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「非怪奇前線」なるしまゆり

非怪奇前線 (WINGS COMICS)非怪奇前線 (WINGS COMICS)
(2010/02/25)
なるしま ゆり

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学生時代からの“親友”である蟹喰菜々生のマンションを訪ねるワタナベは、少々“痛い男”だ。やがてワタナベは気づく。妻の過去に蟹喰がいたことを……!?不条理と必然が織りなす悲痛な物語の果てにあるのは、凄惨な絶望か、生きる勇気は……。表題作「非怪奇前線」+後日譚「非怪奇前線 The After」のほか、1998年発表の幻の短編「きりんは月を食べる夢を見るか」を収録。

楽しみにしていたなるしまさんの完全新作。古巣の新書館から出るのは4年ぶりか。
「え~と、新作の前に…」と、とりあえず云ってしまうファン心はどうかご容赦を。なるしまさんと新書館がきちんと繋がっていることがわかって一安心です。ちなみに今月号のwingsにも時代物短編が掲載されています。

第一印象はとても変な話
なるしま漫画というのは、緊張と弛緩のバランスが独特だと思うのですよ。画面構成や登場人物のキャラクタのせいもあると思うのだけど、ドシリアスな場面を描いてもどこか「緩さ」が残っている。それが味であり魅力でもあるのだけど、鈍い私が物語の本質に気が付くまで何度も何度も読み返さないといけないことになる。何度か読んで、改めてとても面白い漫画だと思いましたよ。いっそのことつまらなければ潔く諦めもつくというのに、はぁ。

蟹喰菜々生(ガニハミナナキ)とワタナベの日常に降りかかった怪異譚。惑うことなき「怪奇」話を題で否定する理由は何か。「非」という文字を意味として提示されれば読者は当然それを額面通りに捉えざるを得ない。だけど頁を開けばそこには「見える」「見えない」「意味がある」「意味がない」という応酬の連続であって、題名からしてその「無意味さ」を化かされたような気にもなる。ただ、グルグル考えてみても常に頭のスミッコに、「なるしまさん、深いこと考えて描いたのかなぁ?」という本音があるのも事実(笑)。なんていうか、昔からそんな感じの印象なのですよ(悪い意味ではなく)

蟹喰にはあるものが見える。
だけど「何も見えない」「見えないものは知らない」と幼いころから完全にその存在をシャットアウトしていた。災厄の形をしたあるものに魅入られそうな少女に何も出来なかった過去を蟹喰はいつまでも覚えていたが、そこにあるのは、もしかしたら悔恨にも似た罪悪感だったのかもしれない。「見える父」と「見えない祖父」の姿を見て育ち、結局はカッサンドラになることを良しとしなかった自分への戒めだったのかもしれない。それは蟹喰にしかわからない。
ワタナベには学生結婚した妻と娘がいたが、ある日突然妻はワタナベの前から理由も告げずに姿を消してしまう。実家に引きこもっているらしい妻と娘に会うことは叶わず、ワタナベは今日も蟹喰の家の近所にあるテーマパークを訪れ、失くした愛する者の似姿を探している。そんな二人の5年間継続しているらしい“親友”関係が、ワタナベが妻の危篤と不穏な言葉を知らされた時から一変する。

天然系の主人公&リアリストの主人公。
「少年怪奇劇場」の後書でも仰っているようになるしまさんは「ペア(コンビ)」の話を描くことが多い。
感想を書こうとすれば、説明しようとすれば、すべてを追わなければいけないような種類の話なので困るのだけど、高みから投げかけられる蟹喰のモノローグに酔えばあとはもう、ドップリ物語世界に嵌まり込んでしまった。

「見えているぞ」―それは彼女の宣戦布告。
知らんぷり決め込んだ膿(災厄)への初めての意思表示だったのだ。彼女の投げた言霊が、結果的にワタナベと娘を災厄から救い、蟹喰に災厄を運んだ。それを「優しさ」と取るか未来を予測しての「サドマゾの境地」と取るかは自由だろうし、事実どちらでもあると思う。正気のまま狂っているような蟹喰が語る「人生かけてマイノリティをやりたかった」という自虐と露悪は痛烈な皮肉のようにも感じる一方で、著者が後書で「直前まで普通の女の子だった」というように、彼女の「変態(体)」にももしかしたら大きな意味などないのかもしれない。半身を焼かれ、片足を失った蟹喰が告げる希望の言葉に、不覚にもワタナベ同様涙している自分がいた。なるしまさんのモノローグは時に高みから見下ろされているような視点を持ち、突き放されているような感覚に陥ることもあるのだけど、今作の主人公蟹喰が語る言葉は無性に私の心に響いてきた。狂っている彼女が語る言葉は至極真っ当で、私がなるしま漫画を読むときに常に感じる「人間讃歌」が存在する。神の視点をもっているかのような蟹喰だが、後日談で明かされる真実(?)にはもう一捻りあって絶句してしまった。「ガニィちゃ~ん」と間が抜けた名前で呼ぶワタナベだって、その言葉の選び方はきっと確信犯だ。本当、憎いくらい絶妙な「弛緩」だ。

とにかく、この蟹喰菜々生というヒロイン(ヒーロー)が強烈で強烈で、驚くことに私の中で「少年魔法士」に次いで好きな作品になってしまったのです。蟹喰とワタナベのヤオイ的な関係も大変好みでした。デビュー作から読んできて十数年目でこんな出会いがあるとは!
同時収録されている「きりんは月を食べる夢を見るか」も初読み時に「変な話」と思ったのを覚えています。なるしまさんは「死ぬほど恥ずかしい」と仰るけれど、私は当時とても好きでしたよ。今読むと…絵がお上手になったなぁと思います(笑)そして、やっぱりとても優しい漫画を描く人だなと思います。

兎にも角にも大満足の1冊でした!



ガニィちゃんの変態(変体)を考えた時、その姿がカルノと被ったのよね。
変体を自己証明に使ったカルノの高笑いと、変体を自己呈示の手段にしたガニィちゃんの哄笑は、まったく違うのだけど、でもどこかで繋がっているような気もしたんだ。
私がガニィちゃんに魅了されるのも当然のことというわけですね。

全体的に鬱陶しいファン語りで失礼いたしました。

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