「愛がなければやってられない」菅野彰

愛がなければやってられない (新書館ディアプラス文庫)愛がなければやってられない (新書館ディアプラス文庫)
(1999/04)
菅野 彰

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超人気漫画家・安藤由也を育て上げた敏腕編集者の志賀耕介。二人は再従兄弟同士で、そうとは知らずに実は互いに恋しあっていて……。生活能力0の由也と、日々原稿を取ることに血道をあげている耕介。そんなふたりの間に「愛」は生まれるのか!?表題作ほか、続篇「もっと愛がなければやってられない」、書き下ろし「さらに愛がなければやってられない」を収録した、コミカル・ラブストーリー!!

有言実行ということで菅野さんの未読作品です。
10年以上前、まだ晴天シリーズにも出会っていない頃に刊行されたのですね。どこかで聞いたような設定の主人公達だけど、菅野作品は結局のところ「繰り返し」の物語ではないかと思うのです。書かなければ、と作家が思っている関係性が絞られている。その狭さとはイコール作家の技量の低さというわけではなくて、例えば樹生さんの受けと攻めの関係性の類似や、長野作品で兄と弟の執着愛が繰り返し描かれてきたのと同じこと。何でも書ける作家さんも素晴らしいけど、個人的には「これしか書けません」と頑なさを貫く作家さんの方が好きだったりします。
しかし、今作は菅野さんにしてはBLらしい話!
おまけにエロがしっかり入ってる!(あくまで菅野さん基準です)
そして関係ないけど主役二人の名前が普通だ!←実はこれが一番驚いた(笑)

「愛がなければやってられない」
ダメ作家と敏腕編集といえば晴天以外でも割とよく見かけるCPだけど、今作で特筆すべきは由也の生み出す作品が誰の為のものなのかという点。創作をする切っ掛けというのは当然人夫々だけど、最初に耕介という「読者ありき」だった由也は、ドル箱作家になった現在も耕介の為にと漫画を描き続けている。しかし、幼い頃は純粋に「作品」を求めていた耕介が、月日が経って大人になった今は「看板作家として」作品を求めていることに由也は気が付いてもいる。自分と耕介の関係が望むものではなくなってきている落胆と、耕介の担当移動、結婚の話などが重なり逃げ出してしまう由也。
創作をするという点では子供の頃から情緒がまったく成長していない節がある由也を、耕介はずっと面倒を見ているのだが、耕介は仕事を通じての由也しか長いこと見ようとしていなかった。それは私情を挟めば認めたくない恋愛感情に支配されるのを耕介はずっと前から気が付いているからに他ならない。だから耕介には由也がいつまで経っても子供のままに見えるのだ。大人になった筈の由也を見ていない、見ようとしていない。オラオラ口調で俺様の耕介が苦手な方もいるかもしれないが、しつこく云っているように私は「世話焼き苦労性兄貴」が大好きなので耕介は大変美味しいキャラクタでございました♪元々想いあっている二人のドタバタラブコメなので展開もわかっているのだけど、久々の菅野コメディ堪能しました。

「もっと愛がなければやってられない」
子供だと思っていた由也(ちなみに年齢は由也の方が2つ上)に男の恋人が居たことを知り衝撃を隠せない耕介。最中にも積極的になられては昔の男が思い浮かんで凹むという理由から由也には何もさせないという逆ヘタレっぷり。いかに自分が由也と向かい合うことを避けていたのかを思い知らされうな垂れるのだけど、結局核心には触れることが出来ないままグルグルする耕介。おまけに由也の将来を心配した彼の兄が上京して由也の恋愛事情に言及する事態に。幼い頃から男らしくなく、女の子と遊ぶことを好んだ由也のセクシャリティを家族は薄々気が付いていて、それでも彼が「幸せならば」と云うのだ。しかし耕介は元彼との事情を兄から聞いてしまい、ますます自分が由也を幸せにしているのか自信がなくなっていく。元彼の正体には驚いたけど、なるほど伏線は十分にあった。しかし狭い世界でアレコレやっていたのに気が付かなかった耕介の鈍さが笑えます。元彼と家族の茶々(良い意味で)が入りつつ、雨降って地固まる的な後日談。

「さらに愛がなければやってられない」
書き下ろしはまさかの由也と元彼の逃避行。
まさに「愛がなければ」とっくに堪忍袋の緒が切れて、ついでに血管も切れて憤死していそうな耕介の苦労が偲ばれる話。昔からずっと近くに居たお互いへの「過信」が改めて表出して一歩前進、対話をしようと気が付く話でもあるかな。元彼が出張ってくるのは個人的にあまり好きではないのだけど、そして元彼の逃避理由の顛末もモゴモゴなのですが、傍からみれば単なるバカップルの二人が愛おしかった。


この二人はこれから先もずっと一緒に居るんだろうな。何の疑いもなくそう思えるのは、菅野さんの小説を読むと「人間関係→恋愛関係→人間関係」という構図が浮かぶからだと思う。恋愛をする以前にも以降にも彼らの間には変わらない関係性があって、それも含めて責任持つよと云っているような(うぅ、わかりにくい)。自分と他者を隔てる垣根の飛び越え方のスケールが大きいの。それはコメディでもシリアスでも同じなんだよね。良い本を読みました。面白かった!

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