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「恋愛・教師 Color of Snow」西江彩夏

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「好きになれなんて言わない。だからあと少しだけ、今だけ、側にいたい」雪が降る夜、佐々井は恋人に振られて混乱する年下の同僚・井瀬崎に抱きしめられていた。井瀬崎は、普段は温和で優しいが、同性の恋人の存在を知る佐々井を避け続ける片想いの相手。嫌っているくせに、佐々井は必死に縋る腕の強さに拒むことができない。彼に触れてもらえる嬉しさと罪悪感を素直になれない態度に隠したまま、佐々井は体を重ねてしまうが―。

最初に一言、とても面白かった。読んでる間中眉間にしわ寄りっぱなしだったので、面白いと云うとちょっと語弊もある気がしますが、この話は私が今まで読んだBL小説の中でも一番「痛い」話かもしれない。
BL小説の「イタさ」というのはトラウマだったりトラウマだったりトラウマだったり(笑)、それ以外でも普段の私の日常とはどうもかけ離れている問題による「イタさ」が主だと思うのです(三角関係とか元彼とか当て馬とかムリヤリとかね)。それが「他人事」であるからこそ、得られるカタルシスというのが心地よくてBL読んでいるのだなと思うわけです。しかし、「恋愛・教師」の痛さは何と云うか、すごく身近にあるような痛さでした。まるで親しい友達の話を聞いているような近さがあった。眉間にしわ寄せて考えたのは、兎にも角にも恋愛にはこういった側面だってあるのだという核心を突いているなということ。この二人がしていることって「痴話喧嘩」にすぎないし、元彼である義兄の存在は攻めの中で大きいとはいっても直接恋愛関係に絡んでくることは徹底してない。
問題は、どこにもない―ように一見して思えなくもない二人なのですよね。
でも違う。好きな人と居たって、一瞬満たされていると感じられたって、その直後には云い様のない不安に襲われる。「幸せ」の基準を自分で決めることが出来ないから迷う。でもBLに出てくる「攻め様(笑)」のように常に愛を直截的情熱的に語れるような人は現実にはそうはいないから、そして相手も同様の不安に襲われているとしたら、陥るのは不安の無限ループなわけで。
私は結局のところ自分のことは自分でどうにかするしかないと思っている節があります。相手に何かを委ねているような足場の不安定な感覚が好きではないし、幸福を人に決めてもらおうとすれば、価値は揺らぎまくるのも当然のこと。自分で「大丈夫」と思わないとやってらんない。でもそれって口にするのは簡単だけどとても難しいのですよね。相手がいる「恋愛」という状態だとなおのこと難しい。
これは、そういった恋愛を上手に出来ない二人の話です。二人ともグルグルになりながら、それぞれの回答をやっとこさ出していて、そのゆっくりした段階に私もゆっくりですが、この話がとても面白いと感じるようになりました。いや、最初から面白かったのですが「痴話喧嘩だけで終わり!?」と前半を読んで思ったので。この話は後半がなければ成立しないと思います。

西江さんのキャラクターって前作の「ナルシストの憂鬱」を読んだ時にも思いましたが、内に抱えている葛藤と、外に表れる性質が似ていると思う。みんな不安で優しい人ばかり。「ナルシスト」の山田のようにデフォルメされたキャラが誰一人として出てこない「恋愛・教師」は、本当にすぐ隣にある「一見幸福な二人の恋愛話」のように感じました。でも恋愛をしていれば幸せというわけではない、では結婚をしていれば安心なのか、という問いにも義兄という人物をもって応えてくれました(余談ですが、この義兄があのような選択をした過程が知りたい。本編に増して「痛い」話になるのは予想出来るけど、やたら気になる人物でした)。何をしていたって問題は結局のところあるのですよ。それを省いたような幸福な話が多い中(もちろん幸福な話は好きですけど)、敢えてのグルグルを終始描き続けたこの小説は、やたらと私の琴線に触れました。
正直、この話の3人が抱えていた依存・共依存・同情云々よりも、「ナルシスト」の山田が抱えていた問題の方が私には断然身につまされる物だったのですが(笑)、普通の人が抱える内面のちょっとした傷に迫る力を持った作家さんだと思います。
西江さんは、もしかしたら西江さんにしか書けない小説を書く人かもしれない。
そういった作家さんに出会えたことは小説の読後感とはまた違う次元でわくわくします。
次回作が楽しみ!

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非公開コメント

どうもです。

どうもです、三度目ですね・・・。何だかとても共感できる所が多くて、ついコメントしてしまいます。あまり大したことは言えませんが・・・!
私もこの作品すごく好きです。一作目をずっと積んでいたことを後悔しました・・・。でもなかなか上手くどこが良いのかを形にすることができず、悶々としていたのですがこの記事を読んでやっと悶々の正体が分かりました。メインの二人がぐるぐるしながらもやっと結ばれる、ということ自体はめずらしくない気がするのですが、西江さんが書かれるとより身近に感じます。BLはあくまで二次的で、都合よく結ばれる話が多い中、二人が自分の中でちゃんと答えを出して結ばれる話というのはなかなかめずらしい気がします。私も西江さんは西江さんにしか書けない小説を書く方だと思います。ただ義兄のことに関しては私も未消化の部分がありまして、なかなか気になる人物ですね・・・。
それでは、長文失礼いたしました。

こんばんは!

>豚なすびさん

どうもどうも、三度のご来訪ありがとうございます!
数なんて忘れてしまうぐらいいらっしゃってくださいませ(図々しいですね)

共感して頂けたとのこと、すごく嬉しいです。
この小説の良さ、というか西江さんの良さについて色々考えていたのですが、「恋愛」を心の底から享受できる人ばかりではないという事実を描いているからなのかなーと。
先日読んだ「LOVE SONG」(まんだ林檎)にあった、「自分のコト好きじゃない人には本当の恋はできないんだぜ」という台詞を思い出しました。自分のことが好きじゃなくても始まってしまうのが恋ならば、好きじゃない自分と、好きな相手のことをどう折り合いつければ良いのか・・・という結構重くて身近なテーマを真剣に扱っているなと思いました。前半読了時は主人公の一人相撲っぷりに正直少しイライラしていたのですが(笑)、後半で一気にやられました。義兄気になりますよね。
西江さんにしか書けない小説を今後も見せて欲しいですね!

コメントありがとうございました!長文大歓迎ですよー!

拍手ありがとうございます!

>tさん

こんばんは!
わー、もったいない言葉をありがとうございます~。とても面白い作品でしたね。

>恋人だけど所詮は他人といったような距離感とアンバランスなキャラのパーソナリティ

本当にその通りですね。それは「ナルシスト」の時にも強く感じました。受けの藤中が途中で山田との付き合いを諦めそうになる部分がなんというか、とにかく新鮮でした。恋愛をするからこそ生じてしまう「個人の問題」を追及する姿が他のBLとは一線を画していると感じます。人はどこまで人と通じ合っても、結局は「独り」であるという主張を勝手に受け取りました。BL的な萌えではないのですが、登場人物達の行く末を見届けずにはいられない、ぐいぐい読まされてしまう作家さんです。今後の作品もとても楽しみです!

ではでは、拙宅にまでコメントを頂きありがとうございました!
明治さんの件は心強い言葉に励まされ、手紙まで用意してしまいました。
お話できるように頑張ります!もう明日ですが、お会いできたら嬉しいです♪

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Author:yori
気がつけばいつもそばにBL

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