「落花流水」凪良ゆう

落花流水 (SHYノベルス)落花流水 (SHYノベルス)
(2010/04/27)
凪良 ゆう

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自堕落な生活を送る井上一也は、ある日想いを寄せていた、成田夏生に再会する。夏生は五年前、軽蔑と嫌悪の眼差しをむけ、一也の前から突然、姿を消した男だった。夏生は借金を作った婚約者の妹が、風俗店で働かされそうになるのを身を挺して助けにきたのだ。そんな夏生に、どうすることも出来ない苛立ちを感じた一也は、借金のカタをつける代わりに、夏生に身体を要求する。期限つきの関係でいい。心まで望まない。夏生が欲しい―と。

楽しみにしていた凪良さんの新刊。
本や歌のタイトルでたまに耳にする「落花流水」という言葉。恥ずかしながら、私は今作を読書中に辞書で引くまで意味を知らなかった。「諸行無常」と同じような意味だと思っていたよ・・・。正直、作品自体の感想は難しいというか辛めになってしまいそうなので見送ろうかとも思ったのだけど、言葉の意味を知ったことが嬉しかったので書き残すことにしました(我ながら変な理由だ)

感想はとっても微妙&辛めなのでご注意を~

***


落花流水―①落ちる花と流れる水
        ②(落花に情があれば、流水にもまた情があってこれを載せ去るの意から)男に女を思う情があれば、女にもまた男を慕う情の生ずること。相思相愛。


なんとも幸福なタイトルを与えられた二人のどこまでも幸福な話。
それはもちろん構わない。ただ、私の琴線に触れなかったのは、その幸福が「他者」によって成立していたからだと思うのだ。借金のカタに身体を要求というBL小説界ではよくある話も、婚約者のオチも構わない。しかし、強力な第三者のお膳立てで幸福を手に入れる姿には違和感を抱かざるを得なかった。そして第三者がお膳立てをする理由というのも、二人の逃避行自体が、後に続く因縁への伏線になっており、読んでいて戸惑いを覚えてしまったのだ。

逃避行には取捨選択が付きものだが、彼らは平穏な日常を捨て去りながらも多くの物を持ったままのように感じた。汚泥すらも生温く、だけど、彼らは只一つの恋を叶えて幸いそうである。
読者としては、彼らを庇護した男に訪れた吉報の行方を楽しみに待ちたいところ。

私は以前凪良さんがお持ちの倫理観のようなものに対して、家族関係に対する視線がシビアという感想を抱いたのだが、強固な繋がりを持っているからこそシビアに描かざるを得ないのかもしれないと今作を読み思った。一也も夏生も「家族」の一方的な行動や期待に振り回される人生を送っている。一也は母子家庭に育ち、高校卒業後は就職をして母親の面倒を見ようと考える、素行はともかく根は非常に真面目な高校生だった。しかし母親の男の出現で事情は変わることになる。こういった流れを持つ小説もまた多いのだが、一也はいつまでも母親との縁を切れずにいる。それも当然で、母親は男と暮らしているが一也に対して直接邪険にしたことはなく、居心地の悪さを感じた一也が自ら家を出たに過ぎないのだ。親子の間に決定的な亀裂はなく、また、情も存在する。夏生もまた失くした兄の分まで過剰な期待を背負って息苦しい人生を送る青年だったが、彼と両親の間にも決定的な亀裂は訪れない。一也の手を取ることにしてもなお、夏生は家族に「手紙」を送ると云う。そのバランスが、上手く云えないのだけど凪良さんなのかもしれないなぁなんて思ったのだ。

***

う~ん、アップするか非常に悩んだのだけど・・・私、凪良さんが好きなのですよね。今作は好みではなかったけれど、読めば何かしらのモノを与えてくれる作家さんだと思っています(無理矢理こちらが受け取ろうとしているだけな気もしますが・・・)。なので怖々上げてみました。一也の安っぽさも夏生の臆病さも、私の理想とする人間像とは程遠い二人なのだけど、愛やら恋やらのために身を持ち崩す二人を救った「男」の脇役とは思えない存在感は楽しめました。
あと、私の逃避行物の理想的結末は「テルマ&ルイーズ」だったりするのですよ(笑)楽園は二人だけのものという、ね。

そんなこんなで微妙な感想となりましたが、これからも楽しみにしています!



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こんばんは!yoriさん。
私のこの作品に対する感想はyoriさん以上にシビアなものになりそうなので、微妙に避けつつ…。
著者のインタビューを読むと、コレは九条編のプロローグだったんでしょうかね。
私がイマイチだった最大の理由は、年下攻めだったことに尽きると思うのですが、もういや何も言うまい(笑)。

テルマ&ルイーズ、良いですね。
女子の“やおい”って感じで、途中でジーナ・デイヴィスがブラッド・ピットに現を抜かしてなけなしの金巻き上げられるも結局姉御肌のスーザン・サランドンは許しちゃう辺りとか、珍しく彼女達が女同士である関係に痺れた作品です。
(女同士の関係の映画は、他にジュリアとかフライド・グリーン・トマトなんかも私は大好きで一般的にも傑作の部類だと思います)

まあ、でも二人の逃避行(?)なら私は我らが高村女史の神の火の最後がもっと好きだったりしますが(笑)。
…結局、男同士かよ!!ってセルフ突っ込みいれつつ。
私も色恋貫くなら、多くを失ってこそと思っているので(高遠さんの作品のような殆どが手に入らない話が好きなんですがww)、今回の凪良さんはうーん……いやいやいや、何も言うまい。

兎にも角にも、リドリー・スコット監督作品は大好きです~♪
ではっ!

そーなんですよねー。

こんちは~♪

> 私の琴線に触れなかったのは、その幸福が「他者」によって成立していたからだと思うのだ。

同意見。ここで好みがハッキリわかれると思います。実は私も琴線に触れなかったタイプです。第三者による救いが出てきたとき、「あ~やっぱり~」となりました。BLはそれを求められてるから仕方ないのかなって。

>tatsukiさん

こんばんは♪

私は「年下攻め」一也の行動よりも、夏生の方がダメでしたね。親とはいえ第三者に行動をどこまでも制限される弱さと、更に第三者(居酒屋の女の子です)をほとんど確信犯で傷付けちゃう弱さ、極めつけは一也からの逃亡がNGでした。
しかし考えてみれば私、凪良さんのシリアス作品で大好き!と云えるのは「恋愛犯」だけなのですよね。それでもなぜか好きだと思ってしまうのが不思議ですが。モラル的な面も、きっと合わなくはないと思うのですが・・・う~む、あともう一歩何かが噛み合えばと毎度思います。

テルマ&ルイーズは「逃避行」の代名詞です!今作の二人も百歩譲ってお膳立てまでは、なんとか大目に見れたのですよ。でもその先、楽園に「監督者」が居たら台無しなのです。だったらいっそダイブしちゃった方が物語として美しいと思うのです。それがどんなに安っぽい逃避行でも。

そんな私的なこだわりも入った為に辛くなってしまいました。
コメントで更に辛いとか邪道ですね(笑)

「神の火」をやっぱり読まなければという思いを強くしました!
読みます!そして苦手な水原さんも!!

コメントありがとうございました♪



>秋林さん

こんばんは♪

すべては九条様の掌の上、という結末はちょっと納得出来ませんでしたね。おまけに理由が「想い人に似ているから」とは、もうちょい他に何かなかったのかしらと。石原さんの一也は魅力的でもあったのですが、どうも文字だけだと彼の魅力が上手く伝わってこず・・・むむむ、という結果になってしまいました。

九条編に期待です♪

そしてまたまた秋林さんにご報告が!
長いこと密かに探していた「極楽浄土」をつい先日発見しまして今読んでおります。これ、すご~く好きになってしまいそうなのですが、秋林さんはどうでしたでしょうか。超不謹慎だし普通に犯罪てんこ盛りだしで笑ってはいけないと思うのですが、もう可笑しくて仕方ありません。

コメントありがとうございました!
ではでは~

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Author:yori
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