「秋期限定栗きんとん事件 上・下」(米澤穂信)

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好きだ、大好きだ
「小鳩くんに彼女ができました」という帯に「えぇっ!?」と反応してしまったのは、限定ファン共通の反応だと思います。季節限定シリーズ(本当は「小市民シリーズ」という)待望の、待望の新刊が出ました!!
小鳩くんの性格は更に黒く、小佐内さんは更に怖くなっています。「小市民」を目指すはずの二人はいつも通りに嬉々として謎を解き、嬉々として復讐に走る。これは一種のノワール小説であるとすら思う。美味しそうなお菓子は小佐内さんが語ったように、作品に潜む毒を誤魔化す要素もあるに違いない。だって、小佐内さんの復讐と動機は今回も半端ナイですよ・・・。
夏の事件の後に「互恵関係」を解消した二人は各々の道を歩き出したかに見えた。そう、あの小市民の星を目指して―。恋愛関係でも依存関係でもないが互恵関係にあった二人。慎ましやかに目立たず出しゃばらず清らかな小市民を目指すべく結ばれた二人だけの協定。小鳩君は「狐」。人の隠し事や謎を推理して得意満面に披露しなければ気が済まない性分の持ち主。それ故に小中とずいぶん人を傷つけ、また自分も傷ついてきた。名探偵が謎を解き明かしたその後を想像してごらん?犯人はお前だ、めでたしめでたしで終わるわけではない。学校内で起こるささやかな事件ならなおのこと。小佐内さんは「狼」。自分に危害を加えるものに数倍返しをしないと気が済まない性分。「復讐」を企てるのが何よりも楽しいという女の子。二人はお互いの困った癖を封じるべく、お互いに見張り、牽制し、助け合うという関係を結んでいた。
そんな二人が巻き込まれる短編形式の日常ミステリーです(秋期は長編ですが)。
とにかく私はこの二人の関係が大好きなんです。男の子と女の子が一緒に居て恋愛要素が絡まない、でも紛れもない一種の青春小説。お互いの理解者はお互いだけ。逸脱する自分を良しとせず平凡を目指す二人は自意識過剰で自信過剰な嫌な奴らなんです。だって小市民を目指すと言いつつも、小市民になんてなれっこないと知っている。目立ちたくない、目立ちたい。自分を特別だと思いたい、思いたくない。それって思春期特有の懊悩そのものじゃないですか。頭が良くて賢いのに、どうにもその才能と上手く折り合いの付けられない葛藤が愛しいです。

と、ある本を読むまでは単純に「この二人好きだなー」という感想だけだったのですが、またまた『あのひととここだけのおしゃべり』(よしながふみ)に私の萌にポーンと回答を与えてくれる記述を見つけてしまいました。

はい、またしても三浦しをんとの対談です。私の思考回路は非常に狭い世界をグルグルしているだけのような気がしてきました(笑)テーマはズバリ「やおいの定義」。簡単に言うと、「やおいとは男×男だけではなく、女×女、男×女にも同様にいえる」という主張(思考)です。例に挙げられているテレビドラマを見て「あぁっ!」と肯かずにはいられませんでした。例えば『きらきらひかる』の鈴木京香と松雪泰子。対立する構造の二人でありながら、時に事件解決の為に力を貸しあうという関係。また、男女でいうのならば『ケイゾク』の中谷美紀と渡辺篤郎、『トリック』の仲間由紀恵と阿部寛。恋愛関係にはない、むしろ恋愛からは遠い関係の男女が、ずっと平行線をたどりながら、たまに交わることもあるという関係。私、これらのドラマ大好きでした。特に『トリック』と『ケイゾク』の二人の関係がやたら好きだった。そうか、あれは男女の「やおい」だったのか。そう考えると腑に落ちるし、目から鱗です。あは、影響されすぎ?(笑)最近はめっきりドラマを見ていないので、他に思い浮かぶ男女は・・・『QED』という推理漫画の高校生二人の関係は近いものを感じます。後は、両想いになる前の、のだめと千秋とか。
ここでいう「やおい」とは「BL」とはまったくの別物で、高村薫の「合田×加納」を『マークス』や『照柿』の時点で妄想すること、といえばわかりやすいかしら。『LJ』は最終的に想いが交わってしまうのだからちょっと違う気がする。要するに二次萌えを「やおい」と称していると考えればいいのでしょう。
ところで、よしながさんが日常的に使う「やおい」という言葉ですが、私は「やおい」という言葉を日常的に使うことがないのだけど、それは世代間格差?それとも二次に関わっていないから?「やおい」が「ヤマナシ オチナシ イミナシ」とか「ヤバイ オゾマシイ イヤラシイ」とかの略だとは昔から知っているけれど、「やおい」という言葉にはかなり強い侮蔑と自虐を感じて使うのを躊躇してしまうのよね(腐女子だって同じか)。私や友人は「A × B」と掛算で表現しますね。「あの二人はやおいだ」とは言わない。BLを一躍表舞台に押し上げた『となりのやおいちゃん』でさえ、「やおい」という言葉そのものを私より若い世代に定着させるには至っていない気がするのだけど・・・勘違いなのかなー。
「やおい」という言葉について考えるのは今度にして、話を戻そう。

三浦しをんが言う、やおいの関係とは、「孤独と連帯」だという主張に激しく同意します。
「孤独と連帯」とは上手いことを言うと感心してしまう。本来交わらないはずの二人が何らかの接点で関わりを持ち、そこに生じるはずがない感情に支配されていく。その繋がり自体を連帯とも取れるわけだ。それは二次やBLの醍醐味だもんな。男と男の恋愛がイレギュラーなものだからこそ、そこに私は強い孤独と、繋がった二人の連帯を感じて悶えるわけだ。
そう、「孤独と連帯」という観点からすれば「限定シリーズ」の小鳩くんと小佐内さんの関係は本当にまさしく「やおい」なのだ。他者に理解されない隠したい性質を抱えて互恵関係を結んだ二人。互恵関係と恋愛未満関係をたまに行き来するような絶妙な書き方。この部分に私が非常な萌えを感じたのは当然といえば当然なのですね。
夏から秋を経て二人の関係は少し変わった。残る高校生活は数か月。大好きな二人の話が終わってしまうのは悲しいけれど、「冬期限定~事件」を心待ちにしたいと思います。頼むから3年も待たせないでおくれ・・・。あっ、読むのならもちろん『春期限定いちごタルト事件』からですよ!

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M様へ

もちろんです!こちらこそよろしくお願いします~。
あの対談は本当に読むたびに「あぁっ!」と膝を打ってばかりです。
打ち過ぎて痛いぐらいです(笑)
あそこまで深く鋭く考察出来るといいのですが、疲れそうですね。

限定シリーズは東京創元から出ているミステリーなので、ミステリーがお好きなM様は楽しめると思いますよ!気が向いたら是非読んでみてくださいませ。
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Author:yori
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