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「トーマの心臓 Lost heart for Thoma 」森博嗣

トーマの心臓 Lost heart for Thoma (講談社ノベルス)トーマの心臓 Lost heart for Thoma (講談社ノベルス)
(2010/10/07)
森 博嗣

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トーマと呼ばれた美しい下級生から、ユーリに届いた一通の手紙。それは、彼からの遺書だった―。そこへトーマに生き写しの転校生・エーリクが現れ、オスカーは、遺された想いに縛られた親友・ユーリを憂慮する。揺れ動く心を捉える生と死、そして愛…。苦悩する少年たちを色鮮やかに描いた、萩尾望都の不朽の名作に、森博嗣が、今、新しい息吹を吹き込む。

読了した森博嗣版『トーマの心臓』の感想を書こうと思うのだけど、どう書いて良いのかわからないというのが正直なところ。トーマについては半年前にゆっくり考えたこともあり、読んだ時期としては悪くなかったと思う。

感想はこちら→「トーマの心臓」萩尾望都

重要なのは、これは漫画版『トーマの心臓』を読んでいることが大前提の物語であり、主人公(語り手)はオスカーであるということ。漫画では語り手であると同時に最大の傍観者のような立場であった彼に焦点があてられる。率直な感想としては、良質な「青春小説」かな。ジュブナイル(成長小説)とも云える。三者三様に違う形で与えられた親(絶対神)からの愛情と、その違いによって発露するようにも受け取れる性格の違い。一番「真っ当な」ものを享受していたように見えるトーマが「死」という一見相容れない行動に出たこと。その部分への飛躍があともう一歩という具合だった。いや、単に私の読解力の問題かもしれないのだけど。
漫画版ではすべてを俯瞰するような立場にいたオスカーだが、実際に彼の周囲で起こった出来事のすべてを語らせればそれは過不足なくオスカーの語りとして遜色ないものであり、その点は感心した。要するに、彼もまた一人の迷える青少年であったということ。彼にとってユーリは失った母親を投影する存在でもあったのだという視点は、半年前の私には思いつかなかった部分だ。トーマはユーリを、ユーリはトーマを神様のように崇拝したわけだけど、オスカーもユーリをそういう風に見ていたという。オスカーとワーグナー教授のやり取りこそが、森版トーマのメインテーマなのではないだろうか。グスタフ親父はオスカーに母親を殺したと告白をした。彼はその告白をグスタフの誠実さが成した結果であり、ユーリにも同等のものを求めている。しかしそれは違うのではないかとワーグナーは云っている(たぶん)。告白によってグスタフが救われたとしても、それはオスカーの希望ありきの告白ではなかったわけで…告白はグスタフの正義からではなくて弱さからされたのだと、私は思うのだよね。告白=当人の救済にあたると思っているままのオスカーではユーリは救えないし、そもそも自分ですら救うことの出来ない問題を他人が容易に救えるものではないのだよと、ワーグナーは云っている。そこにあるべきなのは、「救いたい」ではなくて「知りたい」なんだよと。そしてそれはなぜかと云えば、「好きだから」なんだよねと。とてもシンプルな問答だけど、真実だと思う。

オスカーに焦点があたる分、ユーリが抱えた宗教的な問題(というよりも作品内で詳しく言及されることはない)、エーリクが開放したユーリの葛藤部分の描写は不足があるように感じられた。そう、だからこれは萩尾版『トーマの心臓』をオスカー部分のみ補完する作業であったのだろう。もしも森版だけしか読んでいない方がいたら、是非萩尾版を読んでくれと云いたい。出来を比べること自体が無意味なのは承知だが、漫画版がなければ存在しない作品なのだから。
最後に先日の記事でもチラッと書いた「舞台」についてだが、正直こればっかりは理由がよくわからなかった。反発とかそういったものではなくて、ただ本当にその舞台に設定した理由が見えてこなかったのだ。厳密な時代背景はぼかされているが、イメージとしては恐らく大戦前の日本だ。そう、日本が舞台なんだよね。だからオスカーは傍観者であると同時に訪問者であり、ここでは異端者でもあったはずなのだ。その部分から何かもう少し描かれれば納得もいったのだけど…。ユーリの進路選択についても同様だ。彼がその道を志す経緯を、キリスト教圏でない国を舞台に描くのならば、もう少し背景への説明が必要だったように感じた。そしてその部分がこの物語の核であったと私は思っているので不満が残る。

試みとしては面白かった。こんな機会を与えられた森さんを羨ましい!と思われた小説家の方もきっと多いのではないだろうか。一読者でしかない私ですら羨ましいと思ったぐらいなのだから。

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