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「星間商事株式会社社史編纂室」三浦しをん

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川田幸代。29歳。会社員。腐女子。社の秘められた過去に挑む―。本間課長は言った。「社史編纂室でも、同人誌を作ろう!」その真意はいかに?風雲急を告げる社史編纂室。恋の行方と友情の行方は、五里霧中。さらには、コミケで人気の幸代の小説も、混乱に混乱を!?これでいいのか?わたしの人生。

しをんさんの新作。
前作「神去なあなあ日常」は書評の評判も良く、読みたかったのだけど財布事情と相談して購入を見送りました。ハードカバーはやっぱり厳しいのよ・・・本を買うのだけはお金を気にしたくないのだけど、そんな夢のような夢は見てはいけません。

意外にも等身大の女性が主人公の長編って初めてなんですよね。しかも主人公が腐女子ってことで、これは読むしかないと思ったので即購入しました(笑)
うーん、やっぱり面白い。コミカルで荒唐無稽な展開をぎりぎりのバランスで支えているのは一体何だろう。勢いかな。それは支えているとは言わないか。とにかくしをんさんの小説は読む手を止めるのが難しい。しかし、正直この話のあらすじでは手に取る人が限られそうだなーとも思った。だって、会社の裏社史を冬コミで販売する話ですよ!?しをんさん以外誰が書くというのか!そして一般読者は受け入れるのか?ま、それは置いておいて、コミケ参加者の裏事情が知れたりと、オタク心をかなり満たしてくれる1冊でした。
しかも、作中作として幸代が書いている同人小説が入っているというサービス(?)っぷり。普段読んでいるBLを3倍ぐらい甘くした、ロマンスたっぷりの「オヤジ受け」小説です。さすがに濡場はないんですけどね(笑)
普通の女の人(腐女子だけど)が主役の話もいいなと思いましたね。妙齢の女性が人生についてグルグル考えるような話は他の作家に任せておこうよ!とも思いますが、ちゃんとエンターテイメントしているし、込められているメッセージは「書くこと」に真摯に取り組んでいるオタクにとって強い励みになると思いました。しをんさんがエッセイなどで叫んでいる、小説や漫画による救済という希望を盛り込んだ良い話だと思います。


今、本屋大賞を受賞した「一瞬の風になれ」を読んでいるのですが、1巻時点では正直「う~ん」といった感じ。明治さんが大好き!ということでブログにアップしているのも手に取った理由の一つなのよね・・・。「好きな作家の好きな本は好きとは限らない」は昔から実感としてあることなので気にしませんが、男子高校生の1人称がこんなにも苦手とは・・・色々遠いなーと軽く途方に暮れてしまいました。3巻まで読んだら180度変わるかもしれないんですけどね!「バッテリー」のような萌は今のところないかなー。いや、「バッテリー」にも個人的にはまったく萌えなかったんですけど、スポコン小説ということでなんとなくアリなのかなと思っていたので。

一般書つながりで呟きますが、講談社文庫から「コインロッカー・ベイビーズ」が新装版で発売されました。既刊本の字の小ささには心の底から困っていたので嬉しいなと。

あとは凪良さんの新刊をゲットしたので早く読みたくてウズウズしています。もちろんこれが一番楽しみですとも!
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「いとし、いとしという心」かわい有美子

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京都の格式ある名旅館「井筒屋」の若き当主が亡くなった。彼を密かに恋い慕っていた侑央は悲しみにくれる。一方、葬儀で帰省してきた当主の弟・千秋は、次男として当然経営を継ぐと思われていたが、旅館を売却すると言い周囲を驚かせる。かつて一途に兄を想う侑央の想いと秘めた欲望につけこみ、関係を持っていた千秋だが、今度こそその心ごと自分のものにするため、侑央にある提案を―。乱れる心と身体は誰のために…書き下ろしあり。

大変面白く読みましたが、妙に息が詰まります。
喪服(葬儀)から始まる話という部分が個人的なツボであり、また幼馴染の執着愛(片思い)物という、これまたツボを押さえられた話なのですが、読んでいて本当に息苦しかった。
しかしその息苦しさが段々癖になってくるから不思議。

ここに描かれている京の町がどのぐらいの信憑性を持っているのか、残念ながら知る術を持たない俗人ですが、「立てるべき筋を立て、通すべき顔を通しておかないと」という書き下ろしの一文に、これまた息が詰まって仕方がなかった。土地に進んで縛られて生きる人たちの強かさが、伝統と格式を誇りを持って守ろうとする頑強さが、なんとも湿気を帯びた空気で文面から立ち昇ってくるような。昔「ぶぶ漬けでもどーどすか」「一見さんお断り」という言葉の意味を知った時に感じた寒気に近い感覚がよみがえりました。

しかし読むほどに、京の町が纏う空気が艶を帯びて二人の関係にねっとり絡みつくような感じがしてきて、なんとも上手な作品だなと感心しきりでした。かわい作品は2作目。「進行性恋愛依存症」の二人にまったく感情移入出来なかった上に萌なかったのですが、とにかく硬質で美しい文章を書く方だと思っていたのです。個人的に文章の美しさを重視する傾向があるので、「マジ」「ヤバイ」や「・・・」「―」などが多様されている作品はそれだけでちょっと萎えます。美しい文章とともに京言葉も調度品や着物の描写も、何一つとして嘘がなさそうなのが凄いですね。が、「本物」を知らないくせに変な話ですが、たとえこの京都がファンタジーでもまったく構いません。いい大人が「ちゃん付け」で呼び合うのも、絡みつくような京都弁でおりなされると、現実味が薄れて傍観しているこちらが興奮してしまう様な耽美さを生み出します。「あかん―」とか、それ全然嫌がってないから!!かくも方言とは恐ろしい(素晴らしい)ものですね。男性の方言萌えがわかりますよ。一応標準語圏内(細かく言えばどの地域にも方言はあるのですが)育ちの私には羨ましい限りです。

自分を蔑ろにし続けた場所に戻って何が残るの。しかも手に入るか入らないかも確かではないユキの心ひとつを拠り所に!といつの間にか千秋のことばっかり考えていました。
でも、よくよく考えてみると(みなくても)、すべて千秋自身が選択したこと、望んだことなんだよね。かなり屈折しているのに卑屈ではない千秋が無性にカッコよく思えてきました。「強かな狐さん」ですか。京の町には多く生息していそうですね。対するユキも泣いてばかりの可愛い子ちゃんなのかと思いきや、いつまでも亡き想い人への気持ちを核に持ち続けてはいますが、決して弱い人ではない。流されているようでも、肝心の部分は受け渡さない(渡せない)芯の強さを持っている。
上手く言えないのですが、私この二人の関係がかなり好きです。どちらも半分報われないのに、微妙な綱渡りを二人でしている共犯めいたところがあって、とにかく個々の芯が「強い」。
そういった事を考えたときに気が付いたのですが、旅館を残す残さないはともかく、千秋は決してユキが「逃げない」確信があったから、人生を変えるような勝負にも出たんですね。ユキは本当の意味で「逃げない」。京都の町で家族経営の商の主人をしているという現実から、絶対に彼は逃げないでしょう。それが彼の矜持だから。たとえいつか互いに妻をもらい、子を授かる日が来たとしても、ユキが姉小路の店主である限りは千秋の隣に居続けることになる。千秋はそんな未来すら予見しているのかもしれないと思いました(後継ぎ問題とは無縁ではいられないでしょうし、30手前の男が)

ユキの心は結局亡き想い人に向かったまま、千秋の気持ちにすら半分気がついていないという幕切れでしたが、これはこれで不思議な余韻があって好きです。想いが通じて甘々になるよりも、この作品には相応しいように感じました。読み終わったあとに「ほぅ」と一息ついてしまうような、そんな作品です。
と、思ったら続編があるらしい。うーん、どうなるのかしら。千秋が報われて欲しいような、すれ違ったままでいて欲しいような・・・。ああ、でもユキの乱れっぷりがツボなので、更なる「素質」を期待してしまいます(笑)

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Author:yori
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