「ファンタジウム④」杉本亜未

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私は漫画や小説に出てくる子供をめったに「かわいい」とは思わないのですが、良君はもう別格というか、マイベスト「可愛い」子供と言っても過言ではない。そんなこと良君本人が知ったら立腹するだろうけど、彼の放って置けない感はただ事ではないと思う。おじさんの気持ちが本当わかる。側について見守りつつも絶対に良の荷物にはならないと決めているおじさん。あと、良の可能性を信じて手放す両親。彼は周囲の大人の思惑のいつも斜め上あたりを真っ直ぐ真っ直ぐ進んでいて、そこに大人たちは何かを期待して夢見ずにはいられないんだよね。手品の才能と併せてそれだけでは終わらない彼の魅力って、精神年齢がとても大人なことなんだと思う。「とっちゃん坊や」というか、早く色んなことを考えて成熟せざるを得なかった達観した感じ。でもどこか危なくて、何かあれば崩れてしまうのではないかと思わされるちょっとした弱さ。彼が成熟を早めた理由はもちろん彼の障害に寄るのだけど、難読症という克服が難しい(らしいです。不勉強なので知りませんでした)障害をもってきて、やっぱりそのことは4巻でも彼を苦しませる。「字が読めないぐらいたいしたことはない」というタレント事務所の人の言葉に当然傷付くし、自分が攻略した金庫を製造したメーカーが被った風評被害についても、新聞が読めないから人から聞かされて知ることになる。世界は「文字情報」に溢れていることに改めて気が付きますね。彼は読書をしたことがないわけで・・・冒頭おじさんがおとぎ話を良に読んで聞かせるシーンが心に響きます。
普通の会社員のおじさんには良の手品師としての「仕事」を支えるのには限界があり、4巻では良がついに芸能界入りを決意して、また新たな人たちと出会うことになります。そして金庫破りを縁に出会った鍵作りの名人が、良が行う脱出手品の鍵を作ることになる。良は金庫を破ることで自ら宣戦布告をしてしまったも同然だったわけです。この漫画には鍵名人や手品の師匠といった、日本の技術を支えたお爺ちゃんがいっぱい出てくる。彼らの誇り高さはそのまま世代を超えて良に繋がっていると感じます。一番宙ぶらりんなのがおじさん世代(私と同じ)というのが微妙に切ないところですな。

しかし杉本先生の後書にものすっごい不安なことが。担当者が変わると出版社を去るという伝説を持っているて・・・それは笑えないですよ。打ち切りの可能性ありってことですか?

この漫画の特徴的なことって、実は意外にも手品そのものはあまり描かれていないことだと思うんです。要するにエンターテイメントとしてのカタルシスはほぼ皆無。手品の成功や観客との触れ合いを通して、少しずつ自分を許容していく良の姿に重点を置かれている。そうなると、一体何をクライマックスにもってきて幕を閉じるかは難しいところですよね。良が、子供と大人の中間に立つ危うくて魅力的な人物だからこそ、その魅力を成長とともにどう保つのか。4巻では影が薄くなってしまったおじさんの今後も気になるところです。腐的な見方はあまりしていないけど、やっぱり良とおじさんの微妙な距離がある関係は私のツボです。おじさんは大雑把で割と無神経な大人だけど、良の才能に魅了された「大人」として何をするのが良の為に一番良いのか常に考えている。血のつながりも、なんだったら出会ってから特別濃い関係を結んでもいないおじさんの献身っぷりが素敵です。ずっと良との別れを予感しているおじさん。ああ、おじさんも可愛い人です(笑)
まだ巻数も多くないので手を出しやすいと思います!オススメ!

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