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久しぶりに…

魔王 1―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)魔王 1―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)
(2007/11/16)
伊坂 幸太郎

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全10巻。原作は伊坂幸太郎の同名小説(未読)
物語に徹底して流れているのは“自分で考えろ”というメッセージだ。

普通の高校生の安藤には幼い頃から人とは違う能力があった。彼の住む街では開発屋と熾烈な抗争を繰り広げる「グラスホッパー」という自警団が存在した。ある日偶然にも安藤はリーダーの犬養と接触することになる。市民を扇動し自らの信念とする計画を実行に移す為には手段を選ばない犬養。安藤はそんな彼のやり方に疑問を感じ、深入りしていくことになる―

熱しやすく冷めやすい、流されやすく責任転嫁ばかりの諸々の社会情勢に加担している一国民としての自覚がある身としては、なかなかに耳に痛いメッセージだった。これが新興宗教や不良グループの諍いといった規模の小さな話ならまだしも、国作りにまで視野を定めている犬養の存在を私は終始悪とも善とも決めることは出来なかった。対する安藤兄弟の戦い方やラストだって非常に曖昧で示唆的だ。何も終わってはいない。でも当たり前だ。私たちが生きて思考する限り、何かの“終わり”など訪れはしないのだから。私が考える「少年漫画らしさ」とは程遠い話だった。それは主人公の信念の向う先がわからないからかもしれない。現状を打破することだけに必死で先が見えていない彼の1章での退席は必然だろう。では終幕は?もう一人の“彼”が下した一撃の後に一体何が変わるというのだろう。それはわからない。ただ、群衆に一瞬のブランクを与えたことに意味があるのだろう。
サンデー連載中に何度か読んでいたのだが、まさかこんなに面白いとは予想だにしていなかった。主人公の敵が「悪」ではないという構造。ピカレスクロマンでもなく、とても小さな存在として主人公を描いていること。彼らにある「小さな力」は彼らを「異端」とするけれど、そこから逃げるも向き合うも自由なのだ。「死んでるように生きたくない」という言葉によって生きることを選んだ彼らの壮絶な戦いの行方を息付く暇もなく一気に堪能した。面白かった!

Waltz 1 (少年サンデーコミックス)Waltz 1 (少年サンデーコミックス)
(2010/03/12)
伊坂 幸太郎

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Waltz 2 (ゲッサン少年サンデーコミックス)Waltz 2 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
(2010/07/12)
伊坂 幸太郎大須賀 めぐみ

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さて、なんで突然完結した少年漫画を読んだかと云うと理由はこちら!
現在ゲッサンで連載中の「Waltz」を読んだからなのだ。「魔王」では殺し屋として活躍をしていた“蝉”と呼ばれる青年と、彼の雇用主である“岩西”の出会いの物語。これがなんというか、ピンポイントで私の萌えにヒットしてしまったのだ!久々の二次萌えである(ちなみに合田シリーズはカウントされません)。「魔王」でも不思議なくらい岩西への依存度をチラつかせていた蝉。個性的な殺し屋が多く登場する話だったが、蝉に焦点が当てられたのも頷ける。なんというか、本当に二人の関係がヤオイ的で魅力的なのだ(笑)支配されていないと云いながら絶対に岩西からもらった携帯を手離さないあたりとか、依頼に失敗して岩西に切り捨てられると思った蝉の不安定さとか、狙っているとしか思えないよ…。
「Waltz」では孤独な不良殺し屋である少年が狡賢い大人に見出される過程を描いているのだが、「魔王」を知っているから安心して読むことが出来る。過酷な家庭環境に育ち人の命の重さがわからない少年は、流されるままに人を殺して生きている。定住もせず漫喫に寝泊りをし僅かな金の為に理由もわからず人を殺す。そしてある時気が付くのだ。もう長い間名前を呼ばれていないことに。誰も呼ばない名前。誰にも認識されていない自分。彼は自分が生きているのか死んでいるのかと自問自答する。評判最悪の殺し屋少年を岩西は「捨て駒」として活用しようと接触するのだが、初めて自分に熱心にかまう大人の存在に、出会った瞬間から少年の心は捕われている。そして、ミンミンと蝉のように五月蠅く喋るので「蝉」と名付けられる。その場面の絵なんてもう、どこのラブストーリーだよ!という感じ(違う)
兎にも角にも蝉が超可愛いのだ。ゴロゴロしてしまう。ツンツンしながらも必死で岩西の期待に応えようとする姿なんて本当にキュンキュンだ。なんというツンデレ!あっという間に夢中になってしまった。1巻と2巻の表紙を見比べると、彼の目つきが格段に和らいでいるのがよくわかる。ゴスチックな服装も見ていて楽しいし、大須賀めぐみさんは「魔王」がデビュー作だそうだが、表紙のオモチャ箱をぶちまけたような細かい描き込みといい、場面の見せ方といい、とても上手いと思う。それはスピン元の「魔王」でも強く感じたことだ。力がある。
どちらから読んでも大丈夫だと思うが、「Waltz」を読めば「魔王」を読みたくなるのは必至なので順番通りに「魔王」から読むことをオススメします。殺し屋達のピカレスクロマンである(と思う)肝心の「Waltz」本編もとても面白いので続きが楽しみ♪


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「楽園建造計画」高遠琉加

普段完結したシリーズものは読み終えてから感想を書くのだけど、今回は読了毎に綴ってみました。
学生アパートを舞台にした青春群像劇。

楽園建造計画 (1) (二見シャレード文庫)楽園建造計画 (1) (二見シャレード文庫)
(2005/05/31)
高遠 琉加

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芸術学部生ばかりの学生アパート「パレス・シャングリラ五反田」に、そうとは知らずに入寮してしまった苦学生の三木高穂。そこで再会したのは以前三木に無断で写真を撮り逆鱗に触れた写真学科の蝶野洸だった。
三木の過去に横たわるのは同じく“写真”を撮ることを業とした父、秋葉の存在だ。幼い三木を捨て、自分だけの世界へ旅立ってしまった秋葉を三木はずっと許せないでいる。彼の中にあるのは、内から湧き上がる衝動に抗うことの出来ない人々に対する羨望と嫉妬だ。三木は自分には“何もない”と思い、(芸術学部の)彼らは“持っている”と思っている。それはある意味では事実だが、でも決して真実ではない。彼らの持ち物が彼らを幸福に導くのかと云えば、決してそうではなさそうな不穏さを蝶野の写真は覗かせる。感情に溢れ、人間が生きている秋葉の写真に比べて蝶野が撮る世界は無機質だ。「気味が悪い」と三木が感じた伏線がどのように蝶野に繋がるのか1巻ではまだわからない。頑ななまでに秋葉への怒りを持つ三木を蝶野は羨ましいと云う。怒りの裏側にあるものが紛れもない愛情だとわかるからだろう。何を持っていれば幸いなのかは人それぞれで、三木はまだ蝶野のことを知らないのだ。三木の荷物は蝶野や寮の面々と出会ったことで軽くなったようである。では蝶野は?というところが気になる第1巻だった。
同時収録の「さよならを教えたい」はどうやら「パレス・シャングリラ五反田」の前身が舞台の話。こちらはすべて読み終えてから。

楽園建造計画(2) (シャレード文庫)楽園建造計画(2) (シャレード文庫)
(2006/01/28)
高遠 琉加

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2巻はもう一組のカップル、法学部の響川と美術学科の志田の話。何やらワケアリでアルバイト三昧の日々を送る響川はとても危うい男だ。すべてを自分で背負い抱え込んで、身体と心が悲鳴を上げているのにも気付かないような脆さがある。志田と響川は高校の同級生で、志田の“絵”を通じて互いに話すことはなくても存在だけは知っているという関係だった。前巻の後書で著者が「響川はシンデレラ」と云っていたのがよくわかる。学生の彼に負うには過ぎる責任を彼は一人で解決しようとしている。1巻の二人に比べると“小説的(BL的)”な展開と構図ではあるが、響川の纏う重苦しさは『レストラン』の理人にも似ていて、とにかく早く助けてあげてくれと思わされる。ロボットになりたいと繰り返す彼は悲惨で可哀相な子供なのだ。都合の良い「足長おじさん」などは存在せず、金が必要な響川は身売りに似た真似をしてしまう。誰にとってもきっと目が離せない存在であった響川の危うさに、世話を焼き続けた志田は激高して自分が響川の身体を買うと伝えて無理やり抱いてしまう。
1巻の三木が抱える少々モラトリアム的な葛藤に比して、響川のそれは圧倒的に重たい。その分読んでいる側としては余計なことを考えず物語に没頭出来た。“持っている”志田と“持っていない”響川の対比もハッキリしていてわかりやすい。王子様はお姫様を助けることが出来るのか。そして響川の抱える秘密とは?気になるところで以下続刊。

楽園建造計画 3 (シャレード文庫)楽園建造計画 3 (シャレード文庫)
(2006/06/28)
高遠 琉加

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無理が祟って身体を壊した響川と、彼を心配するアパートの面々の様子が描かれる。「パレス・シャングリラ五反田」を“楽園”にしているのは彼ら自身に他ならない。誰かに問題が起きれば皆で心配して支えようとして、何かあってもなくてもすぐに宴会だ。家族ではない。友達と言い切るにはまとまっていない。“仲間”という言葉が一番しっくりくる。大学生の自由で、でも永遠では日々の微かな息苦しさと切なさが端々から感じられる。自分からは決して求めることのなかった人のぬくもり。そして気付く自分に向けられる志田の紛れもない愛情。臆病な響川はそれを素直に認めることが出来ず迷走をする。欲しがらなければすり抜けていくことがわかるのに、一歩を踏み出せない。「帰りたい場所」とは間違いなく「帰りたい人の元」のことなのだ。響川の抱える問題は思いがけない偶然が重なり氷解することになる。少々出来過ぎのきらいはあるが、私は響川の問題は遅かれ早かれ訪問者の存在によって解決したと思う。その前に彼が志田の名前を呼べたことに意味があるのではないかな。
3巻では超然と構えた蝶野のメッキが少しずつはがれてくる。アパートの誰もが薄々気づいているのかもしれない。誰よりも余裕があるように見える蝶野が立てる見えない壁に。蝶野の高校時代を知る友人の訪れによって、自分が彼のことを何も知らないのだと思い知らされる三木。二人の関係がどうなるのか気になるところで最終巻へ。

楽園建造計画〈4〉 (二見シャレード文庫)楽園建造計画〈4〉 (二見シャレード文庫)
(2007/05)
高遠 琉加

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蝶野は三木と出会ってどう変わったのだろう。
傷を告白出来るような人間に出会えたことは確かに大きい。でも一番大きな変化は写真への有り様だったのかもしれない。三木は写真を撮る父親への愛憎から「記憶を留める道具としての写真」を憎んでいたはずなのだ。だから1巻で「それで思い出にされて大事にされるのなんて、まっぴらだ」と云っていた。出会った時の蝶野の写真は「記憶」の奔流だったのかもしれない。彼はカラッポな自分が息をしている「証拠がほしい」と云っていたから。でも、三木はそれに疑問を投げかける。蝶野の中で何かが変わったとしたら、たぶんここだろう。「瞬間」を留めることと「記憶」を留めることは似ていると思うけど、どんな気持ちで撮影をするかで表れる結果はきっと違うのだ。蝶野は強迫観念的に写真を撮ることはもうないだろう。ただ、気持ちが動いた一瞬を愛しく大切におさめていくのだ。それは彼の中身がカラッポではなくなってきている証なのではないかな。カラッポというのは“何も持っていない”ということだ。執着する物事も人もなく、いつでもフラッと出て行ってしまえる自分が蝶野は怖かったのかもしれない。でも三木がいることで、彼の器は満たされはじめたのだ。展開的には蝶野は簡単にすべてを置いて行ってしまうようにも見える(私見だが、ある種の暴力のようにすら感じられる)。でも、全体を俯瞰しているばかりだった彼は弱くて強いから、さよならが来る日のことも、その先も続く関係があることも見越していたのかもしれない。何せ彼らは大学生だったのだ。永遠が見えるには早すぎる。互いを掛けがえのないものと認識した二人の恋愛は動きだしたばかりだ。

「さよならを教えたい」
各巻に書き下ろしで入っている別作品。舞台は「パレス・シャングリラ五反田」の創生期。
幼い頃人間から植物が生えているように世界が見えていた皐月と、同級生の屋敷の物語。とても詩的で美しく残酷な破壊と再生の物語だった。そして唯一の芸大生と芸大生の物語だ。実は読んでいて最も息苦しく、涙が溢れたのはこちらの作品だった。才能はいつだって無慈悲に判断を下す。それが更に残酷なのは、そのジャッジに気付くのはいつだって“選ばれなかった”側の人間だということだ。一緒にいることよりも出来ることがある。離れることが二人の為になるという現実が確かにある。恋や愛よりも選ばざるを得ない運命がある
芸術は志すものではなくて、抗えない運命に引き摺られるように知らぬうちに選択しているようなものなのかもしれない。そういった自分の理性ではどうすることも出来ない熱に駆られて、吐き出すように生み出す人と、そうではない人も当然いて。三木は“持っている”と芸術学部の彼らのことを表したけれど、“持たせられた”皐月のような人間もきっと存在するのだ。想像するだけで息が詰まるのは、自分が何も持たない側だという自覚があるからかもしれないな。ただの感傷に過ぎないけど、今作を読んで流れた涙はそういったコンプレックスによる要素もあったと思うのだ。読み終えて無性に美しいものが見たくなった。目の前に立つだけで圧倒されるようなものが。

高遠さんは場所(土地)の使い方がとても上手いと思う。私は武蔵野の方面になかなか縁がないのだけど、想像を掻き立てられる。線路わきに立つ「パレス五反田」から武蔵野の森へ。小説だとわかっていても、そこへ行けば彼らの息づかいが感じられそうだ。「パレス・シャングリラ五反田」は場所としての存在を続ける。でも、若い彼らが今その時その場所こそが彼らだけの楽園だったのだと気付くのは、きっと楽園を失ったずっと後なのだ。大学生である彼らの日々は永遠ではない。すべては瞬間に帰結するときが来るのがわかるから、読んでいてずっと切なく息苦しかったのだと思う。

素晴らしい作品でした。



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「恋と罪悪」たうみまゆ

恋と罪悪 (MARBLE COMICS)恋と罪悪 (MARBLE COMICS)
(2009/10)
たうみ まゆ

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「隅田川心中」のたうみまゆさん。現在出ているのはこの2冊だけなのだ…寂しいよぉ。
前作の熊田と大川のようなキャラ萌えこそなかったが、こちらも良作揃いの素晴らしい短編集だった!!たうみさん、本当に短編がお上手だわ。そして何より重要なことにやっぱりすごく私好みだ。アンソロや雑誌掲載作まで追いかけたくなっているもの。

「恋と罪悪」
30年越しの中年愛。警察署長(飯田)とマフィアの幹部(柴田)という突拍子もない設定なのだが、読ませる読ませる。高校時代に身体の関係があった二人の立場は「委員長と不良」というわかりやすいものだが、柴田が飯田を見つけて壁を乗り越える際の道具が『こころ』であることの心憎いこと!←似非文学少女の血が騒いでおります(笑)
あなたは本当に真面目なんですか 恋は罪悪ですよ―
互いに気持ちがあることを薄々察しながら、身体の関係だけで一線を越えることが出来なかったことを飯田はずっと後悔していた。ひとことでもいい、気持ちを伝えていればと思うまま30年が経ち約束の日が訪れる。捕まることを恐れず再会の為だけに戻ってきた柴田と決して約束を忘れることのなかった飯田。昔と同じ気持ちがあるわけではないかもしれない。今の互いの立場だってある。でも、それでも人生を賭ける価値のある“約束”が二人を結びつけたのだ。そこまで大切に持っている約束ならば、その後の人生をすべて捧げても良いのではないかと思わされる。キスもしない、抱擁だけの再会だが、昔は応えることの出来なかった想いを伝えることを飯田は叶えた。彼らのその後はわからない。次の再会は本当に30年後かもしれないし、もう二度と会うことはないかもしれない。それでも互いに捕われて生きていくのだ。なんてロマンチック。

「あいのいろ」
時代物!浮世絵の絵師と彫師と摺師の三角関係と見せかけた、絵師と摺師の幼馴染愛!
色彩センスのない絵師の為だけに摺師を生業にした男。二人を結ぶのは「藍の色」という洒落た短編。たうみさんはネームの端々に文学臭を感じるけど、決め台詞への使い方がとても効果的で上手だと思う。ちょっとあざといぐらいの決め加減が似合っていて素敵。

「きつつき、のノック」
これも良かった!!分厚い壁を作り他人と関わることを避けるサラリーマン(桂)が、隣りの部屋の住人の“音”に絆されていく話。隣の住人はタレント(樋口)で「興味を持ってもらうことが仕事だから」と桂に近づく。徐々に生活に入り込んでくる樋口を疎ましく思いながらも拒絶はしない桂。だがある晩樋口が男を連れ込み、その“音”を聞いたことで桂は樋口を拒絶する。「気になる」という気持ちを自分の中から締め出す為に。桂が他人と関わるのを避けるのは、キズつきキズつけ合う関係に失望するのが怖いからなのだ。彼がなぜそのように至ったのかは描かれないが、頑なに拒絶をする態度こそが樋口にキズをつけていたと思い知った桂は、壁の向こうから樋口に問いかける。桂は酷い男だが、初めて自分から相手に“音”を投げかける。そうして壁が崩壊(文字通り!)する様は圧巻だ。そんな乗り越えられ方をしたら降参するより他ないだろう。

「絵に描いたような。」
先生に憧れる一介の生徒の絵に描いたような恋愛の話。
工夫のない愛の伝え方に、捻りのない愛の言葉。
それでも一生懸命恋している当人にとっては全部意味があることなんだよね。

「2/3の世界」
3は3人、2は2人。2/3は一人欠けた世界のその後の話。
事故で死んだ男は恋をしていた。想い人も同居人も彼の気持ちに気付いていた。本を読む習慣がなかったその男は、喫茶店の客として来る図書館司書の中年男に恋をしていた。いつも本を読んでいる彼の手元を盗み見て、必死でタイトルを覚えて同じ本を図書館に借りに来る。司書は男にたった一言の声をかけようとはしない。「難しいぞ」と内心で意地悪く思いながらも表情はどこか楽しそうである。同居人は密かに男が好きだった。身体を重ねていても気持ちを伝えることはなかった彼が、司書に死んだ男の気持ちを伝えに来る。
「こころを読んでるみたいで面白い。」好きな人の読んでいた本を追いつかない頭で必死で読んでいた男。この気持ちはとてもよくわかる、痛いぐらいわかる。私に限らず本と一緒に生きてきた人なら共感するのではないかな。世界や他者と繋がる手段に“本”を選んだことのある人なら絶対にわかると思う。たうみさんはそんな気持ちを知っている方なのだろう。
亡くなった人間はもういない。残された2/3の人生は続いていく。今度こそは云えなかった言葉を、伝えることの出来なかった想いを誰かに渡そうと誓って生きていく。登場人物の死を描いて、でも過剰に湿っぽくはならない構成といい本当に上手!!収録作品中一番好き。


ベタ褒めしすぎでしょうか(笑)
でもでも久々のヒット漫画家さんなので興奮お許しくださいませ。
しかしなんて“甘くない”漫画を描く方なのだろう。それともこれが著者なりの甘さだというのなら、どこまでもついていきますとも!しかし、欲も出てくるのが腐女子の腐たる所以。も、もう少し致してる場面(キス含む)があっても大好きだよ!
現在の連載は「麗人」と「Dear+」か。チェックしてみよう♪

「隅田川心中」たうみまゆ

隅田川心中 (MARBLE COMICS)隅田川心中 (MARBLE COMICS)
(2008/09/19)
たうみ まゆ

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え~毎度ばかばかしい噺ではございますがとある不良グループに熊田と大川という男がおりまして、この熊田、元落語家という経歴を持つ、飄々と掴みどころのない奴で方や大川は、まるで日本語の通じない非常に頭の悪いヘタレでございます。この二人が自分達の「居場所」を求め、人生だの恋だのと傍迷惑に繰り広げる可笑しくもジンとする、そんな一席でございます。表題作ほか芸能界を舞台に描く痛快ラブコメなど、愛と笑い溢れる気鋭の短編集!

気になっていた作家さんなのですが、東京漫画社系のBLにちょっと食傷気味で手が出ていませんでした。ああ、もったいない~!とても好みの作品でした!!

「あかぎくのうた」
「カラオケで失恋の歌が流行るのは~」という台詞を昔『東京BABYLON』(CLAMP)で読んだなとボンヤリ思い出しました。肝心の後半を覚えていないのだけど、「皆寂しいから」と結ばれていた気がします。寂しい歌ばかりを歌う江島と、彼の隣りに下宿する小説家志望の更科。悲しみの歌ばかりを歌って持て囃される男の心の中は空虚さでいっぱいだったのかもしれない。でも、その空虚さを失わない為に行きずりの男と寝ては殴られを繰り返す彼の「歌への執着」が好き。想う相手に抱かれて幸福を知れば「悲しい歌」を作れなくなる。それを知っている彼はなんて悲しい存在なのだろう。ブラウン管の向こうで微笑む彼の歌が昔と“変わらない”という結びにゾクゾクした。これが冒頭の作品。オマケ漫画で補完するわけでもなく、続きが気にならない良い短編。たうみさんって明るい話を描く人ではないんだなと持っていた先入観を改めました。

「赤と青」
なんて素晴らしい兄弟BL(未満)!!出来の良い弟「蒼」と出来の悪い兄「紅」。蒼は幼いころ紅とした“いやらしいこと”をずっと覚えていて、今も気持ちを上手く整理出来ないでいる。この兄弟の間にある愛情や葛藤こそが、私が理想とする兄弟のソレなのだと思う。BLであるという前提を無視して語るけど、これはBLじゃないよね。二人の間に性的な感情はたぶん、一切、ない。少なくとも兄の紅の方にはないし、弟の蒼が繰り返し呟く「なんで兄なんだよ」という言葉にも、含まれてはいないと思うんだ。ただ、大好きで大好きで大好きで仕方がない兄への屈折した愛情の持って行き場に悩んでいる高校生男子の話なんだよ。なんて愛おしい!!何もかも兄が居るから意味があったのに、その兄はヘラヘラ笑って違う道を見つけてしまう。意味をなくされてしまう。置いてけぼりになってしまった蒼が最後の最後で意味を見つける展開にグッときました。わずかな頁数で必要なことが全部詰まっている。うん、好きだな。

「なでしこGALAXY」
芸能人!アイドル!女装!再会!そしてコメディ!
一人だけ女顔を揄わずに「男じゃないか」と云ってくれた木野(バカ)を追いかけて女装のアイドルとなった日向。割と良くある設定な気がするのだけど、面白かったよ。日向は矛盾しているんだよね。女の子として芸能界に入ったのは木野に近づく為だけど、木野にだけは「かわいい」と思われたくなかったんだ。だからナンパをしてきた木野にキツク当たるし、家を訪ねられた時は過剰に男らしさを演出する。でも内心ではすごく動揺している。かわいい~。テンパッた木野の「右手貸そうか」発言といい、木野の属するアイドルグループのメンツといい、とにかく笑える一作でした!

「隅田川心中」
表題作は落語の噺をテーマにした連作物。これがすごく、すごく好みだった!!
元落語家で天才肌の熊田と超が付く程バカの大川。言葉を知らないから自分の気持ちも人の気持ちも思うように表現出来ない大川。でもそんな大川だけが、熊田の歌が伝える“悲鳴”に気が付いてしまった。きっと大切にしていたであろう落語という足場を失って、“居場所”を求めて喧嘩に明け暮れる熊田の心の悲鳴に。
「すき って……なんで2文字しかないんスかね そんな簡単な…きもちじゃねえのに」
「バカでも言えるように2文字なんじゃねぇか?」

この台詞の神がかっていることといったらない。熊田の飄々としてヘラッて笑うけど1本ネジが飛んでしまっているような怖さもいいし、大川のいかにも育ちが悪そうな不健康そうでちょっと不細工な面立ちもたまらなくいい。噺に絡めた「隅田川」の使い方、歌詞の「眺めを何にたとうべし」と冒頭の「筆舌に尽くしがたい」の繋がりも素晴らしいし、文句の付けようがない。これは本当に好きです。

「ごまとまぬけと」
街からの逃亡に成功したらしき熊田と大川が、熊田の元兄弟子である二徳の寄席を見に行く話。
そして「粗忽長屋」をテーマに、熊田と二徳の関係に嫉妬した大川が永遠の愛を叫ぶ話でもある。相変わらずバカな大川だが熊田の一挙手一投足も見逃さないようにしようとする献身ぶりが愛おしい。そして何よりも熊田の心の揺れにグッときた。熊田が逃げ出したものは一体何だったのだろう。それはもちろん落語であり、作中で詳しく語られることはないのだが、二徳への情だったかもしれないのだ。そんな熊田の気持ちを二徳は知ってか「芸の道でならよ オレだっておまえと喜んで死ぬよ」と伝える。落語家に出戻る決意を熊田に与えたのは二徳の言葉だろう。熊田が本来の“居場所”に気が付いた話でもあるのだ。出番は少ないが彼らの師匠もとてもイイ味を出している。

「三千世界の烏を殺し」
熊田の元彼女未満アヤの話。「バッドエンド特集」掲載作だけあって、もちろん彼女の恋は実らない。恋だと気が付いたと同時に失恋していた彼女が、大川には勝てないと思うところがいい。どれだけ身体を重ねても熊田の抱える空虚さに気付くことのなかった自分への悔しさ。バカのくせにっと大川を詰る彼女の視線は諦め交じりでどこか優しい。理解があるわけでもないし、応援をするわけでもない。舞台に立つ熊田を見つめて彼女は「恋がしたいな」と思う。その遠さがいっそ美しい。わかりあえなかった、通じ合えなかった男女にだって物語はあって、転じ転じて何かの糧になるのだ。

「宮戸川心中」
薄々思っていたけど、やっぱり熊田が受けなんだよね!!
それだけで私は大満足でございますよ(笑)飄々として、どこかビッチな雰囲気もあって、おまけに無精ヒゲ!熊田のことが好きな理由はそれだけで十分ですね。大川じゃなくても押し倒したいよ!一席講じる姿に欲情するとか、リクエストにちゃっかり「宮戸川心中」を選ぶとか、大川が段々知恵を付けていてそれもまた愛おしい!着物にもぐりこむ手やはだけた足が妙に色っぽくてイヤラシイ。
この二人の話はこれでお仕舞いなのかな~?もっともっと読んでいたかった!
熊田と大川が末永く共に居れますように。たぶん寂しがり屋の熊田は宣言通り大川に最期まで看てもらうといいよ。本当に愛おしい二人でした!大好き!!


たうみさんの絵は上手とは云えないのだけど、粗さ特有のガサガサした色気があってとても良い。1冊通して致している場面があるのは最初の「あかぎくのうた」だけだし、東京漫画社らしくニアな雰囲気が強い。あまりにもニアが強いとBLとしても退屈で印象に残らなかったりするのだけど、たうみさんのこの作品はどれも感心するぐらい上手に出来ていた。もっと早く読めば良かったな。他の作品も読んでみます♪

まとめて感想

CHERRY (新書館ディアプラス文庫)CHERRY (新書館ディアプラス文庫)
(2010/07/10)
月村 奎

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月村さんのコメディって初めて読んだけど面白かった!
童貞を気に病むイケメンツンデレ努力家秀才馬鹿王子(彼に対して思う事を全部詰め込んでみた)と、大人の色気ムンムンのドS准教授の話。王子があまりに馬鹿で馬鹿で言動やら思考回路やら人としてアウト寸前なのに、可愛いんだな♪展開はザ・王道!といった感じですらすら心地よく読めちゃうので、何かもうひと捻りあっても良かったかもしれない。そういえば「先生×生徒」は私的NGだったはずなのに、大学生だし成人しているし、まぁいっか~となりました。なんて適当な脳内倫理委員会(笑)それにしてもイケメンだからこそ童貞を何時何処で誰と捨てるかが大問題というのは、現実でも多そうな悩みだよね。周囲からは当然奴は非童貞だと思われていて、女の子からは期待(?)されて。そんな時、経験豊富な年上の女性に走りそうな心理がすご~く良く分かったのでした。
実を云うと月村さんは周囲の評判の高さがイマイチピンとこない方だった。でも今作を読んで他の作品をもっと読んでみよう!という気持ちになりましたー。
とりあえずはこちらから♪
もうひとつのドア (新書館ディアプラス文庫)もうひとつのドア (新書館ディアプラス文庫)
(2001/12)
月村 奎

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挿絵がなんと藍川さとる先生の別名義「黒江ノリコ」!!散々好きだ大好きだと云っておきながら挿絵のお仕事にはあまり興味がなかったのです。だから「三千世界の鴉を殺し」もノータッチ。まぁ、こちらはSFで長いからというのもありますが。


散る散る、満ちる (ショコラノベルス)散る散る、満ちる (ショコラノベルス)
(2010/07/10)
凪良 ゆう

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会社の後輩に片思いを続ける先輩が主人公。第一印象としては、シリアスでもコメディでもない凪良さん。
「受けが攻めに片思いをしている時点から始まる物語」を久々に読んだ気がするのだが、気のせいだろうか。1から10まで普通の恋愛がテーマの凪良さんは新鮮だった。登場人物全員がいわゆる“乙女思考”なのにはちょっと参ったが…だって好きな相手に手作り弁当差し入れる為に料理のレクチャーだよ!?受けは家族の一員としてヌイグルミを大事にしているし(このアイテムが重要な役割を果たすのだけどね)、雰囲気は甘くないのだけど、使われる道具が全体的に甘いというか。一番好感を持ったのは受けの親友君だったので、おまけの短編に満足&納得でした。
そして、今作でもやっぱり“家族関係”はキーワードになっていた。読みながら某山崎氏の「育ってきた環境が違うから~好き嫌いは否めない~♪」という歌詞がリピートしていたのだけど、結局はそういうことだと思うのだ。家族関係が個々にどんな影響を与えて、後の人間関係にどういった影響を及ぼすか。他者と深く関わる“恋愛”では切っても切れない強い引っかかりだと思う。両親を早くに亡くした受けの喪失感と愛情に対する卑屈さ。それを鮮やかに対比させる攻めの溢れんばかりの家族愛。切なくて、痛い。この家族関係と愛情の預け方与え方の部分をもっと大きく取り上げて欲しかったかな…いや、本当に私の勝手な好みの話なんですけどね。正直云えば今作はそこまで好みじゃないし、受け攻め共にお世辞にもカッコイイとは言い難い奴らだ。その分恋愛のグルグルは味わえるけど、二人以外の登場人物が恋愛に参戦してくる話は苦手なので少々辛い感想を持ってしまった(良きアドバイザーの親友君含めて)。そして、不毛な恋愛を描いてカタルシスに持っていく展開は好きだけど、読んでる側としても攻めのことを多少は素敵だと思いたいのだなぁと改めて確認した読書でした。いや…この攻めは良い子だと思うわよ、悪気はないと思うわよ、でもね、そういうのって逆に厄介…ん?凪良さんの攻めって他にも…(モゴモゴ
凪良さんはシリアスであれコメディであれ多少「やりすぎ」の方がバランスが良いのではないかしら。ラストのまとめ方から見ても良識の人だと思うが、創作には不自由なことも多いのではないだろうか。ふとそんなことを思いました。「散る散る、満ちる」というタイトルがいいね。


まとめて感想をアップする際に記事タイトルを書くのが億劫です。
すでにまったく統一していないのはわかっているのですが、何かいいタイトルないだろうか…。


*読書近況*
菅野さん祭ラストとして「肩越しの空 天上の光」をボチボチ読み進めています。姉弟の愛憎物なのかしら?まだ序盤なので話の全体像をつかめていません。それが終わったら高遠さんの「楽園建造計画」に入ろうかなと。でもその前に木原さんの「セカンド・セレナーデ」も気になる!そんな感じでございます~。


「HER」「ドントクライ、ガール」ヤマシタトモコ

HER (Feelコミックス)HER (Feelコミックス)
(2010/07/08)
ヤマシタ トモコ

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「女の子の話」は語る方も慎重になる。何でかって、晒さなくていい過去やネガな思考がダダ漏れになってしまう危険があるから。そもそもこの漫画を読むと、私に“女の子”を語る資格があるのだろうかと遠い目をしてしまうぐらい、自分には色々なものが不足しているように思えてならない。それは、女の子って可愛い?怖い?好き?―その問いかけに明確な答えを持てていないからだと思うんだ。「女の子は」と一纏めにしてポンッと答えを出せるような広い心と視点を持つに至っていないし、彼女達は近くて遠い女の子達だ。彼女たちは戦っている。ままならない自分や世界や異性や同性と。流行の服に身を包み、他者との関わり方を必死で探る彼女らの姿が私にはとても眩しく感じられた。私ももっと色々なモンと戦わねばと無駄に握り拳を作ってみたりして。
私はヤマシタ漫画に出てくる男の人と恋愛をしたいと思ったことがほぼないのだけど(BLだからというのを抜きにしても。唯一“明楽さん”にはグッときたが)、それは私が彼らに“理解”を求めていないからかもしれないなと思った。最終話のメガネ君のようなことを云われたら、私はきっともう手も足も出ないと思うのだ。そんな恥ずかしい部分を知られて、こちらの立場に沿う形ですごく理解を示されては恥ずかしくてたまらなくなってしまう。尻尾を巻いちゃいそう(笑)
一番グッときたのはワンナイトラブの女の人の話かな。展開的に新しい視点ではないし、こういった語られ方の女の話(母の因果が娘に巡り~)は結構多いのだけど、好きだった。この話の彼は最終話のメガネ君よりは“理解”を示さない気もしたし。彼にあるのはきっと“同意”もしくは“共感”かな?だといいな、希望。あっ、この話の彼はお付き合いしたいタイプです(誰も聞いてない)
全体的に可愛くてカッコイイ女の子達(特に都会的な洋服センスは見ているだけで楽しい!)の話で満足でした。「HER」はシリーズとして続くのかな?もっと色々なタイプ話が読みたいので続くといいな!欲を言うと、私は彼女たちのように「女であること」の大前提を飲み込んで悩む話よりも、女としての“揺らぎ”を抱えて生き惑うタイプの話が読みたい。『YES,IT’S ME』収録の「夢は夜ひらく」のような。この短編を超えるヤマシタ作品を読みたい。ファンのわがままな願望です。

ドントクライ、ガール (ゼロコミックス)ドントクライ、ガール (ゼロコミックス)
(2010/07/09)
ヤマシタ トモコ

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こちらは普通に大爆笑した!超可笑しかったよ!!裸族の年上男と同居することになった高校生女子のハイテンションコメディだけど、この1冊で終わりなんてもったいない~。もっともっと読んでいたい!アレな両親の元に生まれて苦汁を舐めてきた彼女の過去は詳しく語られることはないのだけど、その匙加減といい、とにかくツボに入った。変態男を出すあたり(彼は裸族と下ネタ尾籠ネタ好きというだけで、変態倒錯的な傾向まではそこまで描かれていないが)、なるほど「リブレ」だなぁと思った。だって読み進めるうちに升田氏のことを「裸がなんだよ、いい男じゃないかっ」と思えてきてしまうんだもん。日頃から男が裸になってアレコレしている話に慣らされているからに違いないと思ったのだが、どうだろうか。「泣かない、泣かない」と自分に言い聞かせる彼女の代わりに升田氏が泣くくだりや、その後の一線(身体の関係ではない。本当に“線”)の超え方はさすがヤマシタさん。上手だなぁと感心してしまった。それにしても、あんな面白可笑しい男と同居していたら涙は出てこないと思うわ。ドロンした両親の代わりに升田氏には彼女を幸せにして欲しい。
同時収録されている中編「3322」はガラッと違う雰囲気のシリアスな話。夏休み、父の知り合いの年上の女性宅に滞在することになった少女。そこで出会うまったく違うタイプの二人の女の姿に亡くなった母親を重ねる少女の成長譚かな。表から見える女たちの姿がすべてではないことに少女は気が付いてしまう。子供の彼女に悩みがあるように大人の女にだって色々ある。それは当然のことなんだけど、自分のことでいっぱいになっている子供の頃というのは案外わからないものなんだよね。大人になるには大人と関わるのが一番早い手段なのではないかな。手本にするにしても、反面教師にするにしてもね。彼女たちの関係について真実が明かされることはないのだけど、“揺らぎ”を抱えているらしい千代子ちゃんと、しょうもない男と付き合っている遥子ちゃんの話は続きが読みたいと思った。大事な気持ちを「3322」の合図で示すアイテムの使い方はちょっと懐かしい気持ちになりました。ま、私はヤマシタさんと同世代なのでポケベル世代ではないのだけどね。中高でも持っていたのはクラスに2,3人だったかな。だからメッセージを入力したこともないし、触ったこともない。メールが普及した今となっては、数字の羅列で簡単な気持ちを表現することがロマンチックに感じられます。

今月はヤマシタトモコ月間。
末には「アフタヌーン」連載中の高校社交ダンス部を舞台にした『BUTTER!!!』も発売される。
こちらも楽しみ♪

「憂鬱な朝2」日高ショーコ

憂鬱な朝 2 (キャラコミックス)憂鬱な朝 2 (キャラコミックス)
(2010/06/25)
日高 ショーコ

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「生涯仕えると誓う代わりに、伯爵以上の陞爵を」―桂木からの条件に同意し、強引に抱いてしまった暁人。けれど、どんなに情事に溺れても、桂木の態度は冷たいまま。怜悧な美貌を崩さない家令に、若き子爵は激情と苛立ちを募らせる。そんな緊張を孕む主従は、ある晩、森山侯爵家の夜会に招待されて…!?

ちょっと今更ですが「憂鬱な朝2」が発売されたので短めに感想を。
私が唯一本誌を追いかけている連載漫画なので、その都度短い叫びを吐き出してはいたけど、まとめて読むともう息苦しさもひとしお。威力が違う。息苦しくて息苦しくて仕方がなかった。昨年のBL漫画ベスト1位にも選びましたが、今年も余程の事がない限り変わらないと思うわ!
1巻の感想はこちら→「憂鬱な朝1」

前巻で互いを縛る約束を交わした暁人と桂木。
暁人は桂木の身体(と心)を手に入れる為に。
桂木は亡き先代が成し得なかった“陞爵”を叶える為に。
二人の関係は、肉体的な交わりが日常になっただけで表面上は以前と変わりないように見える。だけど水面下ではまったく違う。暁人は目まぐるしい速さで成長をし、大人の男として二人の未来を手に入れる為の算段を立て始める。それは周囲の桂木含む大人達からすれば、とても拙い子供の浅知恵なのかもしれない。だけど、前巻では自分と桂木を取り巻く立場だとか家柄だとかに阻まれて身動すらまともに取れなかった幼い暁人が、自らの思考で行動を始めた。凛とした美しい立ち姿や、桂木にちょっかいを出す様子など、精神的にも少し余裕が生まれたようでとても素敵だ。若い坊ちゃんから若い主人へと、腹の据わった暁人の変化を伺い見る桂木の視線にもゾクゾクする。精神的な下剋上にあった二人の関係が、じわじわと本来有るべき主従関係のパワーバランスを取り戻そうとしている。そんなことは当の本人達にとってはどうでもいいことかもしれないが、傍観者として眺めていると非常に萌える。ホントに萌える。

私がこの漫画について語れることなんて描いてあることがすべてなのですよ。余計なことは何も云おうと思えないのだけど、とにかく人物達の視線の応酬が素晴らしいと思うのだ。目の表情ですべてを語ってしまう。日高さんは元々台詞よりも人物の表情で場面を動かす方だと思うのだけど、「憂鬱な朝」に関しては周囲の台詞や互いの“表面的な″台詞が多い分、目で語られている感情が余計に際立っていると思うのだ。落とされる視線の行方ひとつひとつまで舐めるように読んでしまう。その視線の先にある光景や、感情の背景までもが想像出来てしまう。全体を通してピンッと張り詰めた空気が伝わってくる。素晴らしい緊張感を保った漫画だ。

暁人の思惑を超えて、桂木の頑なな心は少しずつ動き始める。
先代と久世家の為だけに生きてきた男が人格や能力を認められる以前に“血”でもって否定をされる。その決定的な裏切り行為に対する復讐を、桂木は暁人を損ねることで果たそうとしていたのかもしれない。だけど暁人は「関係ない」と何度も何度も伝える。身体を繋げて必死に愛の言葉を吐き出す暁人の姿に、必死で耐えるように感情を押し殺そうとする桂木の美しいことといったらない。ああもう、なんて可哀相で美しい男なんだ!大好き!

久世家を巡るキーマンらしき雨宮の存在。桂木の兄が暴こうとしている出生の秘密。二人を取り囲む世界の息苦しさも変わらず、明るい未来への活路は見出せない。大体何をもって団円とするのかまったく見えてこないよね。暁人は結婚をするのか、桂木は久世家を出るのか、それとも時代の波に押されて何某かの大きな変化が訪れるのか。
とにかく今一番先が気になる漫画です。
秋にはドラマCDも発売されるとのこと。これは絶対に買い!!今から楽しみ♪

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「ただでさえ臆病な彼ら」菅野彰

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東慶大学付属川崎高校の夏目真人は部員の誰からも慕われる陸上部のアイドル的存在。とりわけ真人を慕う村野武彦にとっては先輩後輩といった垣根を越えた恋の対象だった。やがて真人を巡るトラブルから、少しずつ二人の恋が始まってゆく。菅野彰がおくる青春ピュアストーリー。1995年7月刊行(桜桃書房)

運良く入手した菅野さんの絶版本は高校の陸上部を舞台にした群像劇だった。
久しぶりに感想書いたら長くなりました。絶版なのにスミマセン…。

同級生や先輩から「マコちゃん」と呼ばれ慕われる真人、彼に想いを寄せ唯一「先輩」と呼ぶ武彦、陸上部を引退した越智、ある事件を起こして留年をした矢代、真人に強い想いを寄せる柏木、真人が恋する武彦の姉、真人を取り巻く不穏な噂の原因となった元同級生陽子、真人を憎む陽子の親友亜弓。

ザッと書き出してみた登場人物の多さで、改めてこの話が恋愛よりも青春劇に比重を置いた話だということがわかった。中心になるのは部員達から慕われる陸上部部長の真人。強豪とは云えないながらもそれなりに活動を続けてきた陸上部と周囲では、真人のある噂に端を発した武彦と柏木の諍いが起こっていた。根も葉もない噂ではないことを知る武彦は、尾ひれが付いて誇張される話を否定も肯定もせず微笑む真人の真意を察して必死で彼を守ろうとする。しかし、柏木を始めとする他の部員達は納得がいかない。真人が好きだから、彼を貶めるような噂が流れるのが我慢ならないし、本人の口から否定の言葉が聞きたいと思っている。

噂になった過去の事件による怪我が原因で、真人は足を引き摺る癖が抜けない。実際に怪我をして走れなくなった時期はあったが怪我はとっくに治っているのだと真人は笑う。真人の過去に何があったのか。話はその謎(という程のものでもないが)を軸に展開すると同時に、飄々とした真人の内側にある消えないコンプレックスにも焦点を当てていく。小柄で華奢で女顔のいかにも“受け”な真人は人知れずそのことを気に病んでいた。女の子から「カワイイ」と云われてしまう自分のことを。武彦の姉文子はプロレスラーを生業としており、真人は真剣に恋をしていたのだろうが、文子に告白をした際に「わたしなら大丈夫って思うんでしょう?―侮辱よ、そういうのって」と返されてしまう。物理的に強い文子になら「カワイイ」と云われても傷付かないと思ったのかもしれない。何より真人は一度「守ってあげなくてはいけない存在」を手酷く傷付けたことがあり、普通の女の子(文子のように強くはないという意味)と関係する自信を失っていたのだ。

過去の事件には、先輩の越智、留年した矢代も深く関わっていた。事の発端はスポーツ特待生として入学したが実力を発揮出来ずに腐っていた矢代の交友関係による暴力事件だった。矢代は自分が招いた事態の罰を受けるかのように、留年を受け入れ陸上部にも在籍を続ける。越智は結果的に矢代が暴力事件を起こしたのは、自分が矢代の敵に捕まったからだと思っている。責任を取るという形で一度は逃げようとした矢代を学校と陸上部に留めたのは越智だったのだ。そして当時真人は中学生だったが、同じ付属校のジャージを着ていたという理由だけで矢代の敵に捕まり、足に怪我を負わせられる。その時真人は一人ではなかった。陽子という少女と一緒だった。真人の噂は、「彼が少女を置き去りにして逃げ、少女は暴行を受けて学校に居られなくなった」というものだったのだ。しかし事実は違った。暴力を受けたのは真人一人で、少女はその一部始終を目の前で見ていたのだ。

「カワイイ」と云われ続けた真人は、コンプレックスと戦いながらも、そう云われてしまう自分を諦め受け入れつつあったのかもしれない。だから陽子に「守ってあげるね」と云われた時も単純にうれしかったという。だけど、実際に陽子は暴力に晒された真人を守ることなど出来なかった。中学3年生という男女の体格にまだそれほどの差がない時期に、少女と少年が自らの性別の有り様に“誤解”をしてしまうのも無理はないことなのかもしれない。真人は足に傷を負うが、少女は心に傷を負う。自分が見誤ったばっかりに少女の心を傷付けてしまったことを真人はずっと悔んでいたのだ。陽子との苦い再会の果てに二人はもう会わないと約束をする。互いを縛る傷は消えることはないけれど、それでも前進をしようと決意するのだ。

真人は笑う。足の傷も自分のコンプレックスも隠して。それは、真人の抱える物の先に傷付く他者が存在するからだ。矢代や越智を守る為に笑い、陽子を守る為に笑い、部員たちを守る為に笑う。そんな精一杯な様に気が付いたのが武彦だった。読み始めた当初は主人公である武彦の“語り”が15、6才の少年のものとは到底思えず違和感があった。彼らの設定が“大学生”ならばもう少し武彦の心情に近づけるかもしれないのにと思っていた。でも、読了後も武彦に関しては変わらないのだけど、やっぱり彼らは“高校生”で正解なんだなと自然に思えたのだ。部活の先輩後輩関係や、劣等感、起きてしまった事件への責任の取り方諸々、とりわけ部員達から慕われる時の真人の“性別の無さ”のようなものに、私は高校時代の部活を思い浮かべてしまった(大学でサークルに所属しなかったので偏った意見だけど)。物事に白か黒かしかなくて、自分たちの納得する答えを聞きたいと騒ぎ立てる。無邪気な好意は時に残酷だ。でも、その好意に十分過ぎるほど救われている真人がいる。要するにみんな“若い″ということなんだよねっ(そんな結論!?)

真人と武彦の恋愛は一応の着地を見せる。が、私は正直…武彦の恋愛がこの話で成就する必要性は感じなかったかな。失恋をするか、ニアな雰囲気のままキス止まりで終わってくれても構わなかった。真人は武彦の気持ちをわかっているし、自分から誘いをかけるのだけど、その行動は彼が抱くコンプレックスと若干“負けた方に”折り合いを付けたように取れなくもないと思うのだ。真人が文子を好きだというエピソードと、武彦への気持ちは、微妙に繋がっているようで繋がっていないような気がしたのよね。行為の場面がなければ、良質なヤングアダルト小説だったと思う。そして、私が恋愛面で彼らよりも気になって気になって仕方なかったのは、矢代と越智なんだよね!出来上がっている二人(作中では触れないけど)の話が読みたいなぁ。後書によると越智が受けらしいが、私的には矢代が受けでも面白いのだけど。あー、でも主導権はすべて越智にありそうな関係性の二人だから、矢代はヘタレ攻めでいいかもね。

とまぁ、長くなったのに本は絶版という本当に申し訳ない感じですが面白かったです!

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プロフィール

Author:yori
気がつけばいつもそばにBL.猫かぶってみても、結局たどりつくのはそこなのです。感想は基本的にすべてネタバレ注意です。拍手&コメントありがとうございます。拍手コメントは該当記事のコメ欄にてお返事いたします。リンクフリーですがご一報頂けると嬉しいです。

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