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一般書感想(いろいろ)

今月頭、読書メーターを付けだしました。
そしたら3日坊主(厳密には1日)で終わりました・・・。
言い訳ですが、コメント機能があるので一言書くわけですが、ブログに感想を上げないような本てのはイコール微妙な本ということで、気付けばやたら辛口になるのですよ。別にそれはそれで面白いのだけど、公開するのはちょっとなと。あとは管理が必要な程今月は読めなかったし買わなかったというのもある。家に読んでいない本があるのが気持ち悪いので基本的に積読はしないのです。


桜庭一樹「少年になり、本を買うのだ」(東京創元社)
桜庭さんの小説は残念ながら(本当に心の底から残念に思う)好きではないのだけど、読書記録エッセイの本書はとても面白かった。書評本とは違って、ひたすら自分が買った本、読んだ本、人と語り合った本、本、本!のことと些細な日常の機微を綴っている。なんというか・・・私は自分のことを「本が好きな人間」だとは思うけど「読書家」を名乗るにはとんでもなく不足だと思っていて、それはこういう人が世の中には数多存在していらっしゃる(尊敬語ですよ、もう)からなのよね。とにかく読む読む読む。息をするように戸惑うことなく読む。その情熱は自分の身にももちろん覚えがあることだけど、桜庭さんはたぶん365日24時間その情熱がフル回転している感じがする。いやいや、素晴らしいです。
読書は海外の古典ミステリが中心のようで、さすが東京創元の編集者!といった方々と話す本のタイトルは見事に私の興味関心からは遠いのだけど、たまに出てくる日本の小説はどれも読んでみたくなるものばかりでした。昔読んで「?」と思った本も何冊かあり、早速読み返してみようと思った次第。
そして、私がどうして桜庭さんの小説を好きになれないのかが、今回なんとなくわかった。
私の少女時代は、ゼンノー感よりもゼツボー感が身近だった少女時代だからなんだわ、きっと。
桜庭さんは「中学時代にあった全能感」というフレーズを何度か使っているのだけど、それが本当なら(本当でしょうよ)、それはまた随分隔たりを感じる精神なわけで・・・。桜庭小説はほとんど少女が主人公なのだけど、その少女達にどうしても居心地の悪さを感じて仕方がなかったのは、土台が作家と違うからなんだわとすごく納得しました。あと、ひとつ不満を言うのなら創元文庫は値段が高い!

佐々木譲「笑う警官」(角川春樹事務所)
秋に映画化される小説。警察小説を読んでいて根本的に疑問なのは「どこまで本当なの?」ということ。だってこの小説の北海道警察本部は普通に悪の組織だよ?内部告発しようとしている警官に殺人の濡れ衣を着せて射殺しようとしますからね。色んな場面で突っ込みどころ満載で、ある意味面白かった。大体主人公の「佐伯」がちっとも有能な刑事には思えないし、事件の真相は最初から見えているし、でも一気に読んでしまう力はあるんだよなぁ。次は今野敏を読んでみよう。
映画では大森ナオが主演なのか。テレビでやったら見てみたいかも。

だいぶ前から感想を書きたくて仕方がない一般書と評論があるんだけど、今の私にはちゃんと書くのは無理なのでザッとメモとして書きます。桐野夏生「残虐記」と斎藤環「関係の化学としての文学」の二つを合わせて感想を上げたかった。斎藤環は「母は娘の人生を支配する」の著者で、私の知る限りでは唯一「腐女子」について大変的確に限りなくこちら側に立って論じている男性です。「残虐記」は桐野夏生が新潟の女児監禁事件に触発されて書いた小説です。主人公の小説家は幼いころに1年間若い男に監禁されていたことがあり、その事件のことを私小説風に記した後失踪をします。私が二つを合わせて考えたいと思ったのは、文庫版の解説が斎藤さんで、そこに書かれていることが目から鱗というか、すごく考えさせられることだったからなのです。監禁された少女は過酷な生活を生き延びる為にいつしか妄想の世界に羽を広げるのですが、その妄想というのが「やおい」的な妄想なんですね。自分を監禁した男は隣の部屋に住んでいる男と性的関係にあり、少女を監禁することによって間接的に二人は性交をしているのだという妄想で、主人公はその妄想を元に10代で小説家デビューをするのです。虐げられた少女が生きる為に行った妄想が「やおい」的であったことについて斎藤さんは現代を生きる「腐女子」の内面と照らし合わせて大変興味深い考えを述べています。それがすごく面白かったから、きちんと整理したかったのよね。でも「関係の―」はもうすぐ図書館の返却期限な上になかなか面倒くさい本なので、たぶん無理。諦めます。ああ、ヘタレだなぁ。でもいつかリベンジするかもということでメモでした。桐野さんの小説はもちろん文句なしに面白いです。

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「春の雨に濡れてゆけ」日の出ハイム

harunoame.jpg
丸の内の商社で働く大越(攻め)と早乙女(受け)は中学の同級生。社会人になってから再会したのだが、早乙女は大越に昔寄せていた淡い想いを忘れることができない。そんなある日大越が実家の寺を継ぐために会社を辞めるという話を耳にする―。


武骨で余裕たっぷりで大らかな俺様攻めといえば良いのでしょうか?とにかくハイムさんのこのタイプの攻めが超ツボなのです。恥ずかしながら、そのまんま自分の好みのタイプに当てはまる(笑)「是」の近衛といい、私の好みは結構単純だ・・・。

主人公の2人とまさに同年代なのですが、私の周りにはスーツをオーダーメイドするような男はいないなぁと関係ない所で微妙に切なくなりましたよ。所詮底辺系さ・・・。パッと入ったホテルが「帝国ホテル」というのもアレだね、お金持ちのボンボンっぽいよね。上品な20代ということで、二人ともエリートコースを大きな挫折もなく登ってきたのだろうな~という大らかな雰囲気がありました。正直、私はもっとこう泥臭い感じの同年代の方が嫌味がなくて好きなのですが、それは置いておいて。だってハイムさんにかかると二人ともやたら可愛いんだもん。本当に可愛いんだもん。初めてする時の二人の表情とか、身体が重なっていくときの喜びとか、テンパってわけわからなくなるところとか、萌え死ぬかと思いました(笑)ハイムさんの受けは身体のラインがエロいよね。しっかり付いた筋肉や腹筋が扇情的でこれまた好きです。

そして不思議な味わいを与えているのが、軽い「オカルト」とも取れる攻めの体質。攻めは人の強い思念を「なんとなく」感じることが出来るのです。中学生の頃から何度も受けに「呼ばれている」気がしていた攻め。「好き」の気持ちを直接伝えあったことはないけれど、その頃からお互いにしっかり気持ちを持っていたという関係の二人でした。受けが改めて「好き」と告白したら攻めは「何度も聞いたよ」とシレッと言うのですが、それって思念が十分伝わっていたということなわけで。私この設定がすごく好きです。ちょっと普通じゃない感じをプラスして良い雰囲気になっている。ハイムさんの漫画って、作りは確信犯だけど効果は天然のような印象を受けるのですが(意味不明ですね)、なんていうのかな、頭じゃなくて感覚で描いてるというか・・・でもそれだって頭がなければ無理か・・・。うん、とにかく好きでした。そうそう中学生の頃の恋が叶うという展開も私のツボだ!ツボだらけじゃないか!

長々と感想を書くような話ではないのですが、とても好きな作品です!
「ビューティフル・マイ・スカイ」「微炭酸恋愛」が好きな人はハマると思いますよー。オススメ!


「主治医の采配」水無月さらら

syujii.jpg
新婚旅行中に、突然砂漠の王に拉致され性奴隷にされた3年間。生還はしたけれど、将来を嘱望されていた有能な弁護士・夏目礼一郎は、下半身の自由を奪われ生きる気力さえ失っていた。その主治医についたのは、高校時代の同級生・上條晴隆だ。心は性欲を認めないのに、診察されるだけで反応する体と折り合いがつかない礼一郎。そんな自ら治療を拒む患者を、内心持て余す晴隆だったが…。

他ブログ様で拝見して、「なんて新しい!」と衝撃が走った作品です。
私は俗にいう「アラブ」が苦手です。理由は単純明快で、異国の地で見知らぬ異国人に囚われたら怖すぎるじゃないですか!言葉も宗教も倫理観も掛離れた中東諸国の初見の金持ちと、絶対に恋になんて落ちないと思うんだよな。まあ、きっと私が外国人が苦手というのも一因なのだろうけど。
これはそんな「アラブ」の「その後」の話ですよ。こんな設定のBLをよく書いたと思います。水無月さんはとても多作な方なんですね。他の著作をザッと見たけど・・・たぶんもう読まないかなぁ。
要するに、性的虐待を受けた人間がどうやって生きる希望を取り戻すかという話。
それはとんでもなく難しい問題で、BLで真摯に扱ったとしても不足な部分が目についてしまうのは仕方がないのだと思う。そして、私がどんだけ考えてもそこに示されている希望が果たして「正しい」のかがわからない以上下手に正論は述べられない。そもそも被害者の数だけ救済の手段が違っているのなら、一概に「これは正しい」なんて答えはないわけで。

まあ、こんな場所で真面目に取り上げるような話じゃないのも薄々気が付いているのですが(笑)

私は性犯罪や暴力を受けた人間がいかに回復するかというテーマがやたら気になるのですよ。それがノンフィクションではなくてフィクションならば、絶望の先にある希望が見たい。現実はままならなくても、だからこそ「大丈夫だよ」と言ってくれる嘘臭くない希望を求めてしまいます。
話は飛びますが、性的虐待を受けた人間が生きる希望を取り戻す話として萩尾望都の「残酷な神が支配する」以上の話に出会ったことがないけど、あれは本当に本当に素晴らしい名作だと思う。未だに語る言葉を持たないけど、あそこまで人間の内面を「描ききった」フィクションというのは、もう生まれないのではとまで思う。「残酷な」と比べてはいけないのだけど、でも「主治医の采配」で示されている希望も実は「残酷な」の希望と似ているものでした。
それは、ありのままの自分を「受け入れる」ということ。隣に一緒に戦ってくれる人がいれば幸せだけど、自分の傷を癒すのは自分にしか出来ないことで、愛する人は「理解者」として側に寄り添い見守ることしか出来なくてもいいのだということ。身体を繋いだからといって、同じ場所まで降りて来た(同性愛的な観点でね)わけではなくて、虐待によって「作り変えられた(生まれ変わった)」相手を「受け入れる」ことによって、被害を受けた人間が自らを「受け入れる」手助けをしているに過ぎないのだということ。他人が他人に与える希望なんて、とても些細な事だと思うのです。冷めた意見かも知れないけど、私は結局は「自分で立ち直った」とその本人が感じられなければダメだと思うから。
「主治医の采配」の二人はその濃いようで薄い関係が絶妙だったと思います。私見ですが熱烈な恋になんて二人とも落ちていないですからね。最後の甘いエピソードはオマケのようなものだと思います。第一、この二人には「永遠」が見える程のロマンスを感じない。数年後には礼一郎は他の男といるんじゃないの~?なんてBLにあるまじきことを考えてしまいました。

で、オブラートに包んだエロですがスミマセン大変萌えました(笑)
足が動かないだけで他の部分は正常に動くのに、どうして礼一郎は自慰ではなくて人に抜いてもらおうとするのだろう?という疑問を抱くシーンを始め、砂漠で彼を救出した医師から贈られてきたプレゼントがバイブだった事の突拍子もなさに唖然とし、医師の手紙の内容に無理矢理納得をさせられ(ベイビー身体が疼いて辛い夜はそれをお使い。そんな自分を受け入れた時に明るい明日がやってくるよ、的な手紙でした)、この展開はいくらなんでも「トンデモ」じゃないの?でも私には「正しい答え」なんてわからないよー!と大変面白く読みました。もちろんそのバイブを用いて晴隆は礼一郎を抜いてあげます。いいのか!?あと、周りの地味な脇キャラ達(医師と看護士)が本当に地味ながらも渋い活躍をしていてやけに好きでした。
色々ギリギリな感じも否めない上に人によっては地雷かもしれません。でも私は結構好きです!

心に残る「青年漫画」

以前に青年漫画の私的ベスト作品は何だろう?と考えたことがあったのですが(ヒマ人)、1作品だけなんてとても決められない!そして「好き」な作品と「心に残る」作品はどこか別物だと思うんだ。たとえば少年漫画でいうと私は「幽白」や「るろうに剣心」を読んで育ったので文句なしに大好きだけど、今現在家にないし読み返したいとはあまり思わない。その反面そこまで熱烈な好きではなかった「レベルE」(富樫義博)はずっと持ち続けている(「レベルE」はちょと有り得ないぐらい面白いと思うけど)。少女漫画で一番強い好きを持ったのはたぶん「こどものおもちゃ」(小花美穂)だけど、それだって手元にはないし、本がボロボロになるぐらい読んだ「ちびまる子ちゃん」(さくらももこ)も同様だ。

もしかしたら、「面白い」は不変だけど「好き」は時間が経つにつれてある程度劣化するから、「冷めた」漫画というのは手元に置いておきたくないのかも。「面白いから好き」ではないのか?という脳内突っ込みは疲れるので無視しますよ。もちろん「面白くなくなった」漫画というのも山ほどありますけどね。私は長期連載物の見切りが異様に早いので、惰性で買い続けたりはあまりしないです。
旦那「あの新刊買った?」
私「もう買わないよ」
旦那「えっ、また!?」
私「気になるなら自分で買えば~」
旦那「そんなこと言って家にあれば読むくせに!」
上記は我が家の超日常会話です(笑)
私が1冊で終わるBLやレディコミが好きなのは「面白くなくなる」という残酷な現実に立ち会わなくて済むからかもしれませんね。何を大袈裟なって感じですけど、本当に。連載でも短編形式のものばかり好きですし、そういや「レベルE」は短編だ。

長い前置きになりましたが、栄えある「心に残る」青年漫画の第1位を発表したいと思います!!
いや、自分でも本当にコレなの?それは人としてどうなのよ・・・と迷いに迷ったのですが、やっぱりコレだと思うんだ。


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「初恋姫」凪良ゆう

各所で破格の大プッシュをされている小林典雅さんの新刊。
とても楽しみにしていたのですが、地元の本屋にない。自分の店にもない。でも大きな本屋まで遠征する気力はない!というわけで、来週のホモ友デートIN池袋まで我慢することにします。
人が珍しくコメディを楽しみにしていたというのに、すっかり出端を挫かれました。
それでも「コメディが読みたい!」熱が消えることがなかったので、いつか読むぞと決めていた凪良ゆうの「初恋姫」を購入。シリアス作品は全て読んでいたのですが、「嫁」とか「姫」とかの文字が躍るコメディは未読だったんですよね。

hatukoihime.jpg
華族の流れを汲む企業グループ、佐治家の末っ子、花時雨は、蝶よ花よと育てられたまさに深窓の“お姫さま”。祖父の命を受け、ご先祖さまの主筋となる下町の定食屋の危機を救うために、住み込みで手伝いに入る。とはいえしょせんはお姫さま育ち。慣れない仕事に失敗ばかりしてしまう。さらに若主人の上月一心を好きになってしまい…。お姫さまの初恋。だが一心には秘めた想い人(しかも♂)が。

どんな突拍子もないお姫さんかと期待したのですが、花時雨は以外にまともだったような。庶民と貴族の価値観の違いやズレが面白おかしく描写されていますが、そもそも帝王学を基本とした経営者側の勉強をかなりきちんと仕込まれている花時雨の言うことは、時に正論で正論ゆえに痛いところを突いてくる。荒唐無稽や突拍子のなさは感じられないのですよね。なので私はあまりコメディと捉えて読まなかったかも。花時雨と警護の「真田」の遣り取り、早朝一番の一心の「雄叫び」等、所々クスクス笑わせてもらいましたが、以前読んだ高尾さんの「二十六年目の恋人」のような腹がよじれる様な笑いではなかった。しかしそれとは別に、やっぱり凪良さんの小説は上手というか独特だなーとずっと感じながら読んでいました。たぶん、凪良さんてとても強固な倫理観や労働意識や、「家族」に対して非常に現実主義的な側面をお持ちの人ではないかと思うんですよ。一番好きな「恋愛犯」を読んだときに、読後に残った感想の中に「家族関係の希薄さ」というのがあったんですよ。攻めも受けも、家族という問題を抱えながら完全に解決することのない現実を生きるというラストの余韻がかなり好きだったので。「未完成」では親の離婚に結局は従うしかない攻めの現実を描いていますし、「夜明け」ではDV男の攻めの育った環境はともかく、受けだってもう少し家族との繋がりを持っていても良かったのではと思いました。なんというか、「甘くない」小説を書く人なんですよね。甘さの中にも何かしら「棘」のようなものを残すといいますか。「初恋姫」では最終的に花時雨は一心と駆け落ちをすることになりますが(と言っても花時雨の家の面々が二人を野放しにするわけはなく、GPS機能並の監視が付くのは確実ですが)、一心に「男が男のもとへ嫁ぐことに家族が反対をしショックをうけるだろうこと、期待を裏切る背徳行為にあたること」をとても真摯に語る。警護の真田には「家族は誰も祝ってくれないと思うがお前だけは―」と別れを告げる。話の表面的な部分からすれば、家族が諸手を挙げて賛成という「星野りりぃの花嫁くん」的な世界観でもおかしくはないし、コメディを名乗るならむしろそちらに徹底したほうがアリなのではとも思うんです。でも、きっと凪良さんはしないんだよね。そこがこの人の独特な色だと今回強く思いました。

内容的には、花時雨は可愛いし、一心の亭主関白風な外面と内面の弱さがいい感じの萌えでした。街子先生の挿絵は本当に素晴らしいなー。そして特筆すべきは、あらすじにある一心の「想い人」が単なる「当て馬」ではなくて本当の「想い人」だったところだと思います。「好きな人が好きな人のことを嬉しそうに語る」という思春期にやられたら、それだけで日記帳1冊は消費できるような(私の場合です)切なさの連続!また想い人の「ラブ君」がダメンズのいい子なのよ。外見がウーパールーパーというのは一心の「ブス専」を笑いに転化させようとしたからかしら?でも私的にはそんな笑いはいらないというか、ウーパーでもなんでも「ラブ君」は可愛いよ!挿絵にした街子先生には感服です!

とにかく面白い作品でした。この勢いで「嫁」にも手を出してコンプというのもアリだわ。



一般書感想「ノスタルギガンテス」

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93年刊行の児童書です。
他ブログ様で懐かしい題を拝見して猛烈に読みたくなったので図書館に駆け込みました。
これは当時の「夏の課題図書」だったんですよ。こんなブログ書いている私なので、読書感想文の宿題だけは嬉々としてやっていたような、そうでもなかったような微妙なところですが、「ノスタルギガンテス」の題のインパクトは強烈でした。
正直に言いますと、題のインパクトから手に取ったものの内容の「?」さに当時の私は最後まで読まずに返却してしまったんですよね。ここに描かれていることはよくわからないけど怖い。とりあえず感想文は書けそうにない―と、当時の私が思ったかどうかは知りませんが、子供には少々荷が重い話であることは間違いありませんでした。これは「児童書」の皮を被ったなんとも言えない薄ら暗い退廃的な話です。希望のようなものがここまで徹底的に排除されている話を久しぶりに読みました。逆にこの話で読書感想文を提出した子供の感想を読んでみたい気分ですよ。何を書けというのだろう・・・。

舞台は新興住宅地。林立するマンションの目前に広がる公園には広大な「森」があった。主人公の「櫂」はその森にある「木」に、夏休みの工作で作った「メカザウルス」を隠す。その時から異変が始まった。「メカザウルス」の鎮座を皮切りに、「木」には櫂が「キップル」と名付けた街中の「ゴミ」が集まるようになる。日ごとに増殖していく「キップル」に為す術もない大人たちは「森」そのものを失くしてしまおうと考えるのだが、二人の男の出現によって事態は思いがけぬ方向へ進むことになる。男達は「木」の写真を撮り、「木」に魅せられた櫂を不可思議な木の「創造主イザナギ」として吊るし上げる。そして男の一人によって「木」が「名前」を付けられて世間の目に晒されたことによって「木」は人の手によって保存されながら増殖を止めることなく巨大化を続ける。

えーと、これがあらすじではなくて全体です。
環境問題の話に取れなくもない気がしますよね。でも全然違うと思います。そんな表面的なものでは終わらない残酷さが終始あります。本当に、一縷の希望も見えない。そして視覚的なイメージがひたすら美しい。最終的に「木」が保存される形態は「樹脂」によるのですが、そのイメージの素晴らしさといったらないです。
櫂はその「木」が「特別なもの」であることに気が付いているのですが、彼の理解者は誰一人としていない。友達は彼を気味悪がり、両親は彼を見ていない。主人公の櫂はとにかく徹底的に孤独です。彼の心の拠り所であったのが自身が作った「メカザウルス」であり、それを隠している「木」そのものなのです。その描写が児童書的な「感受性豊かな少年の夢想」レベルで済む優しさじゃまったくない。これは読まないと伝わらないと思いますが、彼が「木」に執着していく様は寂獏としていて狂気的です。読んでいて何より恐ろしいのは、これは何かの「寓話」などではなくて、ただそれだけの話なのだとじわじわと感じさせる所だと思います。少なくとも私には、「木の周りにゴミが集まりそれが増殖していく話」で十分に感じられました。男が「木」に名前を付けるくだりなどは思索的でいくらでも深読みが出来ると思うのですが、「名前」によって「モノ」の存在に限らず「人」の存在までも「限定」されて「閉じ込められる」といったところでしょうか。先日読んだ「ダブルミンツ」も名前に関わる面白い話でしたが、「個」の存在を限定するのは「言葉=名前」であるというメッセージを強く感じました。しかし、それを感じたところで「読書感想文」にどう書けというのか・・・。
そして、私が著者のたくらみに「ヤラレター」と思ったのは「木」の名前がそのまま「ノスタルギガンテス」ということでした。強烈な題によってこの本が記憶に留まった所以は紛れもなく「名前」によるのですから。ま、そんなことを著者が意図したのかはわからないですが。

ここまで書いても自分がこの本に対して何を言いたいのかさっぱりわからないのですが、たぶん私は「ノスタルギガンテス」の名前を忘れることはないと思います。内容や感想をすっかり忘れたとしてもこの名前は忘れない。そんな本があっても良いではないかという一心で書いてみました。しかし、「児童書」としておくにはもったいないというかなんというか、そんな感じの本です。





「千夜一夜―しとねのひめごと」岡田屋鉄蔵

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久しぶりに心を直撃されました。ぶわっと涙が噴き出たよ。
感覚がもうかなりアレなので、岡田屋さんの絵柄が苦手な人が多いのかどうかもよくわかりません。が、ゲイコミ!って感じの絵に性交シーンですけど、私は不思議とエロさはそんなに感じないのですよね。海外のゲイ向け写真集ってあるじゃないですか。海兵さんや、マッチョな人が微笑んでいる不思議なコンセプトの写真。ああいうのを見た時とちょっと似た感覚なんですよね。「ほぉ~」という。限りなくピンナップっぽい、芸術っぽい絵柄だと思います。
傷付いた男(葵)に愛を教える若い男(翔太)の話なのですが、その「愛」というのが彼自身の愛だけではないんですね。葵の過去の男がどれだけ彼を愛していたのかを全身全霊をかけて翔太は葵に教えるのです。それを「千夜一夜」の王とシェヘラザードに喩えているのですが、冒頭に入る挿話の絵柄が素晴らしい。シェヘラザードが男になっているんですよ。美しいです。
愛を教える言葉や方法は、てらいのない直球そのもの。葵の喪失したものの深さは簡単に癒されることはないけど、最後の二人の姿にはもう涙が止まりませんでした。
扇情的なんだけど愛に溢れていて、本当に素晴らしい話でした!絵柄が苦手でも読んで欲しいですね。そうそう、「鬼灯」があんなに大きいものだと私は知りませんでした。手のひらに収まる鬼灯しか見たことないので驚きました。


最近涙もろくて嫌になります。先日テレビでやっていた「時をかける少女」でも泣いた上に「サマーウォーズ」に至ってはCMだけで泣きそうになる始末。「時かけ」は想像以上に素晴らしかった。ラストがキスじゃなくて抱擁というのもすっごく素敵だった。ああいうアホで熱血な女の子が主人公の作品というのは、主人公と同じ高校生の頃に観ても感動出来なかったと思うな。両手に花!な設定含めて、大人になったからこそ素直に感動してしまったように思う。翌日は筒井康隆の原作本もよく売れたし、良かった良かった。
そういえば今日からコミケなんですよね。草間さんが「はつこいの死霊」の同人誌を出されるという情報を数日前に知り、欲しい!!と項垂れております。はい、仕事です・・・。


「strawberry shortcake」魚喃キリコ 

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古本屋で懐かしい漫画を読み、その後すぐに定価で購入しました(古本に抵抗はないけど汚すぎたので)。個人的によしながふみの「愛すべき娘たち」に並ぶ傑作だと思っているのですが、手元にはなかったのですね。学生時代にホモ友に借りて号泣し、その感動というか痛さを彼女に伝えるうちに彼女まで泣きだしたというなんとも甘じょっぱい思い出の1冊です。ホモ友とはBLの趣味は合わないくせに、大判コミックの趣味は合うんだよなー。
しかし驚いたのは、今だに自分はこの漫画を読んで泣きそうになるんだ・・・ということでした。
先月漫画好きの友人と本屋に行った際にも何気なく「これはいいよ」とおススメしていたのですが、5年以上前に一度だけ読んだ本をやたら力いっぱいススメてしまったなーとその後気になっていたのです(無責任ですみません、Sさん)。
魚喃キリコは大判女性コミック(という区切り方しか思いつかない。レディコミでいいのか?)の大御所という認識で間違ってはいないと思うのだけど、同じ引出に入りそうな祥伝社系の作家達とは微妙に一線を画す気がします。生々しい性描写が少ないからか、「ハルチン」のような穏やかな漫画も描くからか、その理由はよくわからないのだけど、女が抱える痛みってのは何も「恋愛」や「セックス」に直結しているわけじゃないんだよと、私はこの漫画を読んで何故か無性に思いました。
よしながふみが「愛すべき娘たち」で家庭環境、思想傾倒、何より母と娘の問題を真正面から取り上げた時の感動に近いかもしれないな。
今更声を大にして言うことではないけれど、恋愛漫画が好きではないんですよ。正直私は過剰な痛みを伴う恋愛に共感できるようには生きてこなかったわけです。だからヒリヒリするような恋の痛みはわかるようでわからない。しかし魚喃のこの漫画は「恋愛」以前の痛み。もっと「女」の根源的な痛みに訴えかけている気がします。

仕事のストレスで拒食症のイラストレーター、居場所が見つからない地方出身のOL、「恋がしたい」と思いながら一人で何となく生きてしまうフリーター、叶うことのない熱烈な片思いを続けるホテトル嬢―4人の女達のオムニバスです。
5年前の私はとにかくイラストレーターの話が痛くて痛くて(たぶんホモ友も)仕方がなかった。
帯にもなっている「あたしの心が安らかでありますように」と祈りながら日々を生きる拒食症のイラストレーターの言葉に当時の私は共感しまくりでしたよ。今だってたまに思い出しては意味もなく頭で繰り返すぐらい、この台詞のインパクトは強くて普遍的であると思います。
ただ、彼女達の抱える悩みや葛藤はきっとそれぞれ「わかる気がする」と誰もが思ってしまう様な普遍性がある故に、多少大人になった私は昔程の痛みを感じることなく読んでいました(それでも泣きそうになったけどさ)。そんな中で私が心惹かれて止まなかったのは最後のホテトル嬢の話。
「菊池」という専門学校時代のクラスメートに熱烈な片思いをしている彼女は、彼と恋人になるという夢が破れた時のためにと、孤独な老後に備えて稼ぎの良いホテトル嬢をやっている。頃合いを見計らっては「田舎から野菜が送られてきたから」と「菊池」を呼び出しては、近所のスーパーで自分で買った野菜を渡している。そんなある日「菊池」に恋人が出来て―。彼女が「菊池」を手に入れるためにやったことでこの本は終わるのだけど、もうね、本当に読んで欲しい。何て言えばいいのだろう・・・ひとつの叶わない恋の終わらせ方なんだけど、言葉にならないぐらいカッコイイんだ。「菊池」が手に入らなければ死ぬとまで考えていた彼女が「生きる」為に「菊池」にした質問と、彼の答えが素晴らしい。なんという希望だ!と震えがきましたよ。孕んだ問題の深刻さで言えばきっとイラストレーターの方が重いのだけど、ホテトル嬢の話でしめた本の構成も感心するぐらい上手い。
これは彼女達が内に抱える怒り、虚しさ、諦め、激情に各々が各々自身で決着を付けたりやり過ごしたりする「希望」の話です。抱えている問題は「対相手」ではないんだよね。「恋愛」以前の問題として当然ある個々の悩みに希望を灯す素晴らしい話だと思います。

久しぶりに読んで本当に良かった!おススメです!




一般書感想(合田に寄せて)

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「太陽を曳く馬」(高村薫)を読了しました。

が、わからないことが多すぎます(主に宗教的対話の部分が)。
同時代を生きた人間としてそれなりに考えたことはあるのですが、作品自体の感想を名乗るには私ではあまりに力不足です。というわけで、とりあえず合田に対する熱く鬱陶しい想いを吐き出したいと思います。本編の方は出来たら、書評に追随する形ででも・・・ムリかな。

一応確認ですが、この「馬」は「晴子情歌」「新リア王」から成る「福澤一族三部作」の完結編にあたります。「馬」では語り手に据えられている合田ですが、前二作では登場しません(取り調べ担当の刑事として一言名乗るのみ)。ちなみに前二作は未読です(・・・)。
合田は「マークスの山」「照柿」「レディ・ジョーカー」から成る「合田三部作」の主役であり、こちらは97年に完結しています。

本当にいろいろスミマセン!って感じのダラダラ長文でございます。

注意 合田と加納についてネタバレします。
    未読の方、これから読まれる方、物語は「LJ」で終わっているのだと捉える方は読まないでください。



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「満員御礼 上巻」真生るいす

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東京は下町、両国あたり。土俵舞台に青春をかける青年たちが住んでいる。いなせで粋な名人目指す、呼出し序二段の鈴木誉もそのひとり。そんな誉に恋したのは、でっかい会社のドラ息子、久保田梶之助。日々の苦楽もなんのその、角界ロマンスついに誕生!

昔、大相撲のマス席をとある男性におごって頂いたことがあります。
色っぽい話なら良かったのですが、生憎「色」は同席した友人にあり、私は馬に蹴られて死ぬんじゃないかというぐらい彼にとって邪魔者でした。いや、デートの誘いに「友達もいいですか?」とのたまった彼女が悪いのですよ(じゃあ断れ!)。当時は「高いんだろうな~」と思いながらも値段を調べたりはしなかったのですが、やっぱり高いですね!あれはA席だったと思うので4人(彼の後輩も来た)で4万4千円か。ろくなお礼もせずに大変失礼なことを・・・おまけに彼の恋は成就しなかったしな。
そうそう、その日の取組がなんと「朝青龍VS琴欧州」だったのです!
そんな素晴らしいものを人様のお陰で観戦しておきながら、その後私が大相撲ファンになったかというとそんなことないあたりが悲しいところですね。本当申し訳ない。

だから「呼出」という仕事も、この漫画を読んで初めて認識しました。
あの名前を読み上げる人々というのはれっきとしたお仕事なんですよね!BLには職業博覧会の一面もあるとはいえ、まさか「角界」を舞台にした話がくるとは・・・色々驚きです。

話はBLというよりも仕事や相撲部屋風景に重きを置かれていて、タニマチ(梶之助)と呼出(誉)の二人がこの先「恋愛」になるのかも匂わす程度です。でもそうなるとしてもキスぐらいで終わる気がします。真生るいす先生は初読みだったのですが、絵がとても良いですね!誉は「一重」なんですよ!涼しげな目元にストイックな色気があって、タニマチがちょっかい出したくなるのもわかります。うん、彼は良い。というか、真生さんの絵が本当に良い。日高ショーコ先生の絵を見た時に感じるドキドキに近いものがあります。
伝統芸能特有の年功序列制の話にはなんともいえない気持ちになりました。実際にああいう複雑な思いを持って呼出に従事している方もいるのだろうな。他人事ながら切ない。でもその切なさが諦めに繋がるわけでもないストイックな芸事の世界は素敵だ。男にしか開かれていない世界に触れると(梨園とか)時に「ふんっ」と思ってしまうのですが、だからこその色気や緊張した空気が技に磨きをかけていると思うと、伝統芸能は閉じていてこそなのだと納得します。
あとは眼鏡力士のテツさんね!一番の男前!「咲いて散る花 散るならば どうせ短いこの命 舞わせてみせましょ藤花吹雪」こんな台詞がカッコよく決まるのも力士ならではというか、角界が舞台のこの作品ならではだと思います。
タニマチの従姉が絡んできたりと慌ただしくもありますが、全体的に「はんなり」という言葉が似合う作品です。下巻が出るまで何年待てばよいのかな?あんまり考えずに楽しみにしたいと思います。


良いと思ったら他の作品も!ということで「坊ちゃまと主治医」を読んでみました。
そして・・・英国浪漫よりも同時収録されている「うさぎのダンス」に心を掴まれましたよ(笑)
オカルトチックな同級生の再開物ですが、なんとも不思議な読後感でした。結論として、「はんなり」でも「英国浪漫」でもない真生さんが読みたくてたまらない!流れている空気は同じですが、「不思議系」はすごくすごく私の好みのような気がします(高口里純先生のような感じかも)。


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