スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「イノセンス―幼馴染み」砂原糖子

イノセンス―幼馴染み (幻冬舎ルチル文庫)イノセンス―幼馴染み (幻冬舎ルチル文庫)
(2010/05/17)
砂原 糖子

商品詳細を見る

小さな頃からずっと、乃々山睦の好きな人は幼馴染みの来栖貴文。高校卒業間近になっても真っすぐそう主張する睦に友達は困ったように笑うが、何故なのか睦にはわからない。女の子とのキスを目にして、自分もしてほしいと懇願する睦に来栖は…。来栖が上京する春、会えないまま過ぎてゆく月日、そして―。書き下ろしも収録し、待望の文庫化。

「イノセンス」というタイトルから手に取るのを躊躇していたこちらの作品。周囲の評判も賛否両論といった感じで迷っていたところを譲り受けました(mさん感謝です!)。実はあらすじを読んだ時点で「これはどーゆーことだろう?」と思っていたのが受けである睦の精神年齢の幼さ。「頭が弱い」という感想をちらほら拝見してはいたのだけど、私はそれを単純に「バカな子(センチメンタルの春巳のような)」だと捉えていたのですね。そしたら違った。
睦は軽度の知的障害を持つ、ボーダーラインにいる子。特別学級に行く程ではないが普通学級では明らかに浮く子だったのですね。なんてギリギリな設定を持ってくるのかと驚いてしまったよ。読む前は「イノセンス(無垢)」という言葉に胡散臭さを感じる人間なので斜に構えている部分があったのだけど、何が睦と来栖にとって「幸せ」なのかを考えていたらいつの間にか夢中になっていた。不覚にも泣いてしまったよ。

幼児性を残したまま成長した大人が「無垢」なのかと考えると、私はそんなことは決してないと思う。子供は欲望だらけで善悪の区別が付きにくい分残酷な事も平気でする。「子供は無垢だ」と信じたい大人の想いが、彼らを無垢な生き物にするのだ。来栖は自分がそうありたい姿を睦に写し取って見ていたのではないかな。変わっていく自分と変わらない幼馴染み。変わることは悪ではないし、変わらないことだって悪ではない。ただ、自分がどうありたかったかによって捉え方が違ってくるだけ。だから、変化していく自分を戸惑いながらも受け入れていく睦の姿に、何も変わらない幼馴染みの姿に、来栖が罪悪感を抱くのも当然のことなのだ。自分が「白」と云えば黒も白になるような睦を相手に、来栖は「どこからどこまでが睦の気持ちなのか」が見えなくなっていく。それはもしかしたらこの先も変わらないかもしれない。大人のキスを教えて、快楽を教えて、抱き合うことの意味を教えて。睦が側に居たとしても、来栖にとってそれはとても孤独な戦いだ。大学進学を機に睦から逃げ出した来栖を責める気持ちにはなれない。

睦は一途だ。雛鳥のように「クルちゃん」と慕い続けて来栖を好きだと云う気持ちに揺るぎがない。
傷付けられていることにも気が付かない。睦の代わりにいつも傷付いてきたのは来栖だったのだ。
確かに来栖は身勝手な男ではあるけど、私は終始彼の肩を持ちたい気持ちだったよ。彼が負わなければいけないと思い込んでいた責任は「二人分」なのだから。それは重すぎるもの。
人は自分の中に皆無の素質を他者に見出すことは出来ない。純粋でありたかったと思う来栖は、睦が云うように「ジュンスイ」な人なのだ。他者と居ることで、そうありたい自分に近づける関係性というのは、それはそれで理想的だと思うのだ。

終盤の―俺が、クルちゃんの神様になってあげる。という台詞が涙腺を直撃した。
願い事を叶える券なんていう子供だましの餞別を、来栖がいつまでも大切にしていたことも、彼が望むことを睦が叶えてあげると口にしたことも、すべてが心に響いてきた。子供の頃というのは、両親や身近な友達、アニメのキャラクターをそれこそ神様のように信頼(崇拝)していたなと。彼らにとってはお互いが神様のような存在なんだよね。崇拝じみた恋愛には怖さを感じるけれど、彼らの使う「神様」は、もっとこう根源的な「神様」に近い響きがあってとても好き。

対等な関係なんかではない。庇護する者とされる者がとてもはっきりしている話だ。
「精神が子供の大人と恋愛すること」については木原さんの「こどもの瞳」を読んだ時にも考えたけど、答えなんて出ないのよね。現実を振り返っても、ボーダーラインに居る人たちだって恋愛をしたり家庭を持ったりしている。男同士だからというモラルや、性的なことに睦を引き込んだ来栖の罪悪感を越えて、二人が幸せならばそれでいいと思ったよ。だって、二人とも待って待って待ち続けたんだもん。だったらもういいじゃない!と思ってしまうのだ。彼らの選択や経緯に、私は特に引っ掛かりを感じることはなかったんだよね。ただ一つ確かなのは、彼らの幸いは来栖の精神的強さにかかっている(感想が来栖に寄っているのはその為ね)。クルちゃんにはもっともっと強くなって、是が非でも睦よりも1日長く生きて欲しい。そんなことまで思ってしまいました。

さすが砂原さん、面白かったです!



余談ですが今作は「幼馴染み物」として私的理想の展開でした。
小中高と一途に想い続けて、大学生で離ればなれになり(世界が広がり)、社会人でまとまる
結構多いのですけどね♪好きです、王道!

更に余談。
「アホな子」が主人公と聞いて頭に浮かんだのはこちらの作品でした。
純情えれきてる (ディアプラス コミックス)純情えれきてる (ディアプラス コミックス)
(1999/02)
藍川 さとる

商品詳細を見る

アホな子が主人公のコメディというか、電波×アホのラブコメです。
すっごく好きなのだけど、真面目に感想なんて書けない作品。
藍川先生、また表に出てこなくなってしまったけど心身共に健康であればいいなと願っています。
いつか「晴天なり。シリーズ」をまとめたい・・・。

コメントの投稿

非公開コメント

よかった◎

私マイナス思考というか、心配性なので
この二人が幸せに生きていく大変さを勝手に心配してつらくなって
そこが一番の素直に面白かったと思えなかった要因だったのですよねー。

ほんとに、くるちゃんがちょびっとだけ長生きして
幸せだったねって終われたら素敵だなぁと願うです。


こどもの瞳はもっと苦手だったんだけど
そのうちまた読み直したいなあ。。。

>みさか。さん

読む前はたぶん受け付けないだろうなと思っていたのだけど、すごく好きでしたよ。
私「こどもの瞳」も大好きなのですよ~。
ままま、アレは健気に生きている受け弟と、記憶が戻ってから事に及ぶ際に「お兄ちゃんって呼んで」とのたまった変態兄貴に萌えたのが一番の理由なのですが(笑)

私は逆にハンデキャップのない普通の(特にノンケ×ノンケとか)カップルの未来の方が「永遠」が見えなくて心配しちゃいます。別に死が二人を分かつまで~が理想というわけではないのだけど、困難でも長く一緒に居られそうな姿にキュンときたのかもです。

あっ、図々しくも貰ったなんて云ってしまったけど、貰ってしまっても良いかな(イマサラ)
大切にしますねー!

あ、贈呈でした笑

大丈夫です。
大切にしてもらえる人のところにおさまった方が本も幸せなので◎

びえる本て、
特に変態性の萌えによって、本の評価が多様になりますよねー
人に本をすすめるときに「あ、あたしはすきなんだけど・・・」
ってごにょごにょつけくわえることが多いです笑

>困難でも長く一緒に居られそうな姿にキュンときたのかもです。
あ、それはたしかにそうですね!!
その視点からみるとめちゃんこ幸せかも。おー。ちょっとじわんとしました ^ ^

>みさかさん

有難く頂戴します~。

そうそう、BLの萌えは100%合致することがないですよね!
同じ本が好きでも人によっては攻めが好きだったり、受けが好きだったり、ストーリーが好きだったりして。
だから、みさかさんや他の方の感想読んで「ほっほ~」と思うのが楽しいです。

ではでは!
プロフィール

yori

Author:yori
気がつけばいつもそばにBL

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。