スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「LOVE SONG」まんだ林檎

lovesong.jpg

私は「BL」がまだギリギリ「耽美」と呼ばれていた頃にこの世界に入りました。
「JUNE」が内省と死のイメージなら「BL」は明るい恋愛至上主義。私の中の「耽美」とはその間に位置する世界です(定広美香先生が「灰とダイヤモンド」を描いていて、鹿乃さんが初田さんだった頃と言えばいいのかな?90年代後半ですね)すべては地続きである筈だけど「名前」というのは重要で、今でも私は「JUNEっぽい!」とか「BLというよりは耽美だな・・・」なんて一人引き出し分けをしてしまいます。何が云いたいかというと、07年に刊行された「LOVE SONG」は紛れもない「耽美」でした。恋愛の明るさにはほど遠く、どちらかといえば恋愛以前の心の葛藤と、恋愛のその先に見える人生の哀愁を描いているというか。正直、こんなに感想書くのに困った作品は久しぶり。「読めばわかる」と感想を放棄したくなる程の素晴らしさがありました。もし私の雑文を見て本を手に取って下さる人がいるのなら(実際にいらっしゃることの有難さ!)、全力でおススメをしたいです。

「LOVE SONG」
先日(9/24)の記事で書いたように、偶然見たテレビのジュリー切掛けで思い出した表題作。
主人公の波広は高3の春に隣の席になった刀根にいきなりこう告げられる。「俺ね性同一性障害っていうビョーキなんだけどよろしくね」と。親しくなった頃刀根は波広に「好きだよ」と伝えるのだが、波広から見れば刀根はジュリーが好きでお調子者で綺麗な「男」。性同一性障害のなんたるかを知らない波広は無神経な言葉で刀根を傷付けたりもするのだが、それでも刀根は波広を想い続ける。刀根が帰り道に歌っていた「ダーリン」を途中でやめるコマがあるのだけど、その先に続く歌詞の意味するところを考えて彼は歌をやめたのよね。波広に彼女が出来てぎくしゃくしてしまった二人ですが、卒業間近のある日に行ったカラオケで、刀根が「ダーリン」を歌う場面が本当に素晴らしい。込められた意味合いに気が付いて赤面する波広と、それでも歌い切る刀根の必死な表情が迫ってきて心を締め付けられる。本当に泣けてくる。彼らの結末の捉え方はそれぞれだと思いますが、卒業写真の彼らの笑顔がすべてを物語っていると思います。
今風ではない高校生達のちょっと野暮ったい様と学ランがとても作品に合っていました。波広と彼女がセックスをしたのかと問う二人のやり取りも青臭くて良いし、ちょっとデフォルメされた人物が可愛くて笑える箇所もある。高校生が主人公ということで、波広と刀根の間に横たわる障害への認識の差異にもとても現実味があった。ベテランの漫画家に今更言う事でもないけど、すごく上手い。すべてが計算されていて無駄なものが何もない。紛れもない名作で傑作です。ぜひぜひご一読を!

さて、ここで終わらないのがまんだ先生の素晴らしい所で、私の愚かな所。
先の記事で「他の漫画は特に印象には残ってない 云々」抜かした言葉を全力で撤回させて下さい。えーと、この単行本に収録されている作品すべてが同様に素晴らしかったのですよ。今現在「コンプレックス」と「狂ひもえせず」が入手不可であることに深く絶望しているのですが、仕事が一段落したら絶対になんとかします。

「あたらしい家族」
ゲイのカップルが独り暮らしの母のために一方の実家に帰る話。
新しい家族とは3人で始める共同体のことでもあるし、男と男が「約束」した関係のことでもあるし、母と息子にとっての男のことでもあるのよね。「家」というものに対する考え方やお母さんの抱える孤独はなかなか描けないことだと思う。このお母さんが本当にお母さんで・・・親を独りにしてはいけないなと、普段はあまり意識しないようにしていることを真剣に考えてしまった。

「あなたが幸せになれた日々の理」
内省的で暗いけど最後には希望のようなものが用意されているという大変私好みの話。
主人公の中沢は電車内で席を譲った挙句に途中下車をしてまで気を使うクラスメートの東堂に驚く。しかし誰にでも親切な東堂には心に抱えた闇があった。厳格な祖父の躾を受けて理想化されていく自分と現実のギャップにボロボロになっている東堂は、理想を具現化したような剣道部の主将乾に恋をしてしまい、そんな自分をまた許せなくなっていたのだ。
「ぼくはあさましい いつも罪悪感にさいなまれている その罪が少しでも軽くなるように ぼくは親切になるんだ・・・」―中沢は同情から乾に愛されたいと泣く東堂を抱くのだが、その後東堂は壊れたようになってしまう。そんな中沢に詰め寄ったのは乾だった。乾は乾で東堂が自分を理想化していること、本当の姿を決して見ようとはしないことを知っていて敢えて「理想」を演じている部分があったのだと思う。抱いてやれば東堂は救われたのか?と問う乾の真摯な姿もまた胸を打つ。そして中沢自身についても最後まで恋愛を匂わせないのだが、高校生にその台詞は紡げないだろうと思いながらラストの言葉にえらい感動した。「恋は自分以外の人にするものだけど 自分のコトが好きじゃない人に本当の恋はできないんだぜ 今度はゆっくりでいいから自分のコトを好きになるところからはじめようよ」
東堂が自分のことを好きになれるといい、幸せになれるといいと心から思った。表題作と並んで好き。

「恋をせずにはいられない」「4度目の夏」
とりあえず叫んでおくと、村薫の某義兄弟をまんだ先生の絵で見てみたい!!
昔夢中になったものと人はどこかで繋がっているという素敵な話。ストーリーも良かったけど、私にしては珍しくメガネ男の主人公に萌えました。普段のちょっと疲れた色気と、後輩君に餞別代わりにエレベーターでキスをする時の強気な様子や、細めた目で「誰?」と訝しむ表情がたまらない!再会した男と恋は出来たのだろうか。収録作中もっとも明るい読後感がありました。面白かった!


やっぱり文章でこの漫画の魅力を伝えるのは難しいです。でも本当に素晴らしい作品でした。改めて出会えたことに感謝!気になったらぜひ手に取ってみてくださいませ。
*動画を移動しました






コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

yori

Author:yori
気がつけばいつもそばにBL

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。