「世界の果てで待っていて~嘘とナイフ~」高遠琉加

世界の果てで待っていて ~嘘とナイフ~ (SHYノベルス)世界の果てで待っていて ~嘘とナイフ~ (SHYノベルス)
(2010/10/22)
高遠 琉加

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渋谷区神泉に調査探偵事務所を構える黒澤銃一郎は、暑い夏の午後、元同僚で渋谷警察署の刑事である櫂谷雪人から呼び出される。補導されたある少年が、黒澤の名刺を持っている、と。それが新たな事件の始まりだった・・・!妹である澪子の死の真相を独り探り続ける黒澤。そんな黒澤に、雪人は自分の知らない影を見つけ動揺する。自分はあの男の何を知っていて、何を知らないのか・・・そんな雪人は、公安の鴉と呼ばれていた鷹取から銃一郎の行確を命じられ!?「世界の果てで待っていて~天使の傷痕~」に続く第二弾登場!!

高遠さんの新刊。『世界の果てで待っていて~天使の傷跡~』から実に5年ぶりの続編刊行だ。
待ち望んだという方も多い中、幸運なことに前作を読んだのが今年の2月だった。

感想はこちら→「世界の果てで待っていて~天使の傷跡~」高遠琉加

非日常の一瞬でしか交錯させることのできない「情」がある。
彼らの内にある愛情とも恋情とも表現することのできない、ただ相手へと向かう強い気持ちがある。
それだけを縁(よすが)に生きながら、決して普段は言葉に出来ない意地と矜持と、弱さや強さが入り混じった複雑な感情が愛おしい。決定的な一言を心の防波堤が決壊する最後の瞬間まで発することを互いに許さない彼らが好きだ。
とてもニア的な色合いの強い作品で、私は彼らに関しては肉体的な受け攻め(成就の結果としての性交とも云えるかな)をする必要はないとすら思っているのだけど、今作で描かれた関わり方もまた、何度も何度も反芻しては泣きたいような気持にさせられた。心の奥が締め付けられる。

探偵である黒澤と刑事である雪人。
彼らの立ち位置の違い、見つめている物の違いが表立った今作だった。

雪人は黒澤の気持ちを過信していたのだろうか。発しないだけでそこには昔彼が感じた「想い」のようなものが変わらずに存在すると。黒澤にとっては、日常なんてものは2年前のあの日に終わりを告げていたのだよね。それを雪人は理解しているようで、完全にはしていなかった。ここでも打ちのめされるのは雪人の方だ。黒澤はすべてを内に秘めてずっと水面下で独り動いていた。彼もまた、雪人への想いを侮っていたのだろうか。目的のためには嘘を付き通せる、欺けると。一度は付き放そうとした黒澤が雪人の言葉に我を失う場面がたまらない。「言うつもりもなかった、用意もしていなかった」その言葉は、紛れもない黒澤の本音なのだろう。だからこそ冗談にしようとした黒澤が許せず雪人は彼を殴ったのだ。雨の中描かれるこの場面だけで、彼らが夫々抱える物と、その抱える物を投げ出すことは決して出来ずに、でも同時に相手への気持ちを誤魔化しきれず持っていることが伝わってきて堪らない。

読みながらずっと考えていたのだが、「世界の果てで待っていて」とは一体誰が誰に向けた言葉なのだろう。「世界の果て」とはとても寒々しい心象風景のようでもあるのだが(そんな言葉をブログタイトルにしてアレですが)、この題名について考えるきは決してネガな印象を受けないのだよね。「待っていて」という口調の柔らかさのせいもあるのかな。世界の果てで待つのは亡くなった澪子か、それとも黒澤か。発したのは黒澤なのか雪人なのか。たとえ其処に立つのが今は独りっきりでも、すぐに誰かが追いついてきてくれる、孤独は癒されるという明るさすら感じる。そう考えた時、黒澤の行確を任じられた雪人が「おまえの行くところに行くよ。どこへでも」と宣言したこの台詞は、題名に返っていくのかなとふと思った。

事件そのものは前作に比べると個人的にはやや物足りなく、美しさ(整合性という意味でも年若い彼らの顛末という意味でも)に欠けるように感じたかな。黒澤と雪人の為にある世界観と事件なのだから、そこをあまり気にするのは無粋かもしれないが。しかし目まぐるしく切り替わる場面展開が、一瞬だけ交錯した二人の情景を際立たせているのも事実であり、全体としてはバランスが良いと思う。続編が出るからには澪子の事件の進展については想像の範囲内だったけど、見えてきた敵の姿は予想外だった。なるほど彼らが探偵と警察であるのはそういう理由かと納得もした。黒澤は事件と自分の感情にどう決着を付けるのか。そのとき雪人はどう彼と関わっていくのか―待て続刊、なのである。これで私も晴れて焦れ焦れ組の仲間入りとなったわけだ…ううう。

いつか読める日が来ると信じてずっと待っています。



***

挿絵の変更については違和感なくすんなり飲み込めました。
元々挿絵にうるさくない人間だから、というのを置いても茶屋町さんは茶屋町さんで雰囲気に合っていると思います。
世界の果てで待っていて ~天使の傷痕~ 新装版 (SHYノベルス)世界の果てで待っていて ~天使の傷痕~ 新装版 (SHYノベルス)
(2010/10/22)
高遠 琉加

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新装版として刊行された前作には書き下ろしの短編が収録されているらしいです。
まだ未読なので近いうちに手に入れたいと思います。

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