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「恋の心に黒い羽根」

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ヤマシタトモコは『くいもの処明楽』のような終始明るい話の方が珍しいのだと知った作品。
そして、「この人はたぶんBLでなくてもよいのだな」と思った作品です。もちろん悪い意味でなく。
その後アフタヌーンの読み切りを読んで更に確信するのだけど(勝手に)、結局私が、ヤマシタトモコにBLを求めていないということなのかもしれない。
もちろん好き合っている可愛らしい話も好きだけどね。

表題の「恋の心に黒い羽根」は本当に衝撃でした。サドマゾの物語にこんな描き方があったのかという衝撃。Mの切実な叫びと、好かれたS(にわか)のやり場のない怒り。人を好きになるという行為は同じはずなのに、歪んだ性癖は想いを捻じ曲げる。

神経質で臆病で小賢しくておまけに女々しくて、ヤマシタトモコの描く男は格好悪い。
彼らの恋愛や人生から目が離せなくなるのはそこに、現実スレスレの関係性が描き出されているからだ。ヤマシタトモコは徹底して言葉で関係性を紡ぐ作家だ。

主人公の二神は、想いを寄せる中頭に挨拶代わりに「M発言」をして「豚!死ね!」と言われ身悶えるような青年。最初は彼らのやりとりが、どこにでもあるような仲間内の冗談のように感じられてあまつさえ笑いそうになってしまう。しかし、話が進むにつれて中頭が本気で二神を拒否し、否定していることがわかってくる。二神の「M発言」に覆われて決して晒そうとしない「好き」という感情が見え隠れする度に中頭は苛立ちを覚えるのだ。歪んだ性癖で本心を覆って逃げる二神に。

中頭にとって二神は理解不能の異星人のような存在なのだ。そこに好意が生じるわけもなく、ただただ見当違いな感情(欲望)をぶつけて見返り(S的な罵倒)を求める二神と、そのやり取りのリピートに憤る自分に痺れを切らす。
彼は二神を問い詰めて言うのだ。
感情を見せろ、性欲ではなく心を寄こせ。そうすれば自分の気持ちも動いたはずだと。
しかしゲイでもSでもない中頭の気持ちが自分に向くことがないのを二神はよくわかっていた。正面からぶつかって拒否されればただみじめなだけ。でも、「M」という性癖で覆った道化の自分は傷付かない。二神は性癖を「黒い羽根」と称して「黒い羽根はおれの心のジャマをする。・・・そのかわり・・・飛べるんだ」と伝える。この期に及んでもまだ性癖に頼る二神と自分を憐れむ中頭。夜道をバラバラに歩く二人に二神のモノローグが重なって終わる。

「きみに輪切りにされたい 串ざしにされたい 家畜みたいに扱われたい 
罵倒されて蹴られたい 冷たい瞳で見られたい きみに きみに きみに好かれたい 
どんなにみじめでも 羽がもげても」

いやいや、サドマゾをこのように描いたBLがあったかと!ヤマシタトモコ凄いよ!と感嘆したわけですよ。
普通なら中頭の感情に何らかの作用が働いて恋愛に落ち着くのがハッピーエンドかもしれない。でも、この話のハッピーエンドは、二神が中頭に本心を吐露した部分でもう充分なんだよね。Mの性癖とは別の純粋な部分でも自分はあなたが好きだと、無理やりにでも伝えることができて、それに中頭が答えることはなくても、理解してくれたのだから。夜が明けたら何かは確実に変化しているんだよ。

ラストひとこまのような笑える関係に(笑)
ポジティブかよって全読者の叫びでもあるから、本当に。
もうヤマシタさんはマジでシリアスと笑いのバランスが素晴らしい人です!

ちなみに短編集ですが、好きな作品が一番多い本です。
「悪党の歯」が特に好きかな。これっぽちもBLじゃないじゃない!というヤクザの話。素晴らしい。

『タッチ・ミー・アゲイン』の中にもサドマゾについての話がありました。その中の台詞が秀逸。
「愛されることに甘んじて何もしねーアホのドMと違ってな、サディストとゆーのは愛に積極的で優しいんだよ」
そのとおりかもしれない、とまたまた感心してしまいました。

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ゲットしました!

今日、本屋で、「はつこいの死霊」と「オルタナ」発見!ゲットしました。(田舎の本屋には、BLコミックあんまり置いてないんですよね)家族が寝静まってから、ゆっくり読ませていただきますわ。
それにしてもyoriさん!あなたはわたしをSMの世界にも引き込むおつもりか!?これ以上誘惑的な感想はやめてくれ~!押し入れが腐る~!

おめでとうございます!

わー、良かったですね!ぜひぜひ感想聞かせてくださいね。私も実家はかなりの田舎なので入手の大変さはよくわかります。「はつこい」があるのなら良い本屋です(笑)ちなみに自分の店にはありません・・・。
SMは深いです。お道具使った話よりも精神的な関係の話に萌えますね。
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Author:yori
気がつけばいつもそばにBL

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