スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「いとし、いとしという心」かわい有美子

itosi.jpg

京都の格式ある名旅館「井筒屋」の若き当主が亡くなった。彼を密かに恋い慕っていた侑央は悲しみにくれる。一方、葬儀で帰省してきた当主の弟・千秋は、次男として当然経営を継ぐと思われていたが、旅館を売却すると言い周囲を驚かせる。かつて一途に兄を想う侑央の想いと秘めた欲望につけこみ、関係を持っていた千秋だが、今度こそその心ごと自分のものにするため、侑央にある提案を―。乱れる心と身体は誰のために…書き下ろしあり。

大変面白く読みましたが、妙に息が詰まります。
喪服(葬儀)から始まる話という部分が個人的なツボであり、また幼馴染の執着愛(片思い)物という、これまたツボを押さえられた話なのですが、読んでいて本当に息苦しかった。
しかしその息苦しさが段々癖になってくるから不思議。

ここに描かれている京の町がどのぐらいの信憑性を持っているのか、残念ながら知る術を持たない俗人ですが、「立てるべき筋を立て、通すべき顔を通しておかないと」という書き下ろしの一文に、これまた息が詰まって仕方がなかった。土地に進んで縛られて生きる人たちの強かさが、伝統と格式を誇りを持って守ろうとする頑強さが、なんとも湿気を帯びた空気で文面から立ち昇ってくるような。昔「ぶぶ漬けでもどーどすか」「一見さんお断り」という言葉の意味を知った時に感じた寒気に近い感覚がよみがえりました。

しかし読むほどに、京の町が纏う空気が艶を帯びて二人の関係にねっとり絡みつくような感じがしてきて、なんとも上手な作品だなと感心しきりでした。かわい作品は2作目。「進行性恋愛依存症」の二人にまったく感情移入出来なかった上に萌なかったのですが、とにかく硬質で美しい文章を書く方だと思っていたのです。個人的に文章の美しさを重視する傾向があるので、「マジ」「ヤバイ」や「・・・」「―」などが多様されている作品はそれだけでちょっと萎えます。美しい文章とともに京言葉も調度品や着物の描写も、何一つとして嘘がなさそうなのが凄いですね。が、「本物」を知らないくせに変な話ですが、たとえこの京都がファンタジーでもまったく構いません。いい大人が「ちゃん付け」で呼び合うのも、絡みつくような京都弁でおりなされると、現実味が薄れて傍観しているこちらが興奮してしまう様な耽美さを生み出します。「あかん―」とか、それ全然嫌がってないから!!かくも方言とは恐ろしい(素晴らしい)ものですね。男性の方言萌えがわかりますよ。一応標準語圏内(細かく言えばどの地域にも方言はあるのですが)育ちの私には羨ましい限りです。

自分を蔑ろにし続けた場所に戻って何が残るの。しかも手に入るか入らないかも確かではないユキの心ひとつを拠り所に!といつの間にか千秋のことばっかり考えていました。
でも、よくよく考えてみると(みなくても)、すべて千秋自身が選択したこと、望んだことなんだよね。かなり屈折しているのに卑屈ではない千秋が無性にカッコよく思えてきました。「強かな狐さん」ですか。京の町には多く生息していそうですね。対するユキも泣いてばかりの可愛い子ちゃんなのかと思いきや、いつまでも亡き想い人への気持ちを核に持ち続けてはいますが、決して弱い人ではない。流されているようでも、肝心の部分は受け渡さない(渡せない)芯の強さを持っている。
上手く言えないのですが、私この二人の関係がかなり好きです。どちらも半分報われないのに、微妙な綱渡りを二人でしている共犯めいたところがあって、とにかく個々の芯が「強い」。
そういった事を考えたときに気が付いたのですが、旅館を残す残さないはともかく、千秋は決してユキが「逃げない」確信があったから、人生を変えるような勝負にも出たんですね。ユキは本当の意味で「逃げない」。京都の町で家族経営の商の主人をしているという現実から、絶対に彼は逃げないでしょう。それが彼の矜持だから。たとえいつか互いに妻をもらい、子を授かる日が来たとしても、ユキが姉小路の店主である限りは千秋の隣に居続けることになる。千秋はそんな未来すら予見しているのかもしれないと思いました(後継ぎ問題とは無縁ではいられないでしょうし、30手前の男が)

ユキの心は結局亡き想い人に向かったまま、千秋の気持ちにすら半分気がついていないという幕切れでしたが、これはこれで不思議な余韻があって好きです。想いが通じて甘々になるよりも、この作品には相応しいように感じました。読み終わったあとに「ほぅ」と一息ついてしまうような、そんな作品です。
と、思ったら続編があるらしい。うーん、どうなるのかしら。千秋が報われて欲しいような、すれ違ったままでいて欲しいような・・・。ああ、でもユキの乱れっぷりがツボなので、更なる「素質」を期待してしまいます(笑)

コメントの投稿

非公開コメント

こんばんは。
この作品、私も好きです。大好きです。かわい有美子さんの作品は、たくさんは読んでないので分かりませんが、じっとりした空気感があると私も思っていました。湿気がありますよね。また、そういうところが好きです。

>「立てるべき筋を立て、通すべき顔を通しておかないと」という書き下ろしの一文に、これまた息が詰まって仕方がなかった。

というのは、育った土地柄や環境が左右するのではないかなぁと思います。私が育った環境では、こういうところがたくさんありました。田舎育ちなのもありますが、お付き合いする人たちとの上下関係や目上の人との繋がりがかなり影響してくる世界だったので(これは私の専門分野のせいかも?)、京都のじっとり感とはまた違うのですが、人との関係の厳しさを常に実感してきました。
関東に来てからはそういったものが軽減されたので、簡単に言ってはいけないと思いますが、土地柄かしら、と思います。

yoriサマは関東出身、在住なんですね。そういう意味では、じっとりしたお付き合いが少ないぶん、関東の人の方が優しいのかもしれませんね。(あと、京都出身の知り合いがいるのですが、絶対合わないと思いました。ぶぶ漬け…)


ところで。
千秋はかっこよかったですね。腹を括ったら、自分のやるべきこと、責任をきちんと果たし、その上でユキを手に入れる…と。
千秋もユキも、本当に芯が強い人間だと思います。

>千秋が報われて欲しいような、すれ違ったままでいて欲しいような・・・。

私も読後、似たように感じました~この本はこの本で、終わっても良いような後味でしたよね!いったいどうやって結末を迎えるのかしら…!年内発売とのことで、待ち遠しいですね。

とっても素晴らしいレビュでした♪
yoriサマも世界に惹きこまれながら読んだようで。同じ作品を良いと思う人がいるのって、嬉しいですね。
長くなりました。それでは。

みぃさん、こんにちは!

うんうん、この作品良かったですね!かなり好きです。
私こそ他のかわい作品を全然読んでいないのでなんとも言えませんが、大人の男が「恋愛」の名のもとにひたすらグルグル悩む感じの話を書く人なのかなというイメージです(杉原先生も私の中では同じ引出)。そういった懊悩が本当に文章に合いますね。重苦しさが心地よくなるから凄い。

> 「立てるべき筋を立て、通すべき顔を通しておかないと」という書き下ろしの一文に、これまた息が詰まって仕方がなかった。

そう、確かに育った土地や環境に左右されると思います。正直、千秋がもう少し卑屈で弱さがある人だったら、この作品痛くて仕方がなかったと思います。私は社宅や町内会諸々の小さな輪でもギブ気味だった母を見ているのもあるし、私自身こういったことで結婚後にかなり面倒な目を見ているせいだと思います。伝統や格式なんて・・・と根っこで思ってしまうのが悪いのですが(苦笑)
大学で出会った地方出身の人が同じことを言っていましたね。その人は本当に自分の田舎が嫌だったみたいで、事あるごとに「怖いんだぞ~」と言っていました。
専門分野というと、伝統芸能のお弟子さんとか?確かにみぃさんとてもしっかりしていそうだもの。
いや、イメージですが(笑)
ちなみに私の身近な京都出身者は、もう少し気を使えや!!ってぐらい直截な物言いをします。いろいろですね(笑)

千秋はいい男ですね。怖いけど。こういう長期戦を挑む攻めというのは大好きです。
でも簡単には堕ちないユキもとてもいい。
続編は年内発売なんですか!?思ったよりも早い!これは楽しみですね。


こちらこそ楽しさを共有出来て嬉しかったです!ありがとうございました!


偶然ゲットしました!

久々に行ったブックオ○で発見。これyoriさんのブログに見たことある!ってことで早速買っちゃいました。しっかし、ブックオ○のBLコーナーがとっても増殖していてびっくり!BLも市民権を得てきたのね~とうれしくなりましたよ。(「クマとインテリ」「坂の上の魔法使い」「STAY」などなどいっぱい買い込んだよん)

千秋とユキはまさしく狐とうさぎですね。ユキうさぎは意外と強かだと思います。千秋の部屋の隅で電化製品のコードをかじるくらいの報復は平気でしそう。
京言葉、好きです。とくに男の京言葉はいいですね~。(男女で違いがあるのか知りませんが)
ところで、男同士で「ちゃん」付けで呼び合うのはあちらでは普通なのでしょうか?(笑)。ちょいとキモいかも。(もうちょっと年をとって、6、70歳のおじいちゃんになって「ちゃん」なんて呼び合うのはかわいいかも、ですが)
あっ、それと、初エッチで感じまくりのユキにはちょっと引きました。わたし的には「イヤ、痛い、痛い、やめて千秋ちゃん」で「堪忍、こらえてや、ユキ」が理想ですね。BL小説&漫画ってサービスのつもりなのか、一発目からイキすぎです。苦痛に堪えるウケが好きなのに(えっ、わたしだけ?)

話し変わりますが、今、津守時生さんの「三千世界の鴉を殺し」を図書館で借りて読んでます。これは……BLなのでしょうか?BLなんですよね?展開がスピーディーなので、単純に楽しんでますが。

2巻も是非に!!

>cochiさん♪

ブクオフのBLコーナーは新刊がさり気なく並んでいてたまにビビリます。同タイトルが複数冊あると逆に「外れなの…?」と疑いたくなりませんか(笑)
「STAY」は第一作目の「今年の夏も何もなかったわ」かな?演劇部のブレイン的存在の女の子が主役の「少年」もとってもおススメですよ~。でも一番はやっぱり「双子座の女」です♪

私はユキの乱れっぷりについては、「ギャップ萌え」に尽きます!昔の日活ロマンのイメージでお恥ずかしいのですが、喪服を着た貞淑そうな未亡人(ユキのこと)には是非にも乱れて欲しいのです!「イケナイのに感じてしまう、なんて罪深いの…」的なノリです~。千秋はきっとかなりのテクニシャンなので、ユキが痛くなかったのは千秋ちゃの努力の賜物ということで許してあげてー(笑)
あの二人の「ちゃん」については冷静に考えると変なのだけど(京都の人も云わないと思うけど、どうだろう?)挿絵の黒目がちな美男美女っぷりに、あなた達ならOK!となりました。千秋のしていることだって、彼が美男設定じゃなければただの危ない変質者に思えてくるわけで、美男というのはお得ですね。

「三千世界」は実は未読なのですよ。ほら、ファンタジーですし長いから…。だからBL的展開の話なのかも知らないのです。ただ、「ウィングス文庫」(新書館)というのは西さんの「ひらひら」同様に、匂わせ系のレーベルだった筈です。ガッツリホモではないけど、でも読むのは大半腐女子という、よくわからん感じの文庫です~。
なので内容については話せることはないのですが、途中まで挿絵をしている「藍川さとる」は私が一番好きな漫画家です!「晴天なり。」という漫画が文庫で出ているので、良ければチェックしてみて下さいね~
長くなりました、ではでは~

プロフィール

yori

Author:yori
気がつけばいつもそばにBL

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。