「スローリズム」(杉原理生)

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水森に毎週2回必ず電話をかけてくる矢萩は、高校のときからの付き合いで一番身近に感じられる友人。だが、高校生の頃、ゲイである事を告白した矢萩はすました顔をして「安心しろよ、おまえだけは絶対に好きにならないから」といい放った。あれから12年。その言葉どおり水森と矢萩はずっと友達でいるが…。単行本未収録作品&書き下ろしで待望の文庫化。

無性に「恋の話」が読みたい!と思い本棚の奥から引っ張り出してきました。
杉原先生は読むたびに、「今は楽しめないけどいつか楽しめる気がする・・・」と思う妙な位置づけの作家です。その「いつか」がついに来ました。待ったかいがあった(勝手に)、嬉しいです。
受け攻めをゲイノンケで分類した時は失念していましたが、何も気持ちを伝える側が語り手とは限らないのですよね。想いを受け取る側が主人公というのが、杉原本の特徴なのでしょうか?私は「鈍感」さや「愛されている自覚故の無意識な残酷さ」を持つ受けというのが苦手なので、これまで杉原本をあまり楽しめなかったのだと思う。でも今回はそこから一歩先に進んで考えることが、というか浸ることができました。
基本中の基本なんだけど、恋愛って二人でするものなんだよね。一方がズルくても、好きになってしまったら仕方がないんだよ。ああ、ダメですね。現実が恋愛と遠い(?)と基本的なことを忘れていきます(笑)
水森のコップから水が溢れるのを気長に気長に待った矢萩と、矢萩の気持ちに気が付きつつも知らないふりを続けた水森の12年愛。水森のことを周囲の人間は「ヒドイ」と言うけれど、本心を隠し続けた矢萩だって相当捻くれていると思います。私は矢萩が好きです。執着と惰性という矛盾するような感情が混ざり合っている人だと思います。前にも書いた気がするけど、私はとにかく「片思い」に弱くって、その期間が長ければ長い程萌えるんです。そして不憫な片思いであれば倍々で萌えます。だから決定打が水森によってもたらされた時は本当に嬉しかった。杉原先生の美しく抑制の利いた文章は前から好みでしたが、その中にある二人の「熱」が素晴らしくって。久しぶりに恋愛小説を読んで感動しました。続編の葛藤は多少テンプレに感じましたが、どんな経緯でもここに辿り着いた―という水森の殺し文句にちょっとウルッとしてしまった。どうしたのかしら、私。そんなに矢萩に感情移入したのか。
BLを読んでいるのだからいつも恋愛を求めているような気がしていたけれど、私の好きな話の傾向って「何かしらの問題を抱えた人間が他者と関わり何らかの前進を遂げる物語」というか、その関わりが「恋愛」になるのは必然なんだけど、でも決してそれだけではない話が好きというか・・・理屈っぽく考えても意味ないですね。
他の作品もリベンジしてみなければ!

以下はちょっと恥ずかしい話。
矢萩は水森を「お守り」のようだったと言いますが、かくいう私にも昔「神様」のように思い続けた友人がいました。あまりに好きで依存のようになってしまうのが怖くて、自分から距離を持ったのが高校生になったとき。今でも一番仲の良い友人であることに変わりはないのだけど、この話を読んで無性に彼女のことを思い出しました。思春期特有の感情だったので、それをどうこう言う気はないけど、恋情を友情で覆って12年も頑張った矢萩がやたら気になるのと無関係ではない気がします。12年ってキツイけど、案外過ぎてしまう時間なのかもしれないなと。

そして、私ちょうど彼等と同年代なんですね。大学を出て就職した会社に居続けて数年。まだ出世には早く、しかし後輩もいて、色々とゴマカシの利かなくなってくる頃。周囲はポツポツと結婚する人が出てきて、誰かと共に生きるということが現実味を帯びてくる頃。そんな頃に二人がまとまったのが、個人的に妙に納得してしまったのでした。

うーん、良いものを読みました!

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