「願い叶えたまえ」

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どこか壊れたところがある若く美しい暴力団幹部・深見と出会いピアニストの絹川は劇的に恋に堕ちた。だが、深見が同性から向けられる恋情に激しい嫌悪感を持つことを知った絹川は、「ただ、愛するだけでいい」と決断したのだ。そんな時、深見への異常な執着を隠さない敵対暴力団幹部・有島の淫靡な罠が―!?ピアニストとヤクザ。突き上げる切なさ、激しく奏でるトゥルーラブロマンス!!

すごい、おもしろい、それしか言えなくなってしまうので西田東作品は困ります。
ここ数日間、寝ても覚めても『願い叶えたまえ』が頭から離れませんでした。いつも以上に頭の中が漫画一色になり・・・嫌がらせのように長くなってしまいました(笑)
3年も前に完結した作品なんですね。今更だけど、読めて本当に本当に良かった。

「ジャンルで区切って作品を選ぶ」ということがほぼない私が唯一「むむっ」となってしまうのが「ヤクザ物」だったりします。ある意味アラブに匹敵するファンタジーだと思うのですが、好きです。そして今回『願叶』を読み確信したのは、私は経済ヤクザよりも武闘派ヤクザが好きで、そして攻めよりも受けにまわるヤクザに堪らない萌えを感じるのだ―ということでした。ま、私のベストヤクザは『赫蜥蜴の閨』の臣でバリバリの攻めですが彼は別腹だ(従兄に対する女々しい想いは受け的といえないこともないし)。『聖なる黒夜』の練や『さよならを言う気はない』の天海、『刺青の男』『ほんと野獣』のヤクザがパッと思い浮かぶ受けているヤクザですかね。水原先生のヤクザや榎田先生の『交渉人シリーズ』にあまり萌えを感じなかったのは、彼らが攻めでかつインテリな為だったのかも。
前置きが長くなりましたが、受けの武闘派『願叶』深見は私の心を鷲掴みにしていきましたよ。

作品については詳しく語っても魅力を伝えられないので、投げます。
読んで後悔は絶対にしないです。私、西田作品を古本屋で買う機会が偶然にも多いのですが、それが信じられない。なぜ手放そうと思えるの~!?

ずっと考えていたのは『願叶』のことと「なぜ私はBLヤクザが好きなのか」ということでした。
『赫蜥蜴』のときにも考えたのですが、「どんなに鬼畜なことをしても物語が破綻しないから(ヤクザだからね)」という理由しか思い浮かばなかったのです。ただ、男がヤンキー漫画や任侠映画を愛する気持ちとは確実に違うと思っていました。憧れも尊敬もないし、カッコイイとも思わなければ同化も望んでいない。で、なぜか唐突に頭に浮かんできたのが『仮面の告白』の冒頭だったのです。主人公が厠仕事の褌青年に性衝動を覚える有名な場面。主人公は青年の褌一丁という姿態に興奮するとともに、彼の「職業」に対して興奮するんですよ。「貴賎」でいえば明らかに「賎側」、人の糞尿を始末するという職業への悲哀や、その選択をせざるを得なかった環境そのものに欲情している(たぶん)。「不謹慎だけど萌えてしまった(by三浦しをん)」んだと思うの。私がBLヤクザというか『願叶』の深見に抱く感情ってそれと似ているのかもしれない。ヤクザは選択の自由がきく仕事ではないと思うんだ。生まれ育った環境、闇に抗えない心・・・一応自由な私は彼を蔑みながら美しいと崇めているような気がします。深見は悲しくて美しい生き物だから。そして私が望むヤクザの姿とは、堅気ではない自分を恥じている、含羞がある姿なんですね。「学がない」という意味のことを深見も何度か口にしますが、受けのヤクザが口にするのってあまり聞いたことない気がします。その恥じらい(?)に悶えました。
しかしこの感情って深見を手込めにしたエロオヤジ有島と何ら変わらない精神構造な気がしますね。もっと言えば、推測だけどゲイの人がブランドとしての「ヤクザ」を愛でる際の構造とも似ているのではないかと思います。ほら、三島先生ですし。深見はゲイの方々が見ても十分鑑賞に堪えうるヤクザではないでしょうか。また西田先生の粗い絵柄が色っぽいんだ。有島に手込めにされる場面も、祐介にヤられる場面も、なんだか読んでいて恥ずかしくなるぐらい悶えてしまいました。
有島といえば、私の心に刻まれる名台詞を吐いてくれました。裸に剥いた深見をベッドにうつ伏せに拘束して「絶景だな 正しく絶景だ」オヤジ~!刺青の龍が妙に可愛いのも気になりません(笑)そりゃあ絶景だろうよ、深見の尻と昇り龍だもの。この有島が大変魅力的に描かれていて、西田先生は有島を描くときが一番楽しかったのではないでしょうか。好きです。
理解者が救済者なわけではない。有島も工藤(深見の部下)もきっと深海の傍に沿ったら彼を殺してしまう。迷子の幼子のような姿が愛しくて哀れで。祐介だけが、深海を生かそうとしていたんだね。
彼が有島に叫ぶ言葉には不覚にも涙が出ました。最初の「願い」はこの叫びそのものだったわけだ。

と、三島由紀夫なんて思いだして私ったら国文出~みたいな自己満足に浸っていたのですが、風呂で唐突に一番納得いくことを思い付いてしまいました。
「BLヤクザって、最強のツンデレだ」
人生かけてツンしている人々が、一人の男と対峙するときにデレるわけでしょう。「ツンデレ」という言葉を使うのは恥ずかしいので遺憾ですが、私の萌をピンポイントで表現するのに「ツンデレ」程的を射ている言葉はないのでした。あー、ツンデレか・・・微妙にがっかりです(笑)

すみません、作品について少しだけ語ります!消化しないと次に進めそうもないので。
ネタバレしますので未読の方は読まない方がよいかと思います。
この話の大きな特徴が、愛あるセックスが一度も出てこないということだと思うのです。深見と祐介のセックスは薬に浮かされて欲望のまま深見が祐介を求めた結果なんですよ。もちろん「祐介・・・」と彼は何度も口にしていてその感情が「愛」の一種であることは確かですが、ことセックスに関しては違うんだよね。深見は男同士の性交に強い嫌悪を持ったままだったと思うんです。それが・・・すごく切ないのと同時にやけにリアルなんですよ。欲望のまま肉体関係を持つこと。「いけない」と思いつつも貪るように抱いてしまう祐介も含めて、「男だ」と感じました。それが作品を深く深くしている要素だと思いました。愛あるセックスをしていないのに、二人の間には確かに愛情があったというのが素晴らしい。
なんとなく、私は二人はもう肉体関係は持たないような気がします。
側にピアノとケーキがあって、祐介と工藤の「願い」が叶った世界。
そんな世界に深見が少しでも長く居られたらいいなと本気で「願って」しまいました。

ああ、素晴らしい作品をありがとうございます!
旧作ですけど、これは間違いなく今年のマイベスト上位に入ります!
本当に面白かった!!

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yoriさんのレビュー読んで(ホント、嫌がらせのように長い)「願い叶えたまえ」読み返してしまいましたよ。
いいですよね~。西田さんのあの能面のような絵とヤクザはとっても合う!西田作品ではヤクザ物が特に好きです。
エロオヤジ有島も意外と好きです。顔が出て来ない絹川父ちゃんも好きです。
でも、でもやっぱ深見ですね。かわいい~!
最後の最後まで気が抜けないストーリーですね!
「神よ、願い叶えたまえ~!」と叫ぶ工藤に惚れました!ようするに全部いいんだわ、節操がないけど……(笑)

うう、読んでくださってありがとうございます~。
書いてこれなんだから、語ったら止まらなくなりそうですよ。
これ本当にすごくすごく良かった!!
工藤といえば『青春の病は』に番外編が載っていましたね、あれも素晴らしかった!!
何気に一番笑ったのは裕介のピアノが本当に下手だと判明したときでした。ああもう、素晴らしすぎる!

西田さんの長編は凄いですね。『Life Love』がますます楽しみになりました!

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