「主治医の采配」水無月さらら

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新婚旅行中に、突然砂漠の王に拉致され性奴隷にされた3年間。生還はしたけれど、将来を嘱望されていた有能な弁護士・夏目礼一郎は、下半身の自由を奪われ生きる気力さえ失っていた。その主治医についたのは、高校時代の同級生・上條晴隆だ。心は性欲を認めないのに、診察されるだけで反応する体と折り合いがつかない礼一郎。そんな自ら治療を拒む患者を、内心持て余す晴隆だったが…。

他ブログ様で拝見して、「なんて新しい!」と衝撃が走った作品です。
私は俗にいう「アラブ」が苦手です。理由は単純明快で、異国の地で見知らぬ異国人に囚われたら怖すぎるじゃないですか!言葉も宗教も倫理観も掛離れた中東諸国の初見の金持ちと、絶対に恋になんて落ちないと思うんだよな。まあ、きっと私が外国人が苦手というのも一因なのだろうけど。
これはそんな「アラブ」の「その後」の話ですよ。こんな設定のBLをよく書いたと思います。水無月さんはとても多作な方なんですね。他の著作をザッと見たけど・・・たぶんもう読まないかなぁ。
要するに、性的虐待を受けた人間がどうやって生きる希望を取り戻すかという話。
それはとんでもなく難しい問題で、BLで真摯に扱ったとしても不足な部分が目についてしまうのは仕方がないのだと思う。そして、私がどんだけ考えてもそこに示されている希望が果たして「正しい」のかがわからない以上下手に正論は述べられない。そもそも被害者の数だけ救済の手段が違っているのなら、一概に「これは正しい」なんて答えはないわけで。

まあ、こんな場所で真面目に取り上げるような話じゃないのも薄々気が付いているのですが(笑)

私は性犯罪や暴力を受けた人間がいかに回復するかというテーマがやたら気になるのですよ。それがノンフィクションではなくてフィクションならば、絶望の先にある希望が見たい。現実はままならなくても、だからこそ「大丈夫だよ」と言ってくれる嘘臭くない希望を求めてしまいます。
話は飛びますが、性的虐待を受けた人間が生きる希望を取り戻す話として萩尾望都の「残酷な神が支配する」以上の話に出会ったことがないけど、あれは本当に本当に素晴らしい名作だと思う。未だに語る言葉を持たないけど、あそこまで人間の内面を「描ききった」フィクションというのは、もう生まれないのではとまで思う。「残酷な」と比べてはいけないのだけど、でも「主治医の采配」で示されている希望も実は「残酷な」の希望と似ているものでした。
それは、ありのままの自分を「受け入れる」ということ。隣に一緒に戦ってくれる人がいれば幸せだけど、自分の傷を癒すのは自分にしか出来ないことで、愛する人は「理解者」として側に寄り添い見守ることしか出来なくてもいいのだということ。身体を繋いだからといって、同じ場所まで降りて来た(同性愛的な観点でね)わけではなくて、虐待によって「作り変えられた(生まれ変わった)」相手を「受け入れる」ことによって、被害を受けた人間が自らを「受け入れる」手助けをしているに過ぎないのだということ。他人が他人に与える希望なんて、とても些細な事だと思うのです。冷めた意見かも知れないけど、私は結局は「自分で立ち直った」とその本人が感じられなければダメだと思うから。
「主治医の采配」の二人はその濃いようで薄い関係が絶妙だったと思います。私見ですが熱烈な恋になんて二人とも落ちていないですからね。最後の甘いエピソードはオマケのようなものだと思います。第一、この二人には「永遠」が見える程のロマンスを感じない。数年後には礼一郎は他の男といるんじゃないの~?なんてBLにあるまじきことを考えてしまいました。

で、オブラートに包んだエロですがスミマセン大変萌えました(笑)
足が動かないだけで他の部分は正常に動くのに、どうして礼一郎は自慰ではなくて人に抜いてもらおうとするのだろう?という疑問を抱くシーンを始め、砂漠で彼を救出した医師から贈られてきたプレゼントがバイブだった事の突拍子もなさに唖然とし、医師の手紙の内容に無理矢理納得をさせられ(ベイビー身体が疼いて辛い夜はそれをお使い。そんな自分を受け入れた時に明るい明日がやってくるよ、的な手紙でした)、この展開はいくらなんでも「トンデモ」じゃないの?でも私には「正しい答え」なんてわからないよー!と大変面白く読みました。もちろんそのバイブを用いて晴隆は礼一郎を抜いてあげます。いいのか!?あと、周りの地味な脇キャラ達(医師と看護士)が本当に地味ながらも渋い活躍をしていてやけに好きでした。
色々ギリギリな感じも否めない上に人によっては地雷かもしれません。でも私は結構好きです!

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yoriさん こんにちは

>性的虐待を受けた人間がどうやって生きる希望を取り戻すか

BLでは「快楽」に溺れて愛が生まれるってパターンが主流ですが、
あえてこちらに挑戦した作品は「精神的な傷」は身体的な傷を癒すよりも
医者にとって難しいんだろうなあ…と思わせてくれました。
時間、理解、キッカケ。そういう環境を与えるのも大変ですよね。
この作品、そういう流れが読んでいて自然だったので入りやすかったのかなと
思います。

でも現実にはアラブ物なんて虐待以外の何物でもないと思いますが
結構読むのは好きなんですけど(笑)
いえ、あんまりご都合主義なんで、たまに気楽に読むにはいいかな~なんてね。
時々雑食の悪食になりますorz

水無月作品、学生時代BL読んでいた頃嵌っていたシリーズがありまして。
「おにーさまとお呼び」って幼馴染み同士で義兄弟のカップルの話。
あれから何冊か出ているようで、今度まとめて読んでみようかと
思ってます(笑)

こんばんは!

摩緒さん、コメントありがとうございます~
期待半分不安半分で手を出しましたが面白かったです!
脇を固める医師達の様子がやけに作品にリアリティを与えていたと思います。患者に対して真摯に対応しているというのが、実際の医療現場を見ているようにリアルに感じられました。いや、本当のところはよくわからないのですが(笑)
攻めの晴隆が熱血漢ではなくて、少し冷めた無気力っぽい人であることも新鮮でした!
この「受け」にこの「攻め」をぶつけるか~と。

アラブ、食わず嫌いな部分があるのも事実なんですよ。
「拉致」「監禁」「媚薬」が3大イメージなので。でも日本が舞台で上記3つが使われても全然OKなので、やっぱり異国が怖いからですかね・・・。あっ、でも摩緒さん宅でレビューされてた「エルミタージュ」は読んでいて驚くぐらい全てが素晴らしいと思いました。アラブではないけど異国で投獄ということで今頭に浮かびました。

「おにーさまとお呼び」!
すごいタイトルですね(笑)
レビュー楽しみにしています~

拍手ありがとうございます!

>tさん

はじめまして、ご来訪&コメントありがとうございます。嬉しいです~

わかります!私も「ついでに治してもらえばいいのに・・・」と思いましたもの!髪の色も同様ですね。この話、散りばめられた「トンデモ」要素が事のシリアスさを緩和していたから、結果的にバランスが取れて読後が良かったのかもと思いました。

「ヤクザ物」が苦手とのことですが、痛くないヤクザを・・・紹介しようと思ったのですがパッと浮かびませんでした(笑)私は「アラブ」「花嫁」が苦手な半面「ヤクザ」は躊躇せず手を出しています。なんでしょう、痛くても「まっ、ヤクザだし♪」で片付けてしまうからかもしれません。

また遊びに来てくださいね!ではでは。



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