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「鈍色の空、ひかりさす青」崎谷はるひ

鈍色の空、ひかりさす青 (幻冬舎ルチル文庫)鈍色の空、ひかりさす青 (幻冬舎ルチル文庫)
(2010/04/15)
崎谷 はるひ

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十七歳の深津基は、学校で激しいいじめにあっていた。父親にも虐待され、行き場もなく彷徨う雨の中で、基はスーツ姿の男にぶつかり眼鏡を壊してしまう。後日、再び同級生から暴行を受け逃げ出し倒れた基は、先日の男・那智正吾に救われる。弁護士である那智の家に保護された基は、次第に那智に惹かれはじめるが…。

読みながら、感想は書けないだろうなぁと思っていた。
私は小説を読むとき感情移入というものをほとんどしない。作品の明暗にテンションを左右されることもないし、たとえ左右されたとしても「揺さぶられた=幸せな読書体験」として記憶に残るだけ。ええ、退屈な人間でございますよ(笑)だからというわけでもないが、繰り返される暴力描写も生理的嫌悪をもたらす虐待描写も、「小説だから」という前提ですべてを受け入れることが出来る。が、BL小説を読んでいると、時折悲劇を萌えの装置として使うことに抵抗を覚える類の話があるのも事実なんだよね。今作の主人公が置かれた境遇の過酷さは、現実のアレコレと非常に隣り合わせの問題で、そこに一瞬でも萌えを見出してしまった(あっ)ことが自分的にアウトだったのだ。
そんなこんなで感想は見送りと思っていたのだけど、ちょっと気が変わったので書き出してみた。

崎谷作品を読むこと自体が実は珍しいのだが、エロ描写に尋常じゃないページ数を割く方というイメージはあるものの、小説が上手い人だという認識もしっかりある。ただ、あらすじを読む限りでは、いつも受けと攻めの関係が私の琴線に触れないのであまり手を出さないのだけど。だから最初に不穏な雰囲気漂う表紙に目が留まり、次いで著者名を見て驚いたのだ。初出は同人誌ということで、普段見かける崎谷作品とはかなり異なる印象なのも頷ける。

ここまで受けが痛めつけられる話というのも珍しいのではないかな。「愛ゆえに」という前提が付くのなら(それも迷惑な話だが)水原さんの過去作品などが思い浮かぶけど、今作の受けはひたすら「暴力」に晒される。学校では「イジメ」、家では「虐待」が容赦なく彼を襲い、路地裏のゴミ貯めが心安らぐ唯一の場所だという少年だ。基は強い。彼は自分の人生には「拠り所」が必要だとギリギリの精神状態に追い詰められながらも、知っている。だがその強さが更なる暴力を呼び寄せているのも事実だし、基が拠り所に選ぶ「道具」の不穏さを思えば際まで追い詰められた精神が暴発するのも時間の問題だというのもよくわかる。逃げを打たなければ更に追い詰められる構造は、現実社会でもよくあるものだ。不自由な17歳という年齢で、唯一彼が選んだ手段が「逃避」ではなく「道具」だというその重さを思うと胸が痛む。

那智という大人と出会うことで閉ざされた基の世界に光がさし始める。
だが、暗闇に慣れ過ぎた基にとって光は未知の怖ろしいものでもあった。
崎谷さんの巧さは決してエロだけではないというのがよくわかるのが肝心の「恋愛」描写だ。
本当に崎谷さんは恋愛描写が巧みだと思う。人を好きになることでどんな気持ちが生じるか、何もかもが初めての基の感情の揺れに、物語の過酷さを忘れてキュンとなってしまった。大人×子供という本来私が苦手とするカップリングも、日常をこれでもかと蹂躙され続ける基が主人公の今作ならば、逆に彼を救えるのは大人しかおらず、それが那智の使命のようにすら思えてくる。一筋縄ではいかない過去を持つ那智の造形がバランスを取れているように思えてくるのだ。

しかし、王子様は間に合わない。
那智の存在が基の頑なな心を変えていくのは事実だが、彼が戸惑っている間に決定的な悲劇が基を襲う。しかしその悲劇は突破口ともなり、壊れた「道具」という武器の代わりに基は「愛」を手に入れることになるのだ。何よりも強靭なその武器は、時に諸刃の刃となって生まれたての基を苦しめるかもしれない。それでも今度こそ王子様はきっと間に合って、彼を助けて共に生きてくれるのだろう。最後がハッピーエンドでこれ程安心した話も珍しい。

実は決定的な悲劇の前の輪〇が未遂だったので油断をしていた。正直、商業本でそこまで書かなくても…と思ったのは、崎谷さんの描写に逆に甘さを感じたからかもしれない。もっと、もっと、過酷なことになると思うのだ。というか、小説のバランスとしてなって欲しかったかな。性的暴行を受けた人間が愛ゆえにとはいえ容易に性行為を受け入れる背景には「体験の上塗り」があるのかもしれないが、そしてそういう話は結構見かけるのだが、その部分の葛藤にもう少し頁数を割いて欲しかったかな。

読む人をとても選びそうな作品だけど、私は面白く読んだので満足です!






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「ありのままの君が好き」樹生かなめ

ありのままの君が好き (SHYノベルス)ありのままの君が好き (SHYノベルス)
(2005/04/04)
樹生 かなめ

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「俺のぶーになれよ、幸せにしてやるから」人呼んで『ぶたごりら』の四天王寺寿杏はゴリラの巨体に乙女の心を持ち、父親が死んだら自分も死ぬと断言するファザコンの成人男子である。外を歩けば後ろ指さされ、家でめそめそ泣いてお菓子を貪り食べる…そんな寿杏の家に、ある日、高校時代の同級生で父親の弁護士事務所に勤める若手弁護士・英駿二が同居することになるのだが。好き、好き、好き、好きになる?誰が誰を好きになる?人生を豊かにするウルトラ・オトメチックラブ誕生。

数ある樹生作品の中でもたぶん「龍&Dr」に次いで有名なのではないかと思われるこの作品。
読む前は8割方が笑いのコメディだろうと予想していた。ところが読み始めて数ページで涙腺が決壊しそうになり、その後もところどころで泣きそうになり、とにかく全編通してウルウルしっぱなしだった。

外見コンプレックスを強く持つ主人公といえば、先日読んだ「不細工特集」が思い浮かぶけど、寿杏に比べればあの国枝さんですらまだまだマシな方だと思えてしまう。203㎝170㎏の縦にも横にも大きな身体に人相は「ゴリラ」と表されるのも頷けるような凶相(ゴリラ、可愛いけどね)。そして、料理以外は勉強も運動も何も出来ない引きこもり気味の25歳成人男子。ただ、その心根は誰よりも優しく純粋。それ故に超が付くぐらい「卑屈」でコミュニケーション不全のファザコンという、これでもかと「(BLとしての)!?」を詰め込みまくった寿杏。そんな彼が受けなのだから、樹生さんスゲーよ・・・としか云えなくなってしまう。木原さんの「Don't Worry Mama」でもデブで性格が悪い受けが登場したが、彼は最終的には脱皮したので、そういった意味でも樹生さんはやっぱりスゴイ。

ミステリーの叙述トリックと同じで、小説ならではの手法を存分に使った作品だと思うのだ。何せ寿杏の姿は読者が脳裏に思い浮かべるしかないわけで、挿絵の雪舟さんは本当に良い仕事をしている。「不細工に萌える!」という猛者が多いのも知っているが、もしこの作品が漫画だったら、私のウルウルは3割減ぐらいはしていただろうな(ヘタレで申し訳ない)。視覚イメージがないから萌えるのだということを理解しながら楽しむ面白さがあると思うのだ。

攻めの英は私にとってはすっかりお馴染になった、樹生キャラ特有「人の話を聞かない攻め」なのだけど、彼が寿杏を見染めた理由というのが「究極の愛」なのだ。英はゲイだけど、デブ専でもなければブス専でもない普通の嗜好の男だ。そんな彼はただただ寿杏の内面に惹かれて熱烈な愛の言葉をぶつけるのだ。あらすじにある「ウルトラ・オトメチックラブ」とは寿杏の性格が「乙女」という意味と、「超少女漫画的展開」のことを指しているのだと勝手に思っている。コンプレックス故に卑屈だけど他者を嫉むことなく呪うことなく慎ましく生活する従順な寿杏。彼は外見以外ならばまさに男が理想として抱きそうな「嫁(いや、だいぶ他の能力に問題ありかな。押し売りとか詐欺とか運転とか…)」ともいえるのだ。容姿と能力が人より数倍優れている英は性格に難ありで、人と3日も過ごせばアラ探しをしてしまい結局別れるという付き合いを繰り返していた男だったのだ。寿杏の外見が内面を形成していることも含めて、英は「ありのままのおまえが好きだ」という殺し文句を繰り返し吐くのだからたまらない。寿杏が今まで他人から受けてきた言葉による暴力の数々の描写を読んだあとに、そんな熱烈な愛の言葉を読まされるのだから、私はもうコロッとやられてしまったよ!

ところで、キュンキュンする一方で実は結構大きな「怖さ」も感じたのだ。
生まれ持った外見は仕方がないとして、寿杏の性格と体形の一因を担うのが父親である嘉一だ。
嘉一は寿杏がこのままでは良くないということを重々承知しているし、息子の未来を少しでも明るいものにする為に助言なり手助けなりをしていたのだが、不仲が続いた妻との離婚を契機に寿杏の成長を投げてしまう部分がある。それは、従順なままの寿杏でいて欲しかったからに他ならない。息子が変化することを恐れたのだ。人間不信のきらいがある嘉一にとって、息子の寿杏だけが「ありのままの姿」をしていて「ありのままの姿」を受け入れることの出来る稀有な人物だったのだ。ファザコンの寿杏と嘉一の間に漂う蜜月のような雰囲気を「母と娘」に転化したら、それはもう一気に「母は娘を支配する」(斎藤環)の世界だとも思うのだ。ままま、嘉一は自分の死後を心配して、自分と同じような性格の英を寿杏にあてがう為に2人を引きあわせるという力技を見せているのだけど。
親は子供を支配することが可能なのだと、ちょっぴり暗澹とした気持になってしまった。本当にちょっぴりだけ。
寿杏は父親が大好きで、父親の世話をするだけで幸せという息子なのだけどね。

斜めな感想も抱いたけれど、卑屈なお姫様が自信満々の王子様に救われるラブストーリーとして十分に楽しめたし、深い感動すら覚えてしまった。寿杏はその体形故に道行く人に後ろ指を指されるような人生を送ってきた。自分は絶対にそんな言葉は云わないと思っても、203㎝の男が前から歩いてきたら思わず視線は向けてしまうと思うのだ。そこに明確な悪意はなくても、寿杏が感じている苦痛はその視線の延長線上にあるもので、だから「千人より俺」と本気で云う英の言葉に打たれてしまう。誰の視線も言葉も気にしない、なぜなら愛してくれるたった一人の人が側に居るから。それって、すごくすごく素晴らしいことだと思うのだ。改めて云うことでもないけど、本当にそう思う。

ぶーに幸あれ!(続編希望!!)



「裁かれし者」本間アキラ

裁かれし者 (Chocolat comics)裁かれし者 (Chocolat comics)
(2003/10)
本間 アキラ

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政治家の汚職事件を追う検察庁特捜部の検事、杉浦恭は、供述調書をとるために代議士の藤堂樹と面会する。不遜極まりない態度の藤堂は、かつて同じ児童福祉施設で育った幼なじみであり、情欲を向けられて拒んだ相手だった。久しぶりの再会にもかかわらず、過去とかわらぬ執着を向けられ戸惑う恭。そして、妹を人質にとられて、その身の無事と引きかえに身体を差し出せと迫られた恭は、条件をのむしかなかった―。信念とプライドをかけた男達の渇愛。

昨年「兎オトコ虎オトコ」で注目された本間さんの新装丁版!
4作品刊行されたこと&表紙と中の絵柄がかなり違うらしいということは以前から知っていたのだけど、どうにもこうにも未だ「LJ」熱を引きずっている私は、買おうと思っていた可愛らしい新刊BLには手が伸びず、気がつけば本間4作品の中でも際立って暗い表紙の今作を手に取っていた。主人公が「検事」ってところも琴線に触れた理由の一つかな(笑)

地味なのに濃い劇画チックな絵柄は確かに読み手を選ぶだろうし、「兎虎」からは想像出来ないシリアス系の話でもあるのだけど(後半掲載の医者物「白き幻影の如く」はシリアスとコミカルが8:2ぐらいかな?ところでタイトルセンスが絶妙にダサくて味わい深いと思うのだが、私だけだろうか?)、予想以上に面白くてビックリしてしまった。因縁のある幼なじみが敵対する者同士として再会を果たす話と云ってしまえばそれまでなのだけど、表題作をたった2話で語りきった力量には素直に感心してしまう。本間さんて、もしかして漫画がとてもお上手な方なのではないだろうか。今更なのかな、スミマセン。

表題の2人に起こることはあらすじにもある通りなのだが、男と男でなければ成立しないドラマに仕上げていて楽しめる。執着も無体も「愛」が前提にあるが故なのはお約束だが、2人が置くことになったブランク、妹の扱い方など骨太のドラマと云っても過言ではない。法の番人である恭を昔「正義を司る女神テミス」になぞらえたのは他ならぬ藤堂だったわけだが、恭が選んだ職業と無縁ではないだろう。「法を介しての勝負」が描かれなかったことがちょっと残念だが、真に藤堂と恭を「裁く者」が下した優しい判決を読めれば十分だ。

が、私がこの本で一番好きなのは、第3話で描かれる脇役かと思われた藤堂付きの秘書の物語だ。藤堂を愛するあまり恭を選ぼうとする藤堂を刺してしまった秘書の男が、1話目のラストで唐突にクローズアップされる。この展開には正直驚いた。秘書に面会した中年男が前置きなしに放つ「俺なんかを好きになりゃ良かったのに」という言葉とあわせて驚き、「というか、あんた誰よ!?」とツッコミを入れてしまったのはここだけの話だ。男は恭の上司で同じ特捜部の篠田なのだが、その篠田と秘書の話が素晴らしくて目頭が熱くなってしまった。藤堂を失った秘書は死に場所だけを求めて汚職事件の詳細を決して語ることはないのだが、篠田は「目の保養だ」と嘯いて面会を重ねていく。「幸せになりたい」そんな単純な、だけども彼にとっては何よりも困難なように思える願望を、篠田は引きだす。とてもセンチメンタルで拙い会話のやり取りなのだけど、これがいいのだ。篠田が秘書に情をかける理由も特に明かされることはないのだが、篠田が秘書を「幸せにしたい」と思っているのがちゃんと伝わってくる。これはもう、漫画に力があるからだとしか云えない。再読して驚いたのだが、秘書である彼の名前は名字も含めて1話から3話のラストまで明かされることがないのだ。名前のない男が初めて名前を呼ばれたときに見せた表情を想像するだけでも胸が詰まる。

実は私、「兎オトコ虎オトコ」にそんなに魅力を感じなかったのが、シリアス系の本間さんとは相性が良いのかもしれない。これを機会に他の新装丁版にも手を出してみよう♪ちなみに後書に著者の「新装丁版人気予想グラフ」が載っているのだが、圧倒的に「裁かれし者」が最下位だった(笑)

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文庫版「レディ・ジョーカー」

レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)
(2010/03)
高村 薫

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レディ・ジョーカー〈中〉 (新潮文庫)レディ・ジョーカー〈中〉 (新潮文庫)
(2010/03)
高村 薫

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レディ・ジョーカー〈下〉 (新潮文庫)レディ・ジョーカー〈下〉 (新潮文庫)
(2010/03)
高村 薫

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一巻読むのに5日、都合二週間かけて「LJ」文庫版、ようやく読了しました!!
「福澤三部作」が文庫本になる日は来ないと踏んでいるのでこれで本当に合田ともお別れかと思っていたら、今月の「サンデー毎日」から高村先生の新連載(「新 冷血」)が始まり、彼が出てくるという情報が。まだまだ終わりじゃない!

ブログも書けない、他の小説も読めない、だけど手元の小説について語りたいことは山のようにあるという大変幸せなストレスを溜めこんだ結果のダラダラ雑文です。まともな感想にはなっていませんのでお暇な方のみどぞ。
もうちょい整理とか推敲とか、とも思ったのですが、こんなに興奮する読書も滅多にないのでご容赦くださいまし。
当然のことながらネタバレ注意です。

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プロフィール

yori

Author:yori
気がつけばいつもそばにBL.猫かぶってみても、結局たどりつくのはそこなのです。感想は基本的にすべてネタバレ注意です。拍手&コメントありがとうございます。拍手コメントは該当記事のコメ欄にてお返事いたします。リンクフリーですがご一報頂けると嬉しいです。

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