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徒然雑記

8月も終わりだというのにこの暑さ。
暑いのも寒いのも特に問題なしという無駄に健康優良なインドア派ですが、今年は辛いです。
そりゃあ仕事もダラダラだよ。で、ダラダラついでに眺めていた携帯に衝撃的な文字が踊りました。

『少年魔法士』なるしまゆり 連載再開!!
少年魔法士 (1) (Wings comics)少年魔法士 (1) (Wings comics)
(1996/09/25)
なるしま ゆり

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少年魔法士 (13) (Wings comics)少年魔法士 (13) (Wings comics)
(2005/12/25)
なるしま ゆり

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1巻から13巻まで9年。年イチ刊行よりも早いペースだったことに驚きが隠せません(笑)

ハイ、某所で散々騒いでおきながらまだ飽き足らずこちらでも書いてしまいます!
私がブログ開設当初からしつこくしつこく好きだ好きだ続きはどうしたと呪いのように云い続けた漫画の連載再開が発表されました。今月発売の「Wings10月号」(偶数月発売)にて正式な情報が上がった模様。時同じくして著者のブログにも次号「wings」(12/28日10月28日発売の12月号)から連載再開の旨が発表されました。

正直、涙が出ました。そのぐらい嬉しかったのです。
単行本1冊分の連載がたまっていながらいつまでも出ることのなかった14巻を待ちわびた日々。いつの間にか本誌にはなるしまさんの名前だけが宣伝に残り、予告にも載らなくなっていた。休載は期間にすればは3,4年だと思うのですが、今回改めてその期間の短さに驚きました。なんか、もっともっと長い間待っていた気がしたから。
あと何より嬉しかったのは、なるしまさんが『少年魔法士』という作品を覚えていてくれたことなんですね。なるしまさんは、私が同じぐらい敬愛する藍川さんとは違い、漫画家活動をずっと続けていらっしゃった。人気漫画家という称号も変わらないままに。そのことを知っているので、もしかしたらもう、なるしまさんの中で新書館の2作品(もう1作は言わずもがなの『原獣文書』)は「なかったこと」になっているのかな?と頭の片隅で諦めている自分がいたのです。
もちろん今回の連載再開が完結に無事に向かうとは限らない。またいつ連載が止まってしまうのかという怖さもある。それでも私は本当に本当に嬉しい!!
もう馬鹿の一つ覚えのようにそれしか云えないよ!

私のこの漫画に対する暑っ苦しく気持ち悪い想いは以下の記事に詳しいです。
「少年魔法士」のこと
が、たった1年半前の文章だというのに色々残念で恥ずかしくて仕方ありません。
しかも仕舞ってるし!次の休みは引っ張り出して再読祭だ!!

きちんと感想を書ければ良いのだけど、未読の方やなるしま漫画を知らない方に、どうやってその不思議な魅力を伝えれば良いのかわからず手が出ないのです。13巻第5章「アエトニキ事変」の次か次が終章だとなるしまさん仰っていた気がするので、先はそう長くないはず。完結した暁には、何かしら残したいなと思います。
この作品は魔法やファンタジーが前面に出ているけれど、底にあるのは異能の少年達が「いかに生きるか」を模索するヒューマンドラマなんだよね。「持たされた」能力によって普通に生きることが出来なくなった彼らの戦いは、ここではない別の世界の物語のようで、でも普遍的な力を持って読者に語りかけてくる。
すべての人に読んで欲しい!とか、面白い!と声高に云えるような位置づけの漫画ではないのだけど、とにかく好きなんだよ。もうそれだけなんだ。すごく好きで、大切な漫画なの。

まだまだ残暑と云うのも憚られるような暑さですが、年末を楽しみに待ちたいと思います!


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「恋愛革命」海賀卓子

恋愛革命 (ショコラノベルス)恋愛革命 (ショコラノベルス)
(2010/08/10)
海賀 卓子

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池畑虎之介は顔を出そうと駆けつけた飲み会で意外な人物に会う。昼間バイト先で彼女と別れ話をしていた男だった。彼、坂口瑞希は幹事である結の兄で虎之介を待つ間に呼ばれたらしい。完全に酔い潰れた瑞希に散々な目に遭わされた虎之介は、二度と会うことはないと思っていた。だが数日後、彼は姿を現しバイトを持ちかけてきた。携帯を預かるだけで一日二千円。苦学生の虎之介は断り切れず引き受けるが…。

今年も年末にベストを発表する機会があるとしたら、新刊小説の候補は、『高潔であるということ』と『災厄を運ぶ男』だった。旧作を含めればまた違う結果になるのだが、今年読んだ小説の中でも上記の2作品は特に心に残っている。なんでそんな前置きをしたかというと、今作『恋愛革命』はこの2作品を追い抜き現段階では今年のベストかもしれないなぁと思っているからなのだ。そのぐらい面白かった!!

恋愛の駆け引きはゲームなんかではない。もちろんゲームとして楽しむ人もいるだろうけど、私が思う駆け引きとは、相手よりも不利になりたくないという自己保身の気持ちから出る、みっともない嘘と強がりの応酬のことだ。
好きな人のことを考える。「大切にしたい」「愛したい」そういった気持ちを抱くと同時に、好きな人を好きな自分のことを考える。「傷付きたくない」「保障が欲しい」「相手のことを想うことで返ってくるであろう結果が欲しい」そんな風に考えてしまうのは、至極当然のことだと思うのだ。無償の愛なんて信じられないし、好きになった分だけ返して欲しい。あわよくば相手の方により多く返して欲しい、とまぁこんな感じのお世辞にも性格が良いとは言えない登場人物はBLに限らず恋愛小説にはよく出てくると思う。でもそのウィークポイントを受け攻め両方が持っている小説と云うのは結構珍しいのではないかな?

同性愛者であることの怯えから本心を隠す坂口と、恋愛の敗者になりたくないから虚勢を張る虎之介。
夫々が相手を好きだという気持ちと同時に、自分のことを「可愛い」と思っているからこそ生じるすれ違いが生々しいのだ。読みながら、これぞ恋愛だと感心しっぱなしだったのだが、過去に同じような強さでそう思った作品を浮かべて一人合点した。それは、あの『窮鼠&俎上シリーズ』だったのだ。恋をする互いが汚く醜く利己的で、でも必死で相手のことを想う美しい気持ちも同時に持っている。綺麗事ではない恋愛を生々しく描写している、その筆力に圧倒されっぱなしだった。

もうひとつ私が注目したのは、「死」の描かれ方だ。
この作品には二つの「死」が話題に上がる。想像としての死と、実感としての死だ。人物の死は価値観の転換を図るのに便利な材料であるのだが、使い古されている分陳腐に感じられる話が多いのも否めない。でも、この作品で描かれる死は少し違う。どう違うのか上手く説明できないのがもどかしいのだけど、虎之介の祖父がじわじわと痴呆に侵され、何もかも忘れてしまったことで虎之介が思い描いていた「最期の時」のイメージが覆るのだ。その部分のリアリティといい、海賀さんのお歳はわからないけど人生経験を積まれた結果の今作といった印象だ。

人間臭い周囲の人物達も良いし、二人の恋愛が同性愛であることを突き詰めているのもとても良い。ファンタジーがないというと身も蓋もないけど、恋愛するってことは綺麗事だけじゃ済まないことが多いからね。家族や友人への紹介を内緒にするのも人によっては限界があるだろうし、将来を真剣に考えれば尚の事だ。どうにかなるさと楽天的に締める話も多い中で、彼らの舐めた辛酸と、これから舐めるであろう新たな辛酸への覚悟の在り方が私は好きだ。

自分にもある弱さを突き付けられているようで、読むのにものすごく消耗した。ズッシリ心に響いてきた。
読み返して萌えを楽しみたいというのとは違うのだけど、読み応えのある素晴らしい本だった。
『恋愛革命』全力でオススメします!

「地下鉄の犬」草間さかえ

地下鉄の犬 (ドラコミックス)地下鉄の犬 (ドラコミックス)
(2010/08/25)
草間 さかえ

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サラリーマンの篠田が会社帰りにコーヒーの匂いに導かれ入った先は、趣のある煙草屋兼骨董屋。そこで店主の朝倉と出会った篠田は、ひょんなことからお店に通うようになるのだが…!?愛へと移り変わる感情を豊かに描いたアダルトラブストーリー。

ちょっとご無沙汰していました、元気です!

久しぶりの感想はBLだと2年ぶりの新刊になる草間さんの作品。ブログ開設当初に感想を書いた『はつこいの死霊』以降初めてなのですね。意外なようだけど今作を読むとどこか納得してしまうのでした。私はもちろん草間さんが大好きだけど、よくよく考えると再読率はそんなに高くないのですね。マイ本棚の一等地に鎮座しているものの、『はつこい』が群を抜いて好きなだけで(次が『災厄のてびき』表題作)他の作品はどっこいどっこいだった。

それというのも、おそらく草間作品というのは、草間さんの“萌え”で出来ている部分が大きいと思うのだ。それは、設定だったり雰囲気だったり人物(一番わかりやすいのは眼鏡キャラだろう)だったりするのだけど、その中で肝心の恋愛描写や感情描写が説得力を持って描かれているかというと…正直云うと、私にはあまりそうは感じられなかった。なぜ『はつこい』が好きなのかと問われれば「初恋の死霊が祟りを~」という実在した宗教の教義に由来させる設定に萌えるし、『災厄』では火に欲情してしまう少年に萌えるからだ。選び抜かれた台詞のセンスも独特な画面の雰囲気も素晴らしいと思う。でも、人物の感情面に共感を覚えたことはあまりなかったのだ(辛いこと書いているようですが、大好きですよ!)

長い前置きになったけど『地下鉄の犬』は二人が恋に落ちる描写に説得力があり、ジワジワと心に響いてきた。
篠田は離婚したばかりの中年サラリーマンだ。余計なことは考えたくないからと、夜道を眼鏡を外して歩きコーヒーの匂いに誘われて朝倉と出会う。篠田は自分を地下鉄で見かけた薄汚れた犬に重ねるのだが、行き場を失くしてしまった自分と犬が“嗅覚”によって生かされていることを示唆した秀逸な描写だと思う。篠田夫婦のどちらかに決定的な非があったわけでもなさそうな様子がまたいい。篠田は何かが足りなくて(それは他人に寄りかかるとか、あともう一言が、とかの些細なようにも感じられる性格の問題だ)、でもその分誠実で実直な人柄を持っているように見受けられる。それでも、恐らくは似た者同士であったであろう妻とは合わなくなっていったのだ。日々のすれ違いに疲れて別れを選び、それでも若干の未練じみたものを夫婦二人が抱いていそうな関係がいい。女が悪者になるわけでもなく、男の性癖を理由にするのでもなく、自然に壊れていった(酷い言葉だけど)男女の様子が描かれていてツボに入った。
篠田が出会った朝倉は、骨董の価値に関わらず古い物を大切にする男だ。新しい物だらけの自分の部屋と、古い物に囲まれた朝倉の店とを行き来するうちに、篠田にとって朝倉と彼の店が心安らぐ場所になっていく。リセットされた生活は、今まで使ってきた物の価値まで変えてしまうのかもしれないね。毎日使う食器やコップが一人分になり、その物を大切に思う人間が自分一人になる。それは、想像するにとても寂しいことなのかもしれない。
ゲイの朝倉は篠田が店に迷い込んだ時から彼の事が好きだった。バイの気がある篠田はそのことに薄々気が付いていたのだが、過去の失敗から朝倉を遠ざけようとしてしまう。でも、趣味で書いていた小説を再び書き始めようと妻に会ったことで、篠田は朝倉に向かう気持ちが今までになかった種類の情熱を持っていることに気付いてしまう。言葉の少ない篠田が懸命に朝倉に想いを伝えるところは、どこか可笑しくて微笑ましい。キュンッてなる。
まとまった二人はとても幸せそうだ。愛情のかけ方が“重い”朝倉と、思慮深いけど言葉が不足している篠田。似た者同士ではないからこそシックリくる二人なのだろうと納得してしまった。年下のヘタレ系(乙女系?)朝倉はあまり好みの攻めではないのだけど、続編の「旅する犬」で見せた色気ムンムンのひとコマにノックアウトされました(笑)ため息が「はふ」って!あれはズルイよ!!草間さんさすがです。

久しぶりに書いたらとっちらかった感想になりましたが(いつもか)、草間さんの長編堪能しました!
良い本を読みました♪



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麗人9月号

麗人 2010年 09月号 [雑誌]麗人 2010年 09月号 [雑誌]
(2010/08/09)
不明

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創刊15周年!記念特大号!と銘打たれた今月号の麗人。小冊子付き。
15周年か~と何気なく逆算してみて驚いた。私が地元の本屋で「何これ!?」とあまりに異質なオーラを放つこの雑誌(今はまったく平気ですが)と出会ったのは、まさに創刊当時のことなのだ。考えてみれば記念すべき初購入BL漫画も麗人レーベルの『懺悔』(初田しう子)だったし、ちょっと感慨深くなってしまった。定期的に購入するようになってからは10年近くが経つのだけど、執筆陣によっては買わない号もあったりとマチマチだった。
今回は先日書いたように たうみまゆさんが掲載されているので迷わず購入。その他の目当てとしては、明治さん(カンちゃん達の話だとわかっていたので今回は期待的にそこまで高くなかった…)、国枝さん、西田さんといったところかな。
麗人を買い続けているのは基本的に読み切りがメインだからというのも大きな理由。
しかし今回は面白いと思ったものが軒並みシリーズや“後篇”で、ちょっと歯がゆい思いをした。
以下、印象に残ったものを手短に感想です。

「カラスの名前」たうみまゆ
時代物長編。線の感じが少し変わったかな?輪郭が太くなって、フラワー系の少女漫画っぽくなっている。
早逝した兄とその恋人と弟(主人公)の話。人が死ぬ話は悲しくて当たり前なのだけど、不覚にも泣いてしまった。恋人達がどれだけ愛し合ったかを確認する傍観者の話なのだけど、淡々とした筆運びが冴えている。何回も書いてしつこいけど、本当に上手い。カラーの夕日に映える黒も綺麗。たうみさんにしては、濡場があるのも嬉しかった。文句なしにベスト。

「あたらしい癖」明治カナ子
お客さんの発言が原因で、修にある癖が出来てしまう話。相変わらずのカンちゃんと修の様子が描かれてホコッとさせる。私はもちろんこの二人が大好きだし愛おしいと思っている。でも、彼らは作者である明治さんにとても愛されているキャラなのだ。その愛情の配分が、読者である私をちょっとだけ遠い気持ちにさせるのかもしれないな。

「枷、あるいは束縛」国枝彩香
一捻り二捻りある監禁物。面白いのだけどオチの既視感が拭えないのがちょっと残念。シリアス展開よりもコメディバージョンが読みたかったな!国枝さんが描くには珍しいタイプの年上男だと思う。そこまでさせるだけの魅力を年下男に感じることが出来なかったので、やはり続編でコメディに転じて欲しい。希望。

「-20℃の愛情」西田東
久しぶりに読んだ西田さんは相変わらずの西田さんでした♪
脇役の手のぬき方とかギャグのセンスとか、ええ、ホント相変わらずで嬉しい限り。
受けの撫肩は意識してのことかしら?新しい色気が出ていて良いと思います。

「えつわんっ!!」鬼嶋兵伍
デビュー作から数作は好きだったものの、最近は著者と自分の萌えに大きな隔たりを感じて手が出ていなかった作家さん。
ところで話はそれるが、やはりというか覚悟はしていたが、大阪府有害指定図書の件を受けて全体的にエロも局部も抑えめな今号だった(たぶん)。偶然かもしれないが楽しみにしている深井結己さんの「ゲイビ紹介」がなかったのにも影響を感じる。
そんな中で一番ノリノリだったのが鬼嶋さんだ。ゲイのカップルが観客の前でラブラブ度を競って、観客のアレの量(単位はml♪)で勝敗を決める番組という設定。アホエロなのだけど楽しく読んでしまった!満足!

<以下は続きものやシリーズで気になった作品>

「六月のヘンゲンさん」高緒拾
雑誌で数作読んでいたが、絵柄があまり得意ではないので気にしていなかった作家さん。
以前はゲイゲイしい絵柄に過激な内容といったイメージだったのだが、今回の作品を読んで印象が変わった。
今作は美大の学生寮を舞台にしたシリーズで、前作の前編だけを読んだ記憶がある。これは単行本になったら絶対買う!上手く云えないのだが、漂う空気がとても好きだ。エキセントリックな美大の男の子もイイ感じ。なによりタイトルが魅力的だ。なになにヘンゲンさんって?と気になってしまう。

「泥船」猫田リコ
猫田さんは初期から中期あたりまで追いかけていた作家さん。独特の間合いとセンスは量産されると食傷気味になってしまうのだけど、久々に読んだら面白かった。残念ながら“後編”だったのだが、あらすじを読んだら気になってしまったので単行本収録されたら買う!猫田さんはテンポが良いコメディ風の作品よりも、とことん暗くドンヨリした作品が好き。黒と白のコントラストは変わらずで、長く貫いているものがある方はそれだけで素敵だと改めて思った。

「Morning Glory」深井結己
最新作『ぎこちないけど愛だろう』に収録されている「正直スイッチ」の政治家先生と秘書の過去話。私はこの二人が大好きなので再会出来たのが嬉しい。間にもう一作品挟むようなので、単行本収録の際にチェックしよう♪

これだけ書いたら逆に書かなかった作品に申し訳ないような気がしてきた(笑)
が、まぁ気にせずいきます。

ふろく小冊子「memorial booklet」
150ページ超!レギュラー作家総勢39名がオール描き下ろしで勢揃い!!
その名の通りの豪華な小冊子。豪華過ぎて細かく書く気力はないのだが、よく知った作品の番外が多くて嬉しかった。!ユギさん、井上佐藤さんが特に印象に残るかな。井上さんは『オオカミの血族』の二作品がコラボしていて超面白い!麗人レーベルが好きな人なら買って絶対に損はないだろう1冊。

長々と書いてきたがやっぱり私は麗人が好きである。
耽美な表紙も版型もそのままに、どこまでも突っ走って欲しい。
改めて15周年おめでとうございます!




「祈り」綺月陣

祈り (ガッシュ文庫)祈り (ガッシュ文庫)
(2010/07)
綺月 陣

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来栖薫は、憧れの大曽根麻薬取締官の元で仕事をすることになった。想像通り彼は仕事のできる紳士だった。そしていつしか二人は互いを意識し始める。しかしある日、薫の前に元恋人が現れて大曽根に誤解されてしまう。「薫を幸せにするのが私なら、もっと嬉しかったよ」いつまでもこの人を見つめていたかった。けれどもう側にはいられない。ヤクに侵された元恋人が関わる事件に気がついた薫は、事件解決のためにある決意をするが…。

2冊目になる綺月さんはタイトルと挿絵買いでしたが、ヘビーで面白い話でした。

『罪と罰の間』でも描かれたように、主人公の薫が犯した罪と、その罪に対する贖罪の方法が描かれていました。そこに攻めである大曽根の存在は、心の支えとして確かに必要ではあるのだけど、薫の中では「紙に描いたヒーロー」のようなもの。要するに、本当に憧れの存在として心の支えにしているに過ぎないのですね。薫は過去の自分と向き合いながら、他者に心を許さず、徹底して一人で戦っている。小動物のような活発さと明るさを見せる薫の造形に最初こそ戸惑いを感じたのだけど、それもすべて戦いのうちなのだとわかると、あとはもう引き込まれて夢中になっていた。
薫は早々に憧れの君を諦める。次に苦労して手に入れた仕事を諦める。でも、絶対に諦めないことがある。
そのたった一つの目的と矜持が彼を生かしている。冷静に狡猾に自分のすべきことを決め、機会を伺い、実行に移す。なんとも強靭な精神を持った男なのだ。

軸になる薬物中毒の描写は凄惨極まりないし、セックスドラッグに設定されているとはいえ、過剰摂取で死に至るくだりや何より中毒に堕とされていく過程はリアルでゾッとする。好きな人から与えられたものだから、身体の異常も依存も「愛故に」と信じたかった過去の薫と、それを徹底的に踏みにじり続けた元彼井原との関係は本当にリアル。薬物依存にされるという現実が痛みを伴って迫ってくる。
薫は自分が「弱かったから」井原につけ込まれ拒絶が出来なかったと思っている。その弱さこそが、自分が犯した第一の罪であり、法的な処罰を受ける第二の罪を、自分の姿が映ったDVDが流出することを恐れて井原を匿ったことだと位置付けている。弱さは罪に値するのだろうか?と思いながら読んでいたのだが、そう思わないと精神のバランスを保っていられなかった薫の気持ちが伝わってきて納得をしてしまった。井原が悪者なのは当然で、でもそれだけでは罪から逃れられない。自分自身に罪を課し「罰」を与えることで生きることができるのだ。その先にあるものが何か。それこそがこの話の核である「赦し」なのではないかな。

「祈り」とは誰から誰に、そして誰の為に捧げられる祈りなのか。その点を気にして読み進めていたのだが、「強くあれますように」と祈る薫の自分自身への祈りと、少なからず井原への「更生の願い」が含まれていることに感心した。井原のしたことは薫にとって何一つとして救いようがないものだけど、薬物を作り売捌く井原も同様に薬物中毒に陥っていることに気付いた薫は、井原にも救いをと祈るんだよね。そこにあるのは「情」のようなものだと薫は云うけれど、ひたすらに「責任」なのではないかなと思った。つまり、井原の救済を含めて罪への贖いだと自らに課しているんだよね。その一連の行動は決して自虐的ではないし、脆いようで強靭な薫はとても魅力的な人物だった。
井原に比べて大曽根の存在感はどうしても薄い。彼も彼なりに過去の罪を抱えて生きていて、それが追い詰められた薫の発見(精神的な意味で)につながる様子が少々急ぎ足に感じられたのが勿体ないかな。だけど3年待った大曽根の優しさは、過去の罪故だと考えると、それも納得をしてしまうのでした。

そして一点だけ蛇足は承知ですが、「薬物、ダメ。絶対。」の標語に便乗して、声を大にして「撮影(ハ○撮り)、ダメ。絶対。」と云いたいのでした。赦しを得ても記憶と証拠が半永久的に残り続ける。こんな残酷な罰はないと思うから。

萌えはないけど、重いテーマを真摯に扱った良い作品だと思います。


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プロフィール

yori

Author:yori
気がつけばいつもそばにBL.猫かぶってみても、結局たどりつくのはそこなのです。感想は基本的にすべてネタバレ注意です。拍手&コメントありがとうございます。拍手コメントは該当記事のコメ欄にてお返事いたします。リンクフリーですがご一報頂けると嬉しいです。

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