「少年怪奇劇場 上」なるしまゆり

少年怪奇劇場 上巻 (あすかコミックスDX)少年怪奇劇場 上巻 (あすかコミックスDX)
(2009/12/26)
なるしま ゆり

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少年怪奇シリーズ新装版、描きおろしありで登場!世紀末を漂う少年たちの日常となまなましい非日常が交錯する。怪奇現象をまとめたなるしまゆり短編集が上下巻で再び登場!

2000年~05年にかけて刊行された、「隣の町で死んだひと」「終電時刻」「仔鹿狩り」から成る「少年怪奇シリーズ3部作」の新装版。あらら、3冊とも絶版だったのね。実家に置いてきたか手放してしまったか定かじゃないなぁ。完結したのはたった5年前のくせに、軽い懐かしさと共に読み返しました。
なるしまゆりの漫画と本人に対して、いい加減執着しすぎという自覚はあるのだけど・・・やっぱり思春期に一番好きだった作家というのは、そう簡単に諦められるものじゃないのよね(そのわりに「鉄壱智」は読んでいないのだけど)。完結していない長編と比べるのも何か違うような気がしますが、なるしまゆりは短編の方が上手だと思います。正直決して「漫画が上手い」とは思わないのだけど、伝えたいことや描きたいことがあって、それを直球にして届けているはずなのに、どこか斜め上当たりに投げられるというか・・・うーん、意味不明だな。至極真っ当な話で真っ当な倫理観を持っているのに、表現の仕方がちょっとズレている感じがすると云えばよいのかな。なるしまゆりの漫画って、何か変ですよね?私だけですか?面白い!と声を大にして騒ぐことはないのだけど、でもジワジワと心の奥まで届いてくるのです。

「隣の町で死んだひと」
タイトルが秀逸。シリーズ第一巻一作目にして、一番好きな話。
楽天家の少年と変人扱いの秀才君が、頻発する「通り魔事件」の謎を解明する話。実は唯一(たぶん)怪奇現象が絡まない話。隣の町で死んだひと―という言葉が表わすものは要するに「対岸の火事」。隣の町で人が死のうが、教室の横に座っている奴がイジメを受けていようが、芯から自分に関わりの無い事柄には、人は噂はすれど無関心なもの。それでも関わりが出来れば精一杯考えて考えて、それなりに答えを導き出すことだって出来るのだ。

「怪談六話」
恋愛と友情の狭間を迷う前に身体の関係を持ってしまった幼なじみ二人が、「友情」を取り戻す為に怪談体験をしに行くという話。男女の友情は成り難いものなのだよ、と昔も今もそんなツマランことを思ったけど、好きな話です。なるしま漫画の女の子は大抵苦手で、この話の「都古ちゃん」も例外ではないのだけど、名前がいいなと当時思ったら、そのような感想がとても多かったそうです。

「終電時刻」
表紙の少年はこの話の主人公。
運とその場のノリだけで生きてきた大学生が事故死した後、駅で浮幽霊となっている所を天才バイオリニストの少年と出会い友好を深める話。これが不覚にも泣きそうになった。幽霊と少年の友情の先に待ちうけるものなんて分りきっているのに、面白かった。「番外編」はバイオリニストが大人になった話で、あざといぐらいに直球だけどそれがまた良かった。

「番町サカナ屋敷」
ガキ大将と捻くれた秀才少年の友情話。ある事件から仲間内での株が暴落したガキ大将が、町内にあるオバケ屋敷に肝試しに行くことで面目躍如を図ろうとするが、その屋敷には秘密があって、という話。メインは屋敷よりも彼らの友情。ガキ大将と秀才少年の、一見すると大人にはわかりにくい友情の形を描いている。子供は大人数で居るときの顔と、特定の相手(親友?)と居るときの顔はかなり違うのだということ。大人になって会わなくなっても、少年時代の思い出は常に相手の顔が一番に思い浮かぶであろう男の子の友情が素敵だ。

う~ん、説明しようとすると直球になってしまうのよね。どの話も読むとどこか可笑しくて温かい気持ちになる。なるしまゆりの漫画にはとても大きな「人間讃歌」が根底にあるような気がする。
上の感想だとまったく伝わらないと思うけど、面白いのですよ。「何系」と括ることが出来ない独特のなるしま漫画を久しぶりに堪能しました。下巻が1月、新書館から短編集が2月に発売されるとのこと。3か月連続刊行とか、復刊とか、最近とても多いような気がします。懐かしい作品に再会出来るのは嬉しいことだけど、待っている作品もあるのよ~と一応呟いておく(笑)
しかし「大幅加筆修正」と云われても大元を持っていないのでまったくわからない!話の流れ自体は変わっていないと思うのだけどなぁ。なるしまゆりは雑誌とコミックで台詞を変えることが多いので、昔は読み比べをしたものです。

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なるしまさん。

こんにちは、お久しぶりです。らないみぃです。
なるしまさん。ということで、コメント残させていただきました。yori様と出あったのが、なるしま作品(原獣文書のドラマCD)だったのを覚えています。

なるしまさんの復刊がされていたんですね。
最近では声優ラジオ以外、漫画も読まなくなっているので、知りませんでした!!

青春時代に好きだった作品や作家さんというのは、人生の中でも特別なものになりますよね。
yori様のなるしまさんの捉え方は、私もそう思うところがあります。すごく真っ当で、言いたいことも真っ直ぐで素敵なのに、なんだか変というか、斜め横から広がる感じ。私のベストなるしまさんが原獣なので、より一層斜め感があるのですが…
でも好きです。けっこう大好きなのに、つい左右キョロキョロして良いのかな?なんて確かめたくなっちゃうような作家さんです。


たしかこの記事、クリスマスあたりに一度上がってませんでしたか?コメントを残そうと思って、たしかイブ夜だったのか見栄張って(笑)コメント残さなかったような覚えがあります。もしくは、ゆめ…?

絲山さんの文庫落ちが出る~なようなところで反応してコメント残そうと思った(…夢?)気がするんですが、そのような文章が無いですね…
あの、私の夢でしょうか?幻覚?それとも他の記事だったのかな…

絲山さん、yori様が大好きという記事を見たので読んでみたのですが、ものすっっっっごく好きになりました。私が読んだのはイッツ・オンリー・トークと、今は海の仙人を読んでるのですが、今年読んだ一般作家さんで一番好きです!なんともまだ好きって気持ちをうまく言葉にしがたい感じなんですが、思わず本を抱きしめてしまいました。
出会えたことに感謝!です。ありがとうございました。一般書籍の感想やオススメ、あったらぜひ教えてください!暗い作品も明るい作品も馬鹿みたいな作品も、どんな作品でも読みたいです。そういえば絲山さんの感想のときに「一般書籍だと、こういう作品が好きだとか気持ち分かるわと言うと、そういう趣味あるの?と思われる。フィルターがかからない」みたいな文章を見かけたのですが、確かに!と思いました。私も本の話題で性的な描写があるものはなんとなく避けてたりするので…そういう傾向があると思われそうなことも苦手だし、そもそも性描写のある作品自体を避けてしまいます。
BL感想ではガツンと変態が出てくる作品でも閨のことが多い作品でも言っちゃっても平気ですけれども、一般書だと躊躇しますよね…むしろ性的なことをドカドカと喋れるからBLに人気があるのかなぁ。

なんだか変で長くなりました…すみません…
それでは!

あと。
良いお年を!

わ~い

久々のみぃさんの長文コメント!!嬉しいです(笑)えーと、負けませんよ?←違う

もちろん覚えていますとも。私がみぃさん宅にお邪魔したのが切っ掛けでしたね。「原獣」を読み返して面白さを再確認した折に、ちょうど取り上げていたのがみぃさんでした。
今でも強く心に残っている「原獣」のモノローグがあって、1巻冒頭「この物語は、will to survive-生き残る為の意思 そういった基本的な精神なら売っても余る程持っている奴らばかりの話なのである」というのに初っ端からガンッとやられました。この言葉が物語の明るさと、なるしま漫画の明るさの全てを物語っているような気さえします。

なるしまさんの漫画が私にとって少し変なのは、「伝えたいことはわかる。でも、私にはその表現方法は思い浮かばないし、選択をしないのではないかな」という感じかも(あっ、褒めてますよ!)
「少年怪奇劇場」は昔読んだ時よりも断然面白く感じました。たぶん、昔はなるしま漫画にヤオイ的な要素を求めていたのですよ。でも「少年怪奇」はまったくそういう話ではないので、落ち着いて読める今の方が楽しめたのだと思います。私の感想では何ら魅力が伝わらないのは百も承知ですが、深読みすればキリがないような、味のある短編集です。漫画はもうあまり読まれないとのことですが、機会があればぜひ読んでみて下さいね!

そして、絲山さんに反応してもらえたのがとにかく嬉しい!!
「海の仙人」はマイベスト絲山作品です!!次が「袋小路の男」「ニート」「沖で待つ」「エスケイプ/アブセント」かな。最近は新刊が出ていなくて少し心配なのですが、なんともいえない魅力がありますよね!まず第一に文章がとても美しい。読んでいて不快な言い回しやリズムがほとんどないし、お手本にしたくなる文章だと個人的に思っております。そして、なんといっても男女の関係の描き方が新しいというか、安易に「恋愛」に転じさせない意志を感じます。アンチ恋愛小説というわけではないのですが、恋愛ではない男と女の関係を心地よく描いてくれる人だと全体を通して思いました。男性の登場人物が魅力的ですよね♪「海の仙人」のカッツオなんて特に。

絲山さんがお好きなら、私としては津村記久子をおススメしたいのですが、みぃさんは感情移入して本を読まれるタイプだと以前伺ったような気がするので、そうすると津村作品はある意味キツイかも?う~ん・・・ミステリ作家の米澤穂信の「犬はどこだ」「ボトルネック」は結構人におススメしています。う~ん、かなりキツイ内容ですが、今年の一般書マイベストの川上未映子「ヘヴン」は素晴らしかったです。
一般小説を語る時はちょっと気構えします。特に現実に沿った話だと、書きたくても書けないことが多い。普通の恋愛小説にも好きな作品はあるのですが、川上弘美の「風花」は好きですが、不倫や浮気や離婚の話で微妙だし(笑)だから絲山さんの「ニート」所収、スカ●ロ話をこのブログで書けたのは本当に嬉しかったです(大した感想ではないですが)。あまり関係ないかもしれませんが、こんなブログをやっているくせに、私は友達とあけっぴろげな下ネタ話が恥ずかしくてできません。BLは平気で語れるのにね~。

おーっと、見られていたのですね。夢ではありませんよ!
イヴのくせに(?)テンション低い記事を上げてしまったと思い下げたのでした。
紛らわしくてスミマセンです。

ではでは、今年1年(半年?)ありがとうございました!
みぃさんも良いお年を!
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Author:yori
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