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「花盛りの庭」坂井久仁江

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国枝彩香先生が「坂井久仁江」名義の頃に出版された少女漫画です。
あっ、アナグラムになっていたのか!(遅い)
昼ドラ的展開てんこ盛りのかなりハードな話だと聞いたので覚悟していたのですが、とんでもない。
確かにハードな部分は多々ありますが、とても優しい話でした。

書き出したときはこんな長くなるとは思っていなかったのですが・・・スミマセン。

注:以下、ひとつ前の「夜をわたる月の船」についても若干のネタバレを含みます


先日読んだ木原さんの「月の船」の柴岡にどうにも辛い気持ちを抱いてしまったのは、もしかしたら並行して読んでいたこの漫画のせいかもしれない。よくよく考えれば柴岡は、十分「可哀相」とか「同情」に値する人物だったにも関わらず、あまりそう思えなかったのは、彼が何もかもを捨てようとしていたからだと思うのよね。あれだけ本気の自殺願望を持った登場人物ってなかなかお目にかかれないというか・・・「死にたがり」は嫌なんです。身も蓋もないけどさ。同じような境遇で育ちながら暗闇に飲まれる恐怖と闘い続けた「花盛りの庭」の雅樹の方が断然好きだし、幸せを願わずにはいられなかった。2巻はいつかドンデン返されるのではとビクビクしながら読みましたよ。なにせ国枝先生ですからねっ。

人間関係を説明しようとすると大変難しいのですが、中心に据えられるのは「橘雅樹」という男(2巻の黒髪)です。1巻では彼の出生の秘密がメインに描かれ、この1巻がとんでもなくごったまぜの昼ドラ的展開で、実はあまりに詰め込まれていて少し笑ってしまったという。そう、シリアスな話なのに、「笑う余裕」というか、ちょっとした息を抜く場面がそこかしこにある(気がする)。国枝先生の漫画は割とそうだと思う。そしてその役割の一端を担っているのは間違いなく「ダイゴロー」だ。ダイゴローの後半の役割ときたら・・・実は半分知っていたのだけど、それでも叫ばずにはいられなかった!だって、だって、ダイゴローちゃんの外見が~。いやいや、国枝先生恐るべしです(ちなみにダイゴローは2巻表紙のガチムチスキンヘッド)。父親との関係に倦み、退廃的な人生を送る雅樹は家出先の祖父宅で出会った瑞穂(2巻中央)と恋に落ち、父親から逃げ出そうと画策をする。そうした混乱の最中に、祖父が屋敷に火を放ち、祖父と父親は命を落とすことになる。逃げおおせた雅樹はすべての秘密を胸にしまいこんで瑞穂と新しい家庭を築くが、春佳が生まれてから数年後に瑞穂は事故に合い他界してしまう。2巻は一転雅樹の娘春佳が主人公ということで、「普通」とは違う家庭環境の中でも明るく健やかに育つ成長の様子が微笑ましく、時に痛々しく描かれていく。

雅樹は祖父(1巻)と母親(1巻中央)の間に生まれた子供だったのですね。
雅樹の父(1巻眼鏡)は父親と妻の不倫を知り、反対を押し切って子供を産んだ妻が死んだ後に雅樹を連れて家を出るのです。もちろん「親子」として。そして、雅樹はまだ幼いころから父親と近親相姦の関係を持つことになる。読んでいて本当に不思議だったのは、何故かあまり痛くないんですよ。それは雅樹の葛藤や苦しみは伝わってきても、憎しみの感情があまり伝わってこないせいだと思う。それもその筈で、雅樹は確かに父親を愛していたからなんですね。もちろん父親が愛し方を間違ったことも賢い雅樹は気づいているし、もっとこう、愛や憎悪がごちゃまぜになった、でも愛に近い複雑な感情を抱いていたんだと思う。父親は病的に雅樹に依存して支配をしようとするのだけど、それが「悪」とは決して言い切れない描き方をされている。「性的虐待」が「愛情」を伴った場合、それは果たして「悪」なのだろうかとまで考えてしまう。「普通」が何なのかわからなくなる。しかし、見誤ってはいけない。父親が雅樹に抱いていた感情は恐らく、愛よりも憎しみに近いものだし、性行為を「愛」だと錯覚させる術を持つ大人が子供を騙しただけという側面もある。その証拠に雅樹は父親との関係を長く長く心の深い場所に抱え込んで苦しむことになる。

でも、それでも、二人の間に何某かの「愛」があったのも事実なんだよね。

昨年の今頃読んだ「残酷な神が支配する」(萩尾望都)では、主人公のジェルミが義父から与えられたのは一方的な虐待だった。義父を憎むジェルミでさえ、性行為が内包するはずの「愛」という幻想に惑うことになる。一方的に与えられてさえわからなくなるのなら、自ら求めた雅樹の葛藤は尚更だろう。雅樹はいつしか恐れるようになる。娘の春佳を、自分の父親がしたように「愛したく」なるのではないかと。「普通」がわからないから迷い葛藤する雅樹の姿が2巻では描かれることになる。そこにあるのは、とても危うい「父親」としての雅樹の姿だ。娘を性的に愛する恐怖に怯える姿は痛ましい。しかし、彼は祖父と父が夢見ても成し得なかった「普通の幸せな家庭を築くこと」を生涯の誓いとして、すべての悲劇が始まった庭に立てていた。それを共に築こうとした瑞穂をも失い、彼には春佳とダイゴローが残った。雅樹が抱える葛藤の結末は明るいです。当たり前のことだ。雅樹はたとえ「普通」を知らなくても、溢れるほどの「愛」の中で確かに生きていたのだから。

「帰る家」があること、待っている人がいること。雅樹は春佳に「変わらないもの」をあげたかったのではないかな。親子だからって何もかも分りあえるわけではないし、親子だからこそ話せないこともある。それは、絶対にある。一番近い人間は、云い方を変えれば一番近い「他人」でもあるし、話し合ったところですべてを共有出来たと思うのは危険だ。国枝先生が「花盛り」で描いた雅樹と春佳の親子関係は、とても理想的だと感じた。雅樹が自分の過去を話さなかったことも、春佳が無理に聞こうとしなかったことも、とても心に響いた。すべての「悲劇」が始まった「庭」を雅樹は「喜び」で溢れさせることに成功したのだ。彼は勝ったのだ。過去は完全には消えることはないし、きっとまた昔の夢にうなされることもあると思う。街中で父親と似た男を見つけてビクッとする日がくると思う。それでも行きつ戻りつしながら確実に雅樹は「大丈夫」になっていくのだろう。
うん、これは素晴らしい希望の物語だった。

私の悪い癖というかなんというか、同じようなテーマの本を同じ時期に読んでしまう。「花盛り」を手に取った時は「月の船」の内容までは知らなかったけど、「君といたい明日もいたい」を読んだ際に「近親相姦」について考えたから読もうと思ったんだよね。そしたら「月の船」の柴岡がまさしくそうで・・・嫌な予感がしたのよ。う~ん、「月の船」の柴岡にも幸せになって欲しいと思いたかったなぁ。だから時間を置いてまた読み返そうと思った次第なのです。

最後にダイゴローちゃんと雅樹の関係について。
作中では誰もダイゴローを「ちゃん付け」にはしていないのだけど、そこは私の愛ということで(笑)「花盛り」が漫画家人生の転換だったと後書で国枝(坂井)先生は仰っていますが、この作品以降にBLへの掲載依頼がきたというのもうなずける。ダイゴローちゃんという海より広い心の持ち主に庇護されて、雅樹も春佳もとても幸せだったと思う。素晴らしい脇役でした。

心からおススメします!長々と失礼しました。


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