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「孤島の鬼」江戸川乱歩

孤島の鬼 (創元推理文庫)孤島の鬼 (創元推理文庫)
(1987/06)
江戸川 乱歩

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密室状態での恋人の死に始まり、その調査を依頼した素人探偵まで、衆人環視のもとで殺された蓑浦は、彼に不思議な友情を捧げる親友諸戸とともに、事件の真相を追って南紀の孤島へ向かうことになった。だが、そこで2人を待っていたのは、言語に絶する地獄図の世界であった…!『パノラマ島奇談』や『陰獣』と並ぶ、江戸川乱歩の長編代表作。

明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします。
新年最初の感想は読み始めたときから「これにしよう!」と決めていたこちらの本です。
本当はもっと早く書きたかったのですが思いのほか読了まで時間がかかってしまい、読み終えたのは実家に帰省した大晦日でした。大乱歩の有名傑作長編ミステリということでご存知の方も多いかと思います。私にこの奇想天外な物語をまとめ上げる力はないので感動と衝撃に反して短文ダラダラ長文です。っていうか、スミマセン本当に長くなりました。最長かも・・・。
おまけに夜中の変なテンションで書いたせいか、いつにも増して恥ずかしい感じです。

ネタバレしますので、未読の方はご注意くださいませ。






最後の二行は反則だろう、と思いながらも涙が溢れるのを止めることができませんでした。

怪奇ミステリと呼ばれる「孤島の鬼」が持つもう一つのテーマは「同性愛」
これは数奇な運命に導かれた男の、怖ろしくも切ない一方通行の恋の物語でもあるのです。
乱歩といえば「同性愛風味」の作品に「変態性欲」といったエログロ寄りのイメージを強く持っている私ですが、それは中高生の頃に読んだ短編の印象が色濃く残っているのだと思います。恥ずかしながら、超有名短編以外はほとんど未読という有様ですが、何かのエッセイで読んだ「孤島の鬼」の同性愛についての記述はずっと頭の片隅にあり、いつか読んでみようと思いながら何年も経っていました。創元推理の解説があの「虚無への供物」の中井英夫であることに気が付いた時は「もしかして私が読んだエッセイは中井英夫?」と一瞬思ったのですが、中高生の時に中井本を読むような子供ではなかったので、結局誰のエッセイかは思いだせず仕舞い。気になります。

物語は、主人公であり語り手でもある簑浦金之助が、過去の怖ろしい体験を振り返るという告白形式の一人称語りで終始進みます。もう、ホントどこからどうやって説明すれば良いのか途方に暮れてしまうような物語なのですが、簑浦は若干三十にして頭髪が老人のような白髪と化している。これは彼の頭髪を一夜にして変えてしまう程の「恐怖体験」にまつわるお話なのです。
齢二十五にしてさながら紅顔の美少年といった容姿の簑浦は、職場の同僚初代との人生初めての恋に夢中になり結婚まで考える間柄になる。しかし幸福もつかの間、簑浦の友人である諸戸道雄という青年が、簑浦の気持ちを承知で初代に大胆にも熱烈なプロポーズを仕掛けるという珍事の最中、初代は密室状態の自室で何者かによって無残にも殺されてしまう。初代の突然の死に当然納得のいかない簑浦は、友人であり探偵でもある深山木に調査を依頼するも、何かを掴んだと思しき深山木まで衆人環視の不可能状態の中で無残にも殺されてしまう。初代と深山木はなぜ殺されなければならなかったのか?天涯孤独に育った初代の生い立ちに隠された壮絶な秘密とは?―というミステリー部分に重きを置くのが物語の前半です。

ここまで書いて、短文で終わるわけがない気がしたので打ち消し入れました・・

そして後半は、初代が生まれたとされる孤島での壮絶な悪夢体験に重きを置いています。わかりやすく云えば、前半はシンプル(というには仕掛けはアレですが)なトリックミステリー。後半が乱歩節炸裂の怪奇小説といったところでしょうか。もちろん二つの要素は冒頭からいい具合に混ざり合い独特の世界を作り上げています。というか、今更こんなことを云うのは恥ずかしいのですが乱歩ってめちゃくちゃ面白いですね。また、語り手の簑浦が先行きの不穏さを煽る煽る、これでもかと煽りまくる。そんなにハードル上げて大丈夫なのかしらんと思うぐらい語り手(=作者)が煽るのですが、これまた期待に答えてくれるんだな♪気付けばドップリ物語にハマっていました。

で、語るべきは簑浦の友人である諸戸道雄という男。読み始めてすぐに判明することですが、諸戸は簑浦を友人以上の感情で慕い続けている青年なのですね。年長の諸戸はあれやこれやと簑浦に甲斐甲斐しく世話を焼く。それもこれも彼の一途で熱烈な恋情がなせる技なのです。この二人の「好きだ」「いやだ」「ごめん、でも好きだ」のやり取りが驚くぐらい直截的で、まるでBLをとは云いませんが、とにかく7,80年前に書かれたとは思えないぐらい胸に迫ってくるのです。えーと、単刀直入に云うと激萌えます。しかしそこは一般小説。簑浦は徹底してノーマルな性向の持ち主であり、友人としての諸戸は慕っているが、同性愛者という「異端」の存在である面を持つ諸戸のことは到底受け入れることができない。そんなこんながあっての、諸戸による初代へのプロポーズ後殺人事件ですから、当然の成り行きとして簑浦は諸戸に疑いの目を向けるようになる。「自分を慕うあまり嫉妬に狂った諸戸が、初代を自分から奪う算段に失敗して殺してしまったのではないか」と。しかし見えてくる真実は簑浦の予想を遥かに超えた異常事態だったのです。

ちょっと話が本筋からズレますが、この簑浦という男がなかなかイイ性格をしていて面白いのです。悲劇のヒロイン(あえて)のような無垢で純な人柄の反面、自分の容姿が「年長の男に受ける」ことを重々承知している。この話は全編通して彼が語り手なので、どこまで彼の語っている事が真実(本質という意味での)なのかはわからない。諸戸が彼を諦められなかった原因の一端は、絶対にあんたにもあるんじゃないの?とツッコミを入れたくなるような、なかなかに小悪魔的な性質の持ち主であることも伺えます。だからより一層諸戸が不憫なんだ!

話を戻します。
殺された深山木が所持していた、ある双生児の片方が書いた「日記」の存在から、次第に明らかになる「異形」の存在。初代にくわえて諸戸自身の出生の秘密までも事件と関係があることが判明していきます。そして二人は事件の黒幕の本拠地とされる孤島へ乗り込むことに―。

いきなりのネタバレですが、事件の黒幕は諸戸の育ての親である丈五郎だったのです。彼は孤島で世にも恐ろしい生体実験という名の悪魔の所業を行い、異形の存在(作中では不具者、かたわ者などと表される)を創造している悪鬼だったのです。小人や、男女のシャム双生児(生物学上有り得ない)、指の無い者、関節のない者などなど、まさしく地獄絵図のような孤島の哀れな住民達。二人は彼らの救出と丈五郎の撃退、及びに島に隠されているとされる宝を丈五郎よりも先に入手することを目的としますが、いかなる悪鬼といえども諸戸は父親(諸戸は彼が幼い頃誘拐されてきた子供であり、血の繋がりはないのですが、諸戸がその真実を知るのは終盤です)を裏切ることが出来ずに油断した所を囚われの身となってしまいます。しかしその後父親が簑浦を追い出す名目で実は殺そうとしていたことを知り、ついに父親を切り捨てる決意をしたのでした。

ここまでで物語は後半の後半に差し掛かります。が、「地獄絵図」とは異形の者達が跋扈するこの島そのものではないのか?しかし簑浦も諸戸も断然正気を保っており、簑浦に至っては男女の双生児の美しい女子に恋をするなど、頭髪が白くなるような出来事はまだ起こっていない。ではこの先彼らに一体全体何が待ち受けているのか―

亡き初代の方身に記された暗号から二人は島の地下深くに潜入することになる。
そして行き道を失い、暗く閉ざされた暗黒世界をさ迷うことになるのです―

そして、クライマックスはここから。

父親の狂気、その悪魔の所業に薄々勘づきながらも止めることが出来なかった己、何よりもそんな父と母の息子であるという事実が諸戸を追い詰めていたのです。生を諦めつつある彼らの置かれた状況、光の差さない世界で隣には恋してやまない簑浦が居る。「地上の世界の習慣を忘れ、地上の羞恥を棄てて、今こそ、僕の願いを容れて、僕の愛を受けて」と告げた諸戸はついに簑浦に襲いかかるのです。友人として慕っていた男の本性を垣間見たのはこれが初めてではなかった簑浦ですが、以前は驚き抵抗する簑浦に諸戸は泣き崩れて謝罪さえしたのです。でも、今、地上の光が届かない地獄の底で、愛を迫る諸戸は簑浦にとって化け物以外の何物でもなかったのでした。逃げまどう簑浦と追う諸戸。二人だけの暗黒世界で簑浦の体験した恐怖こそが、そう、諸戸の存在こそが、簑浦を白髪たらしめた要因だったのです
その後、物語は大団円に向けて一気に動きます。そこらへんは省略しますが紆余曲折を経て助け出された二人を見た刑事が二人の変わり果てた容姿を指摘する場面が、この物語の白眉であり核心だと個人的に思います。

「君の頭はまっ白だよ」
道雄はそういって妙な笑い方をした。それが私には泣いているように見えた。


そう、簑浦は自身の髪を白髪たらしめたのが諸戸の狂気による恐怖だとは気が付いていないのです。そして、その恐怖の正体に最初に気が付いてしまったのは、他ならぬ諸戸その人だったのです。上の一文を読んで涙腺が決壊しそうな程切ない思いを感じてしまったのですが、その時諸戸は何を思ったでしょう。地獄の悪鬼である父親のことも考えたに違いありません。また、「同性愛者=異端者」という自分の不具ぶりにも思いを馳せたかもしれません。何より、これ以上簑浦の側に居ることは出来ないのだという諸戸が一番避けたかったであろう事態が現実になったことを悟ったのかもしれません。いっそ地底の底で二人で息絶えてしまえば良かったと望んだかもしれません。
こんな切ない笑い方をする登場人物を、グロテスク一辺倒のような怪奇小説で目の当たりにしているという不思議な感覚。その物悲しさたるや、筆舌には尽くせないものがあります。

そして最後の二行で涙腺が決壊してしまったのは、当然と云えば当然のことなのでした。
こればっかりは書かずにおきますので、是非とも読んでみて欲しいです。
諸戸の想いと孤独に、今でも思いだすだけで目頭が熱くなる・・・。


ここからは余談ですが、「孤島の鬼」に同性愛が色濃いのは当時の乱歩の私生活が大いに影響しているそうです。本人による注釈と中井英夫の解説で知りました。乱歩先生がそちらの方だというのはあまりに有名なお話ですが、実在の人物の名を上げて資料が残っているとは驚きました。それにしても、「孤島の鬼」全編に色濃く漂う諸戸の悲劇は、乱歩自身による痛烈な同性愛批判(批判とは微妙に違うのだけど、うまい言葉が思い浮かばない)とも取れる。すなわち、諸戸を通して乱歩は自己批判を続けていたのではと取るのは考え過ぎだろうか?同性愛が「報われない愛」だった頃、乱歩はどんな思いを託して「孤島の鬼」を、諸戸道雄を、生み出したのか。不勉強なので乱歩について詳しく語ることを持ちませんが、機会があれば参考文献などを読み乱歩自身についても知りたい気持ちが芽生えました。
そういった意味でも大変有意義な読書でした。


新年早々こんな自己満足長文感想を上げてしまいましたが、今年もどうぞよろしくお願いします!





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