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「隅田川心中」たうみまゆ

隅田川心中 (MARBLE COMICS)隅田川心中 (MARBLE COMICS)
(2008/09/19)
たうみ まゆ

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え~毎度ばかばかしい噺ではございますがとある不良グループに熊田と大川という男がおりまして、この熊田、元落語家という経歴を持つ、飄々と掴みどころのない奴で方や大川は、まるで日本語の通じない非常に頭の悪いヘタレでございます。この二人が自分達の「居場所」を求め、人生だの恋だのと傍迷惑に繰り広げる可笑しくもジンとする、そんな一席でございます。表題作ほか芸能界を舞台に描く痛快ラブコメなど、愛と笑い溢れる気鋭の短編集!

気になっていた作家さんなのですが、東京漫画社系のBLにちょっと食傷気味で手が出ていませんでした。ああ、もったいない~!とても好みの作品でした!!

「あかぎくのうた」
「カラオケで失恋の歌が流行るのは~」という台詞を昔『東京BABYLON』(CLAMP)で読んだなとボンヤリ思い出しました。肝心の後半を覚えていないのだけど、「皆寂しいから」と結ばれていた気がします。寂しい歌ばかりを歌う江島と、彼の隣りに下宿する小説家志望の更科。悲しみの歌ばかりを歌って持て囃される男の心の中は空虚さでいっぱいだったのかもしれない。でも、その空虚さを失わない為に行きずりの男と寝ては殴られを繰り返す彼の「歌への執着」が好き。想う相手に抱かれて幸福を知れば「悲しい歌」を作れなくなる。それを知っている彼はなんて悲しい存在なのだろう。ブラウン管の向こうで微笑む彼の歌が昔と“変わらない”という結びにゾクゾクした。これが冒頭の作品。オマケ漫画で補完するわけでもなく、続きが気にならない良い短編。たうみさんって明るい話を描く人ではないんだなと持っていた先入観を改めました。

「赤と青」
なんて素晴らしい兄弟BL(未満)!!出来の良い弟「蒼」と出来の悪い兄「紅」。蒼は幼いころ紅とした“いやらしいこと”をずっと覚えていて、今も気持ちを上手く整理出来ないでいる。この兄弟の間にある愛情や葛藤こそが、私が理想とする兄弟のソレなのだと思う。BLであるという前提を無視して語るけど、これはBLじゃないよね。二人の間に性的な感情はたぶん、一切、ない。少なくとも兄の紅の方にはないし、弟の蒼が繰り返し呟く「なんで兄なんだよ」という言葉にも、含まれてはいないと思うんだ。ただ、大好きで大好きで大好きで仕方がない兄への屈折した愛情の持って行き場に悩んでいる高校生男子の話なんだよ。なんて愛おしい!!何もかも兄が居るから意味があったのに、その兄はヘラヘラ笑って違う道を見つけてしまう。意味をなくされてしまう。置いてけぼりになってしまった蒼が最後の最後で意味を見つける展開にグッときました。わずかな頁数で必要なことが全部詰まっている。うん、好きだな。

「なでしこGALAXY」
芸能人!アイドル!女装!再会!そしてコメディ!
一人だけ女顔を揄わずに「男じゃないか」と云ってくれた木野(バカ)を追いかけて女装のアイドルとなった日向。割と良くある設定な気がするのだけど、面白かったよ。日向は矛盾しているんだよね。女の子として芸能界に入ったのは木野に近づく為だけど、木野にだけは「かわいい」と思われたくなかったんだ。だからナンパをしてきた木野にキツク当たるし、家を訪ねられた時は過剰に男らしさを演出する。でも内心ではすごく動揺している。かわいい~。テンパッた木野の「右手貸そうか」発言といい、木野の属するアイドルグループのメンツといい、とにかく笑える一作でした!

「隅田川心中」
表題作は落語の噺をテーマにした連作物。これがすごく、すごく好みだった!!
元落語家で天才肌の熊田と超が付く程バカの大川。言葉を知らないから自分の気持ちも人の気持ちも思うように表現出来ない大川。でもそんな大川だけが、熊田の歌が伝える“悲鳴”に気が付いてしまった。きっと大切にしていたであろう落語という足場を失って、“居場所”を求めて喧嘩に明け暮れる熊田の心の悲鳴に。
「すき って……なんで2文字しかないんスかね そんな簡単な…きもちじゃねえのに」
「バカでも言えるように2文字なんじゃねぇか?」

この台詞の神がかっていることといったらない。熊田の飄々としてヘラッて笑うけど1本ネジが飛んでしまっているような怖さもいいし、大川のいかにも育ちが悪そうな不健康そうでちょっと不細工な面立ちもたまらなくいい。噺に絡めた「隅田川」の使い方、歌詞の「眺めを何にたとうべし」と冒頭の「筆舌に尽くしがたい」の繋がりも素晴らしいし、文句の付けようがない。これは本当に好きです。

「ごまとまぬけと」
街からの逃亡に成功したらしき熊田と大川が、熊田の元兄弟子である二徳の寄席を見に行く話。
そして「粗忽長屋」をテーマに、熊田と二徳の関係に嫉妬した大川が永遠の愛を叫ぶ話でもある。相変わらずバカな大川だが熊田の一挙手一投足も見逃さないようにしようとする献身ぶりが愛おしい。そして何よりも熊田の心の揺れにグッときた。熊田が逃げ出したものは一体何だったのだろう。それはもちろん落語であり、作中で詳しく語られることはないのだが、二徳への情だったかもしれないのだ。そんな熊田の気持ちを二徳は知ってか「芸の道でならよ オレだっておまえと喜んで死ぬよ」と伝える。落語家に出戻る決意を熊田に与えたのは二徳の言葉だろう。熊田が本来の“居場所”に気が付いた話でもあるのだ。出番は少ないが彼らの師匠もとてもイイ味を出している。

「三千世界の烏を殺し」
熊田の元彼女未満アヤの話。「バッドエンド特集」掲載作だけあって、もちろん彼女の恋は実らない。恋だと気が付いたと同時に失恋していた彼女が、大川には勝てないと思うところがいい。どれだけ身体を重ねても熊田の抱える空虚さに気付くことのなかった自分への悔しさ。バカのくせにっと大川を詰る彼女の視線は諦め交じりでどこか優しい。理解があるわけでもないし、応援をするわけでもない。舞台に立つ熊田を見つめて彼女は「恋がしたいな」と思う。その遠さがいっそ美しい。わかりあえなかった、通じ合えなかった男女にだって物語はあって、転じ転じて何かの糧になるのだ。

「宮戸川心中」
薄々思っていたけど、やっぱり熊田が受けなんだよね!!
それだけで私は大満足でございますよ(笑)飄々として、どこかビッチな雰囲気もあって、おまけに無精ヒゲ!熊田のことが好きな理由はそれだけで十分ですね。大川じゃなくても押し倒したいよ!一席講じる姿に欲情するとか、リクエストにちゃっかり「宮戸川心中」を選ぶとか、大川が段々知恵を付けていてそれもまた愛おしい!着物にもぐりこむ手やはだけた足が妙に色っぽくてイヤラシイ。
この二人の話はこれでお仕舞いなのかな~?もっともっと読んでいたかった!
熊田と大川が末永く共に居れますように。たぶん寂しがり屋の熊田は宣言通り大川に最期まで看てもらうといいよ。本当に愛おしい二人でした!大好き!!


たうみさんの絵は上手とは云えないのだけど、粗さ特有のガサガサした色気があってとても良い。1冊通して致している場面があるのは最初の「あかぎくのうた」だけだし、東京漫画社らしくニアな雰囲気が強い。あまりにもニアが強いとBLとしても退屈で印象に残らなかったりするのだけど、たうみさんのこの作品はどれも感心するぐらい上手に出来ていた。もっと早く読めば良かったな。他の作品も読んでみます♪

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