているのも受け止めて彼の側でちょっかいを出し続ける。花村君の桜井君に対する感情も確かに「恋」なんだけど、それよりも、戸惑う同類の子に手を差し伸べる感じが微笑ましかったです。
桜井君の背中を押すのが「本」というのもよいではないですか。

桜井君の心配をよそに、彼と花村君は本のような結末にはならなっかったようですが、二人の友情が続いているのがわかる「それは真心でした」も良かったです。同性と付き合うことを始めた桜井君が、どんどん恋人によって変わっていくのが素敵です。今まで他人にこんなこと絶対に出来るわけない!って頑なに思っていたのに、あれよあれよという間に相手のペースに巻き込まれて平気になっていく自分がいる。
恋をして、好きな人と一緒にいて、その人のことを受け入れて、自分の変化も含めて相手のことが大好きで―もう、恋っていいよね!と素直に思わされます。

「青少年髭漂流記」は花村君のトラウマ?が描かれます。ありがちな話だけど、BLっぽくまとめないラストにとっても好感を持ちました。花村君て実は結構面倒くさいやつだったのねーと、彼に振り回された髭先生がお気の毒ですが、そんな簡単に生徒と寝てはいけません。
と、ここまで書いて改めて読んで、まったく違う子の話だと気が付きました!(笑)髪形も顔も同じなんだもの・・・花村君の話として読んでも面白いと思います(ムリヤリだな)

書き下ろしの「花村君頑張ってね♡」で私の花村君愛が揺るがぬものになりました。
可愛い!服買ってルンルンしているのが可愛い!(というか、やっぱりこの作家さん昔の少女漫画っぽい気が)果たして花村君は運命の人と出会えたのでしょうか。

その他の短編もなかなか面白かったです!
恋煩シビト、今後も要チェックだわ。

「イルミナシオン」

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一読するとあまり好きじゃないような感じがするのに、あとからあとからボディーブローのように効いてきて、結局いつもとても好きになっている。

ヤマシタトモコはそんな作家です。変な言い方だけど、私はこの人の漫画が大好き。
漫画という表現手段に独自の感性と哲学をぶち込んで、それを押しつけがましくもなく淡々と表現する。すごい才能だと思う。

そして一番才能を感じるのは、とにもかくにもネーム!ネーム!言葉に圧倒される。
本読みなので(?)文学臭い作品に出会うとときめきます。

ヤマシタさんはおそらく私とそう年齢は変わらないはずなのだが、どうしたらこんな台詞を考えることができるのか・・・。

どの話も白い絵に比べて語りは過剰なのに、『イルミナシオン』の表紙のようにどこか静謐。
みんなよく考えよく悩み、生きることに戸惑いながらそれでも生きている。

ヤマシタトモコの漫画はリアルだ。
男が男を好きなこと。どうにもならない想いを抱えてそれでも近くにいなくてはいけないこと。受け入れられない一線があること。ときには飛び越えてしまう勢いだってあること。
そして何よりグレイゾーンが存在すること
友情と愛情の境で愛情を選ぶのがBLならば、『イルミナシオン』はBLではない。

公務員の幹田はホモでもないのに男に恋心を抱いている。女たらしの幼なじみ小矢に。恋心を隠して友達づきあいを続けることに限界を感じ始めた幹田は、居酒屋で出会ったゲイの州戸と一夜を共にする。一度きりの関係のはずが、再び州戸は幹田の前に現れ、幹田の日常は壊れてゆく・・・。

3人の男たちそれぞれの視点で描かれる「恋」の顛末。
みんなどこかしら重い部分を持ち合わせていて、その描き方が容赦ない。
開き直りの空虚さで洲戸を傷つける幹田。
誰からも嫌われない代わりに誰からも好かれないと思い込む洲戸。
選択肢がなければいいのに、と思う小矢。
ああ、なんて人生はままならないのだろう・・・。

表題の『イルミナシオン』のすごいところはね、それでもある種ハッピーエンドだって思わせるところなんんだよ。少なくとも私にはとっても腑に落ちる終わり方だった。人生なんて白黒付けて解決する問題の方が少なくて、こうやって彼らのようにグレイのまま生きていくことの方が多いのかもしれない。
それでも愛することを諦めたわけではないモノローグに感動しました。

ちなみにおまけ漫画が面白すぎます!バランスのいい人だなぁ。





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