「ダブルミンツ」中村明日美子

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出会った瞬間、壱河光夫は市川光央の目に殺された。同じ名前を持つ、二人の男たちの愛憎の向かう先は――?『ダブルミンツ』のその後を描いた、描き下ろし『雨』を加え、話題の作品がついに単行本化!その他、短編『温室の果実』も同時収録。収録作品「ダブルミンツsecret1」「ダブルミンツsecret2」「ダブルミンツsecret3」「ダブルミンツsecret4」「ダブルミンツsecret final」「温室の果実」「雨」


「同級生」を読んでも消えなかった中村先生の「エログロ」のイメージが、真逆のタイプである今作を読み、なぜか薄れた気がしました。エログロのイメージがあるといっても、私がちゃんと読んだ中村作品はこの2冊だけなのですが・・・昔少しだけ読んだ「コペルニクス」の痛さが鮮明すぎるせいですかね。

「同級生」の明るさから一転してかなり暗く痛い話ですが、とても面白かった!




決して明るくはない「運命の二人」の転落話ですが、それでもラストの明るさに実は驚きました。あれを「明るい」と捉えるのは間違いかもしれないけど、私は二人とも死ぬような気がしていたので。チンピラの不手際にコンクリ詰めではなく大陸行きの切符を渡した佐伯の采配といい、中村先生は漫画をハッピーエンド(のようなもの)で終わらせる方なのだなーと改めて思いました。それが「エログロ」のイメージが薄れた理由です。ま、大陸に渡った二人が安穏と生きていけることは恐らくないのですけど。
ミツオとみつお、SとM。
サドマゾというのは白と黒、右と左のようにはっきりと分類できるものではないと思うのです。日常会話でSM談義をする際に、なんとはなしにどちらかを選びますが、「性癖」と認識するレベルでない以上は一概には言えない流動的なものだと思います。
この二人も、ぐるぐると関係性(サドマゾ)の変化を見せてくれました。「犬」のように支配されたいと願ったミツオ(金髪)ですが、完全に服従するわけではない強かさを持っているし、何よりもみつおに対する欲望は支配する側の形を取っている。壊れ方は誰よりも強いけど、同時に精神的にもかなり強いように思いました。そして、この人はみつおを容赦なく傷付ける方法も知っている。M気質だと思っていたミツオによって歪むみつおの表情には本気でゾクゾクしました。中村先生がエロをあんなにハッキリ描くことに実は大変驚いたのですが、なんだろう、とにかくエロイですね。そう表現するしかないエロさでした。剃髪に薬とかなりえげつないことをやっているのに、グロまではいかない感じ。好きです。
手負いの獣と刑事に例えられたみつお(黒髪)ですが、彼の方がいくらかわかりやすい人間だったように思います。人を支配する目を持ったS側の人間なのかと思いきや、ミツオ以外にはまったくもって無価値のチンピラのような男だったんですよね、きっと。佐伯の彼への「可愛がり方」は、部下のチンピラに対するソレでもなく、もちろん愛でもなく、オイタが過ぎた子供への対応のように感じました。私は佐伯が妙に好きです。萌えます。西田先生の「願叶」のスケベ親父を思い出しました。みつおの暴力性は臆病の裏返しであり、それをミツオは百も承知で支配されたがっていたという(推測ですが)倒錯した関係がたまりません。

この話は同じ名前を持つ人間は同じ人間であるという中村先生独自の理屈がもとになっています。
同姓同名の二人が運命共同体であったかのように、作中に出てくる「両性体」のモノローグと合わさって何とも言えない説得力があるなーと思って読んでいました。
名前の発想は本当面白いと思います。考えたこともなかった。目から鱗です。

同時収録の「温室の果実」もとても面白かった!
政治家先生のご要望で俎板ショウをデリヘルボーイと行う秘書の話です。
この先生というのが、痴呆も出かけている大老であり自分の身体では秘書を抱くことが出来ないからショウを求めているのか、それとも秘書の気持ち(欲望)に気がついてそういったショウを与えたのか、判然とはしないのですが何とも言えない素敵な先生でした。どうでもいいいけど稲垣○穂に似ている気がします。事後に秘書を膝枕にして童謡を歌うシーンが好き。先生の死後にデリヘルボーイと秘書は再会するのですが、その後もつづく二人を予感させる素敵なラストでした。
中村先生の受け攻めはハッキリしてるのかな?ツンデレ眼鏡受けと、飄々とした攻めの組み合わせをよく見かけるように思います。
昔ある本(二丁目ガイド)で、高齢者ばかりを好きになるゲイの人を「デブ専」の要領で「オケ専」と呼ぶのだとあり、そのことを思い出してしまいました。オケは棺桶のおけ。見送るまで側にいるからだと説明を読んだ時は、なんだかもう凄いなと思いました。大抵女の方が長生きだから意識しませんけど、男と男だと残された側の孤独というのは想像を絶するような気もします。そういったところからもし、「オケ専」なるものが生じたとしたら、一人では生きていけない人間の業のようなものを感じてしまいました。二丁目の用語は時に面白く、時に鋭くて感心してしまいます。
秘書さんがそうだったわけではないと思うのですが、そんなことを考えました。

もうすぐ「同級生」の続編も完結するとのこと。
年内には単行本化されるかな?こちらも楽しみだー

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う~ん

これは、わたしにはなかなか難しい漫画です。
こっちが中村明日美子の本来の作風?
SMシーンもわたしにはグロかった~~。
(明治カナ子は平気なのに。違いは何だ?)
「同級生」のさわやかさしか知らないわたしにはちょっと衝撃。
というか、主人公たちに感情移入できなかった。
読みが浅いんでしょうかね?
最後、あれ、明るかったですか(笑)。確かに心中よりはましですね。
わたしは「李歐」思い出しちゃいました。
お船に揺られてどんぶらこ、と大陸へ。
とりあえず、ハッピーエンドのようでよかったです。
このコミックの中では「温室の果実」が一番好きかな。

あ、でも、中村さんと絵の美しさとセンスの良さは相変わらずで。
中村さんの絵柄で「風木」を描いてほしいなあ。
すっごく素敵なものになりそう~~。

私は「同級生」の明るさが衝撃でした!(笑)
中村先生は太田出版や青林工藝社系のエログロの人だと決めつけていたので。
でも、「初恋の少女日記」という短編集もとても明るくて優しい話ばっかりだったので、きっと「両方描く」人なんだと思います。病んでいない、すごく健全な人な気がしました。
「ダブルミンツ」は私も感情移入しませんでしたよ~。二人とも壊れているし、アングラ系の話は苦手です。すごく突き放して読んでいたから、二人が心中しても構わないと思ったし、エロも全然平気だったのだと思います。中村先生のエロ、かなりツボに入ったのですが、ダメでしたか・・・。
私も「温室の果実」の方が好きです!
タンビで倒錯的なのに明るい話(明治さんもそうですよね)は良いです。

中村先生と「風木」!確かにものすごーく似合いそう。
「ギムナジウム系」はあの独特な絵柄とマッチするでしょうね。見てみたい!でもジルベールは迫力があり過ぎて怖そうだ。「トーマの心臓」のユーリ(で合ってましたっけ?告白される側の少年)も見てみたいです!黒髪の神経質な美少年、美しいだろうな~




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