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「永遠の昨日」榎田 尤利

永遠の昨日永遠の昨日
(2010/11)
榎田 尤利

商品詳細を見る


02年刊行作品の新装版。ずっと読みたかったのだが絶版ということで諦めていたので嬉しい。
有名な作品ゆえにあらすじは知っていたし、その結末も想像していた通りのものだった。

夜中に読み始めてまわらない頭の隅にずっとあったのは、どうして榎田さんはこんなに真摯に生と死に向き合うことが出来るのだろうということだった。「魚住くんシリーズ」を読んだ時も思ったのだが、近しい者(冷たいようだが、愛する近しい者かな)の死を未だ経験したことのない私には、生と死のうわべを浚うだけで語ることは出来ないような気さえする。なんだろう、「リムレスの空」との刊行時期が近いことに驚いたというのもあるのかな。一人の作家が、エンターテイメントを信条としているであろう作家が、まるで「書き足らない」とでもいうように生と死を見つめていたことに…驚いて(言葉が見つからない)しまう。

でもその一方で創作物は生と死の物語と無縁ではいられないと思っている。感情を揺り動かす根源的なテーマだからというよりは、生ある人間を創作してしまったらそこにはもれなく死がくっついてくるのが必然だからだ。だから、生きること死ぬことを描くフィクションが多いのは当たり前。日頃は敬遠している「死を描き涙を誘うらしい小説」を老若男女問わず書くことが出来るのは、そういうことなのだ。


以下、ネタバレ注意

***

浩一は死んだ。満との登校中に車に轢かれて死んだ。
だが、浩一の意識も心も消えることはなかった。肉体だけが時間を止めたかのように死んだ状態を保ちながら、彼は生きていた。これはその数日間の物語だ。

もっとセンシティブな書き方をされている話だと思っていたのでコミカルな部分が多いのは意外だった。冷静に浩一の状態をクラスメート達に説明する満の様子や、死んだというのにのほほんとしている浩一とのやり取りは可笑しいぐらいだ。起こった現実を即座に受け入れた2人は、その非現実さに痛いほど気が付いている。誰が何を願い、何のためにこのような事態になったのか、意識の下では互いが知っている。

とても真摯で残酷な話だと思った。
ゆっくりゆっくり死んでいった浩一を、満はもう決して忘れることはないだろう。
忘れたくないと願った満の願いは叶ったが、果たしてそれは幸いなことなのだろうか。
でも、彼のすぐそばには同じ経験をした人たちがいて、「時間が解決していくよ」という導きを与えてもいる。

想いをとげた浩一と満が幸せだったことは否定しない。
でも忘れることは決して悪ではないと私は思うのだ。
二度目の死は、残された人が生きる為に必要な経緯だと。
が、それは「知らない」私の正論でしかないこともわかっている。

満が愛を知るための試練の物語だったと捉えることも出来るのだ。
その愛とは、浩一を経ての「母親」からの愛だ。
伝わらなかった、でもそこに存在した彼女の愛を、満は浩一を通して受け取った。
彼の人生が幸いな方向にむかうと私が確信するのは、その点についてだ。

決して甘くはない物語だった。
良い本を読みました。




***
永遠の昨日 (CROSS NOVELS)永遠の昨日 (CROSS NOVELS)
(2002/02)
榎田 尤利

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せっかくなのでユギさん版の表紙も載せちゃう♪
以前も書いたけどユギさんの挿絵は「語り過ぎる」ので苦手なのだが、コミカルな2人のやり取りは自然とユギさんの絵柄で思い浮かんだ。天邪鬼な人間なもんで感動したとか泣いたとか書かなかったけど、ええ、察してください(笑)
最後にちょっと世知辛いことを言ってしまうと、新装版の版型変更に伴うお値段変更はどうにかならないものか。もちろん読みたかったので刊行は大変嬉しいのだが、躊躇する読者も少なからずいると思う。


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