「赤い竪琴」津原泰水

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日常に倦み、無気力に生きるグラフィックデザイナーの入栄暁子は、祖母の遺品から出てきた夭折の詩人の日記を、その孫・古楽器職人の寒川耿介に返すため、尋ねていく。無愛想な寒川は、押し問答の末日記を受け取るが、お礼にと自作の赤い竪琴を暁子に渡す。この不思議な出会いは沈潜していた暁子の心を強く揺り動かした。受け継がれる“絆”と“謎”の行方を描く、静謐な恋愛譚。

久しぶりに一般書感想いってみます。

読むたびに性別を確認せずにはいられない。私にとって津原泰水はそんな作家です。
「蘆屋家の崩壊」で豆腐好きの伯爵と猿渡コンビに出会った時は、漂う「やおい臭」に迷わず女性作家だと思ったし、「少年トレチア」の破壊的な耽美さを読んでもそれは変わらなかった。その頃ホームページを見てようやく男性だと知り驚愕したのよね(その後著者近影をよく見たら、長髪だったけど間違いなく男性でした・・・)。耽美で幻想的で中性的な文章が好きで読み続けてしまう作家です。
「赤い竪琴」はたぶん津原さん唯一の恋愛小説。恋愛小説っていうのは「恋愛」を描いている時点ですべて同じだと思うんですよ。乱暴な言い方だけど、日頃読んでいるBLが詰まる所「男同士の恋愛小説である」という大前提をベースに、キャラと設定に様々な装置を仕掛けて違いを出しているのと同じだということ。女が男に会いに行く切っ掛けも、二人の心が近づく様の唐突さも(恋愛とはそういうものと云われてしまえばそれまでだけど、たまーにBLを読んでいて我に返るのは、「男が男に惚れる」ファンタジー部分ではなくて、人が人に恋をする瞬間の唐突さにだったりするのです。ええ、恋愛力の低い人間ですよ・・・)、その後の元彼の登場も、男を襲う運命も、なんというか流れだけで見れば横文字小説的。しかし仕掛けられた装置の美しさによって、よくある恋愛小説が「津原泰水の小説」になる。その幻想的で美しい様は圧巻。祖母と詩人を繋ぐ糸が垣間見えた瞬間の主人公の心の揺れが痛いぐらい胸に迫ってきます。豪華客船に鯨の歌声という装置はロマンチックすぎると思わなくもないけど、用意された幸福なラストには素直に感動してしまいました。うん、好きだわ。

津原さんは「津原やすみ」名義で少女小説を長く書いていた経歴の持ち主です。SF、ミステリー、推理小説とジャンルは幅広いけど、常に「少女だった人へ」向ける視線があるような気がするのは、たぶん気のせいではないはず。もっと云えば、その少女はどちらかと云うと「腐」よりの人間な気がしてしまうのは、やっぱり伯爵と猿渡君のイチャイチャの印象が強いからなのか・・・。ちなみに猿渡君はその後「ピカルディの薔薇」という短編集でも再登場します。鬱傾向の強いダメダメな彼が私はとても好きです。



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