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「運命はすべて、なるようになる 上・下」五百香ノエル

運命はすべて、なるようになる(上) (HollyNOVELS)運命はすべて、なるようになる(上) (HollyNOVELS)
(2010/07/23)
五百香 ノエル

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運命はすべて、なるようになる(下) (HollyNOVELS)運命はすべて、なるようになる(下) (HollyNOVELS)
(2010/08/27)
五百香 ノエル

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ようやく読んだ五百香さんの新刊。
最初に一言、ものすごく面白かった。息苦しくなるぐらい面白かった。

久々に書いたら長くなりました…お暇な方どぞ。


以下にあらすじを記しますが重要なネタバレを含みます。
何の先入観もなく読みたいと思われる方はご注意ください。




檜堵瑛輝はグランドスラムの帝王・ワーグナーと準々決勝で戦っていた。快楽を教え込まれ、男娼として生きている瑛輝には禁忌も後悔もなかった。だが、敬虔なカトリック教徒のワーグナーにとって、ゲイで、愛人の存在を隠さない瑛輝はアスリートである前に汚らわしい存在でしかない。幼い頃から憧れ、目標にしてきたテニス界の王に、瑛輝はライバルとして認められたいと願うが―。(上巻)
恋していることを劉哥に知られた瑛輝は、香港に連れ戻され、テニスを辞めさせられる。しかし、瑛輝は憧れの人を愛せただけで幸せだった。だが、それもつかの間、ワーグナーの悲報が届き、瑛輝はショックを受ける。自暴自棄になっていた瑛輝の前に突然現れたのは、大嫌いなフランス人形、ワーグナーの愛弟子アイユレだった。アイユレは瑛輝が師を侮辱したと責め、「お前は僕に買われた。お前を殺すのは僕だ」と冷酷に宣告する―。(下巻)


ところで私はこの作品を上下巻出揃ってから読んだのだ。
上巻発売時に読んだ友人の「下巻のあらすじを読んで購入は見送った」という言葉を聞いて、絶対に絶対に下巻のあらすじに目を通さずに読もうと決めていた。が、結果から云うと…読んでしまったんだよね。私はどんな作品も必ずあらすじに目を通してから購入する。あらすじに書かれていること=ネタバレだとは思わないから。だって、著者や編集側がそのあらすじを載せることを了承しているということなんだから、物語の魅力は損なわれないはずと信頼している。だから今作も下巻のあらすじによって何か影響されることはない!と云い切りたいのだが、どうも自信がない。
それは、ワーグナーの退場を知ってしまった私の「保身」が読書に響いた可能性を否定出来ないからだ。要するに、最初からワーグナーとの恋愛部分に重きを置かず、瑛輝の人生に焦点を当てて読んでいたのだよね。過酷な運命を背負った彼の辿り着く先が見たいという気持ちだけで読んでいた。もちろん彼の道程には彼を愛する数多くの男達との交流が不可欠なのだが、どうも恋愛部分を遠巻きにしてしまった感は否めない。それが悪いというわけではないのだが、下巻のあらすじをまったく知らなければ、また少し違った読み方もあったかもしれないなと思っているのだ。しかし、ワーグナーの退場もアイユレの台頭も上巻から十分に臭わされてはいる。瑛輝を先にコートで見つけて恋に落ちたのはアイユレだし、ワーグナーの妻であるダフネの存在も見逃せない。男達の運命を予見するかのようなダフネのモノローグは彼女が脇役ではないことを物語っている。夫を心から愛し支える聡明で思慮深いダフネ。読めばワーグナーの相手は彼女しかあり得ないということが、ワーグナーが瑛輝の手を取ることは恐らくないだろうということが、伝わってくるのだ。

不気味な存在感を示す瑛輝にとっての父であり神である人買い、劉哥の言葉も凄まじかった。
恋愛を幻想だと云い切りながら、その実瑛輝だけが、彼の人生に生じてしまった恋愛だったかもしれないというくだり。すべてを見通して残酷な運命を瑛輝にもたらしながら、彼を愛している。そして瑛輝もその愛を受け入れている。
劉哥の行いはこの世界の「悪」なのだけど、それによって生かされた(その気持ちが刷り込みやストックホルム症候群であったとしても)自覚がある瑛輝にとって、彼は何者にも代えがたい大切な存在なのだ。
蛇足だが、私はこの二人の関係に『風と木の詩』のジルベールとオーギュストを重ねた。というか、瑛輝とジルベールの姿が重なって仕方がなかった。それは、瑛輝は十分に「愛されている」子供だからだ。テニスを通して愛され、身体を通して愛される。二つは永続的な愛ではないし、劉哥の云うように幻想のようなものなのかもしれない。それでも、彼の周りには彼を愛する男達が大勢いるのだ。でも瑛輝は幸福ではない。なぜなら彼が愛した者(ワーグナー)は永遠に失われてしまったから。そしてワーグナーとの一度の成就を契機に、彼はテニスを捨ててしまったから。その姿に私はなぜかジルベールを見た気がしたのだ。大勢の男に愛されながらオーギュの愛だけを手に入れたいと願い続けた哀れな子供。ジルベールの運命の歯車をセルジュの小さな手は止めることは叶わなかったけど、今作の王子様は力技で止めてみせるのだ。(『風木』未読の方不親切ですみません)

アイユレは徹頭徹尾、瑛輝に恋をし愛を捧げている。生半な愛ではない。自身の感情をすべて隠し、残酷な絶対王者として私生活面でもテニス面でも瑛輝の上に君臨することを誓っている。それこそが、生きる気力を失った瑛輝を生かす唯一の方法だと劉哥に教わったからだ。穢れなき帝王ワーグナーと違い、アイユレは清濁併せ持った柔軟な思考の持ち主だ。生きる為に売春をしてきた瑛輝を決して軽蔑しない。そんな彼ならば「幻想」を永遠に続く「何か」に変えることが出来るかもしれないと劉哥は思ったから彼にすべてを託した。アイユレはワーグナーの死を責め、身体を快楽で責め、自分に憎しみを向けるように必死で画策する。元来負けず嫌いで努力家の瑛輝が再びテニスに執着するように。遠まわしでもどかしい愛情なのだけど、彼ら(アイユレと劉哥、その他の男達にとっても)の目的はまずは瑛輝を「生かす」ことなのだ。生かすとはただ呼吸をさせるだけではない。生きたい、死にたくないという意思を自らが持つようになるということ。その、人間が生きていく上で一番大切なことを今作は「恋愛」と「テニス」という二つの面から延々と切り取っているように感じた。
これは辛い運命の中で一度は壊れてしまった心を取り戻す、取り戻させる話なのだ。ものすごく、力強い。

当たり前のことだが、恋愛(人間)が生きる理由になるように、目標(今作ではテニス)だって生きる理由になる。そうやって闘い、頂点を極めた人間がこの世には大勢いるのだよね。私は正直スポーツとは縁遠い人生を送ってきたので、「スポーツ選手から生きる希望を―」といった類の言葉が理解出来ていなかった。今だって実感としてはよくわからない。でも私は間違いなく「小説から生きる希望を―」と口にすることは出来るのだ。自分の好きなものを享受する喜び、好きなものに近づこうと努力する経緯、そういったものすべてが人間の生への糧になるのだ。
いやもう、本当に力強くて面白い作品だった!!

五百香さんは初読みだったのだが、ベテランの風情漂う筆運び(特に試合シーンは手に汗握る!!)と下品スレスレの直接的な性描写が混在した独特な文体の方だと感じた。どことなくJUNEの空気を纏っているような…と思うのは『風木』の影響かもしれないが。性描写に過剰な美を求めず浅ましい行為として描こうとする一端もあるかな。他の作品も是非読んでみたい。停滞気味の読書熱を一気に取り戻させる素晴らしい読書体験だった。良い本を読みました!




***
先日の記事に頂いたコメントがあまりに嬉しくて&やっぱり面白い本を読んだら叫ばずにはおれず、ガーッと書いてしまいました。ふぅ、楽しかったです。超余談ですが、実はわたくし小中の6年間テニス部に所属しておりました。もちろん軟式テニスですが、今思いだせるのは「ナイッサー(ナイスサーブ)!」「一本集中!」などの掛け声のみ。ルールがスッポリ抜け落ちて何もわかりません。しかもその掛け声も主に補欠だったのでコートの外から応援で叫んでいただけという。ね、本当にスポーツとは縁遠い子供だったのです(笑)

風と木の詩 (1) (中公文庫―コミック版)風と木の詩 (1) (中公文庫―コミック版)
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竹宮 惠子

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ジルベール・コクトー わが人生に咲き誇りし最大の花――

14歳で出会ってから未だに本腰入れた再読は出来ません。
今読んだらきっと新しい発見がいっぱいあるのだろうな…。

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