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「匣男」剛しいら

匣男 (プラチナ文庫)匣男 (プラチナ文庫)
(2010/03/10)
剛 しいら

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狭いところに入りたい―。旧財閥の跡取りで船舶会社副社長の風宮にはおかしな性癖がある。秘書となった幼なじみの祐一朗は、その唯一の理解者で支配者であった。家族に萎縮し、仕事の重圧で心が壊れかけていた風宮は、デスクの下で祐一朗の足下に蹲り安寧を得る。薄闇に包まれた狭い空間は、安らぎと同時に恍惚感をもたらした。まるで祐一朗の執着に閉じ込められたようで…。

タイトルを知った時から気になっていたのですが、あらすじを読み迷わず手に取りました。阿部公房の「箱男」と同じ題であることに気が付いたのは不覚にも読了後だったのですが、不気味でハッキリ云って気持ちが悪い今作にはとても相応しい題だったように思います。読了直後は他人の情事を無理矢理見せられたような(なぜか覗き見という感覚ではない)、衆人環視の露出プレイを(実際にそれに似た行為をしていますし)楽しんでいる二人の共犯者にされたような気がしてなんとも云えない気分だったのですが、その後じわじわと思考を侵されました。

「おまえがバカなのは、とっくに分ってる。
 いつも家族から抑えつけられているから、委縮しておかしくなったんだろうな」(p153)


いきなり後半の台詞で申し訳ないのですが、これは風宮に対して祐一朗が口にした中でも一番ゾッとした台詞です。確かに風宮はおかしい。でも、彼らにはその「おかしくなった」事実をどうこうする気がまったくもってないのです。根本原因となった物事を取り除くには、あまりに長い間圧迫され続けた風宮の精神はもうどうすることも出来ないところまで悪化してしまっている。自分が現実を生きている感覚が乏しく、何も自分では選択できずに只呼吸をしているだけ。心はいつも暗闇と狭い場所で得られる安寧に飛んでいます。そんな状態の風宮を祐一朗は閉ざされた暗闇から連れ出そうとは決してしないのですね。むしろ閉じ込めたがっている。

風宮の閉所と暗闇を好む性癖が育まれた原因の一端は祐一朗にもあるのです。風宮を納戸で発見した幼少の頃から、日のあたる場所に居る風宮の姿など祐一朗は望んでいないのです。カウンセリングを受けようとした風宮を掃除用具入れに閉じ込め失禁をさせ、毛布でくるみ顔すら見えない性行為に誘い、互いの理解者は互いだけであると強く強く刻みつける。

二人は互いの異様を察知しながら慣れ合い続ける共犯者のようなもの。閉ざされた関係を描く作品は多いと思うのですが、ここまで徹底的に互いが閉じようとする方向に動く作品は珍しいような気がします。

壊れた風宮を愛することの苦しさに祐一朗は満たされるから、祐一朗には風宮しかいないのだというあたり、それはもう二人で一生かくれんぼでも追いかけっこでも散歩プレイ(?)でもやってくれ!と匙を投げかけたのはここだけの話です。だけど考えてみれば、変態倒錯に淫する二人が外側にいる人間に納得のいくカタルシスなど与えてくれる筈もないのですよね。トランクケースに入っての散歩プレイには思いがけず萌えました。祐一朗の宣戦布告をを兼ねた風宮への告白と、それを気付かれることなく聞いている風宮にすべてを見透かされ、うろたえるばかりの従兄弟の和輝がやたら気の毒に思えてくるぐらい、二人の抱える闇は深く閉ざされていました。

だけど、自分たちだけで完結していく姿にいっそ清々しさすら感じるのも事実なのです。この小説中で起きていることに、私は何一つ疑問に思う事がないのですよ(祐一朗の仕事ぶりはさすがに小説的だけど)。変態倒錯に二人で嵌まり込めばその安定を守ろうとする。理解者が互いしかおらず満たされていればそこから出ていく必要もない。なんとも不健康で気持ちが悪い話でもあるのですが、そもそも「変態」とはそういうものだと私はかの名作「月光の囁き」(喜国雅彦)を読んだ時に学んでいるのです。
徹頭徹尾閉ざされた世界で二人はとても幸福なのです。ええ、しつこいですが気持ちが悪いくらいに!


月光の囁き 1 (ヤングサンデーコミックス)月光の囁き 1 (ヤングサンデーコミックス)
(1995/01)
喜国 雅彦

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画像はコミック版ですが現在は絶版になり文庫化されています。
ご存知の方も多いと思うのですが、フェティシズム、サドマゾ、変態性欲を、これでもかと真摯に描いた名作です!圧巻は主人公と恋人である少女のサドマゾ的関係。支配と被支配の関係がじわじわと逆転する描写は読んでいて快感すら覚える程でした。おススメします!ま、気持ちが悪いので読み返してはいないのですが。

本の感想で何度も「気持ちが悪い」と書いたのは初めてのような気がします(笑)
嫌悪感と面白さは相反するものでは決してないのです。むしろ同居するものなのかもしれませんね。


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