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「17才」菅野彰

17才 (ディアプラス文庫)17才 (ディアプラス文庫)
(1999/08)
菅野 彰

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八隅は夏の到来とともに、高校生活のすべてをかけてきた陸上部を引退した。陸上で大学推薦を決めて、走り続けているのは司馬だけ。ありあまる才能を持ち、傲慢なほど奔放な司馬だが、八隅との恋に苛ついている。何度体をつなげても、届かないものがあるようで…。そして二人は、夏の終わりの海を目指す―。湘南を舞台に描く、センシティブな二つの恋の物語「17才」と「向こうの縮れた亜鉛の雲へ」を収録。

恋愛小説は私にとって他人事である。小説のように相手を強く想い慈しむことが出来れば、それはとても素敵だし幸せなことだと思うのだが現実を省みてみれば…まぁ、とにかく他人事なのである。だから過剰な感情移入をせずに楽しむことが出来るのだ。
だけど菅野さんの「17才」「亜鉛の雲」は、私に他人事だという俯瞰した立場を許さない小説だった。
過去のどんな場面を探しても、私には彼らのようなやり方で他人と関わった経験はないし、きっとこの先もないと思う。それは彼らの関わり方が理想的では決してないからだ。むしろ御免だとさえ思っている。と同時に、どこかで憧れに似た気持ちを抱いているのだ。自分には絶対に出来ないしやりたくもない。でも、魅せられる。もしかしたら自分は、そういった関わりを持つ機会を逸して今に至っているのではないかという不安にも近いような。とにかく彼らの関係の圧倒的な「何か」が私を惹きつけてやまなかった。「晴天」の大河と秀の関係に畏怖のような憧れを抱くのと根っこではすべて繋がっているのかもしれないな。これは普段読んでいるBLとは一線を画す小説だ。一般書を読んで感情を揺さぶられるのと近い感覚というか、描かれているのは確かに「恋愛」なのだけど、2作品とも恋愛以前の各々の問題がテーマになっている。

ところで以下は呟き上で「センシティブとは何か?」という話題になった時にスッと出てきた言葉なのだけど、自分のことだから当然なのだが、結構的確に思うところを表現出来たのではないかと思っている。

私の傾向としては「抑えた(静かな)語り口」で「他に語り方がなく(ファンタジー、コメディ、お仕事etc)」登場人物が、相手との恋愛以前の「自分の問題(内省的)」で、相手との関係に支障をきたしつつ、克服をしたり成長したり諦めたり(?)する心の変遷にテーマを絞った話に思う事が多いかな。
そして「17才」は紛れもなくセンシティブな話だった。

「17才」
普段高校生物を好んでは読まないが「逃避行」には思い入れがある。必ず終着点のある逃避行というのが好きなのだ。
彼らは永遠がないと思っている。永遠は「死」という形でしか得られないと思っている。それは彼らが高校生という不自由な時間を生きる子供だからだ。相手に過剰な期待を寄せる為の保険も持たず、期待に添えるだけの確固とした答えも持たず。八隅は自分が司馬と同じだけの重さで気持ちを返すことが出来ないのを知っているし、司馬も八隅の気持ちが自分の重さとは質が異なることを知っている。互いを想う心に偽りはないのに、彼らの間には歴然とした温度差がある。
同じ重さで返すことが出来ないから八隅は司馬の心中に付き合おうとしていたのだ。
他に証明する手段を持たないから、彼が欲しがるものすべて渡してしまおうと。
「高校生だから」「まだ若いから」そんな言葉で彼らを括ってしまうのはとても失礼なことかもしれないが、他者に対して何一つ直截的な保証や約束を与えることが出来ない彼らの姿は、私が思うところの正しい「高校生物」なのだ。彼らの未来は見えない。あまりにも切ない関わり方をしている17才という瞬間だけが存在するかのように。だけど見えない分、どうにでも切り開いていけるのだという心強さがあるのも本当だ。私は二人の未来は「大丈夫」だと信じている。

「向こうの縮れた亜鉛の雲へ」
「17才」でちらっと出てきた八隅と司馬の先輩である弓田英一が主人公。
事故に合い陸上選手生命を断たれた英一と、女生徒と問題を起こして教師を辞した遠縁にあたる徭の物語。
徭のやっていることは情の押し売りである。後書で菅野さんが仰るように、徭なる人物は晴天の「秀」にとてもよく似ている。情を必要とする人間を嗅ぎ当て、無償とも云える真摯さで与え、自分は何も求めない。そうやって相手の懐にいきなり飛び込む(飛びこませるのではない)のは、彼自身が情を必要としているからに他ならない。情を与えられた相手の「渇え」はいつか癒える時がくる。その時相手は初めて気が付くのだ。求め方を知らない恋人の空虚さと、「問題がなくなった自分は彼にとってはもう必要がない存在なのではないか」という事実に。それはあまりにも残酷な関係だ。
終盤、年若い英一が「抱かないよ」と宣言することの困難さは置いておいて、その結論に打たれた。まるで「晴天」で熱を持たない秀の身体を抱くことを拒絶した大河のようだ。その結論は徭にとってみれば難しい宿題を与えられたようなものかもしれない。彼らの先にある関係は、もしかしたら「恋人」ではないかもしれない。だけど、正しいかはわからなくても、一人の人間と出会い、その人間の根っこにある問題をどうにかする為に、自分を含めた関係を再構築しようとする英一の姿に感動した。彼らはこれから新たな関係を始めるのだ。


自分と他者の間には分り合えない遠さがある。近づいたり駆け寄って飛び越えようとしたり、ひとつ越えてもまた違う問題が出てきたり。それでも関係を持とうと足掻く登場人物の不器用さと真摯さが好きだ。彼らが懸命になるのはもちろん「恋愛」に寄るのだけど、それだけではない必死さを感じて眩しくなる。
菅野さんの描く関係性は、恋愛関係というよりも人間関係なのではないかな。
だから私はやっぱり菅野さんの小説に憧れているのだ。



*****

せんしてぃぶを感想にすると恥ずかしい自分語りが入ってしまってスミマセンっ!とお詫びをしたい気持ちでいっぱいです(笑)でも、結局私が「本」に求めているのはこういうものなのかも。
とても面白かったです。
菅野さんは小説を書く作業をどんな風に捉えていたのだろう。既読作品含めてコンプしよう!

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yoriさん、こんばんは。
何はともあれ、yoriさんが菅野さんの作品を再考して下さって嬉しかったです。
それにしても、センシティブ。
考えれば考えるほど難しいです。
ツィッタでも呟きましたが、話の天辺から爪先までセンシティブを貫くBL作家さんと言えば、藤たまきさんが私にとって唯一無二なのですよね。
菅野さんはセンシティブな局面が出てくるけれど、そこに終始している訳じゃない…むしろ、そこから這い上がらんとする(した)人間達の顛末を描いているように思う訳でして。
全くの余談になりますが、榎田さんの魚住君シリーズ“も”偏愛している私ですが、この作品も「夏の塩」だけは“センシティブ”だと思うのですが、その後の一連のシリーズはエンタメ化しているように感じており、それが作品の進化なのか退化なのか(by言の葉の世界からの引用)やっぱり分からなかったりします。
最初の「夏の塩」が無論私も魚住君の入り口だったのは間違いないのですが、同シリーズで私が一番好きなエピソードは「過敏症」なので自分でも何か矛盾してるように思います。
別の方にこの話を伝えたら、それこそジュネがBL化した瞬間であるとのお返事を頂きましたが。
で、私は最終的にBLを選ぶ側の人間である、それだけのことだと。

17歳の二人に関しては、完全な他人と突き放すことは出来ず、かつての自分が二人の分身に分かれたかのような錯覚を感じる反面、亜鉛~の徭さんに話の最初から最後まで近づけなかった“苦い”思いを感じました。
私のこの感覚は、yoriさんとも繋がっているでしょうか?
理性では分解できない作品だったことは間違いなく、それゆえ自分のブログでは感想放棄しました。
やっぱり、難しい。

だらだした文章続けてしまってすみません。
最後に一つだけ。
愛がなければ~のレスになってしまうのですが、神江真凪さんの『満天星』(シャレード)って読んだことありますか?
できれば、yoriさんに読んで欲しい一冊です。
この作品も作家がメインキャラなんですが、作家の作家性が問われている作品で、しかも出す結論が面白いのです。
早瀬さんと異なり、神江さんは文章では外さない筈なのでいずれ機会があれば読んでみてください。

ハナシ、あっちこっち飛んじゃってごめんなさい。
ではっ!!

>tatsukiさん

コメントありがとうございます!

tatsukiさんが取り上げなければ、「晴天」以外の菅野作品と向き合ってみようという気持ちにはなっていませんでした。手に取る切っ掛けを与えてくれてありがとうございます!

「センシティブ」は言葉自体が便利に使われている、ある種「無意味」な装飾語になっている部分もあるなぁと感じます。藤作品を全作読んでいるわけではないのですが、そう感じられるのはとてもよくわかりますね。藤さんも「こういったものしか描かない」という頑なさを持っていると感じる数少ないBL漫画家です。私が敬愛する藍川さとるの「晴天なり。シリーズ」もセンシティブかと思ったのですが、こちらは実戦的というか、もっと現実に近い感じがして、全体的に見ると(自分が思う所のセとは)違うのかなーと。うーん、難しい。

「魚住くん」の「夏の塩」と以降の作品についての違いについては考えたことがなかったので驚きました!云われてみるとすごく納得ですよ。私も同じように「過敏症」のくだりが大好きですが、「夏の塩」のニアさや、その他登場人物達の短編から考えて、「過敏症」の描写が異質なのだと捉えていました。そうか、JUNEからBLへ移行した瞬間の作品だったのか!面白い~!ちなみに私が感想を書けないのは再読する気力がないからです。本当は昨年夏にハードカバーを購入して書くつもりだったのに「馬」に持っていかれたのでした(笑)

「17才」も「亜鉛」も、どうしても「晴天」の形跡を探してしまいました。私のBL小説の原点も「晴天」であり、大河と秀なので、そこを基準に考えてしまうのですよね。残念ながら、彼らの誰とも私は近くないと思います。「そんな関わり方があるのか、あるのかもしれないな、いいな」という憧れは「晴天」と同じなのですね。自分には逆立ちしても描けなそうな関係性ばかりを描く菅野さんは、エッセイを知っているからこそ、不思議で仕方ないです。ま、キャラの爆笑作(?)を読む勇気が今はまだないので、だいぶ美化されているのですけどね(笑)

神凪さん!実は今ちょうど「MOON DIVE」を読んでいるところです。「満天星」ですね、了解しました!
あっ、早瀬さんはダメだったりギブしたわけではないのですよ!「愛がなければ」を読んでおいてアレですが、コメディを楽しむテンションにならなくて積んでいるのです…こちらも近いうちに必ず!

最後に話が戻りますが、文章について。
“格闘”と“選択”の違いには頷くばかりです。こだわりの強さが何に寄るのか、受け取る側の感性に左右されるものだとしても、何か見過ごせないものがあったので、tatsukiさんが文章にしてくれたことで、また一つ新しいものが見えてきたように思います!こういった引っ掛かりに(少なくとも文章面では)ノータッチなのが榎田さんや砂原さんであることを考えると、いかに読者に照準を合わせているかがわかるなーと、また関係ないことを思ったりしました。

あわわ、私の方こそダラダラとすみません!!
ではではまた~



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Author:yori
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