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「龍の初恋、Dr.の受諾」「龍の宿命、Dr.の運命」樹生かなめ

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「氷川諒一、俺の女房にします。これでいいですね」明和病院に勤める患者思いの内科医・氷川諒一は、ある日、幼い頃大事にしていた清和くんと思いがけない再会を果たす。ところが、小さくて可愛かったはずの清和はすっかり立派なヤクザになっていて!?今度こそ離れない!氷川は自分を避ける清和の下に乗り込むのだが…。ファン待望の再会編『Drは龍に乗る』が大幅加筆修正で登場。「龍の初恋、Dr.の受諾」
「俺は眞鍋組から離れない。先生は俺から逃げない」眞鍋組の金看板、橘高清和を恋人に持つ美貌の内科医・氷川諒一は、ひとつ大きな悩みがあった。それは自分の大切な可愛い清和くんがヤクザということだ。清和が組長になる日が近づいたとき、反対派から氷川を守るため、清和は彼を実家に預けるのだが。ファン待望の氷川の姐誕生&清和の組長就任編『Drは龍と立つ』が大幅加筆修正で登場。「龍の宿命、Dr.の運命」

熱烈なレビューに背中を押され、恐る恐るですが手を出してしまいました(A林さん、ありがとうございます!)「もう二度と離さない」で私を思考停止状態にした樹生さんの超有名作品。10巻に及ぶ人気長編小説ということで、続き物が苦手な私が果たしてどこまでついていけるか不安な部分もありますが、新装版として刊行された2冊はあっという間に読了しました。た、楽しかったけど、このシリーズの向かう所がまったく見えないというか(レビューで知ってはいるのですが)、既読のBLや所謂「ヤクザ物」とは一味も二味も違う印象を受けました。
というか現在の私の偽らない印象を正直に云うと、「ホームコメディ」が一番近いかもしれません。

まず何が驚いたかというと、受けと攻めが物語の前半も前半で「思慕→再会→成就」を速攻で済ませてしまったことでしょうか。「ホワイトハート」レーベルの色(ってよくわからないけど)を考えると奇妙なことではないのかもしれないですが、物語の「山場」を「恋愛」ではなく樹生さんは何処に設定したのかしら・・・と思っているうちに1巻目が終わってしまったという(笑)ヤクザ的な事件も起きなかったし、二人の「再会編」としては看板に偽りなしではあったけど。榎田さんの「眠る探偵」や鳩さんの「帝都」も同じレーベルから出ているけど、一応納得出来るような「山場」や「テーマ」がまず前面に出ていたと思うのですよね。うーん、覚悟はしていたけど色々な意味で面白い!と思いましたよ。
そして次に驚いたのは氷川の滅私盲愛もさることながら、攻めの清和の「無口」っぷりでした。この子、本当に本当に喋らない。「ああ」という相槌だけで延々と続く会話とかざらですよ。それを受け入れる氷川の以心伝心も凄い。阿吽の呼吸じゃなくてテレパシーレベルでの意思疎通です。A林さんも仰っていましたが、こんなに喋らない攻めってなかなかいないと思うわ。それを猫可愛がりする氷川の「無償の愛」も、ただただ「無償の愛」であるということのインパクト。清和への愛情が「男(恋人)」へ向けるものと「子供」へ向けるものが同じ強さで存在していることの強烈さ。氷川に「いい子だから」と言われて「・・・・・・」と黙るしかない清和―その一連のやり取りが段々癖になってくるから不思議だ。
そしてこの二人って、作中まったく別々の行動をしていることが多い。いや、違うな。なんと表現すればいいのかしら・・・共同作業がない?氷川は清和をヤクザの世界から足を洗わせたくて仕方がないのだけど、清和は端から聞く耳を持たない(云う通りには絶対に出来ないけど氷川の気持ちはよくわかっている)。この辺りの互いの一方通行ぶりってかなり独特な気がする。そう、清和の氷川に対する扱いは「先生は(女は)家で待ってろ」に終始徹底されているんだよね。普通BLだったら「二人が」関わることで物語が展開すると思うのだけど、1,2巻読了したところ、それがない。また本編は氷川視点で進むので清和側の展開が予測出来ない。だから2巻の「眞鍋の絆」を読んだ時は正直「えっ!?」となったのよね・・・。本編で清和に敵対していた組員が2人不審死を遂げる事件の清和視点話なのですが、いや、予想はしていたよ?していたけれど、まさか本当にその通りだとは・・・。「ホームコメディ」楽しいな♪と油断していた所に正体のよくわからないパンチをもらったといいますか。こんなことで驚いた私が変なのか?清和の仕事はあくまでヤクザなんだなーと遅まきながら実感いたしました。氷川視点の「可愛い」「いい子」な清和を無意識のうちに刷り込まれていたのかな・・・これが今回一番驚いたことです。エロ的な鬼畜ではないヤクザ、なんだか新鮮だわ。
まだまだ先は長いけど、読み進めて行きたいと思います!


*お知らせ*
日常雑記専用の日記を始めてみました。
かなり適当に好き勝手呟いています。興味がある方はリンクの「anemometer」からどぞ。

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「YES IT’S ME」ヤマシタトモコ

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「好きです、この世の何よりも----自分を。」容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能で対人関係も良好。おれの人生なんの問題もない…はずなのに!幼なじみの江城(通称キノコ)が放った言葉がおれの心を惑わせる!?20数年来のくされ縁から、一緒にお★★に入るまで。ヤマシタトモコが描く笑撃の短編集☆

発売日をノーチェックだった為休日に書店で山積みになっているのを見て軽く驚きました(ダメ書店員)。週1で新刊発売って凄いですね。東京漫画社ということで、掲載時に感動した「夢は夜ひらく」も収録されていました。それ以外の短編も「さすが!」といった感じだけど、こうも立て続けに「レディコミ」「ニアBL」「BL」と読んでしまうと、その「適材適所」的な上手さが食傷気味になってしまうというか・・・この本はもうちょい間をあけて読みたかったなぁなんて勝手なことを思ってしまいます。

以下心に残った作品を。

「瞼の裏にて恋は踊りき」
舞台は美大、自分に熱烈な想いを寄せている天才君を疎ましく思いながらも惹かれている秀才君の話。この二人の関係に妙にドキドキして、しかもその感覚に覚えがあるのは何でだろうと考えていたら、仕事中に判明しました。馬原のキラキラバカっぷりが某野球漫画の天才4番を彷彿とさせるからなのでした。そうなると沼上が途端にグルグル思考の秀才5番に当てはまり、やっぱりこの構図(ただし某野球漫画は天才×秀才)は私的萌えだなと確認したのでした。劣等感に苛まれる秀才君のせめてものプライドが「童貞じゃないこと」という底の浅さが好き。そして天才的な感性の前では非童貞であることのプライドなんて風前の灯であることに沼上が気付いているみっともなさが好きだ。おまけ漫画が笑えました。

「彼女は行方不明」
家出したというクラスメートの女子を探すことにした男子2人。芦立というその女子には「レイプされた」という噂があり不登校だった。古林は芦立が好きで、八名木は密かに古林が好きだった。
ヤマシタさんの短編の中でも私的上位の「イタさ」があると思うこの話。人の気持ちを考えるよりも何よりも先に、下半身の欲求が突きぬけているという若さ故の愚かさ。芦立のことを本当に好きだと思っていた古林が、「レイプ」という尾ひれが付いた噂に欲情していたという愚かさと、彼女と対峙した瞬間にその事に自分で気が付いてしまうという(たぶん)中途半端な賢さ故の残酷さ。そして彼女の死を願った八名木が吐いた取り返しの付かない暴言の救いようのない愚かさ。この話の主人公は誰だろうと考えたとき、理不尽な噂と暴力に「死ぬなんてムイミだ バカじゃない?」と叫んだ彼女こそが主人公だったのだろうと思った。女子よ強く生きろ、というメッセージを勝手に感じた。「三角関係」がお題のアンソロにこの話をぶつけるって、すごい。

「YES IT’S ME」「YES IT’S YOU」
表題作は単純に面白かった。サドマゾを描かせたらヤマシタさんは素晴らしいと思うけど、「ナルシスト」を描かせても面白いとは!一見して普通(よりもイケている)な男が性癖故に残念な方向にまっすぐ、というノリが大好きです。それがBL的萌えに繋がるかといえば今作も否なのだけど、切っても切れない強固な縁というか運命で繋がっていそうな2人が本当に面白かった。「素敵」ではなくて、とにかく「面白い」ところがこの話の魅力だと思う。

「minun musiikki」は妻帯者のチェリストと彼に想いを寄せるピアニストの話。ラブラブです。恋や愛のアレコレがバッドエンドなんて名乗れない的な後書に心底共感。「Loathe!」はSMごっこ気味の2人の話。ラブラブです(他に云いようはないのか)。この関係性はツボでもあるのだけど、ヤマシタさんじゃなくても描けそうな気がしたかな。背の低い方が攻めとのことだったけど、今更ながら作者と根本的に受け攻めの萌えが違うのでは?と気が付く。この2人ならば私は断然、股間を踏みつけている子が受けであって欲しかった。ツンデレとは違うけど、イジメッ子が受けていることに萌えを感じるので。そういえばホモ友と腐女子のバイトちゃんは好みが似ていて、2人ともツンデレに対して一言、「めんどくさい」だそうです。バイトちゃんと商業BL話をすると、タイトル、著者名、設定、舞台、全てが噛み合わず「相変わらずスカッスカッだね」と会話の非キャッチボールぶりが笑えます。

と、ここまでは前置きのようなもの。珍しくあらすじ込みの感想です。ネタバレしますので未読の方はご注意下さいと言いたいですが、ネタバレしても何ら話が持つ魅力には関係ない気もします。

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一周年記念「毎日晴天!」菅野彰

気付けばブログを開設して1年です
まだ1年なのか、なんだかもっと長いことやっている気がするなぁ。コンスタントによく読みよく書いたなと我ながら感心しますが、きっと今後もこんな感じでダラダラいくのだと思います。改めて、遊びに来て下さる方々に感謝です。どうもありがとうございます!
記念に何か特別な本をと思い、大好きなこの小説について感想を書いてみようと思いました。

最も心に残っているBL小説は何ですかと聞かれたら私は迷わずこの小説をあげる。というか、BLと括らなくても人生においてとても特別な位置にあるし、大袈裟だけどなんというか唯一無二の存在です。新刊が出ていない為かブログを始めてからの1年間、「毎日晴天」についての記事を他所様で拝見したことがない(もちろん検索をすればあるのだろうけど)。だから私は正直この小説がどういった位置にあるのかよくわからないんだよね。えーと、「魚住くん」に匹敵しませんか?私の中ではそれ以上なのですが、そんなことはないですか・・・。
ただ困るのは、3組のカップルが出てくるのですが、そのカップルへの温度差が私の中で激しいこと。平たく言うと、大人カップルに比べて花屋カップルはともかく、子供カップルへの思い入れが薄いのですよ。一番波乱万丈なのに。今回良い機会なので読み返したことがなかった子供カップルを再読してみようかなとも思いました。しかしそんな悠長なことをしていたら結局1年記念なんて飛び越えてしまう気もします。なぜなら大人カップル以外の巻は実家に置いてきてしまったので、家に帰らないと読めないから(笑)宅急便を頼もうにもあの本近辺は危険地帯過ぎて家族を近寄らせられない(「晴天シリーズ」は表紙的に大丈夫だと思っているけど、それも間違いな気が・・・)というわけで、大人カップルに絞って吐き出したいと思います。

記事を折りたたむのがあまり好きではないのですが(自分が読みにくいので)、今回ばかりは本気で先にお断りをします。いつにも増して自己満足風味が強く、長いです。11巻に及ぶ物語をまとめようとした私が無謀でした、スミマセン。


注:記憶を頼りに書いている部分が多々あります。どうかお見逃しを。

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「初心者マークの恋だから」いつき朔夜

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年上のいい男に口説かれて、ホテルに入った新米教師の謙吉。なのに土壇場で怖じ気づき、彼がバスルームにいる間に逃げてしまった。後で悔やんでも、後悔先に立たず。ところが数ヵ月後、他校の会議室でその男・達川と再会した。そして、高文連弁論部門の専門委員として、共に活動することになったのだ。男としても教師としても憧れと尊敬の念を抱かせる達川に、謙吉は惹かれていき…。

いつにも増して感想未満でグダグダです。

「弁論」そのものにもとっても興味がわいたこの作品。扱っているテーマが教育的な為か、とても「真っ当な」恋の話でした。いや、真っ当な恋の話というのは実はとても多いと思うのよ。みんながヤクザやトラウマを好んで読んだりするわけはないってね。でもこの話は二人がマイノリティ側だということを除けば、巷に溢れるどんな恋愛小説よりも「清く正しい」部類に入ると思う。出会ってその日にホテルに行くのが清く正しいかって・・・そりゃあBL読み慣れた身からすれば大したモンじゃありません(笑)。出会って恋をしてでもなかなか一線が越えられなくて。ムリヤリも当て馬も一切出てこない、とてもシンプルな恋の話。そんな話を「弁論」という文科系部活動に絡めて一気に面白く読ませるのだから、いつきさんが上手いというのは読了2作目の私にも十分良くわかる。シンプルな恋の話というと杉原さんが思い浮かぶのですが、杉原さんが「静」なイメージなのに対していつきさんは「動」のイメージかもしれないな。周辺事情はちょっとバタバタしているけど、肝心の本人達は焦らずゆっくりという。
ただ残念なのは、受けも攻めも私的な萌えとはちょっと遠かった。頑張り屋の可愛い受けと余裕たっぷりの大人な攻め。う~ん、素敵なんだけど・・・この二人の恋愛事情はあまり気にならないんだよな。ちゃんと出来て良かったねと思うぐらいだ。そしてイサクさんの攻めは挿絵をどんだけ見ても「どうしようもないけれど」の攻めが浮かんでくる。黒髪の角刈りを画面に探してあれっ?と本気で何度かなりましたよ。もう少し、攻めの「オヤジ」っぽさが前に出ていれば私好みだったのかもしれないけど、それだと途端に嘘っぽくなってしまいそうだな。二人よりもむしろ弁論部の高校生君の将来の方が気になってしまう(笑)「弁論部」なんてまったくもって存在しない中高生活を送ったので、こういった活動がある程度認められた環境にある学校というのにも興味がある。まあ、たぶん弁論する高校生というのは、全体から見てもかなり特殊な存在には違いないと思うのですが、そしていざ弁論する同級生を見たら(大人しい子がパラリラパラリラ~とか)学生の私は遠巻きにしてしまう予感もするのですが、ちょっといいなと思うのよね。NHKでやっていた「シャベリ場」とか好きだったもの。そして生徒と指導の先生が一心に作り上げるという熱さが素敵だと思った。体育会系だけが頑張ってる部活じゃないのよ、文系だって地味にめいっぱい青春しているのよね。
萌えではないのだけど、良い話を読んだなと思いました。

で、以下がグダグダ。
これは作品とはまったく関係がないことだけど、個人的に「学校の先生」というのがどうもダメかもしれない。雑食読みを自覚する私ですが、「先生×生徒」だけは生理的に受け付けないし、年下攻めだから大丈夫と思っていた「生徒×先生」も、実は好きな作品がない。「未完成」も「眠る兎」もあまり好きじゃなかった。先生と外部の人間なら大丈夫な気がするのだけど、先生と先生も、もしかすると苦手なのか?一体なぜ?先生には聖職者であって欲しいなどと未だに思っているのかしら。いや、でも思っているんだよな。中学生の頃に担任の男性教師(20代後半)が「うちの学校の女子はレベル高いと思うぞ」と何気なくした発言がすっごくショックだったんだよね。当時自分でも何でそんなにショックだったのかわからないぐらいで、でも友達に話しても「ふーん」って感じで、あの先生の年齢を私はもう越えてしまったのか・・・。何がショックって先生が生徒の美醜を当然のように意識しているという、当然の事実がショックだったんだろうな。どんだけ勝手な夢を見ていたのか。思春期ってめんどくさいな。その先生の発言以降、私はどうも「先生」という人と上手く関われなくなったように思う。たったそんだけの出来事なのに変だとは思うけど、結局そのまま生きてきてしまった。達川や謙吉と出会えなかったのは、だから仕方がないことなのだ。それにしても先生って大変だ。私みたいな人間がモンペになるのかしら?やだやだ気をつけよう。




「ザイオンの小枝」稲荷屋房之介

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終戦後のドイツ。廃屋に監禁され生き永らえる伯爵少将。彼を閉じ込めて屈辱を与えながら世話をするユダヤ人の青年医師。誰にも理解できない彼らの関係とは…!? 珠玉の表題作他、2人が超絶可愛い耳キャラで動きまくるショートギャク「肉球編」も収録した贅沢な一冊!! すれ違う2人のその後が描き下ろしで登場!

稲荷屋さんとの出会いは「百日の薔薇」よりも前、何の雑誌かすっかり忘れてしまったけど、神父と捕虜の話だった。神父が道義に反して愛そうとしたその男はリンチに合い去勢されていた―という何とも衝撃的なラストで締めくくられていて(記憶が非常に曖昧ですが)、暗い展開なのに明るい画面構成がとても印象的だった。あの話には続編があったのだろうか。単行本には入っていないのかなぁ・・・。
実はこの「ザイオンの小枝」の表紙を見て「あの話かも!」と期待をしたのですが、違いました(笑)

しかし面白かった。
稲荷屋さんの描く異国はある種のファンタジーで、そこに生きる人々の愛憎や葛藤は字幕映画を観ているように遠く感じられる。この二人の辿ることになった運命は、伯爵が医者を見定めた時から決まっていたのだろう。ドイツ人の伯爵がユダヤ人の子供を囲うことの悲劇。人種間の憎悪を超えて個人として対峙することなどないのではないかという、歴史が示す悲劇だ。それを監禁凌辱という手法で見せつけておきながら、稲荷屋さんの漫画には「色気と官能」があっても「媚」がまったくないように感じる。50近くに見受けられる伯爵は終始苦痛の表情を浮かべて喘ぎを漏らさないし、そんな伯爵を見つめる男の表情も、愛と憎しみに惑う苦痛の表情を崩さない。なんというか、本当に壮絶な色気がある。長々と続く腸内洗浄の場面ですら、凌辱に違いないのに粛々としている。これは実はとても凄いことではなかろうか。どうでもいいけど「腸内洗浄」って日記に初めて書いた気がする。ちょっとドキドキしました。最後の話がなければ愛憎の「憎」の部分だけが際立った、監獄の中で二人とも気が狂うしかないような絶望的な話だったけど、一気に外の世界に放たれた(精神的にも物理的にも)最終話で救われました。遠い将来でも構わない、いつか「個人」として対峙する二人の表情が穏やかであると良いなと思いました。他の短編も面白かったです。平均年齢が高めなのは偶然かしら?おじさん達の色気が凄いです。

ナチスドイツについて語れることはほっとんど持たないし、時代と国に対する萌えもほぼないのですが、こんだけシリアスな話にもやっぱりあるのね!という「肉球編(作品のセルフパロディ。登場人物が犬猫耳付きの小人化で展開されるギャグ)」に激しく萌えました。可愛すぎるだろう!こういった悪ノリ(?)が嫌でたまらない漫画も正直あるのだけど、稲荷屋さんのギャグは好きだなぁ。もしかしたら本編よりも好きかもしれない(笑)

「スリープ」砂原糖子

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睡眠障害のナルコレプシーを患っている倉知。ところ構わず襲ってくる発作的な眠気のため、生活に支障を来すことの多い倉知をフォローしているのが、同級生で同じマンションの住人でもある上木原だ。理由は退屈だから。倉知とは反対に上木原は不眠症で長い夜を持て余していた。だがいい加減で本音を覗かせない上木原が自分に構う本当の理由、倉知はそれが知りたかった―。心に闇を抱く二人の、癒しと再生の物語。

砂原さんの小説を読むと自分のBL小説読書歴の短さを実感するというか、「作家買い」のBL小説家がいない事実に一抹の寂しさを覚える。遠まわしに何が言いたいかというと、やっぱり私は砂原さんの魅力がよくわからないんだよね・・・。面白いのだけど、それ以上にならないというか。恐らくは鉄板作品を読んでいない為だと思うのだけど、それでも5作品程読んでいるにも関わらず印象が定まらない。まぁ、そんなことを考えながら普段本を読んでいるわけではないし、この世界は本当に十人十色の好みがあるから構わないのだけど、すっごく人気がある方なのでちょっと寂しいなと。今作も「ナルコレプシー」が題材に扱われていなければ、恐らく手に取らなかった。そして本当に久しぶりの「高校生」が主人公のBLだった!どのぐらい久しぶりって、思い出せないぐらい久しぶり。高校生ものは苦手なので意識して避けていたからね。しかも高井戸さんの表紙に惑わされて読み始めるまで彼らが高校生だと気が付かなかった。慌ててあらすじを読んで知ったという。でもナルコレプシーの主人公が社会人というのは、読んでいて辛い展開になりそうな予感がしたので安心したのも事実です。高校生だからといって病気の事実は変わらないのだけど、困難な上に理解の得難いナルコレプシーで苦しんでいる人にとっては、社会で対峙すべき壁は相当に分厚いだろうと想像出来ますからね。

ふと昔、人間の三大欲求が「食欲」「性欲」「睡眠欲」だと知った時に意外に感じたのを思い出しました。前の二つの「能動的」なことに比べて「睡眠」とはあまりに「受動的」な欲望にその時は思えたのですね。私がいかに「睡眠」を普通に享受していたかという事がよくわかるなーと、主人公の2人を見ていて思いましたよ。「割れ鍋に綴じ蓋」とはよく言ったものですが、この物語は「問題のある攻め」と「問題のある受け」の物語。肉親による似たようなトラウマを抱えて一方は不眠症に、一方はナルコレプシーになった二人が心を通わせていく様子を丁寧に描いています。「コメディにしようと思った」という名残からか、周辺の人物達やけにわいわいしているのが気にならないでもなかったけど、読み終わってみると大変爽やかな読後感でした。二人の障害はお互いと関わったことによって、前進はしても改善には至らないのだけど、そこが「高校生」らしいというか。互いに及ぼした影響というのが「恋」から生じる想いの範疇を出ていないのが、逆に現実味があって良かったです。
トラウマの物語には3パターンあって、「問題がある攻め×問題がある受け」「問題がある攻め×問題がない受け」「問題がない攻め×問題がある受け」に分けられると思うのですが、私は断然最後のパターンが好きです(「魚住くん」がそう)。「ある×ある」同士の話は例えば木原さんの「COLDシリーズ」や凪良さんの「夜明け」の本命外カップルが該当すると思うのですが、物語を楽しみながらも、その二人が一緒に居てはいけないだろうと頭のどこかで冷静に考えている自分がいるのですよ。一緒に居たとしても「恋愛」という関係でもって居たら共倒れ必至だろうと。でも、「スリープ」の二人は高校生だからこその未熟さというか、単純な情熱でもって一緒に居る様子に救われました。二人とも強いしね。「似たもの同士」だからこそ、明るい方向へ歩いて行けそうな良いラストでした。

そして不謹慎は承知の上ですが、やっぱりこの題材は私の琴線に触れます。好きです。
そういえば既読の砂原さんはすべてディアプラスだ。他のレーベルから出ているのも読んでみようかな。

あー、明日(今日)は待ちに待った「花音10月号」の発売日だ!!
日高さんの「嵐のあと」の続編読切ですよ!岡田視点の話らしいですよ!楽しみだ~

「MO’SOME STING」ヤマシタトモコ

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最初に一言。すごく面白かった!大好き!!

なんだろう、久しぶりにヤマシタ漫画で「もやもや」がなく最後まで突っ走るように読んだ気がする。読み終わるのが残念で残念で仕方がなかった。まだまだ足りない。この人たちの話をあと2,3巻は読んでいたい。そして久しぶりにヤマシタ漫画の男に萌えた!私の苦手な細身の今風の青年が一人も出てこない、全員30以上で男臭い血と暴力に彩られた話。「イルミナシオン」収録の「神の名は夜」を彷彿とさせる世界ですね。ホモのエロスが暴力と直結している―と「イルミナシオン」の後書にあったけど、私はヤマシタさんについては市井の人々の話よりも、暴力的な裏社会系のホモの方が断然好きだな。需要、あまりないのかな。残念だな。後書によると「キャラ萌え」を意識して描いた漫画だったそうですが、「自殺願望のマゾ」に「献身的なヤクザ」に「分裂症気味の変態」に「普通の保険屋」、そして「ヒロイックな女子高生」!なにこのテンコ盛りは!?それぞれの人物が本当に魅力的で、退屈なコマやページがひとつもない。冷静な感想なんて書けそうにないぐらい、ちょっとこれは好き。

裏表紙のあらすじが微妙に的外れな気がするのは私だけでしょうか・・・?
死にたがりの法律屋・田貫と、裏世界に片足突っ込んだ浅黄、微妙な友情の2人。浅黄の姪・十和子がヤクザに命を狙われ始めてから、彼らを巻き込んで命がけのゲームが始まった…! 要領よく生きてきた男たちが、一人の少女を守るためどんどんピュアになっていく──。
2人は「微妙な友情」ではなくて、浅黄が田貫に熱烈な片思いをしているという関係だし、「ゲーム」じゃ済まない話だし、保険屋以外誰一人として「要領よく」なんて生きてはいないし、「ピュアに」っていうか「必死に」だし・・・あぁ、こんなあげ足を取るよりも他に書きたいことがあるのに!

長編なので物語に起承転結はありますが、そこはヤマシタさんらしく、サスペンス風の始まりに血生臭い事件を描きながらも結局は人間の「生き様」のようなテーマを全面に出してきます。後は、ままならない「愛」の物語かな。全員がメインの群像劇のようでもあるし、ヒロイン十和子を狂言回し的立場に置いた各々の一人芝居風のオムニバスでもある。この漫画がBL雑誌に連載していたのか、本当に自由だな。
個人的なキャラ萌えどころとして、私はヤマシタ漫画の「サドマゾ」が大好きなのですね。見たことない切り口で人間の思いがけない滑稽さと真摯さを示してくれるから。だからマゾの田貫と彼を愛するホモだけど至って普通の嗜好の持ち主浅黄の関係がたまらなくツボだった!「死にたがり」というある意味恥ずかしい(と私は思う)設定を正面切って持ってくるヤマシタさんが好きだし、何より田貫の無邪気なようで虚無的な目に魅せられている浅黄に萌える。彼の純情と優しさが死にたがりのマゾにとっては「無意味」に近いものであることに萌える。でも、徐々に「無意味」が「意味」を持ち出す様子にもっと萌える。そう、私は浅黄がすっごく好きです。「変態」の中国人マフィア(狐)には何気に「掘られている」という数コマのエピソードに萌え死ぬかと思いました(色々スミマセン)。この狐もまた熱烈に浅黄を愛しているのだけど、浅黄の気持ちは田貫以外には向かないのね。その憤りから狐は浅黄が大切にしている十和子を、彼女の父親の不手際(?)にかこつけて消そうとするのですね。そして普通人の「保険屋」が十和子に絆されて生まれて初めて「必死」になったエピソードも好きだ。ヤマシタさんは「ネーム」で魅せる人だと思っていたけど、今作は漫画として画面もとても魅力的だった。

死にたがりの田貫と、死にたくないのに死にそうな十和子の「生」への執着の対比で叫ばれる十和子の台詞こそが、きっとこの漫画でヤマシタさんが一番描きたかったことなんだろうなと感じた。かなり恥ずかしい(時に鳥肌すら立ちそうな)台詞を連発しているのだが、「恥ずかしいけど書かずにはいられない!」という作者の衝動が感じられて愛しい。
事件は思いがけない人物の介入で一気に収束をして大団円に向かうのだが、狐は相変わらず浅黄にアタックを続け、保険屋は十和子にアプローチをしてはふられ、浅黄は恐らく田貫を愛するのだろう。肝心の田貫は、最後の最後まで「生きる意味は何」と問いかける。彼に与えられた回答は至極当然のものなのだけど、十和子と関わったことで何らかの変化が彼の内面に訪れたような、素敵なラストだった。

確かにBL誌以外では書けなかった話なのかもしれない。
たまに垣間見るこの世界の懐の深さに心底感謝。そのぐらい、面白い話でした。
登場人物が動物の名前を持っているのが妙に可愛かった。ちょっと「寓話的」な味付けも意識したのかしら。とにかく好きな話です。どうでもいいですが、ひとつ前の「Love, Hate, Love.」との熱の違いが申し訳なくなりました(笑)


「Love, Hate, Love.」ヤマシタトモコ

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28歳処女と52歳大学教授の恋。「あなたのことは好きだ本当に」28歳の貴和子(きわこ)は、ある日、ベランダで煙草を吸う男に出会った。隣室に住む52歳の気怠げな大学教授・縫原(ぬいはら)。バレエダンサーになるのを断念しつつあった貴和子に、彼は誠実な言葉で語りかけてきた。今まで恋愛を切り捨ててきた貴和子の心に情熱の風が吹き――真摯(しんし)で臆病なピュア・ラブストーリー!描き下ろし後日談収録!!

楽しみにしていたヤマシタトモコの非BL漫画。
連載中に本誌を立ち読みし、「男女って恋愛するんだよね!」と一瞬思った後、我に返って誰もいない店内を見回してしまった苦い思い出があります。そう、男と女は恋愛をするのだよ!帯の三浦しをんの言葉「恋ってときめくものだったんだ!と思い出させてくれる、素敵なおじさん(枯れ気味)が登場します!」そのままの、日頃女性として色々大切なものを忘れかけている私が読んでも十分に「いいナ」と思える恋愛漫画でした。大切なものを失ったときに、それでも「恋」があるというのはなんて救いなんだろうと、素直に思いましたよ。そうそう恋って良いものなんだよね、はは。

しかし久しぶりに等身大女性が主人公の恋愛漫画を読んで考えてしまうのは自分のことなわけでして、グルグルしましたよ。西炯子の「娚の一生」の海江田も大学教授でしたが、インテリ系の枯れた男がトキメキの対象になるというのは、何なのだろうか。個人的な好みの話をすれば、私は「マスターキートン」のようなインテリ系(?)男に惚れたとしても、縫原のような枯れた風の男に魅力を感じることはあまりないのですよね(海江田は縫原に比べれば漫画的な人物で素敵だと思うけど)。「おまえ」と呼ぶ男は確かにその点では嫌いだけど譲歩して好きになる可能性があるかもしれないが、「あなた」と呼ぶ男は未知の存在すぎて正面から語れる気がしないといいますか。まぁ、個人の好みの問題なんですけど。バレエに打ち込んできた貴和子は「いかに(他者との)コミュニケーションを怠ってきたか」と真摯に考えては悩むのだけど、その相手として同世代の男ではなくて二周り年上の縫原が選ばれたことに、ロマンチックを感じると同時に何か違和感も覚えるのですよね。他人のことが「わかる」「わからない」は幻想に過ぎないと思う反面、私の中にも「でもわかり合いたい」という願望が存在するのは事実で、同世代でも成り難いことは相手を50男にしてもきっと難しいのだよなと思うのです。そもそも「草食系」もそうですが「枯れ男」なんて宇宙人のような記号を名付けるのは失礼だし、そんなに50男に夢を抱いてもいけないのではないかな、なんてツマランことを思ってしまった自分が一番嫌だ。
という私のグルグルをいつものようにヤマシタさんは後書で一蹴してくれましたよ。
三浦しをんと話したときに「現実に若い女とつき合う男は精神的に未熟な男」というしをんさんの言葉に目から鱗が落ちた後、お二人で「でも二次元だと萌え」という見解に落ち着いたそうです。わかる、すっごくよくわかるけど、それを後書に書いちゃうところがヤマシタさんだよね(笑)

ヤマシタトモコは何処に向かうのだろう?なんてことを考えるのは意味がないのだなと今作を読んで気が付きました。感性に澱みがないというか、どんな「色」で描いたとしてもヤマシタさんなりの「方法」で勝負をしてくるような印象を受けたといいますか。どこで描いてもきっと「面白い」漫画を見せてくれると人だと思います。



雑記ですが、本日というか今月入ってまだ一週間だけど一番の興奮が以下。
090908_1204~01
予想以上の巨大さに「でかい!でかい!」と叫び声を上げていました(笑)
久々のyori家外出で某アウトレットに赴いたのですが、牛久大仏は良いですね。
この訳のわからなさが好きです。

徒然(漫画いろいろ)

久しぶりに続きものの青年漫画を2冊買ったらどちらも面白かったので簡単に感想を。

iamahero.jpg「アイアムアヒーロー」花沢健吾
表紙を見ただけでどんな内容だかある程度予測が出来てしまう。
きっと低所得者層のワーキングプア系の男が様々な心的負担の結果に壊れてしまう話だろうって。
そして事実その通り(1巻では)の暗く救いようのない話なのだけど・・・どうしてこういうのを読もうとしちゃうのかなと考えたら、やっぱり私は青年漫画のモラトリアム系の話が好きだからなんだよね。というか、今更ながら少年漫画を読めない理由に思い至った気が。少年漫画の主人公達には停滞が許されていないからじゃないかな。当たり前だけど彼らは前に進まないといけない。なんていったって、ほら、子供だし。「疲れる」と言ってワンピや鋼から逃げている(大袈裟な)ダメ~な大人になってしまったよとジャンプやマガジンが大好きだった頃の私に言ってやりたい。先日青年漫画の1位に選んでしまった「ヒミズ」系の話。いや「浅野いにお」系?このまま進めば予想の内だけど、何かこうとてつもない化け方をするような予感もして2巻が今から気になる。漫画家アシスタントの主人公の身辺で起こる不審な出来ごとの数々が内的要因ではなくて外的要因だとしたら、本当に面白いんだけどな。

Dnomaou.jpg「Dの魔王」霜月かよ子/柳広司
柳広司「ジョーカー・ゲーム」が原作の漫画。1話目を本誌で読んで単純に 佐久間×三好 に萌えを感じ単行本になったら是非買おうと決めていた。描いている人が女性ということもあってやっぱり匂うよ!二人とも可愛いよ!しかーし、第2話を読んだら主人公と思われた佐久間が影も形もなくて愕然とした。えっ、まさか出番は本当に1話っきりなの!?なんてもったいない。
スパイに思い入れは・・・あまりないなぁ。マッキーの歌が一番に思い浮かぶぐらいだ。「007」や「MIP」に夢中になったこともない。でも戦時中の日本を舞台に日本のスパイ機関の国際的な活躍をミステリーにするなんて、さすが本屋大賞ノミネートの話題作!と遅ればせながら感心しました。原作も読んでみよう。霜月かよ子の著作一覧を見て1巻だけ読んだ「シーラカンス」の人であることに気付く。


oujitokotori.jpg「王子と小鳥」山中ヒコ
つい最近アラブは苦手発言をしたばっかりだけどこれは良かった。とても良かった。借金のカタに中東に売られてしまったスズキ君と第二王子のハーリドのほとんどプラトニックな優しい恋物語。長子でないだけで不遇の立場にある聡明で思慮深いハーリド。ハーリドだって籠の鳥なわけで、なるほどこんな王子様だったら恋にも落ちるかもしれない(笑)言葉が通じないというのは、相手に対して「想像すること」がとても多いということ。外国人の彼氏がいる友人は「英語すら通じないときがあって、そういう時は諦めるか勝手に解釈する」と言っていた。言葉によるコミュニケートなんて私が思うほど大したもんじゃないのかもしれない。王子様がただ腕に添えた手だけで、スズキが握りしめた手だけで十分なんだと思えるぐらいにロマンチックな素敵な話だった。


今月は草間さかえ、ヤマシタトモコ、そして雁須磨子の非BL漫画が立て続けに出るので楽しみ。仕事が年に一度の嫌イベント(棚卸)前に入るため、終わるまでは気分が完全に晴れそうにないので漫画を楽しみに乗り越えよう。10月は・・・嫌イベント本番なので小心者だと思いつつも今から本当に嫌だ。でも、その後にあるJ庭に初参戦しようかと考えていてドキドキ。明治さんに加えて草間さんまで出ると聞けば、目当てが少なくても行ってみたくなってしまう。しかし、その頃母との初二人旅行計画も進行しているのでどうなることやら。母と叔母に同行するつもりが叔母が行けなくなった為母と二人に。奈良方面に行くらしい。こちらも地味にドキドキしていますよ。

「オレ以外立入禁止っ!」月夜野亮

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「息子を捜しに行く!」同じビルに働くサラリーマンとして再会して以来三年―。高校時代から憧れ続けていたサッカー部の先輩・三ヶ森に告白を拒絶され続けてきた織田は、挙句、思いもかけない言葉を聞かされてしまう。成り行き上、一緒に息子捜しを始めた織田だが、ふたりの前に現れた息子の虎治は高校生で、しかもその顔がなんと…!?織田の情欲の炎が、三ヶ森の肌を熱く灼く、年下攻ハードラブ。

月夜野亮といえば!私にとっては菅野彰のお友達のレストランクラッシャーでフランス旅行中スーツケースに蹴躓いて死にかけた博識で人望溢れる変な人!!なわけでして(「海馬が耳から駆けていく」菅野彰 全巻参照のこと)。そんな月夜野さんの小説を初めて手に取ったのですが、色々たまげました。
ギャ、ギャグなんだよね?何だろうこのコミカルギリギリなノリと支離滅裂というか文法丸無視の会話文は。いや、否定しているわけではなくて、面白い会話文を書かれる人なんだなとそればかり気になってしまったのですよ。勝手なイメージですが、なんとなく硬い文章を書くのかなと思っていたので。話の展開がどことなく「JUNE」な雰囲気を感じたのですが、私だけかな・・・。内省的で自虐的な無気力男が子供が居たという事実に舞い上がり一転して全てを息子に託そうとする飛躍っぷりに「JUNE」っぽさ感じたのですが、私は「JUNE」を一体何だと思っているのか。受けがすっごいダメな男で笑いましたが、見知らぬ女に13歳でレイプされて出来ていた息子だという展開に軽くのけぞりました。そしてそんな過去を受け止める攻めの徹底した献身っぷりに若干引きつつも、いざ成就してからの夜の変貌っぷりにこれまた驚きつつ納得しました。3年も粘ったとはいえ濃いにも程があるだろう!という濃厚さですよ。エロだけ別の小説みたい。まぁ、こういう変態は大好きですけどね。
実は息子がいた―というこの息子にはあるオチが付きますが、それも含めて色々オカシイ話でそれなりに楽しく読みました。「孫の顔が見たい」などと言う親のことやら自分の性癖のことやらで自暴自棄になっていた男には、「息子」は何が何でも大切にしたい「希望」だったのだろうと納得することにします。息子にとっても三ヶ森の存在は大きな希望になるようですしね。この息子君がちょっと物分かりの良すぎる良い子ちゃんだったので、もう少し動かしても楽しかったかなーなんて思いましたけどね。
少しモヤモヤしているのはやっぱり13歳の少年をレイプという題材の限りなくライトな扱われ方だろうか、あまりにデリケートなことを通りすがりに軽々しく喋る同級生か(些細な事だけど、実はこの場面が一番嫌だったのよ)。すべての登場人物に対して「それはちょっと・・・」とツッコミたくなる小説も珍しいかもしれない(笑)

そして山田ユギ先生の絵が動く動く。ユギさんの挿絵が私はあまり好きじゃないのですが、それは小説が喰われてしまう印象を受けるからなんだよね。悪いことではないけど、「コミカライズで読みたい!」と思うのが毎回というのはちょっと小説家さんが可哀想だ。しかしこの話には本当に合います。
微妙な感想になりましたが、最初に書いたように「月夜野亮」の小説を読んだ!という妙な達成感でいっぱいなので個人的には満足です。



「生日快楽」小野塚カホリ

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「虜囚」以来、約9年ぶりとなる、小野塚カホリの完全オリジナルBLコミックス!!借金のカタに精子を採取されてしまった無気力青年・達也。彼はある日、電車の中で痴漢めいた背徳行為を目撃し、その痴漢を強請ろうとするが、逆に軟禁されてしまう。その男・森中は、男を抱いて情報を引き出す、危険な情報屋だった! 地上8階、携帯電話も通じない部屋に閉じ込められた達也。森中は口もきいてくれないばかりか、連れ込んだ男を達也に見せつけるように抱く。はめ殺しの窓の部屋で、獣のような息遣いと喘ぎが、達也を追いつめていく。そして、森中が見せた一瞬の優しさにほだされ、ついに脚を開いてしまう…。しかし、ある日森中の部屋に達也の借金とりが現れ、もともと森中が達也を知っていたことが発覚。森中は達也を「実験材料だ」と言う…!?

9年ぶりの小野塚カホリの新刊。
今年の冬に実家に帰った際にまとめて読んで簡単な感想を書いたこともあり(小野塚カホリ先生のこと)、その作品群への気持ちが多少は戻っているところへの発売なので嬉しかった。何も知らずに読み始めたのでそのあまりの「変わらなさ」に驚いたのだけど後書を見て納得。昔(99年、00年)の作品がようやく収録されたとのこと。小野塚漫画の時間が止まっているのに対して私の時間はちゃんと動いていたのだなーと違った感慨を覚えました。10年経っても20年経っても小野塚さんの漫画は色あせないと思うんですよ。「普遍的」とは違うんだけど、その独特な「雰囲気」にはいつの時代もきっと夢中になる人が存在すると思うんだよね。その夢中が一生続くようなものではないにしても、思春期や青春期のドロドロまっただ中の人間にはストレートに響く力を持っていると思います。青かったり自傷的だったり退廃的だったりするんだけど、そういったものが身近にあることで逆に危うさから身を守るような自衛手段というか、カタルシスがあると思います。
表題作は上記あらすじ通り。ちりばめられた謎が収束するわけでもなく安穏とも不穏ともつかない日常を送るであろう2人。結局彼らの関係は何だったのだろう。いや予想は出来るけどわからないままだしさ。試験管ベイビーだった男が自分の出生に復讐するかのように「愛」を利用して男達を破滅させていく姿は滑稽だけどどこか愛おしくもあった。しかし小野塚さんの漫画では性愛自体が重要で、それが男同士であることの意味なんて吹っ飛んでしまう部分がある。そうそう、以前も書いたけど小野塚漫画はBLじゃなくて「男同士の性愛漫画」だと思うんだ。なんとなく。
余談だけど個人的好みとして、自殺した痴漢プレイ男のことが妙に気になる。真面目で堅物な男が堕とされていく様が読みたいなんて思ってしまった。

ほのぼのカップルのナカコとシュウジに久しぶりに会える!と楽しみにしていた「ピーナッツ ポップガン」ですが、あれ、読んだことあるよ!?この短編ってコミックに収録されていなかったっけ。雑誌で読んだのかな?特別好きな話だから構わないけど期待していただけに残念。でも相変わらず優しい話だった。この漫画のある言葉がすごく印象的で、読んだ当時はずっと頭の中でリフレインしていたという恥ずかしいことを思い出した。「僕の精神まで狂(おか)してね」という言葉。そうだよ、小野塚さんのモノローグにはこういう破壊力もあるんだよな。ああ、この二人の出会いの話を読み返したい!身体を繋げるのが怖い年下君と、彼を優しく包む年上男のほのぼのした暖かい話です。忘れてはいけないのは、小野塚漫画にはこういった優しい話もあるということ。これは本当好きだ。読んだ当時はナカコと同年代だったので、今はシュウジと同年代だ!ということに気が付いてこれまた感慨深いものが。シュウジは今の私の目から見てもとてもいい男だ。そういえば脇に出てくるナカコの友人の話も好きだった。コーヒー豆の名前がタイトルに付いていた話。「キャラなんとか」だったな。段々好きな話が多かったことを思い出してきたぞ(笑)
最後の「ポーラー」も良かった!居酒屋バイトと彼に恋をしているサラリーマンの話。ラストの余韻がたまらなく好きだ。二度と会うことはない二人でも、空に輝く星のように記憶が存在するというのは救いだと思うから。サラリーマンの人が幸せになるといいなと思う。

もし小野塚漫画を未読の方がこれから挑戦されるのなら、是非とも1作目の「僕は天使ぢゃないよ。」から順番に読み進めてみて欲しい。昔の作品の方が面白いと言っているわけではないのだけど、その魅力が伝わりやすいのは断然初期作品の方だと思うから。




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気がつけばいつもそばにBL.猫かぶってみても、結局たどりつくのはそこなのです。感想は基本的にすべてネタバレ注意です。拍手&コメントありがとうございます。拍手コメントは該当記事のコメ欄にてお返事いたします。リンクフリーですがご一報頂けると嬉しいです。

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