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「永遠の昨日」榎田 尤利

永遠の昨日永遠の昨日
(2010/11)
榎田 尤利

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02年刊行作品の新装版。ずっと読みたかったのだが絶版ということで諦めていたので嬉しい。
有名な作品ゆえにあらすじは知っていたし、その結末も想像していた通りのものだった。

夜中に読み始めてまわらない頭の隅にずっとあったのは、どうして榎田さんはこんなに真摯に生と死に向き合うことが出来るのだろうということだった。「魚住くんシリーズ」を読んだ時も思ったのだが、近しい者(冷たいようだが、愛する近しい者かな)の死を未だ経験したことのない私には、生と死のうわべを浚うだけで語ることは出来ないような気さえする。なんだろう、「リムレスの空」との刊行時期が近いことに驚いたというのもあるのかな。一人の作家が、エンターテイメントを信条としているであろう作家が、まるで「書き足らない」とでもいうように生と死を見つめていたことに…驚いて(言葉が見つからない)しまう。

でもその一方で創作物は生と死の物語と無縁ではいられないと思っている。感情を揺り動かす根源的なテーマだからというよりは、生ある人間を創作してしまったらそこにはもれなく死がくっついてくるのが必然だからだ。だから、生きること死ぬことを描くフィクションが多いのは当たり前。日頃は敬遠している「死を描き涙を誘うらしい小説」を老若男女問わず書くことが出来るのは、そういうことなのだ。


以下、ネタバレ注意

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「あなたは私の希望の星」さがのひを

あなたは私の希望の星 (IDコミックス GATEAUコミックス)あなたは私の希望の星 (IDコミックス GATEAUコミックス)
(2010/11/15)
さがの ひを

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同級生の家に居候する家出少年・穏―家に泊めてもらう代償は暴力まがいのセックス。
ある日、穏はバイト仲間の千に連れられたプラネタリウムで、幼いころ一度会ったきりの義理の兄・栄と再会する。穏は同居人から暴力を受けていると聞いた栄は、自分と一緒に暮らさないかと提案する。
栄との穏やかな生活に心地よさをおぼえた穏だったが、栄の心にある癒しきれない闇にはまだ気がつけずにいた―。


タイトルとどこか懐かしい感じのするあらすじに惹かれて購入した作品。
ネットで発表していた作品をそのまま書籍化したとのこと。それを聞いて納得、今の時期に商業ベースでこのプロットを切る(通す)ことはちょっと難しかったのではないかなと思ったから。問題を抱えた子供と問題を抱えた大人が出会い、傷を癒し合いながら距離を近づけていく話だ。メインは穏と栄だが、穏に叶わない想いを寄せるバイト仲間の千、その千と同居しながら同じように叶わない想いを寄せる光星、そして穏の元同居人圭吾、この5人が織りなす夫々の恋と希望の物語だ。

不倫の末に再婚した母親が男を作り家を出たことを切っ掛けに、家に居辛くなった穏は同級生の圭吾の元に居候している。自分勝手で乱暴なセックスの最中に必ず「好き」という言葉を強制させる圭吾の気持ちは穏には当然届かない。いつも傷だらけの穏を放って置くことの出来ないバイト仲間の千は、穏に恋をしながらも彼が抱えている痛みをすべて引き受ける気持ちには到底なれず告白も出来ないでいた。千の同居人である社会人の光星は千に強い恋心と執着を持ち、好きな子がいるのも承知で気持ちを伝える男。そんなどうにもならない夫々の恋と痛みと問題が、穏が義理の兄である栄と再会した時から加速していく。

誰に焦点を当てて読むかでかなり印象の異なる話だが、2組のカップル(+1人)を描きながら、特に話を区切ることなく一気に読ませる長編としての構成は読みごたえがあった。私はメインの2人よりも脇の2人よりも実は「1人」であるところの圭吾が気になって気になって仕方なかったのだがそれは置いておくとして、脇の2人の直球な恋愛話の方が読んでいて楽しめた。千の気持ちの移り変わりは少々唐突な感じがしたけど、一途で息が詰まるような光星の想いが報われたことが嬉しかった。穏と栄の抱える問題は云い方は悪いが「使い古された」トラウマの話として、一歩を出るには後もう少し、何かが足りなかったように思うのだ。「頭と心と体が別々になっている」と千に表された穏が、傷だらけでありながらも意外に強く(鈍く?)、むしろ栄の方が危うい人物として描かれるので問題の在り処が定まっていないのが原因かもしれない。本当にあともう一歩なのだけど、面白いことに変わりはない。守るべき対象を互いに定めた2人は危ういのだけど、穏の強さは2人を照らす希望の星になるのだろう。

実は読み始めてすぐに痛々しい雰囲気に懐かしさを感じた理由がわかった。「いつか読んだ物語」に似ているのだ。いつかとは、私が中学生の頃だ。当時は今よりももっと「問題を抱えた子供」が主人公の話が多かったように思う(個人的な意見)。明るさよりも暗さ、日常よりも少し不幸というか。不幸な子供を描くことは時勢的にも昔より厳しいはずだし、何よりも「いつか読んだ物語」への抵抗のようなものがあって今はあまり見かけることがないのかもしれない(偏った意見)。だけど人には暗い物語が必要な時があるように、こうしてネットの世界に原点回帰とも正統派とも取れる作品が発表されていることに心強さのようなものを感じてしまった(勝手な意見)。私は日頃からあまりネット創作物を読まない。ブログを始めてからはPC前に坐る時間も長くなったし、たまに検索をしてはいるけど、やはり物語は紙媒体でと思っている節がある。だから先日感想を書いた『僕の先輩』もそうだけど、こうして書籍化されるのは大変嬉しい。

最後に、HP後書にもあった「意外に人気があった圭吾」について。
一気に読ませる長編故に、実は穏が圭吾とどうにかなる線を途中まで捨てられなかった私です(笑)
暴力をふるってしまう圭吾も十分に問題を抱えた子供で、彼の物語がもっと読みたいと思ってしまった。DV男萌えがあると書くとすごくアレな感じだけど、暴力をふるってしまう人に興味関心があるのは確か。その先にあるものが見たいと思ってしまう。
圭吾の物語を描く予定はあるとのことなので期待したいと思います♪

「さようなら、と君は手を振った」木原音瀬

さようなら、と君は手を振った (Holly NOVELS)さようなら、と君は手を振った (Holly NOVELS)
(2008/06/20)
木原 音瀬

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従兄弟の啓介が田舎から上京してきた。誠一は後ろめたく感じていた。十年前の夏、啓介と恋に落ちた誠一は、高校を卒業したら迎えにくると約束した。それなのに反故にしたからだ。しかし再会した啓介は過去には触れず、優しい笑顔で誠一に微笑むだけだった。責められないことで安心した誠一は、優しく抱き締め甘えさせてくれる啓介のもとに頻繁に通うようになり…。

既読の木原作品で一番痛いものは?と問われれば迷わず『WELL』と答える遅れてきたBL小説読みです。
なんでも来月木原作品最痛作品『HOME』が新装版で刊行されるということで、今月は心の準備という意味も込めて木原月間にしようかなと。手始めに『薔薇色の人生』を再読し、こんなに幸福なBLだったかと大変良い気持ちになりました。最初に読んだ時はモモが攻めということに納得がいかず入り込めなかったのよね。好みからするとやっぱり受けがいいのだけど、ロンちゃんを見つけたモモは人生大逆転に成功したわけで、なんてファンタジックでロマンチックな話だろうと温かくなってしまった。

前置きはこのぐらいで、次に手を出したのがこちらの『さようなら、と君は手を振った』だったのです。

たぶん痛くはない。が、主人公の二人がある人物に対して行った事が私の考えからするとあまりに酷くて、『WELL』に次いで苦手な作品かもしれないと思うと同時に、非常に面白く納得のいく展開に驚いてしまったのでした。
偶然にもお世話になっている方のブログで、苦手な設定は「意味のない子持ち設定」とお答えされているのを拝見して、それは私も同じだなぁとブンブン頷いてしまった矢先に読んだので余計に考えてしまいました。「子供」が出てくる必要があるのは構わない。「母親」が不在なのも構わない。ただ、安易に個々人の恋愛物語を紡ぐ際の「目撃者(容認者?)」として子供を登場させたのであれば、その子供が将来的にその体験を踏まえてどんな人間に成長をするのか、それは子供にとって幸いなことになるのか、または、ならないならならないでその覚悟があって物語を紡いでいるのかという非常に鬱陶しいことを考えてしまうのであります…。子供がいない私の言葉なので薄目で読み飛ばして頂ければ幸いなのですが、一人の親である以上、たとえ嘘でも「一番愛しているのは子供であるお前だよ」と云うのが親の義務だと思うのですよ。嘘はそのうちバレるかもしれない。でも、誰の為の嘘だったか理解する力が付いた頃にバレるのであればまだ救いはきっとある。誰かを好きになったことがない、恋愛も知らないうちから親にとっての一番が自分ではなく赤の他人であると知るのは本当に辛いことだと思うのです。でもそれは、理想論でしかないんだよね。

啓介にとっての一番は昔も今も変わらずに誠一だった。誠一は都合のいい男として啓介を散々利用した挙句に、自分が捨てられたと勘違いをして恋を自覚する。何も求めない献身的な啓介の愛は、求められるだけ与えて与えて与え尽くしてもなくなることがない。しかも見返りを求めない分、誠一から自分に向かう気持ちにはとことん鈍感だ。献身的な愛はただ心地よく溺れているうちはいいかもしれないが、相手にも何かを与えたくなった時に残酷だ。自虐的なまでに相手の気持ちを疑い、この幸福は未来永劫続かないと勝手に絶望し、一人で泥沼にはまり込む。この啓介という男が本当に鬱陶しくて(笑)、とっても嫌な奴に描かれている誠一の方に肩入れしてしまったぐらいだ。そもそも私は「攻めに健気に尽くす受け」というのが好きではないのだよね。登場人物を好きになれないのなんて木原作品では当たり前(そう云い切れてしまえるって凄いね)なので気にはしていなかったのだが、物語終盤の展開に眉間に皺が寄って仕方なかった。
啓介は誠一を振り切って家業を継ぎ結婚をし、その後妻は男を作り子供を連れて出て行ってしまう。その子供が、妻の他界によって呆気なく啓介の元に戻ってくるのだ。啓介は自覚している。誠一以上に子供を愛せるわけがないと。理屈抜きで本能で知っている。出て行った妻との間に作った実の子供よりも、誠一の方が大切だと。自分の気持ちに嘘が付けない啓介は誠一の元から黙っていなくなる。息子との二人での生活を選択する為だ。
再会→別れ→再会→別れ→再会を繰り返す二人だが、二度の別れとも啓介は黙っていなくなるのだ。「蒸発」という行為の暴力的なことをこの男は理解していないのだろうか。消失は喪失とは違うということがわからないのか。(追記、高校生の頃に連絡を途絶えさせ田誠一への無意識の復讐でもあったのかもしれない)しかしそれよりも読んでいて気分が悪かったのは本当のラストだ。簡単に見つかった啓介を誠一は、息子の見ている前で無理やり抱くのだ。見るなと叫ぶ啓介を押さえつけて、見ておけと言い放つ。たかが恋愛である。その恋愛を成就させる為に「子供」をこんなにも踏みにじった話を私は知らない。でもそれ故に、非常に納得をしてしまったのだ。先に理想論だと自分で云ったけど、親だからといって子供を一番に優先できるとは限らない。大人だからといって子供を大切に出来るとは限らない。現実を見渡せばそんなことはあまりに当たり前すぎて今更口にするまでもない。でも、優しい物語の親子と恋人は悲しい現実など無いかのように幸福そうだ。それはそれで構わないのだが、でも「if」のことを考えてしまう自分がいた。「もし、子供が二人の恋愛を容認しなかったら?」の「if」である。

これで終わりだったら非常に読後感の悪い物語だったと思うのだが、救いは息子(貴之)が主人公の続編(「空を見上げて、両手広げて1,2」)にある。続編の主人公に彼を置いたところが木原さんが木原さんたる所以だ。凄い。貴之と父親である啓介の仲は上手くいっていない。決定的な決裂はしていないが、自分よりも恋人である誠一を選んだ父親と、貴之はどう折り合いを付けてよいのかわからないまま成長する。自分を一番に愛してくれる他人の温もりを求めて、啓介の友人である柊のもとに入り浸る。この、息子が父親のことを許さないまま成長している姿に私はやけに納得をしてしまったのだ。彼が求めたのが柊であるという部分はちょっと小説的だなぁと思わなくはないが、「幸せそうではない」子供の姿を見せてくれたことが嬉しかったと云うと語弊があるが、嬉しかったのだ。子供の頃から男と男の性交の気配(ときには音)を察知しながら、しかもその「愛情」からは疎外されていると感じながら育つ子供が捻くれないわけがないのだ。中学生の彼は柊との関係に溺れる。
本当の大団円(?)は続編の続編までお預けだが、成人をして漸く「他人への愛」を優先せざるを得なかった啓介の心境を貴之が想像出来るようになって、和解まではいかなくても、少しだけ近づけたのであれば親子にとって十分だと思うのだ。貴之の恋が成就するかどうかは別にして、私はこのラストを幸福だと思った。






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BL漫画まとめて感想

純愛えろ期 ((ジュネットコミックス ピアスシリーズ))純愛えろ期 ((ジュネットコミックス ピアスシリーズ))
(2010/10/30)
彩景 でりこ

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さ、さりげなくピアス作品の感想などを。
以前『傷だらけの愛羅武勇』を読んだときは萌えにヒットしなかった彩景さん。こちらの新刊は周囲で大変評判が良いので怖々手に取ってみました。怖々手に取った理由はひとつ!!帯!!!ピアスの帯といえば毎度毎度こちらの度胸を試されているかのような煽り文句によりによってそのコマ!?という選び抜かれたアレなコマ。本は店頭で、を心がけている私ですが今回はかなり悩みました。どんな帯かは実際に見てみてください…本当に酷いから(笑)正直「ピアスだから」と内容にはそんなに期待をしていませんでした。ところが読んでみて驚いた。男子高校生6人によるとても正統派な恋愛風景が豊かな方言とエロで繰り広げられていたから。要するに、エロかったけど恋愛漫画としても大変良く出来ていたのだ。見くびっていてゴメンナサイ、彩景さん。
何がいいって、攻めが受けと同じぐらい気持ちよさそうな顔をしているのがいい!1組目の幼馴染リバカップルも、3組目のおチビさんと美人受けカップルも勿論良いのだが、表紙の二人が一番のツボでした。嵐のような天然鬼畜攻めに呆気なく陥落する眼鏡がエロ可愛くてキュンキュンした。二度も見事な○射を拝めるとは…さすがピアスです。
同レーベルから出ている『残りモノには愛がある!?』も読んでみよう。
しかも今確認したら小冊子のプレゼントがあるらしい!迷わず応募する!おすすめです♪

生徒会長に忠告 (5) (ディアプラス・コミックス)生徒会長に忠告 (5) (ディアプラス・コミックス)
(2010/10/30)
門地 かおり

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待ちわびていた、というわけではない『生徒会長』ですが出れば買います。当たり前です。
4巻感想を偶々書いていたこともあり、いつもは前巻の内容を思い出すのに苦労するのですが今回はすんなりいきました(笑)とにかく国斉と千賀はバカバカバカバカップルに見事成り、大学生カップルが暗黒で、裏に不気味な先生が居て、私の一番のお気に入りのキャラである近藤君もホモになろうとしている!!という認識で読み始めたのですが大方間違ってはいなかったようです。以前も書きましたが、私は近藤君だけはホモにならずに「おまえキモイ~!」と主に千賀に対して叫ぶ良心の人であって欲しかったのですが…蓋を開けてみれば、雛森に絆されていく近藤君は男前でとても可愛く素敵なのでした。等身大の男子高校生なんて一切、一切出てこないこの作品で、唯一近藤君だけは男子高校生らしい明るさと無邪気さと紙一重の無神経さを持っていて好きなのです。千賀は正直「黙れ」と普通に思うぐらい私にはあり得ない台詞を連発しまくるキャラでして、国斉&千賀は勝手にやってろ!という感じなのでした。雛森相手に近藤君が受けるのかと思うとモヤンとするので、是非攻めでいって欲しいです。一番楽しみにしていた大学生カップルの暗黒っぷりは凄いヒキだったはずですが、5巻では一切出てきませんでした。残念。あの二人がもし万が一成就したら本当に驚くわ…。そして全体のテンションからさすがに浮きまくっている不気味な先生が不気味すぎて困ります。彼が出てくる箇所だけホラーのよう。でもこの暗さ怖さをナチュラルにやってのけるのが門地さんなのですよね。人間が怖い漫画を描かせたらBL界随一だと思います。
次巻はもう少し早く読みたいな。大学生カップルの話を予定しているらしいので楽しみです♪

恋姫 (ビーボーイコミックス)恋姫 (ビーボーイコミックス)
(2009/02/10)
門地 かおり

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こちらは昨年刊行された絶版だった作品の新装版。
この中に収録されている『運命の人』が私が一番好きな門地漫画なのです。
生徒×先生の精神的軟禁物とでも云えばいいかな。自由にさせてくれる恋人を裏切ってまで生徒の「行かないで」という言葉に閉じ込められた流されるだけのように見える先生の流される「理由」が最後の最後に明かされるのだが、そのささやかな言葉にゾッとしました。本当にその理由が先生の選択に関係あるのかはわからない。でも、生徒を選んでしまったのだと認識した時に思い出したのならば、きっと無関係ではないのだ。トラウマと呼ぶには小さい心の疵が大人になっても行動や思考回路に影響を与え続ける。その怖さがやけにリアルだったのでした。他にも怖い門地作品はいくつか思い浮かびますが(ビブロス時代の単行本、全部持っていました)、これは怖いだけじゃない魅力を今でも感じる作品です。
あ、表題の『恋姫』については割愛。攻めが結構なサイテー男です(笑)

「千‐長夜の契」岡田屋鉄蔵

千-長夜の契 (HANAMARU COMICS PREMIUM)千-長夜の契 (HANAMARU COMICS PREMIUM)
(2010/09/17)
岡田屋 鉄蔵

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願いを叶える代償に、その者の魂を喰う謎の座頭・千載。奇妙な縁で出会った剣豪・草薙とともに人々の命を賭けた願いと向きあっていく…。妖しく強く、BLの枠を超えた壮大な物語が始まる!!

なかなか書店で見つけることの出来なかった岡田屋さんの新刊。
「BLの枠を超えた壮大な物語」というフレーズには多少違和感を覚えるけれど(今作の素晴らしさがその言葉に見合わないという意味ではなく)、兎にも角にもとても良かった!岡田屋さんといえばゲイコミっぽい筋肉や体毛の描写に、扱うテーマも独特なものばかりで、その作家にしか描くことが出来ないであろう世界観を確立していらっしゃる方。激しい感情の揺れを誘うようなストーリーは本来私の得意とするところではないし、恋愛感情と同等にフィジカルな欲望が溢れるような肉感的な男達もそれほど好みではない。でも、面白いんだよね。すごく読ませる力がある。

千載と草薙を狂言回し的役割に据えた濃密な人間(外)ドラマだ。裏切りによって愛する者を守ること叶わず絶命した若侍、神々の悪戯で過酷な輪廻の輪に閉じ込められた二人の男、天狗の一族。主人公は夫々異なるが、皆一様に強い「願い」を持っている。千載は彼らの願いを聞き届け、代償に魂を喰らう。勧善懲悪の色が強いかと思いきや、千載を突き動かすものの正体は見えない。千載とは一体何者なのか。彼の過去に何があったのか。良きパートナー(未満?)である草薙はなぜ浪人になったのか。彼らの間にあるのは恋愛と名前が付くような明確な情ではないのだが、それでも身体をあわせて何某かの想いを共有することが出来る関係である。慰みに繋いだかもしれない身体でも、必要なときが人にはあるのだ。今巻では未だ明かされることのない数々の謎だが、次巻の発売を楽しみに待ちたい。

とにかく読めばわかるから!全力でオススメだから!ということです。
以下はちょっと思ったこと。

BLにストーリー性は必要か?と問われれば今現在の私ならば迷わず「当たり前」と答えるだろう。でもちょっと昔だったらどうだろう?正直に云うと「それよりもエロが欲しい」と思っている時期があったのだよね(今もたまにある)。どちらもBLには欠かすことの出来ない要素であることは間違いないし、その配分は作品次第で多種多様なのだけど、私はいい加減「BLなのに凄い」とか「BLというには勿体ない」みたいなフレーズを使ったり思ったりするのは止めようよと思うのだ。でもその反面「BLですから」という含羞のようなものも大事にしたいという気持ちもあって…複雑なのである。とにかく必要以上に「BLなのにストーリーが凄くて」と煽る言葉はちっとも褒め言葉じゃないってことをもっと意識したい。私が愛する物々はそんな惹句なんて必要がないぐらい素晴らしいに決まっているし、面白い漫画があればつまらない漫画があるように、面白いBL漫画があればつまらないBL漫画もあるということなのだから。
しかしここまで書いて思ったのだが、必要以上に物語性をアピールしないと編集方針が「ストーリー重視で」ということにならないのかもしれない。む~、それも当たり前か。需要と供給の問題ってとてもネックで、最近になって私は漸く「同人誌」の存在価値が商業とはまったく違うところにあることがわかってきた。作家が描きたいものが大多数にとって面白いものである保証はないし、第三者の視線(編集)を入れた方が良い場合も多いと思う。良い作品を読みたいと云う願いは誰しも同じだろうから、柔軟に、でも妥協せずに(ムチャ云ってますね)あって欲しい。

何を今更という感じだが、岡田屋さんの呟きを拝見しているとその辺りに苦労されている様子が伺えたので気になってしまったのでした。そして何気に全作ブログにアップしているのですね。うん、好きです。

「妻の超然」絲山秋子

妻の超然妻の超然
(2010/09)
絲山 秋子

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久々の、本当に久々の一般書感想。

現代小説作家(という名称が正しいのかは置いておいて)の中で私が一番好きな作家、それが絲山秋子です。作品の面白さは当然ですがとにかく素晴らしいのは文章の美しさ。デビュー作から云われ続けていることですが、絲山さんの単語と文章の運び、リズムは本当に美しいと思うのです。全文書き取りをしたくなるぐらい、美しい。上品とは違うどころか無縁の作品もあるのだけど、下品なことを書いても汚い言葉を遣っても、単語の選択と書かない部分書く部分の選択と、それらを組み合わせた文章には一定の硬質さがある。そのギリギリの張り詰めた糸のような硬さが良いのです。そんな絲山さんの新刊。

実はここ最近の絲山作品には以前のような面白さを感じられずにいたのです。言葉は悪いけど、明らかに油断しているなというか。このぐらいのことを書いておけばいいんじゃないの?という慢心のようなものすら感じていました(勝手にですよ!)。というのも、エッセイで知ったのだけど絲山さんは職業作家としての自負が大変強い方なのですね。小説を書くということを作業として捉えていると書かれていたので、またそれもすごく納得をしたのです。
だけどこの作品は違った。戻ってきた、というよりも大きく成長をされたというか。とにかく素晴らしかった。

エンタメではない純文寄りの作品の感想を上げることはそれこそ自己満足でしかなく(自分の気持ち的にもブログの需要という意味でも)やめようかとも思ったのですが、少しでも形に残しておきたかったのでメモとして記します。「エンタメ(直木)」と「純文(芥川)」の違いは何か、という話は書店員仲間内でもしばしば出ます。現代日本に「純文」は存在しないと言い切る方もいるだろうし、感覚的なものなので人夫々だろうと曖昧にしてきました。
でも、この作品を読みながら様々な感情が溢れてきて溺れそうになったときに思ったのです。
読み手の喜怒哀楽を喚起する目的で書かれたものが「エンタメ」であるならば、「純文」とはそれ以外の作品のことなのだ、と。上手く云えないのだけど、絲山さんはこの作品を読者に「楽しんでもらいたい」とか「考えてもらいたい」と意図して書いてはいないと思うのね。そういう作者から読者へ発信するギフトがない。でも私はよくわからない感情に溺れそうになった。すごく興奮する読書体験だったし、面白かった。日常の話を描いて「だから?」で終わることも少なくない「非エンタメ小説」の中で異彩を放ち続けるのが絲山秋子だと思うのです。

「妻の超然」
妻たるものが超然としていなければ、世の中に超然という言葉など要らないのだ――。
浮気者の夫と、その事実を知りながら言及しない妻の話。「わかる」ことは「知っている」ことではないのだよと一応前置きをしつつ。もう駄目なのではないか、という所まで来ているようでふとした波に揺り戻される夫婦関係の機微。「ああ、おそろしい」と一人呟く妻の気持ちがわかり過ぎて可笑しくも怖ろしかった。
「下戸の超然」
飲めない男が飲む女と恋人になる。酒を飲めない彼の哀しみと彼から見える飲む人間の滑稽さ。正気である方が馬鹿を見る飲み会という一つの社会の理不尽さ。同じ理性で向かい合う事の出来ない恋人たちは徐々に関係を悪くしていく。飲む彼女からすれば「超然と構えている」彼は高尚すぎて無関心無感動過ぎて駄目だった。一つの関係性の終わりを描いた話。あるある。
「作家の超然」
文学がなんであったとしても、化け物だったとしても、おまえは超然とするほかないではないか。おまえはこの町に来て初めて知ったのだ。ここでは、夕日はいつも山の向こうに沈む――。
極めて私小説的な、とある小説家の話。
各紙書評で評判高いのは知っていたけれど物語の力としては一番弱いと思う。でも「書く人」の心を掴む強さがあるのはわかる。小説家で溢れる世の中を小説家として生きていくために「超然」というスタイルを取った小説家の宣戦布告とも決意表明とも日記とも取れる話、かな。


<私的オススメ絲山作品ベスト3>

海の仙人 (新潮文庫)海の仙人 (新潮文庫)
(2006/12)
絲山 秋子

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ニート (角川文庫)ニート (角川文庫)
(2008/06/25)
絲山 秋子

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袋小路の男 (講談社文庫)袋小路の男 (講談社文庫)
(2007/11/15)
絲山 秋子

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ああ、本当にメモ的な感想になってしまった…。美しい文章を読んだ後に自分の文章を改めて読むと軽く絶望するよね。これでも一応気を付けているつもりなのだけど(今回は除く)。好きですというお話でした。
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