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『こころ』は本当に名作か(小谷野敦)

あっ、小谷野さんだ~
今度は何にイライラしているのかしら~(ニコニコ)

と、私は小谷野さんを見かけるたびになぜかほわんとした気持ちになるのですが、ご本人が知ったらさぞお怒りになることでしょう。いつの間にか名前を「アツシ」から「トン」に変えてらっしゃったのですね。何があったのでしょうか?露悪趣味のきらいがある人なので調べればすぐにわかるのだろうけど、まぁいいや。
私と小谷野さんの出会いは数年前、夕方のAMラジオでした。まだ実家に居た頃、珍しく夕飯の手伝いをしながら母が愛用しているラジオを何気なく聴いていたのです。夕方のパーソナリティに相応しい柔らかな女性司会者の声と・・・夕方には怖ろしく不似合いな超不機嫌な男性の声。
そして耳に入ってきた言葉に私は呆然としてしまったのですよ。
「だから私はモテナイんですよ!!」
「恋愛は特殊な技能なんです!!」
「世の中には恋愛が出来ない人間もいるということを世間は認めるべきだ!!」
そのようなことを延々と超不機嫌な声で喋り続ける人、それが小谷野さんでした。
当時私は姫野カオルコに傾倒していて、女性にとっての「非モテ」や「否恋愛」のことについて考える機会が多かったこともあり、声高に「モテナイんだ!!」と叫ぶ小谷野さんに大変興味を持ちました。番組の終盤に「男性が書いた童貞小説というのはたくさんあるが、女性が書い処女小説はあまりない」的な事を仰っていたので、その場で「姫野さんを読んでください!」とFAXしようかと思った程です。
そしてすぐに著作『もてない男』『帰ってきたもてない男』(ちくま新書)を読み、ファンてわけでは全然ないのですが、「微笑ましい存在(大変失礼ですね)」として私の中に位置づけられました。
いやもう、小谷野さんてばイライラしすぎ!さぞや生き辛いだろうなーと思う。でもそんなところが好きだったりするのです。この人フェミコード踏みまくりだし、ホモフォビアの気もあるし、わざと敵を作るような偽悪的な部分もあるしで、偏見思いこみだらけの人なんだけどね。ダメな大人ですよ。だから私のように「また何か言ってるよ~」と話半分で気軽に読むのが良い気がします。

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そんな小谷野さんの「『こころ』は本当に名作か」を読みました。
私は書評本が好きで結構よく読むのですが、この新書は完全にタイトル勝ちかと。本当に小谷野さんの個人的な好き嫌いに基づいて「日本人必読の名作」を〈最高峰〉〈トップクラス〉〈二位級〉に分けて紹介しているのですが・・・最高峰の最初が『源氏物語』次にシェイクスピア、ホメロスと続きます。ホメロスですか・・・うん、名作なんだろうけど・・・この紹介文を読んで「読もう!」という気にはならないよ。だって説明短すぎるし、小谷野さんの「好き嫌い」が全面に出過ぎていて少なくとも「案内」にはなっていない。まさに「正直者」。読み物として面白いタイプの書評本です。古今東西の古典をこれでもか!と紹介しているのですが、私がきちんと読んだことある本なんて10冊もありませんでした。
「ドン・キホーテ」、本棚で眠ってるし・・・。小谷野さん、私は女性ですけど「ラ・マンチャの男」大好きですよ。確かに松本幸四郎の声は聞き取り難かった。

で、肝心の『こころ』です。
恥ずかしながら昨年の夏に始めて『こころ』を全編読み、そのホモっぷりに感動したのですが、確かに「本当に名作か?」と言われると「腐女子としては名作だと思います!」としか言えない自分がいたのですね。だから正直者の小谷野さんの意見を読んでみようと思い買ったのです。
今仮に『こころ』で読書感想文を書きましょうと言われたら私はとても困ると思う。だってあの話は「友情と恋愛の板挟みで苦悩する知識人の話」として知られているけれど、そんな観点から語れないぐらい「私×先生」「K×先生」の話だから(笑)
ま、小谷野さんはそんな同性愛的観点から語ってはいないのですけどね(当たり前)。しかし小谷野さんの「同性愛的」な小説への反応は過剰だ・・・。
この本で小谷野さんの主張はひとつで、小説を楽しむ為には読者個人の年齢、経験、趣味嗜好に左右されるから、人によって楽しいと感じるものは人それぞれで当然であるということ。それによると、小谷野さんが考える漱石とは「母に愛されなかった人の文学」であり、母の愛情を受けて育ったと感じる人間には共感するのが難しいのではないかということ。ちなみに小谷野さんは母に愛された側。
漱石が女性を書くのが下手だったというのは私にはよくわからないけど、この時代の小説って、男性の男性による男性のための小説だったのではないかと思うんだ。「女性が楽しむ」というのは長いこと男性作家にとっては関係ないことではなかったのかなと。だから、男性である小谷野さんが漱石、鴎外、太宰、谷崎、川端、三島を取り上げて「母の愛の在、不在」について語るのをとても面白く読みました。漱石の部分も楽しかったけど、三島を露出趣味の変態と言い切った『金閣寺』の部分も楽しかった。いいのか、こんな事書いて!?やっぱり好きだわー。

「私には疑わしい名作」と章題に付いているけど、正しくは「私個人的にはあまり好きではないので名作とは言いたくない名作」かと。そのぐらいの軽い感じで読める書評本です。



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「眠る兎」(木原音瀬)

数年前からこの時期になると湿疹が出るのですが、今年は結構酷いことになっており皮膚科の門を叩くことになりそうです。紫外線?花粉?ストレス?なぜかこの時期だけなので毎年忘れてしまって、顔の荒れ具合で「いやー」と思いだすという。今日は午後休診らしいので明日仕事の前に行ってきます。
大したことじゃない、大丈夫と思うものの鏡を見ると凹みます。こんな時は現実逃避~。
体調が悪くても化粧が出来なくても家事をしたくなくても、変わらずに本は読めるからいいですね(違う)。

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冗談のつもりで書いた一通の手紙。その手紙に返事がきた事をきっかけに、高校生の里見浩一は年上の男と付き合うことになってしまった。本当の年齢も職業も隠し、そして相手の嘘にも気づかない振りで―。嘘で固めた付き合いを続けるふたりは、それでも不思議と惹かれあっていく。しかし、たくさんの「嘘」がお互いにばれてしまい…!?

今月は「吸血鬼4」もあるので木原さん月間だわ。痛くない話だという評判に惹かれて『眠る兎』を読みました。一部残酷な描写があるけど、確かに王道的で甘く良い話でした。高校生が悪戯でゲイ雑誌の文通欄に載っている相手に手紙を出して―という、携帯もネットも今ほどは普及していない頃の様子が窺える話。残酷な描写ってのはこの部分で、昔も今も性嗜好が普通と違うことは蔑視や揶揄の対象であるし、中学時代にその手の噂をした記憶があるので苦々しく思いました。しかし若さの無知や無鉄砲や怖いもの知らずな真っ直ぐさというのは、何もかもに尻込みしていた男にとっては救いだったわけで。木原さんの描写で一点とても好きな描写があるんですよ。それはこの話に限らないんだけど、「恋人達が一日中ベッドで過ごした」という部分。本当にそうしたんだろうな、という熱が伝わってきて幸せな気持ちになります。

しかーし、私のツボに入ったのは書き下ろしの「春の嵐」でした!短い話だけど何度も読み返したよ。浩一の親友柿本が大人になってからの話。柿本は浩一が悪戯で出した手紙のことや、その相手と付き合いだしたことを正論で非難し続けていた子なんです。ゲイに対する偏見というよりは、浩一のやっていることは相手に対して失礼だという点から一貫して非難をしていた友人想いのいい子だったのです。友人が道ならぬ恋をしてどんどん変わっていくのを戸惑いながらも、柿本はずっと側で見守ってきたと思うのです。そんな柿本は内心「変だ、普通じゃない」と思っていた浩一達が、気がつけば自分のどんな恋愛よりも着実に歩を進めていることに気がついて愕然とするんですよ。「彼らに出来ていることがどうして自分には出来ないのだろう・・・」と。そんな柿本を好きだという会社の後輩が海外赴任から2年ぶりに帰ってきて・・・。いや、ホント短い話なんだけど私これすっごく好きです。この二人で是非とも1冊読みたいぐらい。柿本は高校生の頃あんだけ「相手に失礼だから」と浩一を窘めたくせに同じことするんですよ。自分のことを好きな後輩の望むとおりに抱かれてみるの。自分のことをやたらめったら好きな相手とのセックスとはどんなもんだろ?という好奇心に負けて。だけど結局後輩の気持ちには答えられないとフッたのが2年前の出来事。この柿本が冷めている人間独特の残酷さを持っているくせ、諦められない熱を求める心がくすぶっていて素敵なんだよ。こういうアンバランスな魅力を持つ男が押し倒されるというのはとても良いです。しかも拒まないし。柿本が後輩のこと好きかなんて全然わからないんですよ。親友が流されて「ゲイ」になったことを柿本はずっと根っこに引きずっていて、でも別に私は柿本が実はゲイで今までのは同族嫌悪だったという後輩の意見には賛成するわけではないの。そんな単純なセクシャリティの問題じゃないと思う。いや、実はもっと単純な気持ちの問題なのかもしれないけど。恋しているかわからない相手を拒まずに2回も寝てしまった自分。そうなっても結局自分の心がわからない。一体何をやっているのだろう・・・という柿本の自嘲がたまりません。完全に一方通行な気持ちでもない感じがするのがまた絶妙なんだ。溺れるように愛されたら、柿本は迷いながらも後輩の気持ちに応えて、すごく幸せになるんじゃないかなーとも思うのよね。
幸せな話の後にこういうのを読むと、十中八九微妙な後味の話の方が心に残ります。
本編とあわせて満足な読書でした!


それにしても顔が熱い。そして、赤い。
「眠る兎」は泣きはらした目で眠った男を浩一が愛情たっぷりに表現した言葉だけど、真っ赤な顔した私は間違いなく笑うか引かれるかだな。

ついに最終回

5月に書籍化される『俎上の鯉は二度跳ねる』が今夜携帯配信の最終回を迎えました。


以下、書籍になったらきちんと感想を書くと思うのでネタバレはしませんが、表現の端からどうしても見えてしまう部分があると思うので注意です。

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「COLDシリーズ」(木原音瀬)

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事故で記憶をなくした高久透は、友達だと名乗る年上の男・藤島に引き取られる。藤島は極端に無口なうえ、透の「過去」を何ひとつ教えてくれず、透はどこにも居場所がないような寂しさを募らせる。しかし藤島とともに暮らすうち、彼の中に不器用な優しさを見いだして―

目を覆いたくなるような暴力描写にい~や~となりつつも最終巻まで読み終えました。
最初に云うのもアレですけど、とても面白かったです。
確かに痛い。とっても痛いのだけど、あのラストならば私は二人に起きた総てを受け入れられると、単純に一読者として思いました。書き下ろしの甘い話がなくても、この二人の未来は大丈夫なのではないかとさえ思いましたよ(後書読んだら恐ろしいことが書いてあったけど)。うん、読んで良かった。

要約すると複雑なようでいてとてもシンプルな話だと思います。

記憶を失ったAがいた。Aを愛しているBがいた。
記憶を失う前AはBを憎んでいた。記憶を失ったAはBを深く愛するようになった。
そして6年後、突然Aの記憶は戻るが、引き換えに6年間の記憶をすべて失っていた。
AとBの関係はその時どうなってしまうのか。

私は木原さんの小説にあまり感情移入したことがないので、今回も割と突き放して読んでいました(これは間違いなく防衛本能の為せる技だと思う)。2巻の甘さもそこだけ読む分には大好きなんだけど、すべては3巻の為の布石に過ぎないとわかっているから「騙されない!」と思いつつ読んでしまいましたよ。本当の真っ白状態で読んでいたらどうだったかな、たぶん変わらないだろうな・・・。

これは何だろう、愛やら恋やらの話ではなかった気がする。
いや、たぶん愛情の一つの関係性の話ではあるんだけど・・・上手く言えない。ぐるぐるしてます。
記憶喪失物というのはある種監禁物と同じで、記憶を失った方が相対する人物に「依存」してしまいがちだと思うんですよ。頼れる人がこの世で一人という感覚はとても似ていると思うんです。そう思うと、透が藤島を好きになったのだって、実は「依存」の延長で、おまけに幼少期に藤島だけは優しくしてくれた、という例の「裏切り」以前の藤島を慕う気持ちと被ってしまったのでは?と思ったのですよ。
だからといってそれが愛情じゃないわけでもなく、人が人を求めるのに執着や依存が微塵もない関係なんて嘘だと思うし、大体人間の本質とは一体どこにあるのだろう?なんてことまで考え始めるともうわけがわからなくなります。
始まりがどうであっても、藤島は最後まで透を諦めなかった(気持ちを欲しがるという意味ではなくて、彼が人として幸いを生きることを)。その藤島の気持ち一つが、この話の不変の部分ですよね。
藤島の執着や献身的な愛情は病的で、彼の生い立ちと相まって、まともじゃない。でも人はまともじゃなくてもなんとか生きているものだし、藤島はたぶんずっと透を「救いたい」と願い続けていて、最終的にそれは叶ったんですよね。透の気持ちが依存でも、藤島は真に彼の傍を離れることはないのだろうから。本編だけだと歪みの部分がとても大きいラストです。でも私は断崖絶壁の際のような、不安定な足場に立っている彼らの姿も、この話のラストには相応しいと感じました。

なんだかすっごいぐだぐだな感想というか呟きになってしまったよ。
ひとつ云えるのは、私のように怖くて読むのを躊躇している方は「大丈夫だから、読んでみて!」ということです。だって、やっぱりとても面白かったもの。

「耳たぶの理由」(国枝彩香)

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普段暗く禍々しい話が多い国枝先生の「明るく可愛い話」ということで、なぜか身構えてしまいました。油断しないぞ、騙されないぞ、本当は裏があるんじゃないの?みたいな。
しかしそんなのは杞憂に終わった、本当に「正統派BL」でした。
なにこれ、すっごく可愛かったよ。
モテ男の攻めが失恋するたびに何故か身体で慰めることになっている受け。でも攻めは受けのことが大好きで、わざと失恋を繰り返していて―という終始完全にラブラブ甘々な可愛い話でした。
二人ともおバカすぎる!攻めが受けをやたらめったら好きな話。うん、確かに王道だ。

それにしても、あまりにも受けが女の子(絵が)なので余計なことを考えてしまいました。
2話めのトイレで無理矢理って、実は大変なマイツボなのですが(スミマセン)、改めてBLファンタジーだなと思います。あれを男女でやったら間違いなくアウトでしょう(仮にアウトじゃない少女漫画があったら、ありそうだけど、私は心底ゲーッとなると思う)。「男と男は対等だから」という前提の上に成立しているんですよね。「対等」だから傷付けていいわけではないし、「対等」だから何をしても許されるわけではないのだけど、そこにあるのは「好きだから」という只一つの純粋な動機で、そこで起きた出来事を乗り越えるのに「恋愛」以外のすべてを自然と排除してしまっているのがBLファンタジーだと思うのです。

余談ですが、先日ヤマシタトモコの「フィールヤング」連載漫画を読んで、「あっ、男女って恋愛するんだよね!」と一瞬、本当にほんの一瞬ですけど思ってしまった時は色々末期だと思いました。

同時収録されている短編「後ろ姿の夏の猫」の方が好きでした。
トジツキ先生の『初恋の病』とよく似た構造の話だと思うのですが、どちらもとても好みです。
息子と父親、どちらとくっつくかが大きな違いですかね。
田舎に戻った男が昔好きだった人の幻を見るようになって―という、幻想的で静かなお話。
二作とも共通しているのは、好きっだった男が死んでいると思い込んでいる点と、瓜二つの息子を「幻」と勘違いする点です。文学的な雰囲気を持ちながら漫画でしか表現し得ない話だから好きというのもあるし、人生を半分諦めたような主人公の疲れた姿が好きというのもある。これで本当に何らかの幽霊的なものが関係していたら、私は逆にがっかりしたと思うんですよ。そういったものを信じていないから。あと、そういったものを使うと何でもありになってしまって、そこまでのファンタジーは求めていないんですね。ちなみに私は当て馬が「死んだ人」という話も好きではないです。なんとなく、もったいない・・・と思う。よくわからないけど。
とにかくこの話は明暗の加減が丁度良くて好みでした。
このぐらい柔らかい国枝作品だと、いつも迷わず手を出すのにな。

「まるで、灼熱のキス」(鬼塚ツヤ子)

来月にかけて何かと出費がかさむ為購入量を控えている今日この頃。
しかし今日は久々のホモ友と池袋に繰り出し完全に挫折しました。
いつもは新刊書店中心にブラブラするのですが、ついフラッと同人屋さんに行ったのがいけなかった。草間さんの再録本やら、明治さんの成人本やらを見つけてしまいタガが外れました。反省です。

ホモ友なんてありがたくない名前で呼んでいるけど、知的で聡明で下品な彼女は私の心の師です。そんな彼女が最近携帯で小説を読みハマったと言いまして、それがこの『まるで、灼熱のキス。』でした。

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なにもかも平凡な木崎は、自分には「何かがたりない」と感じていた。そんな折り、取引先の相手で同階級のボクサー・柴賀にむりやり犯され、試合でも負けてしまう。「膝を折ったあの瞬間から、お前は俺のものなんだよ」と柴賀に宣告され、淫らな体の関係をつづける木崎だったが、その快楽に、激しさにしだいに溺れていき…。体は繋いでも、けっして唇だけは触れ合わせない、それが暗黙の契約。まるで、激しく燃え上がる二人の心を隠すかのように―。

私この話が大好きなんです!調子が出ない日は持ち歩いて電車の中で読むと元気が出ます(正しく腐っていると思います)。もしかしたらBL小説では一番好きかもしれない。だからといって自信を持ってオススメ出来るかというとそんなことない気もするのだけど・・・絶版本なので古本屋で見かけたら気に留めてみて下さい。ちなみにすっごいディスコミュニケーションな話な上にエロ満載です(笑)
改めて、この関係性にめちゃくちゃ萌える自分はMだと思います。

1巻始まって3ページで木崎は柴賀に押し倒されています。仮にもボクサーが男にヤられるなよ・・・なんてツッコミは野暮というもの。まあ、木崎は柴賀の視線に込められたセクシャルな意味に無意識でも気が付いていて、誘いに応じたというのが正しいのだけど。バンの中から始まり、本当に気がつけばこの二人は常にヤっています。それだけしかない関係なので当然といえば当然なんだけど、その「飢餓感」のようなものが凄まじくて、柴賀ほど飢えている攻めってなかなかお目にかかったことがない。そして、こんだけ喋らない攻めって見たことないぞ!?ってぐらい柴賀は言葉を発しない。私の記憶が確かなら、奴が1行以上喋ったのは続編の『いっそ、熱病のキス。』終盤に1度切り。普段口をついて出るのは「コロス」とか「テメェ」とかの不穏な言葉のみ。あと言葉攻め少々。そんな柴賀の無言の執着と暴力的なセックスに身も心もグズグズになっていくのが木崎なんだけど、本人がそれを完全に望んでいるんですよ。挿絵の門地さんが帯で言っているように「被虐的」すぎて大変悶えました。

主導権は圧倒的に柴賀にあるのに、実は柴賀の方が木崎に翻弄されている関係。
支配と被支配の逆転がたまらなくツボです。

この柴賀という男は虚無的で破壊衝動がある人殺し一歩手前のような人間なんだけど、思考を放棄していないんだよね。不幸な過去が原因で今の自分が在ること、闇を抱えていること、そして木崎だけをなぜか欲してしまう自分がいること、そんなことを語らずともきちんとわかっているような書き方をされているんですよ。だから、私は木崎よりも柴賀に救いをと思って読んでいたし、実際柴賀が木崎にキスをする場面は両方に感情移入してしまって倍々で嬉しかったです。

大団円的な結末は「熱病」まで待たないと感じられないかもしれないけど、私的には「灼熱」のラスト一文がとても好みです。想いが通じて抱き合った直後に、木崎は「いっそ今すぐ世界が終わればいいのに」と思うんです。これから始まる関係よりも、一瞬の幸福に酔って終末を願うドン詰り感がたまらないです。いやー、好きだ。

「少年魔法士」のこと

先日我が家の在庫整理を実施しました。
その時に,非常に個人的で「さじ加減ひとつじゃん!」というアホらしさがあるのですが、感慨深い出来事があったので吐き出します。まあ在庫整理といっても、古本屋に売るのは最終手段なので今回はメインの本棚(1軍)からベッド下箱(2軍)に移動させるだけだったのですが。

ああ、ついにこの本を本棚から外す日が来たんだ・・・

実家にいたときも、一人暮らしをしていたときも、今の家に越してからも、ずっとずっと私の本棚の一番良い場所にあった漫画。それを今回私は「えいやっ」と箱に入れてしまったのです。そう迷うこともなく。それが今更ながら軽くショックでして・・・。思春期に一番好きだった漫画で、人生で最も強い「好き」を捧げた漫画です。例えるなら思春期の初恋のような、片思いなのに死ぬほど好き、みたいな(笑)
えー、大変オタクくさく、また気持ちが悪いと思うのでたたみます。

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「スローリズム」(杉原理生)

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水森に毎週2回必ず電話をかけてくる矢萩は、高校のときからの付き合いで一番身近に感じられる友人。だが、高校生の頃、ゲイである事を告白した矢萩はすました顔をして「安心しろよ、おまえだけは絶対に好きにならないから」といい放った。あれから12年。その言葉どおり水森と矢萩はずっと友達でいるが…。単行本未収録作品&書き下ろしで待望の文庫化。

無性に「恋の話」が読みたい!と思い本棚の奥から引っ張り出してきました。
杉原先生は読むたびに、「今は楽しめないけどいつか楽しめる気がする・・・」と思う妙な位置づけの作家です。その「いつか」がついに来ました。待ったかいがあった(勝手に)、嬉しいです。
受け攻めをゲイノンケで分類した時は失念していましたが、何も気持ちを伝える側が語り手とは限らないのですよね。想いを受け取る側が主人公というのが、杉原本の特徴なのでしょうか?私は「鈍感」さや「愛されている自覚故の無意識な残酷さ」を持つ受けというのが苦手なので、これまで杉原本をあまり楽しめなかったのだと思う。でも今回はそこから一歩先に進んで考えることが、というか浸ることができました。
基本中の基本なんだけど、恋愛って二人でするものなんだよね。一方がズルくても、好きになってしまったら仕方がないんだよ。ああ、ダメですね。現実が恋愛と遠い(?)と基本的なことを忘れていきます(笑)
水森のコップから水が溢れるのを気長に気長に待った矢萩と、矢萩の気持ちに気が付きつつも知らないふりを続けた水森の12年愛。水森のことを周囲の人間は「ヒドイ」と言うけれど、本心を隠し続けた矢萩だって相当捻くれていると思います。私は矢萩が好きです。執着と惰性という矛盾するような感情が混ざり合っている人だと思います。前にも書いた気がするけど、私はとにかく「片思い」に弱くって、その期間が長ければ長い程萌えるんです。そして不憫な片思いであれば倍々で萌えます。だから決定打が水森によってもたらされた時は本当に嬉しかった。杉原先生の美しく抑制の利いた文章は前から好みでしたが、その中にある二人の「熱」が素晴らしくって。久しぶりに恋愛小説を読んで感動しました。続編の葛藤は多少テンプレに感じましたが、どんな経緯でもここに辿り着いた―という水森の殺し文句にちょっとウルッとしてしまった。どうしたのかしら、私。そんなに矢萩に感情移入したのか。
BLを読んでいるのだからいつも恋愛を求めているような気がしていたけれど、私の好きな話の傾向って「何かしらの問題を抱えた人間が他者と関わり何らかの前進を遂げる物語」というか、その関わりが「恋愛」になるのは必然なんだけど、でも決してそれだけではない話が好きというか・・・理屈っぽく考えても意味ないですね。
他の作品もリベンジしてみなければ!

以下はちょっと恥ずかしい話。

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「普通のひと」

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コンビニのおにぎりなら『赤飯』。それがマイルールの花島光也は、ある夜、最後のひとつの赤飯おにぎりを見知らぬ男から譲ってもらった。『お洒落』よりも『誠実』という表現が似合う、でも、どこにでもいるような男だ。数日後、編集経験があると偽って入った出版社で光也はその男、的場宗憲と再会するのだが!?普通に生きてきたはずが、恋した相手が同性だったら?臆病な大人たちに贈る、思わず恋がしたくなる物語!『普通の男』『普通の恋』に書き下ろし『普通のオジサン』も収録。

久しぶりに「ノンケ×ノンケの話を読んでいる」と思い、感想&本棚を見返してみたのだけど・・・ノンケ×ノンケの話って実は少ない?私の嗜好が偏っているの?一方がゲイorバイ(突発的な男性経験が過去にあり)設定の話が多い中で、ここまで完全なノンケ二人が恋に落ちる話というのは逆に珍しいのかもしれない。おかしいな、BLなのに。『魚住くん』と同じレーベルから出版していた榎田さんの絶版本ということで、とても楽しみにしていました。が、ここまで業界事情てんこもりの話だとは・・・。お陰で余計なことをいっぱい考えてしまいましたよ。

本当に出版業界の流通事情というのは遅れている&超適当もいいところでして、読みながら何度も深々と頷いてしまいました。昔は「取り寄せ」に二週間?いや、今も版元によっては余裕で1ケ月かかりますって。ヒドイところだと注文受けた商品を出庫し忘れていましたとかもある。客に乱丁落丁本を投げつけられたことだってあるし、入荷の遅い本について文句を言われたことは数えきれない。とにかく出版社&取次の不手際というのは書店にダイレクトに被害がくるわけよ。あと、私はあんまり営業に優しくない書店員ですが、それなりの理由があるの。毎回毎回同じ注文書の同じタイトルを「置いていただけませんか?」と営業しに来られても困るわけ。そんなに良い本なら他店の実績を表にして持ってくるぐらいしてよ。「3冊でいいので・・・」って、棚に差しても平積にしても困る冊数の提案をしてくるなー。その前に大前提としてレジの前に立たないでよ!接客中だってば。
ああっ、ただの営業へのグチになってしまう。
だから、的場のような人はとても良い営業さんなのです。周辺の競合店情報から、うちの店の客層分析、売れる本は他社でもおススメしてくれるというね。たまにいらっしゃるんですよ。そういう営業さんは信頼して棚作りの手伝いまでしてもらいますって内容に全然関係ないですね。

「普通」への宣戦布告。物語を飛び出た榎田さんの主張を勝手に感じましたけど、どうだろう。
ここまで二人が「普通の男」だと、榎田さんの力をもってしても「そんな簡単にはいかないかなぁ」というのが実は正直な感想なんです。当然あるはずの葛藤が省かれた話が多い中で、「大人になってから突然同性、しかもノンケの人を好きになったら」が主題なわけで、恋愛の名のもとに超えてしまう壁は人それぞれだと思うけど、トラウマに頼るわけでもない真っ当な二人の性格ではどうにも想像が難しかった。お互いノンケで女性も普通に好きというのがなんとも。こんなふうに言うとマイノリティーには「理由」があると思いたい自分に気が付いて心底嫌なんですけどね。所詮は狭い世界で生きていることを痛感します。
でもそれこそが、榎田さんの挑戦に感じました。
「普通ってなーに?BLで普通の人を書くと普通じゃなくなってしまう?」と。
榎田さんをそんな穿った眼で見てはいけないかしら?しかしどうにも試されている気がしてしまったのでした。あと、木下さんの挿絵のイメージで勝手に思い込んでいたのですが、決してセンシティブな話ではないですね。真面目だけどコミカル。山田ユギさんの挿絵でゲイバーのやり取りが浮かびました。予想外に純粋に楽しめなかったのですが、榎田さんだから面白いですし、愛やら恋やらはいっぱいです!

余談ですが同時に『恋愛犯』(凪良ゆう)、ストーカー攻め記憶喪失妄執愛ものという「そんな無茶な」という話を読んでいて、こっちの方には「有りだな」と思ってしまった自分に笑いました。

「願い叶えたまえ」

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どこか壊れたところがある若く美しい暴力団幹部・深見と出会いピアニストの絹川は劇的に恋に堕ちた。だが、深見が同性から向けられる恋情に激しい嫌悪感を持つことを知った絹川は、「ただ、愛するだけでいい」と決断したのだ。そんな時、深見への異常な執着を隠さない敵対暴力団幹部・有島の淫靡な罠が―!?ピアニストとヤクザ。突き上げる切なさ、激しく奏でるトゥルーラブロマンス!!

すごい、おもしろい、それしか言えなくなってしまうので西田東作品は困ります。
ここ数日間、寝ても覚めても『願い叶えたまえ』が頭から離れませんでした。いつも以上に頭の中が漫画一色になり・・・嫌がらせのように長くなってしまいました(笑)
3年も前に完結した作品なんですね。今更だけど、読めて本当に本当に良かった。

「ジャンルで区切って作品を選ぶ」ということがほぼない私が唯一「むむっ」となってしまうのが「ヤクザ物」だったりします。ある意味アラブに匹敵するファンタジーだと思うのですが、好きです。そして今回『願叶』を読み確信したのは、私は経済ヤクザよりも武闘派ヤクザが好きで、そして攻めよりも受けにまわるヤクザに堪らない萌えを感じるのだ―ということでした。ま、私のベストヤクザは『赫蜥蜴の閨』の臣でバリバリの攻めですが彼は別腹だ(従兄に対する女々しい想いは受け的といえないこともないし)。『聖なる黒夜』の練や『さよならを言う気はない』の天海、『刺青の男』『ほんと野獣』のヤクザがパッと思い浮かぶ受けているヤクザですかね。水原先生のヤクザや榎田先生の『交渉人シリーズ』にあまり萌えを感じなかったのは、彼らが攻めでかつインテリな為だったのかも。
前置きが長くなりましたが、受けの武闘派『願叶』深見は私の心を鷲掴みにしていきましたよ。

作品については詳しく語っても魅力を伝えられないので、投げます。
読んで後悔は絶対にしないです。私、西田作品を古本屋で買う機会が偶然にも多いのですが、それが信じられない。なぜ手放そうと思えるの~!?

ずっと考えていたのは『願叶』のことと「なぜ私はBLヤクザが好きなのか」ということでした。
『赫蜥蜴』のときにも考えたのですが、「どんなに鬼畜なことをしても物語が破綻しないから(ヤクザだからね)」という理由しか思い浮かばなかったのです。ただ、男がヤンキー漫画や任侠映画を愛する気持ちとは確実に違うと思っていました。憧れも尊敬もないし、カッコイイとも思わなければ同化も望んでいない。で、なぜか唐突に頭に浮かんできたのが『仮面の告白』の冒頭だったのです。主人公が厠仕事の褌青年に性衝動を覚える有名な場面。主人公は青年の褌一丁という姿態に興奮するとともに、彼の「職業」に対して興奮するんですよ。「貴賎」でいえば明らかに「賎側」、人の糞尿を始末するという職業への悲哀や、その選択をせざるを得なかった環境そのものに欲情している(たぶん)。「不謹慎だけど萌えてしまった(by三浦しをん)」んだと思うの。私がBLヤクザというか『願叶』の深見に抱く感情ってそれと似ているのかもしれない。ヤクザは選択の自由がきく仕事ではないと思うんだ。生まれ育った環境、闇に抗えない心・・・一応自由な私は彼を蔑みながら美しいと崇めているような気がします。深見は悲しくて美しい生き物だから。そして私が望むヤクザの姿とは、堅気ではない自分を恥じている、含羞がある姿なんですね。「学がない」という意味のことを深見も何度か口にしますが、受けのヤクザが口にするのってあまり聞いたことない気がします。その恥じらい(?)に悶えました。
しかしこの感情って深見を手込めにしたエロオヤジ有島と何ら変わらない精神構造な気がしますね。もっと言えば、推測だけどゲイの人がブランドとしての「ヤクザ」を愛でる際の構造とも似ているのではないかと思います。ほら、三島先生ですし。深見はゲイの方々が見ても十分鑑賞に堪えうるヤクザではないでしょうか。また西田先生の粗い絵柄が色っぽいんだ。有島に手込めにされる場面も、祐介にヤられる場面も、なんだか読んでいて恥ずかしくなるぐらい悶えてしまいました。
有島といえば、私の心に刻まれる名台詞を吐いてくれました。裸に剥いた深見をベッドにうつ伏せに拘束して「絶景だな 正しく絶景だ」オヤジ~!刺青の龍が妙に可愛いのも気になりません(笑)そりゃあ絶景だろうよ、深見の尻と昇り龍だもの。この有島が大変魅力的に描かれていて、西田先生は有島を描くときが一番楽しかったのではないでしょうか。好きです。
理解者が救済者なわけではない。有島も工藤(深見の部下)もきっと深海の傍に沿ったら彼を殺してしまう。迷子の幼子のような姿が愛しくて哀れで。祐介だけが、深海を生かそうとしていたんだね。
彼が有島に叫ぶ言葉には不覚にも涙が出ました。最初の「願い」はこの叫びそのものだったわけだ。

と、三島由紀夫なんて思いだして私ったら国文出~みたいな自己満足に浸っていたのですが、風呂で唐突に一番納得いくことを思い付いてしまいました。
「BLヤクザって、最強のツンデレだ」
人生かけてツンしている人々が、一人の男と対峙するときにデレるわけでしょう。「ツンデレ」という言葉を使うのは恥ずかしいので遺憾ですが、私の萌をピンポイントで表現するのに「ツンデレ」程的を射ている言葉はないのでした。あー、ツンデレか・・・微妙にがっかりです(笑)

すみません、作品について少しだけ語ります!消化しないと次に進めそうもないので。
ネタバレしますので未読の方は読まない方がよいかと思います。

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Author:yori
気がつけばいつもそばにBL.猫かぶってみても、結局たどりつくのはそこなのです。感想は基本的にすべてネタバレ注意です。拍手&コメントありがとうございます。拍手コメントは該当記事のコメ欄にてお返事いたします。リンクフリーですがご一報頂けると嬉しいです。

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