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「照柿」

ホステス殺害事件を追う合田雄一郎は、電車飛び込み事故に遭遇、轢死した女とホームで掴み合っていた男の妻・佐野美保子に一目惚れする。だが美保子は、幼なじみの野田達夫と逢引きを続ける関係だった。葡萄のような女の瞳は、合田を嫉妬に狂わせ、野田を猜疑に悩ませる。『マークスの山』に続く合田刑事第二幕。現代の「罪と罰」を全面改稿。

ただただ、全編通しての「熱」に脳内を侵された心持です。暑すぎた夏、という気が狂う一歩前(いや、合田に至っては半分狂っていましたし)の季節と、野田の働く工場の過酷な労働環境の描写に。
高村薫の子細に渡った描写力って凄まじいです。人物の感情については相変わらず硬いというか、最低限の説明しかしないのに、それを補って余りある状況描写。合田3部作を読み終わったら他の作品も読んでみたいと思いました。
「罪と罰」と帯にはありましたが、どちらかというと「カラマーゾフ」の方が相応しい気が・・・。父と息子という不変のテーマを盛り込んで結局父親の影から逃れることの出来なかった男の悲劇を描いたドラマだと思ったので。美保子という女は、男たちを正気と狂気の分水嶺に小指一本で突き落とす役割だったと思うのですよ。

合田、お前は一体いつからそんな不安定な人間に・・・。『マークス』では懊悩が深いだけの雄刑事だと思っていたのですが、病んでいたのですね。
お前は森に心配かけ過ぎなんだよ。そんなだから森は黙って島に行く決意をしたんじゃないか・・・。
やっぱり合田と森の関係が好きでした。だからもう少し最後に会話でも手紙でもいいから欲しかったです。加納の気持ちに合田が気づいていないとは思えないのですが、そういった面では繊細なのに鈍感で厄介な男だと思いました。合田、受けでも全然ありですよ(笑)泣かせてみたくなりました。

「キスだけでも―」と言った合田がツボでした。
女へのダイレクトな欲情。男って滑稽で美しいですね。

さて、『レディー・ジョーカー』いきますか!
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「うつしみの手」「リアル1/2」

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明治カナ子を知ったのは書店の新刊台に『うつしみの手』が並んだときでした。
以来新刊はもちろん、掲載誌まで買うほど好きになりました。
たった4年前のことだけど、あのとき書店で明治カナ子を見つけたとき心のどこかで「見つけた」と思ったのですよ。そういうのありませんか?「自分が探していたものはこれだったんだ」という妄想めいた確信。『三村家』ももちろん好きだけど、最初がこの「リアル1/2シリーズ」じゃなければ、たぶん熱烈に好きにはならなかったと思います。

友人はこの頃の明治カナ子の絵を見て「死んだ魚の目」と評しました。
確かに一読せずに人物だけ見たらそう思うかもしれません。
でもね、恐ろしく暗い話もありますけど(『甘い針』の「志乃」とか)明治さんは基本的に明るい方で、そして明るい話を描こうとしているのだと思うのです。「明るい」という言葉は広義すぎるけど、決して不幸な話を描こうとはしていない。何所に着地するのかわからない浮遊感があるかと思えば、読後感は意外なほどに爽やかなんです。すんなりと「幸福のようなもの」の場所まで連れて行かれてしまう。プロットがしっかりしているのでしょう。
明治さんは元々男性向けエロ畑にいた方です(ずっと購入を迷っているのですがまだ読んでいません)。だからなのかエロの表現と性器の書き込みに容赦がありません。それも大きな魅力のひとつです。
BLなんだけど、初期の作品はすごく「JUNE的」だと思います。恋愛による関係性よりも、肉体を繋ぐことで精神の関係に何らかの作用を与える様を描き続けているというか・・・。

『うつしみの手』も前作『気持ちのゆくえ』(双子の攻めとのSM3Pの話。えげつない性描写と、繊細な感情描写が混在する不思議な話)もSMプレイが主です。身体を支配されることで、危うい精神を保っているような関係性を見せてくれます。なんて言っても今はなき『絶対麗奴』の作家さんですからね(昔よく古本屋で立ち読みしたなー)最近見なくなりましたが、本領はSMなのではないかと思っています。

「リアルシリーズ」は近親相姦の話です。義理の、という括弧付きBLは多いですが本当の兄弟もの。それまで近親姦は嫌だったのにあっさり読んでしまいました。今では全然平気に・・。

兄の手を借りてしか自分を慰めることができない陸。午睡の夢うつつの中、くり返される兄弟の淫蕩な遊戯に自家中毒気味な兄、潮。第三の男、谷口の出現で、リアルとアンリアルの境界が曖昧な、甘く閉ざされた世界に崩壊の足音が―。

一巻では潔癖症で夢遊病癖ある陸の脆さが描かれていますが、二巻では兄の潮の方が繊細で臆病な人間だということが描かれています。兄弟の秘密の遊びに依存していたのは結局兄の潮も同じで、潮の大学の先輩である谷口はいち早くその事と、潮の隠された願望に気がついていた。そんな兄弟が家という箱庭を出て、開いた世界に歩みだしていくまでが描かれているのです。

再読して、本当につくづく私の好みの話だと感じました。全編通して暗いトーンなのに、底の方はとても明るくて救済と希望があって、この作家さんにしか描けないような色がある。近親姦の葛藤がないのもそれはそれでよいのです。私の中の「JUNE」はそんな瑣末な(笑)悩み事とは無縁の世界だから。

『うつしみの手』の表紙がとても好きです。崩壊する塔から先に落ちていく潮を支える陸。崩壊するのは二人の世界であり家でもあるのでしょう。「大丈夫 ぼくの手は意外に大きいよ」と夢現の陸の言葉が思い出されます。早く大きくなって潮を守ってあげられるようになるといいな。
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Author:yori
気がつけばいつもそばにBL.猫かぶってみても、結局たどりつくのはそこなのです。感想は基本的にすべてネタバレ注意です。拍手&コメントありがとうございます。拍手コメントは該当記事のコメ欄にてお返事いたします。リンクフリーですがご一報頂けると嬉しいです。

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