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「恋愛革命」海賀卓子

恋愛革命 (ショコラノベルス)恋愛革命 (ショコラノベルス)
(2010/08/10)
海賀 卓子

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池畑虎之介は顔を出そうと駆けつけた飲み会で意外な人物に会う。昼間バイト先で彼女と別れ話をしていた男だった。彼、坂口瑞希は幹事である結の兄で虎之介を待つ間に呼ばれたらしい。完全に酔い潰れた瑞希に散々な目に遭わされた虎之介は、二度と会うことはないと思っていた。だが数日後、彼は姿を現しバイトを持ちかけてきた。携帯を預かるだけで一日二千円。苦学生の虎之介は断り切れず引き受けるが…。

今年も年末にベストを発表する機会があるとしたら、新刊小説の候補は、『高潔であるということ』と『災厄を運ぶ男』だった。旧作を含めればまた違う結果になるのだが、今年読んだ小説の中でも上記の2作品は特に心に残っている。なんでそんな前置きをしたかというと、今作『恋愛革命』はこの2作品を追い抜き現段階では今年のベストかもしれないなぁと思っているからなのだ。そのぐらい面白かった!!

恋愛の駆け引きはゲームなんかではない。もちろんゲームとして楽しむ人もいるだろうけど、私が思う駆け引きとは、相手よりも不利になりたくないという自己保身の気持ちから出る、みっともない嘘と強がりの応酬のことだ。
好きな人のことを考える。「大切にしたい」「愛したい」そういった気持ちを抱くと同時に、好きな人を好きな自分のことを考える。「傷付きたくない」「保障が欲しい」「相手のことを想うことで返ってくるであろう結果が欲しい」そんな風に考えてしまうのは、至極当然のことだと思うのだ。無償の愛なんて信じられないし、好きになった分だけ返して欲しい。あわよくば相手の方により多く返して欲しい、とまぁこんな感じのお世辞にも性格が良いとは言えない登場人物はBLに限らず恋愛小説にはよく出てくると思う。でもそのウィークポイントを受け攻め両方が持っている小説と云うのは結構珍しいのではないかな?

同性愛者であることの怯えから本心を隠す坂口と、恋愛の敗者になりたくないから虚勢を張る虎之介。
夫々が相手を好きだという気持ちと同時に、自分のことを「可愛い」と思っているからこそ生じるすれ違いが生々しいのだ。読みながら、これぞ恋愛だと感心しっぱなしだったのだが、過去に同じような強さでそう思った作品を浮かべて一人合点した。それは、あの『窮鼠&俎上シリーズ』だったのだ。恋をする互いが汚く醜く利己的で、でも必死で相手のことを想う美しい気持ちも同時に持っている。綺麗事ではない恋愛を生々しく描写している、その筆力に圧倒されっぱなしだった。

もうひとつ私が注目したのは、「死」の描かれ方だ。
この作品には二つの「死」が話題に上がる。想像としての死と、実感としての死だ。人物の死は価値観の転換を図るのに便利な材料であるのだが、使い古されている分陳腐に感じられる話が多いのも否めない。でも、この作品で描かれる死は少し違う。どう違うのか上手く説明できないのがもどかしいのだけど、虎之介の祖父がじわじわと痴呆に侵され、何もかも忘れてしまったことで虎之介が思い描いていた「最期の時」のイメージが覆るのだ。その部分のリアリティといい、海賀さんのお歳はわからないけど人生経験を積まれた結果の今作といった印象だ。

人間臭い周囲の人物達も良いし、二人の恋愛が同性愛であることを突き詰めているのもとても良い。ファンタジーがないというと身も蓋もないけど、恋愛するってことは綺麗事だけじゃ済まないことが多いからね。家族や友人への紹介を内緒にするのも人によっては限界があるだろうし、将来を真剣に考えれば尚の事だ。どうにかなるさと楽天的に締める話も多い中で、彼らの舐めた辛酸と、これから舐めるであろう新たな辛酸への覚悟の在り方が私は好きだ。

自分にもある弱さを突き付けられているようで、読むのにものすごく消耗した。ズッシリ心に響いてきた。
読み返して萌えを楽しみたいというのとは違うのだけど、読み応えのある素晴らしい本だった。
『恋愛革命』全力でオススメします!

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うわーい

こにちわー。
yoriさんの感想読んで、うんうんうんうんってずっと頷いてました。
自分の語彙では言葉に出来なかったことを気づかせてもらった感じです~。

過去作品のこと触れていましたが、私が読んだ中ではアホっこはなかったような…。
アホっこの振りして痛い、みたいな感じだと思います。
海賀さんの既刊はもう手に入れにくいですが、ぜひ読んでみて欲しいです!

>かのさん

こんばんは~。
わいわい、コメントありがとうございます!!
もう、これ本当に面白かったですね。
文字もギッシリで読みごたえがあって、気分的には2人の狡さにシンクロして凹んだりもしたのですが、それも含めて面白かったです。これは絶対に感想書いておきたいと思っていたので、もったいない言葉を頂けて嬉しいです~。
そして、珍しく「全力でオススメ」とか書いたらかのさんも同じように書いていたという(笑)

“アホコメディ”はタイトルとあらすじを読んだ印象だったのですが、ただの余談が蛇足になったので全力で修正させて頂きましたっ!

今でも手に入る作品が数作ありました。
手を出してみますね~♪

拍手ありがとうございます!

>名無し様

海賀さんは同人活動もされていたのですね!
秋には行ったのですが春は行かなかったのです、庭。
やはり表に出てこられる環境になったということで、ご本人の可能性は高かったかも?

私はまったくお名前を知らなかったのですが、「待っていた!!」と喜んでいる人も周囲では多いので、記憶に残る作品を書く方だったのですね。でもわかる気がします。今作、本当に面白かったですもん!

コメントありがとうございました!
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Author:yori
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