『こころ』は本当に名作か(小谷野敦)

あっ、小谷野さんだ~
今度は何にイライラしているのかしら~(ニコニコ)

と、私は小谷野さんを見かけるたびになぜかほわんとした気持ちになるのですが、ご本人が知ったらさぞお怒りになることでしょう。いつの間にか名前を「アツシ」から「トン」に変えてらっしゃったのですね。何があったのでしょうか?露悪趣味のきらいがある人なので調べればすぐにわかるのだろうけど、まぁいいや。
私と小谷野さんの出会いは数年前、夕方のAMラジオでした。まだ実家に居た頃、珍しく夕飯の手伝いをしながら母が愛用しているラジオを何気なく聴いていたのです。夕方のパーソナリティに相応しい柔らかな女性司会者の声と・・・夕方には怖ろしく不似合いな超不機嫌な男性の声。
そして耳に入ってきた言葉に私は呆然としてしまったのですよ。
「だから私はモテナイんですよ!!」
「恋愛は特殊な技能なんです!!」
「世の中には恋愛が出来ない人間もいるということを世間は認めるべきだ!!」
そのようなことを延々と超不機嫌な声で喋り続ける人、それが小谷野さんでした。
当時私は姫野カオルコに傾倒していて、女性にとっての「非モテ」や「否恋愛」のことについて考える機会が多かったこともあり、声高に「モテナイんだ!!」と叫ぶ小谷野さんに大変興味を持ちました。番組の終盤に「男性が書いた童貞小説というのはたくさんあるが、女性が書い処女小説はあまりない」的な事を仰っていたので、その場で「姫野さんを読んでください!」とFAXしようかと思った程です。
そしてすぐに著作『もてない男』『帰ってきたもてない男』(ちくま新書)を読み、ファンてわけでは全然ないのですが、「微笑ましい存在(大変失礼ですね)」として私の中に位置づけられました。
いやもう、小谷野さんてばイライラしすぎ!さぞや生き辛いだろうなーと思う。でもそんなところが好きだったりするのです。この人フェミコード踏みまくりだし、ホモフォビアの気もあるし、わざと敵を作るような偽悪的な部分もあるしで、偏見思いこみだらけの人なんだけどね。ダメな大人ですよ。だから私のように「また何か言ってるよ~」と話半分で気軽に読むのが良い気がします。

koyano.jpg

そんな小谷野さんの「『こころ』は本当に名作か」を読みました。
私は書評本が好きで結構よく読むのですが、この新書は完全にタイトル勝ちかと。本当に小谷野さんの個人的な好き嫌いに基づいて「日本人必読の名作」を〈最高峰〉〈トップクラス〉〈二位級〉に分けて紹介しているのですが・・・最高峰の最初が『源氏物語』次にシェイクスピア、ホメロスと続きます。ホメロスですか・・・うん、名作なんだろうけど・・・この紹介文を読んで「読もう!」という気にはならないよ。だって説明短すぎるし、小谷野さんの「好き嫌い」が全面に出過ぎていて少なくとも「案内」にはなっていない。まさに「正直者」。読み物として面白いタイプの書評本です。古今東西の古典をこれでもか!と紹介しているのですが、私がきちんと読んだことある本なんて10冊もありませんでした。
「ドン・キホーテ」、本棚で眠ってるし・・・。小谷野さん、私は女性ですけど「ラ・マンチャの男」大好きですよ。確かに松本幸四郎の声は聞き取り難かった。

で、肝心の『こころ』です。
恥ずかしながら昨年の夏に始めて『こころ』を全編読み、そのホモっぷりに感動したのですが、確かに「本当に名作か?」と言われると「腐女子としては名作だと思います!」としか言えない自分がいたのですね。だから正直者の小谷野さんの意見を読んでみようと思い買ったのです。
今仮に『こころ』で読書感想文を書きましょうと言われたら私はとても困ると思う。だってあの話は「友情と恋愛の板挟みで苦悩する知識人の話」として知られているけれど、そんな観点から語れないぐらい「私×先生」「K×先生」の話だから(笑)
ま、小谷野さんはそんな同性愛的観点から語ってはいないのですけどね(当たり前)。しかし小谷野さんの「同性愛的」な小説への反応は過剰だ・・・。
この本で小谷野さんの主張はひとつで、小説を楽しむ為には読者個人の年齢、経験、趣味嗜好に左右されるから、人によって楽しいと感じるものは人それぞれで当然であるということ。それによると、小谷野さんが考える漱石とは「母に愛されなかった人の文学」であり、母の愛情を受けて育ったと感じる人間には共感するのが難しいのではないかということ。ちなみに小谷野さんは母に愛された側。
漱石が女性を書くのが下手だったというのは私にはよくわからないけど、この時代の小説って、男性の男性による男性のための小説だったのではないかと思うんだ。「女性が楽しむ」というのは長いこと男性作家にとっては関係ないことではなかったのかなと。だから、男性である小谷野さんが漱石、鴎外、太宰、谷崎、川端、三島を取り上げて「母の愛の在、不在」について語るのをとても面白く読みました。漱石の部分も楽しかったけど、三島を露出趣味の変態と言い切った『金閣寺』の部分も楽しかった。いいのか、こんな事書いて!?やっぱり好きだわー。

「私には疑わしい名作」と章題に付いているけど、正しくは「私個人的にはあまり好きではないので名作とは言いたくない名作」かと。そのぐらいの軽い感じで読める書評本です。



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