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「全ての恋は病から」凪良ゆう

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大学生の佐藤夏市は、いつでも人肌に触れていないとダメという謎のビョーキを患うゲイ。ある日、ミステリアスな雰囲気のサークルの先輩、椎名一貴が隣に越してくる。外見はクールビューティーなのに、椎名は全く掃除ができない汚部屋製造人だった!!「いつもモフモフさせてくれる男が欲しい」「タダで掃除してくれるお手伝いさんが欲しい」ビョーキな二人のお隣さんライフの行く末は…。

「なんということでしょう」、面白かった~!!
いや、別に意外でもなんでもなかったのですが、一番笑った台詞なので使いたかったの。
凪良さん待望の新刊!ブログで「おちん〇ん」連発のアホ話だと拝見した時から楽しみにしていました!
前作「夜明け」ではまさかの「攻め」に拒否反応を引き起こすという事態に少々驚きましたが、レベルの高い小説を安心して読ませてくれる作家さんだと思います。私は「小説が上手」という言葉を榎田さんにもよく使うのですが(そして本当にお上手だと思う)、凪良さんの安定感もそれに近いものがあると思います。ここで云う「小説が上手」というのは私的意見ですが、「登場人物の心理描写に説得力があるか」ですね。人物Aにある事象が起きた時にAの内面にどんな変化が起きるか。BLだからメインは恋愛感情になるのだけど、要するにその虚構に説得力があるかどうか。
後から思いついたのですが、受けの先輩に榎田さんの「ルコちゃん」を連想したというわけではないのですよ。東海林とルコちゃんの共依存っぽい関係とも確かに似ていなくはないけど、なんとなく「小説が上手」という私的賛辞に当て嵌まるのはこのお二人なのです。(他の方が二人に比べて下手というわけではなく、ピンとくる褒め言葉がそれだということです)
ままま、先輩エロ可愛い!これは恋に落ちるよ!共感したよ!ということを云いたいだけなのですが(笑)
そして凪良さん、エロを書こうと思えばこんなにきちんと(?)エロエロに書くことが出来るのですね!やっぱりお上手!最初から最後までノンストップで楽しませてもらいました。BL的お約束ホップスッテプジャーンプ!を踏襲した王道展開(お触り&手コキ→口だけ→挿入)も含めて大満足です♪

そんなアホな!と吹きだすような「病気」を持った二人が、互いの欠陥を補う内に恋が芽生えるという流れも、あらすじを読んだ時からわかっているのに楽しいんだな。私はこの破れ鍋に綴じ蓋バカップルが思いのほか好きみたい。コメディって合う合わないが如実に出る分野だと思います。BLに笑いをそこまで求めていないので手を出す作家も作品も限られているのだけど、凪良さんのコメディとは相性が良いよう。

気楽に気軽に読める癒しの作品だと思うので感想も短めに~



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「ファンタジウム⑤」杉本亜未

ファンタジウム(5) (モーニング KC)ファンタジウム(5) (モーニング KC)
(2010/03/23)
杉本 亜未

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早いものでもう5巻になるのですね。
今回の表紙はこれまでとはまた違った趣向で大変可愛らしい!
なんでも抽選で特製トートバッグが貰えるそうなので応募したいと思います(締切は5月末日)
これまでの感想はこちら(その① その②

4巻ラストでは困難な脱出マジックに挑戦することになった良君。因縁の鍵会社が作成した難攻不落の鍵を果たして破ることが出来るのかー!?なんてエンターテイメントなお話にならないのは毎度のことですね。彼はテレビ出演を大成功させ、一躍スターマジシャンの階段を昇り始める。1巻では家の工場で働きながら場末のカジノで荒稼ぎをしつつ公園で手品を披露していた良君が!と思うとなんだかお母さんのような気持ちになってしまいます。もう、良君が可愛くて可愛くて仕方ない(笑)。それにしても、「ファンタジウム」程なんの前評判も知らずに読み始めて、予想していた話と全然違って驚いた漫画はないです。手品を題材に据えながら、人の心の成長を丁寧に描いていく。良君にとって手品は唯一の「武器」だった。それは障害というハンデを背負った良君にとって、自分を活かし、世界と関係する為の武器だった。その手品のあり方が、この巻では大きく変化を迎えることになる。

自分を活かすものから、人を活かすものへ

おじさんが驚いたように良君はすごい早さで成長を遂げている。手品に対する向き合い方はもちろんのこと、おじさんの手を離れて芸能プロダクションに入ったことで彼は多くの人々と出会うことになる。芸能界は成功者だけの世界ではなく、光があれば影があるように消えようとしている敗者も多くいる世界。良君はそこで出会った3人の仲間と関わることで、自分が人の為に出来ることは何かということと真摯に向き合っていく。たった15歳かそこらの少年が、人よりも優れた才能を持っているからと奢ることなく世界を見つめている。彼が抱える識字障害はこの巻でもやっぱりそのままで、彼の中で容易に受け止めて解決されるような問題ではないのだけど、良君はもう、自分のことではなくて人のことを考えている。小さな身体にキラキラした瞳をさせてただ遠くを見つめる良君。この漫画には、人の痛みや汚さ狡さもしっかり描かれているのに、良君は決してブレない。それは痛みを知っているからなんだよね。普通と違うことがイコール劣っていることだと認識する世間と、彼は彼なりの方法で戦い、対話を続けてきた。それが今の良君の強さを形成しているんだ。その揺るがない姿はもちろん漫画的でもあるのだけど、日々揺らぎっぱなしの私には、良君の強さはとても眩しくて救いにすら感じられる。うう、特に山場でもないのにずっと涙腺が決壊しそうでしたもの。

手品によって救われた良君は手品で世界を変えることが出来るのか。
大切に想った人々を救うことが出来るのか。彼の活躍はまだまだこれからです。

それにしてもおじさん!すっかりマンションの住人(良君の帰りを出迎える人)になってしまって!おじさんがいるから良君は前に前に進むことが出来たのよね。強烈な芸能プロのマネージャ(でもイイ人!)に押されて出番も存在感もますます薄いおじさんですが、引き続き私はおじさんの行く末も楽しみにしています。ちなみに「おじさん」と良君が呼んでいるだけで、良君の保護者兼元マネージャーである北條はまだ20代の若者でございます。

杉本先生の絵柄はどちらかというと地味で華があるタイプではないのですが、良君達が漫画の中で生きているのがしっかり伝わってくる。漫画というエンターテイメントも良君が目指すマジックと同様に、受け取る側の「救い」に確かになることがわかる作品だと思います。人間っていうのは、優しくて、強くて、そして美しいなと良君を見ていると思いますもん。
ああ、大好きだよ良君!(私、本当に彼が大好きなのです~!!)

言葉足らずですが心からおススメします!



<追記>
お友達のぺこさん宅(「ぺこの徒然日記」http://pecolife.blog67.fc2.com/)でも紹介をされていますが、「ファンタジウム」の公式サイトで1巻第1話目の動画が見られます!これがまた素晴らしい仕上がりで、涙がこみ上げてきました。読んでみたいけどどんな話か知りたいという方は必見です!!

公式サイトはこちらhttp://ryomagic.com/

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この漫画が凄い!

そういえば新年明けてから「徒然雑記」を書いていないのですね。
拙宅の雑記を楽しみにして下さっている奇特な方はいらっしゃらないと思うのですが、私はブロガーさんが箸休め的に更新される雑記が好きだったりします♪好きな作家の日常エッセイが好きな感覚と同じですね。
現在実家に帰省中でヒマを持て余しているので、ヒマつぶしに雑記など書いてみます。
と云っても堅苦しくなりそうな先の条例問題ではなくて、とりあえず叫んでおきたい漫画に出会ったのでその叫びをば。
え~と、本が手元にないので本当に叫びだけなのですが(笑)
以下、ドアップ注意(たたまない時点で意味なし)


進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)
(2010/03/17)
諫山 創

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だ、大丈夫ですか。
すっごく気持ちが悪い表紙ですよね!安心してください、
中身はもっと気持ちが悪いから!!
内容は「巨人がすべてを支配する世界。巨人の餌と化した人類は、巨大な壁を築き、壁外への自由と引き換えに侵略を防いでいた。だが、名ばかりの平和は壁を越える大巨人の出現により崩れ、絶望の闘いが始まってしまう」という巨人(異性物)襲撃パニック漫画です。
これが面白いのなんのって!なんて云えばいいのかな、不条理系戦闘漫画としては「ぼくらの」(鬼頭 莫宏)に近い雰囲気を感じるのだけど、とにかく1巻では人類に打つ手は何もない。おまけに、謎とされている巨人と外の世界についても何一つ明かされない。その絶望感たるや、ちょっと今まで見たことないぐらい凄まじい。本当に少年漫画で連載されていたの!?と思うぐらいに希望が見えない。(連載が別マガと聞いてちょっと納得)
おまけに1巻ラストでまさかの・・・・・・絶句するしかない

絵はハッキリ云ってヘタクソというか非常に不安定。でも、その鉛筆描きのようなラフで薄い線が作品の不安感をこれでもかと煽りまくる。「フリージア」(松本次郎)と似たような効果を感じるかな。そう、全体的に「IKKI臭」が漂っている。少年漫画のお約束的展開を一切合財無視して突っ走ってくれそうな予感むんむんです。恥ずかしながら単行本が刊行されるまで全然知らなかったのですが、ネットでは既にかなり話題の模様。
これは今後更に大きく話題になると思います。だって面白いもの!!

ふう、以上叫びでした(笑)



「匣男」剛しいら

匣男 (プラチナ文庫)匣男 (プラチナ文庫)
(2010/03/10)
剛 しいら

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狭いところに入りたい―。旧財閥の跡取りで船舶会社副社長の風宮にはおかしな性癖がある。秘書となった幼なじみの祐一朗は、その唯一の理解者で支配者であった。家族に萎縮し、仕事の重圧で心が壊れかけていた風宮は、デスクの下で祐一朗の足下に蹲り安寧を得る。薄闇に包まれた狭い空間は、安らぎと同時に恍惚感をもたらした。まるで祐一朗の執着に閉じ込められたようで…。

タイトルを知った時から気になっていたのですが、あらすじを読み迷わず手に取りました。阿部公房の「箱男」と同じ題であることに気が付いたのは不覚にも読了後だったのですが、不気味でハッキリ云って気持ちが悪い今作にはとても相応しい題だったように思います。読了直後は他人の情事を無理矢理見せられたような(なぜか覗き見という感覚ではない)、衆人環視の露出プレイを(実際にそれに似た行為をしていますし)楽しんでいる二人の共犯者にされたような気がしてなんとも云えない気分だったのですが、その後じわじわと思考を侵されました。

「おまえがバカなのは、とっくに分ってる。
 いつも家族から抑えつけられているから、委縮しておかしくなったんだろうな」(p153)


いきなり後半の台詞で申し訳ないのですが、これは風宮に対して祐一朗が口にした中でも一番ゾッとした台詞です。確かに風宮はおかしい。でも、彼らにはその「おかしくなった」事実をどうこうする気がまったくもってないのです。根本原因となった物事を取り除くには、あまりに長い間圧迫され続けた風宮の精神はもうどうすることも出来ないところまで悪化してしまっている。自分が現実を生きている感覚が乏しく、何も自分では選択できずに只呼吸をしているだけ。心はいつも暗闇と狭い場所で得られる安寧に飛んでいます。そんな状態の風宮を祐一朗は閉ざされた暗闇から連れ出そうとは決してしないのですね。むしろ閉じ込めたがっている。

風宮の閉所と暗闇を好む性癖が育まれた原因の一端は祐一朗にもあるのです。風宮を納戸で発見した幼少の頃から、日のあたる場所に居る風宮の姿など祐一朗は望んでいないのです。カウンセリングを受けようとした風宮を掃除用具入れに閉じ込め失禁をさせ、毛布でくるみ顔すら見えない性行為に誘い、互いの理解者は互いだけであると強く強く刻みつける。

二人は互いの異様を察知しながら慣れ合い続ける共犯者のようなもの。閉ざされた関係を描く作品は多いと思うのですが、ここまで徹底的に互いが閉じようとする方向に動く作品は珍しいような気がします。

壊れた風宮を愛することの苦しさに祐一朗は満たされるから、祐一朗には風宮しかいないのだというあたり、それはもう二人で一生かくれんぼでも追いかけっこでも散歩プレイ(?)でもやってくれ!と匙を投げかけたのはここだけの話です。だけど考えてみれば、変態倒錯に淫する二人が外側にいる人間に納得のいくカタルシスなど与えてくれる筈もないのですよね。トランクケースに入っての散歩プレイには思いがけず萌えました。祐一朗の宣戦布告をを兼ねた風宮への告白と、それを気付かれることなく聞いている風宮にすべてを見透かされ、うろたえるばかりの従兄弟の和輝がやたら気の毒に思えてくるぐらい、二人の抱える闇は深く閉ざされていました。

だけど、自分たちだけで完結していく姿にいっそ清々しさすら感じるのも事実なのです。この小説中で起きていることに、私は何一つ疑問に思う事がないのですよ(祐一朗の仕事ぶりはさすがに小説的だけど)。変態倒錯に二人で嵌まり込めばその安定を守ろうとする。理解者が互いしかおらず満たされていればそこから出ていく必要もない。なんとも不健康で気持ちが悪い話でもあるのですが、そもそも「変態」とはそういうものだと私はかの名作「月光の囁き」(喜国雅彦)を読んだ時に学んでいるのです。
徹頭徹尾閉ざされた世界で二人はとても幸福なのです。ええ、しつこいですが気持ちが悪いくらいに!


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「ミスター・ロマンチストの恋」砂原糖子

ミスター・ロマンチストの恋 (幻冬舎ルチル文庫)ミスター・ロマンチストの恋 (幻冬舎ルチル文庫)
(2008/10/15)
砂原 糖子

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高校三年の千野純直は、成績優秀な生徒会長でテニス部のエース。本当は内気な性格なのだがクールで渋いと女の子に大人気。そんな千野は密かに二年の有坂和志に恋している。有坂を一目見ることが楽しみな千野は、外見はかっこいいのに心は夢見る乙女。有坂もまた千野の不器用さに気付き、惹かれ始め…!?商業誌未発表作品、書き下ろし短編を収録。

重めの作品&感想が続いたので、ちょっと気分を入れ替えて軽めの甘めのものが読みたいわ~なんて思っていたら、運よく本棚から未読のこちらの小説が出てきました。乙女男子(外見は男前)受けということで、ラブコメテイストを大いに期待して読み始めたのですが、蓋を開けてみるとそうでもなかったような。自分に自信がないヒロインが王子様とのハッピーエンドを遂げるわかりやすい話ではあるのですが、その自信のなさと外見内面のギャップに焦点を当てたお話でした。

乙メンはなぜ乙メンになったのか。
三つ子として生を受けた千野には愛らしい外見を持った2人の姉がいた。女の子2人と男の子1人。両親の気持ちの比重は自然と姉2人に向けられていた。これ、すごくよくわかります。別に女の子の方が可愛いと差別をしているわけではなくて、「女の子2人は平等に可愛がらなくてはいけない」という気持ちが強く働くのですよね。子供3人に両親は2人。両親の腕はいつも姉2人のものだったという千野の独白は切ない。彼が過剰にロマンチストになっていったのは、自分に向けられない愛情を求めていたからでもあったわけで。女の子になりたいわけではないけれど、でも、女の子になって姉達のように可愛がられたかったという千野の心理には非常に共感しました。
「可愛い」を排除されれば求めるし、押しつけられれば避けるようになる。
これは何も男の子に限ったわけではなくて、女の子にも同様に云えること。
余談ですが、小さい頃になぜ赤やピンクの服を着なければいけないのか一度ならず疑問に思ったことのある私は、思春期の頃にはすっかり可愛いものを寄せ付けない人間になっていました(今も若干その名残があります)。親友の朋巳が「可愛らしい小動物系美少年、でも乱暴者」という対比も分り易くてよかったですね。千野はあまりにウジウジしたヒロインで、途中一皮剥けたりするのかしらと思ったらそこまで強くなることもなく、あくまで乙女でしたが、でも彼にとっては好きな人に気持ちを伝えることが出来ただけでも大きな成長だったのですよね。千野が高校生の劣等感や自身の無さからくる自意識過剰をよく表現していた半面、有坂は高校生にしては少々出来過ぎのきらいがありましたが(主に人格面で)、ジンクスを信じる乙女で古風な子がタイプだったというあたり、似合いのカップルといった感じで微笑ましかったです。

あれれ、読みながらゴロゴロ転げまわるぐらい可愛い話だったのに、感想に書くと全然伝わらないのは何でだろう?普段あまり「高校生物」を読まないのですが、それは以前も書いたけど「永遠が見えないから」なのですよ。何を恥ずかしいこと云ってるんだって感じですが、本当に。でも、「ミスター・ロマンチストの恋」を読んで、改めて「高校生物」っていいなと思いました。何もかもが初めて尽くしの彼らには、その時の彼らにしかない必死さがあって、人を好きになるときに感じる様々な感情が最強に詰まっている。恋をするということは、喜びだけではなくて、悲しみや恐怖といった負の感情とも無縁ではない。でもそれを上回る喜びに満ちている。そんなことを思い出させてくれる素敵な話でした。

***

さて。
今この時期に「高校生物」を読んだら以下の話題に触れないわけにはいけません。
東京都が規制をしようとしている「非実在青少年」について関連サイトのリンク(時間がないので一か所です。スミマセン)と、思う事を書いています。基本的に頭の悪い人間なので認識の誤り等々あるかもしれません。詳しくはサイトをご覧くださいませ。

***

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「炎の中の君を祈る」樹生かなめ

炎の中の君を祈る (クリスタル文庫)炎の中の君を祈る (クリスタル文庫)
(2004/10)
樹生 かなめ

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天才科学者清水昭利の高潔な理想は、周囲の人間の欲望によって裏切られていた!そして彼が魂を削って開発した限りなく人間に近いアンドロイドもまた―。予想もしていなかった悲劇が現実であることを知った時、怒りは世間に疎い研究者だった清水を変え命を賭けた戦いへと…。渾身のヒューマンドラマ。


BLではない。ライトノベルという言葉も、その言葉の軽い印象から使いたくはない。
何て説明すれば良いのだろうかと考えて思い浮かんだのは「樹生さんの書いた小説」だった。

誰でもいつかは死ぬ。
それと同意義で、誰でもいつかは老いる。
余程の強運の持ち主でなければ医療や介護(程度の差はあれ)を受けながら老いることと無縁ではいられない。
祖父母、父母、義理の父母、夫、そして自分自身。この先の人生に、一体どれだけの人の老いと死を見つめなければならないのかと思うと気が遠くなる。誰もが通った道である、何も恐れることはないと気持ちを奮い立たせるには不安要素が多すぎる(社会的にも個人的にも)この問題。
物語冒頭、樹生さんはこれでもかと容赦ない現実を淡々と描写する。近未来というフィルターが掛かったとしても、人の死をめぐる周辺で起きている諸々は今日の状況と変わらない。介護疲れによる近親者の殺害、心中、嘱託殺人などが頻発し、最期のときを安らかに迎えることの困難さがひたすら描かれる。誰もが疲弊している。医療従事者とて例外ではない。過労によるストレスは人の心から余裕を奪い、表情からは笑顔を奪う。そんな状況に絶望した天才科学者がいた。彼はその絶望を糧に、自分のすべてを投げうって究極の人型アンドロイドを開発し、時代を変えた。そして人型アンドロイドが開発されてから数十年後、天才科学者の高潔な意志を引き継いだ清水は、より良い人型アンドロイドの研究開発が自分の使命だと信じ、日々の研究にすべてを捧げていた。

アンドロイドは命令されたことに決して逆らわない。清水は彼女達を「聖女」として崇めているが、その想いが大多数の一般的な人間に伝わることはなかった。従順な性格に容姿も生身の人間と遜色ない「女」。その末路に何があるか、想像するのは容易だ。だけど、アンドロイド研究にすべてを捧げて生きてきた清水はわからなかった。彼女達に完璧な「女性器」を付けるように命じられてもなお、わからなかった。病人を癒し、介護者を抱える家族を救い、医療従事者を助け、それでも微笑みを絶やさない理想のアンンドロイドを作り出したと信じていたのだ。清水は自分の無知を、知らずに犯してきた罪を知り憤慨する。
アンドロイドの彼女たちが辿ることになった運命は悲惨極まりないが、それと似たような現実だってそこかしこに転がっている。従順であることは決して美徳ではない。反抗の声をあげなければ搾取される一方の関係がこの世界には確かにあるし、いつだって割を食うのは女の方が多い。従順な人間もまた搾取されるだけであるという現実だ。
なぜ、この話に男型のアンドロイドが一体も出てこないのか不思議だった。小説として全体を眺めた時に、たとえば私は清水を取り巻く男達のある1名が「実はアンドロイドだった」というオチになるのかとずっと考えていた。だけど終始徹底して男のアンドロイドは描かれない(存在はするが清水と関わることはない)。正直、とても偏った小説だと思った。あまりにも「書きたいこと」が明確にすぎて、それ以外は作者の目に入っていないと。例えるならば、起承転結の「起」しか描かれない小説。言い換えればそれは問題提起の「起」でもあるのだが、続編が必要な話と云うわけでもないのだ。読んだ後に強烈な痛みと、だけど確かな希望を残して燃え尽きるような、力が籠った小説だった。

読み終えた直後のその感想は、後書を読んだことで確信に変わる。

樹生かなめは元医療従事者です。労働基準法完全無視で働いていた時代のことは、今でも鮮明に覚えています。また、樹生かなめは病人を抱える家族でもありました。あの時のことは生涯忘れないでしょう―(中略)
この本だけははっきりと言います。
この本は書きたくて書きました。書きたくて書きたくて仕方がなかった。


ああ、そうなんだろうなと。本当に、本当に、作者はこの話を書きたくて書きたくて仕方がなかったのだろうなと。私は普段、後書というのはあくまで後書で、本編を捕捉するようなものになるのはあまり良くないと考えている読者だ。でも、この後書は、この話に必要だったと心底思った。なんだろう、書き手の「血」を見たような気がしたのだ。何があったのか語られなくても、十分伝わるような、読む手が震えるような言葉の羅列だった。

多くの問題をはらんだ作品で、読み手を選ぶ内容だとも思う。数年前の自分なら、もしかしたら「アンドロイドの人権面」に反応しただけで終わったかもしれない。清水もまた、会社という営利団体に属する人間だということを考えることはなかったかもしれない。介護、医療の問題についても同様だ。とても重い話なのだけど、清水と彼を取り巻く男達とのやり取りは可笑しいし(最初にBLではないと断ったけど、そういった要素は本当にない)、ギリギリのユーモアがある。そう、絶望は見えないのだ。わかりやすい救済は与えられなくても、でも、清水は諦めずに立ちあがった。その姿は希望以外の何物でもないと思う。読み終えたあとにタイトルの意味を知り、また震えた。





「罪と罰の間」綺月陣

罪と罰の間 (リンクスロマンス)罪と罰の間 (リンクスロマンス)
(2010/02/28)
綺月 陣

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リストラによって会社を解雇され、家族からも見捨てられてしまった41歳のオヤジ・高島。生きる希望もお金もすべて失った高島は、歩道橋から飛び降り自殺を図るが、運悪く派手なオープンカーの中に落ち、助かってしまった。そのまま車の運転手・三沢に拾われた高島は、イカサマカジノで稼ぐ相棒として、彼の仕事を手伝うことになる。しかしある夜、強引に三沢に抱かれた高島は、彼の抱える心の闇に気づいてしまい…。

綺月さん初読みでございます。他所様で怒涛の有名トンキワ巨編「獣三部作」の感想を読んで以来、BL界にはとんでもない方がおられるようだ~と他人事のように思っていました。まさか手に取る日がくるとは思ってもいなかった作家さんの一人です。「脂(非枯れ系)オヤジ受け」の噂に誘われてワクワクしながら読み始めたのですが、とりあえず「脂オヤジ受け」についての萌えは置いておいて。「罪と罰の間」の名の通り、登場人物の犯した「罪」、それに対する「罰」、そして間に存在するものはおそらく「償い」だと思うのですが、全編通して「罪とか罰とか…」と呟かずにはいられないぐらい、それ一色のお話でした。当然重いし、綺月さんの文体には終始馴染めず座りの悪い読書ではあったのですが、夢中で読みました。
綺月さんの文章の率直な印象は、「!」「…」「―」が多い。そして私が苦手とする「喋り口調」をそのまま文章に起こしたかのような会話文。この二つが重なると作品としての「好き」からは外れてしまうことが多いのですが、とにかく内容で読ませる読ませる。息も吐かせずとはまさにこのこと。

高島がこの世を儚み身を投げた「死者」なら、差し詰め三沢は「天使」といった役どころのように思えます(職業イカサマギャンブラーでド倹約家の天使)。だけど違う。この話の真の主人公は高島ではなく三沢なのです。断言するけど、これは恋愛の過程を楽しむような類の話ではない。二人の間に生まれる「愛のようなもの」は、最初から拍子抜けするほど呆気なく姿を見せるし、似たような傷を抱えた孤独な者同士が心を寄り添い合う過程すらも問題ではない(ように私には感じられた)。何故なら「死者」は「天使」に救われたから―そこに「愛情」が生まれるのは必然のように描かれているのですね。
高島に焦点を当てれば、何もかも失った男が歩道橋から飛び降りたことで生まれ変わったという都会のファンタジー。「白馬の王子様」ならぬ「白いポルシェに乗ったビジュアル系」に救済される過程はまるで御伽噺のよう。でも同時にどこか泥臭さもあるのは、三沢という謎の男のあまりに質素な生活だとか、寂れた商店街だとか、流行らないけど常連客で賑わう喫茶店だとかの日常風景による。天使のように慈悲深い男は一体何者なのか?彼は一体何をしているのか?この三沢の抱える「罪」と「罰」の「間」にあるものが、この話の肝ですね。抱えてしまった罪と正面から向き合いすべてを捧げて償いながら罰を受け入れる男の姿に、高島自身の気持ちにも変化が生まれていきます。

読みながらずっと「ゲイノベル」のようだなと思っていたのですが、言葉の選び方や直截さだけではなくて、天使のような三沢は決して聖人君子なわけではなく、欲望にはかなり、とても忠実。一目惚れらしき高島をあっという間に手練手管で夢中にさせます。そのギャップが、以前に城平海さんの「アンナ・カハルナ」を読んだとき感じた印象と被ったのですよね。すごくセンチメンタルな話のようでフィジカル面はガッツリという。三沢の抱えるものは重くて哀しいのだけど、愛し愛されることに長けている魅力的な人物でした。

それにしても、高島が妻子にした「罪」を今の私は冷静に眺められないな(笑)
だって…この男マジで最低っすよ、奥さん!金の切れ目が縁の切れ目とはよくいったものですが、最後の晩餐の冷え冷えとした空気のリアルさといったらない(いや、知らないですけど)。それなのに最後まで「お茶!」とか云う男の愚かさには怒りを通り越して情けなくて哀れで渇いた笑いすら出てきそうでしたよ。私が理想とする「オヤジ受け」からはあまりに遠い人物だったので、途中で「攻めの方が良かったかも?」とも思ったのですが、女好きだった高島が「女」にされることで彼の内面の転換を描くことに成功しているので、やはり高島は受けるしかなかったのです。それが結局は三沢の過去のトラウマとも繋がることになり、他人を思いやる気持ちなんてこれっぽっちも持ち合わせていなかった男の変化がよく伝わってきて泣かせる効果もありますしね。「オ」連発の喘ぎ声には少々面食らいましたが、慣れれば大丈夫!ついて行きましたよ!(萌えにはならなかったあたり、まだまだ未熟者です…)

もちろんすべてが納得出来るというわけでもない。三沢が高島の罪を何度肩代わりしたとしても、それは高島自身の罪滅ぼしにはならないのでは?とも思った。だけど、救済というのは結局のところ結果論で、「今、お金が必要な人にお金を提供すること」の即物的な下品さと、「でも救われる事実に変わりはない」という真理を上手いことついていて、凝り固まった常識を覆される快感がありました。「罪」と向き合い「罰」を受け入れた時に、これから一体自分が何を出来るのか。高島の贖罪がいつの日か、傷つけた人たちに伝わるといいなと思います。面白かったです!

綺月さんとのファーストコンタクトを無事に済ませられたので、この勢いで他の作品にも手を出してみようかな。「獣」はやめておこう。「龍と竜」あたり読んでみようかしらね。

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「こめかみひょうひょう」雁須磨子

こめかみひょうひょう (ミリオンコミックス Hertz Series 75)こめかみひょうひょう (ミリオンコミックス Hertz Series 75)
(2010/03/01)
雁 須磨子

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高校生の橘高照佳は、クラスメイトの芳野憲二に密かな想いを寄せていた。この気持ちは誰にも内緒……のはずだったのに、芳野本人にばれていた!?大人も、高校生も、おじさんも 恋をすれば誰もが自意識過剰になっていく!?雁須磨子が綴るたったひとつの作品集。

私に雁さんを教えてくれたのは大学で出会った友人でした。
それまでも菅野さんのエッセイでお名前は知っていたのですが実際に読んだことはなかったのですね。漫画や小説を全作制覇する勢いで読めば、大抵その作家さんの性格や思考回路が理解出来ると思うのです。主義主張といえばいいのかな。それが見当違いでもなんでも、自分の中での予想は立てられる。だけどたまに何作読んでも何の予想も立てられない方というのがいて、私にとって雁須磨子さんはまさにそういう方です。レディコミの印象はBLとはまた違って、言葉は悪いかもしれないけど「求められているものを描いている。無難にこなしている」というある意味安心して読むことが出来る作品群だと思うのですが、雁さんのBLは…描いていることは難しくない。だけどまったくもって筋が読めない。何がどうしてそうなるのか、きっと雁さんの中では明確に決まっているし、読了すれば「面白かった!」となるのに、どうにも読んでいてモゾモゾするという(褒めてますよ!)。私にとっては一筋縄ではいかない漫画家さんなのです。

そんな雁さんの6年ぶりのBL新刊!堪能しました。
今までの作品よりも恋愛が直球気味でちょっと不思議さが薄れたかな。

「こめかみひょうひょう」表題作(全3話)
2話目だけを本誌で読み、いつコミックになるのかと思っていたらあっという間に5年以上が経過って…時の流れの早さと出版業界ののんびりさに一瞬遠い目をしてしまいました。
中学生の頃に同級生への気持ちがバレてイジメに発展し、引越し転校までした過去のある橘高は、自分の恋愛が成就するとは夢にも考えていない。あともう少し大人になって、自由になって、それからそれからと云い聞かせている。だけど同時に「恋がしたい 17歳の 今の この俺だって」とも思うのだ。隠し撮り、盗み見ときて、会話の切っ掛けがヘチマと朝顔という間の抜け具合が雁さんの漫画らしい。フワフワしていて掴みどころがないのに、いつの間にかストンと幸福の場所まで連れて行ってくれる(余談だけど明治さんに抱く印象と似ている。私の中でこの二人は同じ引き出しに入ってる)。
橘高の恐怖を芳野は本当にはたぶん理解出来ない。「うれしい」の次に「かなしい」がきてしまう臆病な心を、芳野は「ばかだな」としか思わない。そういう高校生で同い年で似たような感じに育ってきている普通の男の子二人が、全然違う内面を持っているのって当然のことなんだけど、その違いがとても愛おしい。橘高の過去はちょっと普通ではないかもしれないけど、それを彼は芳野に詳しくは話さない。で、芳野も深くは聞かない。雁さんは、声高に理解し合っている風なことを描かない。「のはらのはらの」を読んだ時にも感じたのだけど、恋愛をしている二人の間にあるこの距離感が好き。イジメの原因となった同級生と再会する時に、芳野の力を間接的に借りて、橘高が言葉を発することが出来たのもとてもいいと思う。確かにキュンともなるのだけど、雁さんの漫画は私にとって恋愛面のキュンではなくて、個々人の遠さのようなものにキュンとなる。遠いけど近くにちゃんとある関係性にキュンとなる。それが恋愛じゃん!と云われれば返す言葉もないのですが(笑)、とにかく私はこの表題作が大好きだということです。
がしかし、野暮は承知で一つだけ叫ばせて頂くと、BL名台詞100選(なんだそれは)があれば必ず入るであろう芳野の名長台詞(P67)がコミックでは短くなっているのですよ!正確に再現出来ないので書きませんが、すごく残念…。話の展開にはまったく関係がないので個人的なこだわりでした。

その他の短編については割愛。
雁さんがお題通りにBLを描いていることに驚きつつ楽しく読みました。
「めあたらしい日々」「カドをとられた方が負け」が特にお気に入り♪

同時に出た「猫が箱の中」の方が癖があって不思議な話でした。
感想はたぶん書かないけどこちらも面白かったです!

「非怪奇前線」なるしまゆり

非怪奇前線 (WINGS COMICS)非怪奇前線 (WINGS COMICS)
(2010/02/25)
なるしま ゆり

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学生時代からの“親友”である蟹喰菜々生のマンションを訪ねるワタナベは、少々“痛い男”だ。やがてワタナベは気づく。妻の過去に蟹喰がいたことを……!?不条理と必然が織りなす悲痛な物語の果てにあるのは、凄惨な絶望か、生きる勇気は……。表題作「非怪奇前線」+後日譚「非怪奇前線 The After」のほか、1998年発表の幻の短編「きりんは月を食べる夢を見るか」を収録。

楽しみにしていたなるしまさんの完全新作。古巣の新書館から出るのは4年ぶりか。
「え~と、新作の前に…」と、とりあえず云ってしまうファン心はどうかご容赦を。なるしまさんと新書館がきちんと繋がっていることがわかって一安心です。ちなみに今月号のwingsにも時代物短編が掲載されています。

第一印象はとても変な話
なるしま漫画というのは、緊張と弛緩のバランスが独特だと思うのですよ。画面構成や登場人物のキャラクタのせいもあると思うのだけど、ドシリアスな場面を描いてもどこか「緩さ」が残っている。それが味であり魅力でもあるのだけど、鈍い私が物語の本質に気が付くまで何度も何度も読み返さないといけないことになる。何度か読んで、改めてとても面白い漫画だと思いましたよ。いっそのことつまらなければ潔く諦めもつくというのに、はぁ。

蟹喰菜々生(ガニハミナナキ)とワタナベの日常に降りかかった怪異譚。惑うことなき「怪奇」話を題で否定する理由は何か。「非」という文字を意味として提示されれば読者は当然それを額面通りに捉えざるを得ない。だけど頁を開けばそこには「見える」「見えない」「意味がある」「意味がない」という応酬の連続であって、題名からしてその「無意味さ」を化かされたような気にもなる。ただ、グルグル考えてみても常に頭のスミッコに、「なるしまさん、深いこと考えて描いたのかなぁ?」という本音があるのも事実(笑)。なんていうか、昔からそんな感じの印象なのですよ(悪い意味ではなく)

蟹喰にはあるものが見える。
だけど「何も見えない」「見えないものは知らない」と幼いころから完全にその存在をシャットアウトしていた。災厄の形をしたあるものに魅入られそうな少女に何も出来なかった過去を蟹喰はいつまでも覚えていたが、そこにあるのは、もしかしたら悔恨にも似た罪悪感だったのかもしれない。「見える父」と「見えない祖父」の姿を見て育ち、結局はカッサンドラになることを良しとしなかった自分への戒めだったのかもしれない。それは蟹喰にしかわからない。
ワタナベには学生結婚した妻と娘がいたが、ある日突然妻はワタナベの前から理由も告げずに姿を消してしまう。実家に引きこもっているらしい妻と娘に会うことは叶わず、ワタナベは今日も蟹喰の家の近所にあるテーマパークを訪れ、失くした愛する者の似姿を探している。そんな二人の5年間継続しているらしい“親友”関係が、ワタナベが妻の危篤と不穏な言葉を知らされた時から一変する。

天然系の主人公&リアリストの主人公。
「少年怪奇劇場」の後書でも仰っているようになるしまさんは「ペア(コンビ)」の話を描くことが多い。
感想を書こうとすれば、説明しようとすれば、すべてを追わなければいけないような種類の話なので困るのだけど、高みから投げかけられる蟹喰のモノローグに酔えばあとはもう、ドップリ物語世界に嵌まり込んでしまった。

「見えているぞ」―それは彼女の宣戦布告。
知らんぷり決め込んだ膿(災厄)への初めての意思表示だったのだ。彼女の投げた言霊が、結果的にワタナベと娘を災厄から救い、蟹喰に災厄を運んだ。それを「優しさ」と取るか未来を予測しての「サドマゾの境地」と取るかは自由だろうし、事実どちらでもあると思う。正気のまま狂っているような蟹喰が語る「人生かけてマイノリティをやりたかった」という自虐と露悪は痛烈な皮肉のようにも感じる一方で、著者が後書で「直前まで普通の女の子だった」というように、彼女の「変態(体)」にももしかしたら大きな意味などないのかもしれない。半身を焼かれ、片足を失った蟹喰が告げる希望の言葉に、不覚にもワタナベ同様涙している自分がいた。なるしまさんのモノローグは時に高みから見下ろされているような視点を持ち、突き放されているような感覚に陥ることもあるのだけど、今作の主人公蟹喰が語る言葉は無性に私の心に響いてきた。狂っている彼女が語る言葉は至極真っ当で、私がなるしま漫画を読むときに常に感じる「人間讃歌」が存在する。神の視点をもっているかのような蟹喰だが、後日談で明かされる真実(?)にはもう一捻りあって絶句してしまった。「ガニィちゃ~ん」と間が抜けた名前で呼ぶワタナベだって、その言葉の選び方はきっと確信犯だ。本当、憎いくらい絶妙な「弛緩」だ。

とにかく、この蟹喰菜々生というヒロイン(ヒーロー)が強烈で強烈で、驚くことに私の中で「少年魔法士」に次いで好きな作品になってしまったのです。蟹喰とワタナベのヤオイ的な関係も大変好みでした。デビュー作から読んできて十数年目でこんな出会いがあるとは!
同時収録されている「きりんは月を食べる夢を見るか」も初読み時に「変な話」と思ったのを覚えています。なるしまさんは「死ぬほど恥ずかしい」と仰るけれど、私は当時とても好きでしたよ。今読むと…絵がお上手になったなぁと思います(笑)そして、やっぱりとても優しい漫画を描く人だなと思います。

兎にも角にも大満足の1冊でした!



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Author:yori
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