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一般書感想(津村再読)

久々にニアでもない一般書感想です。
なんといいますか、コブシをグッとにぎってそのままガッツポーズをしたくなるように「好き」な話です(意味不明ですみません)。


tumura1.jpg
『君は永遠にそいつらより若い』(画像は単行本)
長くなったのでたたみます。


ちょっと前にハマった津村記久子がようやく文庫化されました。しかも一番好きなデビュー作が松浦理英子の解説付きで。エッセイストとしての松浦理英子は特に好きでもないのですが、文芸評論家としての彼女は好きです。というか、単純に私が好きな作品の解説や評論をしていることが多い。上手く表現できないこの作品の素晴らしさを的確に捉えていて、さすがだと思う。
文庫の帯とあらすじは往々にして「語り過ぎ」という欠点があると思うけど、あらすじに「あの言葉」を持ってくるのは逆効果じゃないかしら。鈍い私はまったくの先入観なしに単行本を読んで、この話の「主題」になかなか気がつかなかった。でも初めから「暴力」という単語が頭に入ってしまえば、冒頭の砂堀り場面でのモノローグでイノギさんに何が起きたのか想像出来てしまうし、穂峰君にホリガイが強く惹かれた理由だってわかる。何よりも彼女の就職先の意味がよくわかる。それが作品の魅力を損なうことには別にならないと思うけど、「ああ!」という読者(私)が気が付く楽しさは失われてしまう気がするのよね。と、ここまで書いて単行本の帯を確認してみたら「悪意」の二文字が。単に私が何も考えずに読んでいたということか・・・。いや、でも「悪意」では足りない。降って湧いたような偶然の産物のような「悪意」ではなく、やはり圧倒的な力を誇示するような「暴力」がこの話の主題であるべきだわ。

世の中にはやっぱりどう考えても強者と弱者がいて、大変悔しく残念なことだけど、女であることは紛れもなく弱者側であるということなんだ。ホリガイは自らが被った「暴力」についての記憶を決して忘れない。かといって対象を憎むわけではなく、忘れないこと、抗うことを自然に生き方にしている。そして同時に他者が被った暴力にとても真摯に、もっといえば作中で彼女が表現するように「妄想じみた」強さで共鳴してしまう。その姿と、女である限り決して他人事とは思えない問題を、深刻ぶるわけでもなく軽妙な筆致で表現してしまった津村記久子の才能に私はとにかく驚いたんだよね。そして一番大事なことだと思うけど、面白かったんだよ。ともすれば重くて暗くてもう誰も真正面から扱わないようなテーマを持ってきていて、それなのに最後まで「で、どうなるの?」と静かにわくわくさせられるといいますか。これ、本当に面白いと思います。芥川賞受賞作よりもずっと。

ホリガイは処女なわけで、でも「処女」であることの劣等感云々は彼女の性格の一部を表現するための味付けというか、理由づけに過ぎない気がする。ホリガイはふとした瞬間恐ろしいぐらいの諦観を見せるけど悲観的ではないし、安穏としているようにさえ見える。松浦理英子は解説で「孤独な魂」という言葉を使っているけれど、その言葉から連想されるような固さも暗さもない。ただ、静かな怒りと困惑と、そしてこれはあらすじにあっても良いと思った言葉だけど、「かすかな希望」を糧に日々を生きている。松浦理英子が解説でホリガイとイノギさんの関係に触れなかったのは意外だったな(そういったことへの言及を期待されて解説を依頼されたのでは?と穿った考えをしてしまう)。ホリガイの性癖や、イノギさんへの他の人とは区別された感情についてもこの話はとても「あっさり」と描いていて、そんな部分も好感を持った。二つの孤独な魂が出会ってひとつになって、別れてまた再会しようとする。その一連の流れは「恋愛」以外の何物でもないのだけど、そんな言葉を使うでもない二人が寄り添おうとする関係が私はとても素敵だと思ったよ。タイトルの「君は永遠にそいつらより若い」という言葉はホリガイがある人物(イノギさんではない)に向けた言葉なのだけど、その意味を噛みしめると震えが来ます。そんな希望の示し方があったとは!と本当に感動してしまう。

こういった話がまったく必要でない人も大勢いるんだと思う。
でも私には心の芯を強くするというか、確認するためにも(言ってて恥ずかしいけど)必要だ。物語に「救済」を求める頃はとっくに過ぎたし、そんな大袈裟なもの求めて本を読んでなんていない。でも、BLでもなんでも、救済じみたものを感じるときってのは結構あって、そんな時が一番幸福な読書体験だなーと思うんだよね。


話はそれますが出版業界は6年ぶりの春樹の長編新刊に沸いています。前に「カフカ」が出た時も私は本屋で働いていたのでその凄まじさを知っていたのに、改めてまた今回の売れ方に驚きました。その売れ方は「スゴイ」の一言。コミックの『ワンピース』の新刊発売日@大人という感じ。もう村上春樹は出版不況を救うためにファンタジーでも書いたらいいよ。魔法学校の少年の代わりに業界を救ってくれよ・・・。放言ですが、あの人の作品全体を心から「面白い」と思う女の人って正直よくわかりません。私は会ったことがない。好きな男の人って「全作全肯定。駄作でも理屈をつけて肯定」な気がするのだけど、そもそも例の映画化される恋愛小説自体が私にはサッパリわからん。あれが恋愛小説だということの意味がわからん。いや、たぶんそのうち新刊も読むとは思うけど・・・「面白い」の説明があれ程困難な作家を私は知りませんよ。グルグル考え出すと、結局「女だからかな」という結論に落ち着いてというか、投げてしまうんですよね。物事を理解する上で、「女だから」「男だから」という固定観念が私の中には割と強くあって、『君は』の抱えている倫理観や問題意識を切実に感じてしまうのはやっぱり「女だから」だと思うんだ。だから何って話だけど。

とりとめのない感じになってしまったけど、もし何か少しでも引っかかる部分があったら是非とも読んでみて欲しいです。

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