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文庫版「レディ・ジョーカー」

レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)
(2010/03)
高村 薫

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レディ・ジョーカー〈中〉 (新潮文庫)レディ・ジョーカー〈中〉 (新潮文庫)
(2010/03)
高村 薫

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レディ・ジョーカー〈下〉 (新潮文庫)レディ・ジョーカー〈下〉 (新潮文庫)
(2010/03)
高村 薫

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一巻読むのに5日、都合二週間かけて「LJ」文庫版、ようやく読了しました!!
「福澤三部作」が文庫本になる日は来ないと踏んでいるのでこれで本当に合田ともお別れかと思っていたら、今月の「サンデー毎日」から高村先生の新連載(「新 冷血」)が始まり、彼が出てくるという情報が。まだまだ終わりじゃない!

ブログも書けない、他の小説も読めない、だけど手元の小説について語りたいことは山のようにあるという大変幸せなストレスを溜めこんだ結果のダラダラ雑文です。まともな感想にはなっていませんのでお暇な方のみどぞ。
もうちょい整理とか推敲とか、とも思ったのですが、こんなに興奮する読書も滅多にないのでご容赦くださいまし。
当然のことながらネタバレ注意です。

*****

宣言していた通り最終章の「クリスマスは空いているか」のくだりが残っていることを確認してから読み進めていった。気になる部分にはフセンを貼って家に帰ってから単行本と読み比べての繰り返し。お陰で気味悪いぐらいフセンだらけに。
結論から云うと「照柿」同様文庫版の方が私の好みだし性に合っている。
激しい感情のやり取りを極力排した硬質な文体。その奥に見え隠れする男達の激情と狂気が堪らなく好きだ。元々の好みのせいもあるだろうけど、「マークス」文庫版から入った読者としては、単行本の人間臭さには若干尻込みをしてしまうのかもしれない。

二人のやり取り部分の改稿から受ける印象は、合田の加納への欲情が明確になっているという一点に尽きる。単行本では男性としての「熱」すらもどこかに置き忘れてしまったような合田だったが、文庫版では元来彼が持っていた「雄っぽさ」が戻っている。ただその分、加納の意外に起伏の激しい感情の揺れは大きく削除をされて、ますます喰えない人物になっている印象。そう、これは心底残念だったのだが「聖人」発言がなくなっているのだ。単行本では加納の合田に対する欲情の方が、たとえ言葉にはされていなくても強く感じたのだが、文庫では立場が逆転している。短くなった会話の代りに合田のあからさまなモノローグが挿入されている。「二人」に対する萌えよりも圧倒的に「合田」に対する萌えの方が大きい私は、彼のモノローグに萌え転がってゴロゴロする場面が多々あった(笑)特に、合田が自己処理を自己申告する場面の萌えときたら!!頭がおかしくなりそうなぐらい萌え滾りましたよ(正確には自己処理をしていない事への自己申告なのですが、それにしても萌える。お前は変態かってぐらい萌える!)

そして何よりも特筆すべきは、合田自身が加納に対する気持ちを「恋愛感情」だと認識をしたのだ。これは、えーと、大変なことだと思う(他に云い様はないのか)。しかし、互いに気持ちがある、だからどうしたと続けたくなるようなドン詰まった気持ちを内包しているとも思うのだ。何もかもが安易ではない。「馬」の彼らを知っているから思うことかもしれないが、旧知の友人が二人、その間にある感情が「恋愛」だったとして、どうするというのだ。そういった突き放した見方さえ出来てしまう、そんな合田と加納が私は好きだ。
義兄弟好きとして有るまじき発言のような気もするが、私は彼らが精神的にも肉体的にも交わる必要はないのだと思う。ギリギリの分水嶺を歩いて欲しい。互いの命綱が互いにあるということだけを認識して、個々に歩いて欲しい。そんな勝手な理想すら抱いてしまった。

全体を通しての大きな改稿(私が気付いた限りの)は、合田が語る際の「義兄」表記がすべて「加納」に変わっていることだろうか。この改稿に関しては、私は高村先生の「羞恥心」のようなものを勝手に感じた。恐らく先生の中でも「義兄弟」に対する萌えが過剰だったという意識があったのではないだろうか。考えてみれば「義兄弟」関係が6年とはいえ、それ以前の友人時代が4年ある状況で、加納のことを「義兄」と呼び続けたのは、合田なりの精神的な依存や甘えの象徴だったのかもしれない。そもそも離婚してる時点で義兄じゃないじゃーんというツッコミはお約束だけどね。
加納が合田を甘やかすのに変わりはないが、二人のパワーバランスは文庫の方が対等な印象を受けた。加納が精神的な弱さを見せないのと同様に、合田も彼に過剰な弱さを見せない。互いの友人、上司の死に接した時の静けさは文庫版の特徴ともいえるだろう。

もうひとつ大きな改稿は蒲田教会の「司祭」の不在だ。入院した合田が加納への気持ちを自覚し始めたことを告解する相手として選ばれた司祭が、文庫では丸々存在しなくなっている=告解場面そのものがなくなっている(これが今回最も大きな改訂部分だと思う)。好みはあるだろうが、この点でも私は文庫の方に軍配を上げた。理由は上手く説明出来ないのだが、「馬」で宗教的なものとの対峙を続けた合田にキリスト教的なものへの畏敬が感じられなかったからではないだろうか。「司祭=キリスト教の象徴」とは、彼の告解を聞くに値する人物なのだろうかと。そして、雄っぽさが前面に出ている合田が、日差しの中柔和に微笑み語る姿は想像がしにくいのであった・・・。
ただ、惜しむらくは「お蘭」の描写がサクッと削除されていることだ!ままま、今更お蘭が出てきても唐突な印象は拭えなかっただろうから仕方ないのだけど(何せ「照柿」刊行から16年である)、私は森が好きだったのでちと哀しい。島で元気にやっているのは知っているから泣かないよ!

河原ピクニック場面(大の男がワインとバゲット片手に!)も健在で、根来の「ほの字」部分が残っているのは嬉しかった。その際に根来が合田の目を評して「こんな微妙な目に見つめられたら、理屈抜きで殴りたくなるか、魅入られるかどちらかだ」と云うのだが、間違いなく「殴りたくなる側=半田」に共感するわと思ったね。私の合田に対する好きはそういう好きなんだな!半田に関しては、何気に一番自分に近いというか(危ない?)、作中でもっとも共感する人物だなと改めて思った。様々な立場の男達が出てくるが、警察官である合田と半田の鬱屈は他の男達を圧倒する。日之出ビール、レディ・ジョーカー、新聞社、夫々に属する男達にはもちろん夫々の事情や仕事に対する誇り、人生への不満が渦巻いているが、合田と半田が抱える闇はとてもよく似ている。中途半端な上昇志向を持つが故の苦しみというか、「個」としての存在(思考)を許されない警察組織に属することへの懊悩が痛いぐらいに伝わってくる。身内の招いた過失と己の酷薄さの為に事件は起きたと悔い続ける城山や、覗いてはならない闇に近づき腹を括った根来でさえ、合田と半田よりも自由なように感じるのだ。それは彼らには「思考すること」が許されているからなのだと思う。正気のまま逸脱していったように感じた半田だが、彼は十分に狂っていたのだろう。合田がそうであるように。半田の視線が合田に「男の欲情」を意識させ、更にその欲情を己の「加納」に対する欲情に転嫁させた役割もあると思うのだが、どうだろう。彼が半田に感じた嫌悪はすべて自身への嫌悪に跳ね返っているようにすら思うのだけど。初読み時も思ったが、やはり二人は併せ鏡のような存在だ。

唐突に加納に対する所有の欲求を認識するなど、合田の狂い方が「照柿」のソレに似ていて好きだ。女に向ける欲望だろうが加納に向ける欲望だろうが、合田の欲望がダイレクトに感じられる文庫版が私は好き。
もちろん削られた単行本のやり取りの中には残念なものも多々あるし、加納の台詞カットは特に残念。でも文庫は二人の関係そのものが揺らぐことはないまま深度が増しているというか、交わされる視線の応酬に込められた欲情、握られた手、そういった明確にその場にあるような感情を、狸と狐の化かし合いのように互いが煙に巻いている気すらして、ドン詰まって身動きが取れない男二人の様子は大変な萌えだった。

そして一番主張しておきたいのが、小説として本っ当に面白いのだ!!
合田合田ばかりの私が云っても何の説得力もないかもしれないけど(笑)

犯罪集団「レディ・ジョーカー」が成立するまでの過程、一兆円企業に生きる男達の後ろめたい過去、事件に迫る警察と新聞社、それらすべてを絡め取る底が見えない闇社会の恐ろしさ。そこに生きるすべての男達が等しく生きている。月並みだけど、すべてに圧倒的なリアリティがあるのだ。その中で、私が唯一リアリティを感じないのは他ならぬ「合田雄一郎」というのは面白いなと思っている。彼の存在だけがとてもアンリアルだ。全文を読み比べたわけではないので断言は出来ないが、改稿の多くは合田が登場するシーンに費やされているように感じた。それは合田を通して時代を見てきた高村薫の思考の変遷の結果なのだと捉えている。その誠実さには頭が下がるばかりだ。

小説全体を眺めた時に、私が特に好きなのは「レディ・ジョーカー」の名前が付くシーンとラストの光景だ。「ババを引いた」という男の自嘲に誰もかける声を持たない残酷さ。そういった遣る瀬無い思いの集合が男達を犯罪に駆り立てる、ふいに一歩を踏み外してしまう呆気なさ。だからこそ、凄惨な事件の顛末に描かれるある登場人物の笑顔と声に救われる。


*****

あー、読み終わるのが本当に惜しかった!
素晴らしく楽しい読書体験でした♪
毎度のことながら長々と失礼いたしましたー。

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今中巻の中間

やっぱり、合田の自己申告はあのことですよね?一瞬「これは何を意味しているの?」と目が点になり、「ま、まさかね、高村センセがね、うん、まさかだよ」と汚れてしまった自分の目に落ち込み……。でも、その直後に「2、3ヶ月してなくてって、狂ってるってほどのことないんじゃない?」なんて笑って……、「合田くん、かわいいじゃん」とつぶやき……。「yoriさん萌え狂っただろうな、この描写」とニヤニヤし、「付箋貼ろうかしら」と思ったりし「そこまでしたらヘンタイじゃん」と思いとどまり……。
いやあ、今回は楽しませてもらってます。
「LJ」はたとえ彼らが登場してないとしても、推理小説としてまともにおもしろいですよね。「黄金」を彷彿させる、というか、それ以上にすっばらしくおもしろい!!
そこに義兄弟だ出てくるんですから、もう嬉し恥ずかし幸せ過ぎ状態ですよ。
今回は半田くんに雄っぽさを感じております。こいつこんなに男の色気もったヤツだったかな?と。
合田は、随分「性」に関してオープンになったじゃんと驚きつつ喜びつつ、ですね。でもわたしの一番の疑問は加納に感じた欲情ってつまり、加納にやられたいのか、やりたいのか……、教えて~、ってとこですかね。今度お会いした時に、そこらへんをとことん話し合いましょう!!

自己処理万歳!!

>cochiさん♪

ご想像の通りっすよ!狂喜乱舞と云っても過言ではないぐらい、萌え萌えに燃えました。そうか、そりゃあ合田だって男だ、で、オカズは何だい?などと妄想すると楽しくて仕方ありません。立派に変態でございます。(でもでも高村会で声高に云う勇気はないのでブログで吐き出す小心者)
そうそう、「LJ」の小説としての面白さも今回は十分に堪能しました。単行本のときは二段組みの長文にちょっと疲れを感じたのですが、文庫の方はなぜか読みやすく感じましたー。日之出の城山と倉田の関係も結構萌えだなと思ったり。そしてヨウちゃんと物井のじっちゃんのやり取りに涙が出そうになったり。

合田の「失恋」発言にはどーしようかと思いましたよ。私的には泣かない義兄殿もツボでしたが、二人のやり取り部分の改稿は予想以上でしたね。半田の執着っぷりを読んでから、羽海野さんの同人誌を読み返して爆笑しました。半田に共感するとか書いてしまった自分が不安です。

受け攻め・・・今回の読む限りだと・・・う~む・・・といったところですが、それは高村会にとっておきましょう!
もうすぐですね!お会いできるの楽しみにしています!

>拍手コメントありがとうございます!

9/1にくださった方

はじめまして、拍手&コメントをありがとうございます!
おおお、半田に共感される方がいらっしゃいましたか(笑)
合田に対する狂気的な執着と、公団で夫婦生活を送るまともな部分と、一人の人間に同居している矛盾がリアルでそこがまた魅力的だと感じます。まだまだ『新 冷血』が書籍になる日は遠そうですが、再び義兄弟にモダモダ出来る日を楽しみに待ちましょう(最初は連載を追っていたのですが、ギブしてしまったので)!
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yori

Author:yori
気がつけばいつもそばにBL.猫かぶってみても、結局たどりつくのはそこなのです。感想は基本的にすべてネタバレ注意です。拍手&コメントありがとうございます。拍手コメントは該当記事のコメ欄にてお返事いたします。リンクフリーですがご一報頂けると嬉しいです。

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