「誰にも言えない」シギサワカヤ

誰にも言えない誰にも言えない
(2010/11/30)
シギサワ カヤ

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久々の一般漫画感想。
シギサワ作品の区分は何だろう?レディコミ、耽美、エロ…そのどれもが当てはまるようで、斜め上にズレているような、不思議な作風の人だと思う。デビュー作からすべて読んでいるのだが、未だに自分がなぜシギサワ作品を読み続けるのかよくわからない。シギサワ作品の男女は割と簡単に身体を繋ぐ。身体から始まる関係もある。身体だけが繋ぐ関係もある。その関係性は私からは随分と遠く、理解だって及ばないのに、なぜか読みたくなってしまうのだ。
読むたびに驚くのは、こういった関係性を提示しようという強い意志を感じること。身勝手で情緒不安で強くて弱い女に振り回される男と、そんな男を愛してやまない彼女達。湿っぽくて下品すれすれでセックスが介在する関係。その遠さの正体が知りたくて読み続けているのかもしれないね。
ザラザラした読後感の後に何かを吐き出す気持ちになれない作品が多かったが、今作『誰にも言えない』は収録作すべて「好き」だと云える珍しい(失礼)作品集だったので感想を書いてみたくなったのだ。


「誰にも言えない」
いとこ同士の二人は幼いころに親戚達の目の届かない場所で、二人だけの陰美な秘密の遊びをしていた。大人の知らない子供だけの時間はその成長とともに終わりを迎える。窮屈な大人の集いの中で存在を無視され続けていた子供たちが、ある日、ふいに、大人達に見つかる。少年は酒をすすめられ、少女は給仕を任される。二人の道が分かれた瞬間の切なさや戸惑いが、大人達の笑い声の中でひしひしと伝わってくる。自分たちの行為の意味することに気が付いた二人は終わりを「選ぶ」のだ。それから十数年を経ても女は男としたことを忘れることが出来ない。互いに恋人が出来ても、心の奥に「何か」があり続ける。親戚だからと顔を合わせ、当たり障りのない会話を交わしながら、二人の間には逃れられない想いがある。男は結婚を決めていたが、女はそんな男をホテルに誘う。昔の遊びの続きをしようと。シギサワ作品の女たちは決して美人ではない。どちらかというと、流行りの服も着ず(たぶん、著者の興味関心外)飾り気のない眼鏡をし(たぶん、著者の趣味嗜好)、地味でぼんやりとしていて泥っぽいダサさがある。そんな女が性的な積極さを見せることのエロスというのかな。扇情的な描写ではないのに、匂いのようなものを感じてひたすらエロい。男の告げるわかりきった言葉で二人の人生は急転直下、強い意志でもって互いを「選ぶ」のだ。

「誰にも言わない」
ぼんやりしていると思っていた姉のくだした晴天の霹靂の一大決心により、人生の指標がだいぶずれることになってしまった妹の話。退屈な田舎を出て東京行きを漠然と夢見ていた少女は、姉が家を出ることによって家に縛られることになる。姉とは違い、竹を割ったような性格の彼女は明るい。合コンで知り合った彼氏を「なんでこんなヤツと」と思いながら、その真っ直ぐさに惹き込まれている自分を肯定したとき、彼女は姉の未来をとうに祝福し納得していることを自覚する。個人的にアホ彼氏がタイプでした、はい。姉妹の間にある辛辣さや愛情が素敵。

私の萌えポイントに昔から「地方都市の閉塞感」というのがあって、たぶんそれは自分が生まれ育った場所への愛憎のようなものと関係があるのだろうけど、何処にも行けずじりじりと息が詰まっていく感じが堪らないのだ。そういう状況を萌えとして消費していることへの罪悪感はあるのだけどね。表題作で描かれるソレは私のそんな欲求を満たしてくれました。

「エンディング」
女同士の恋愛の始まりから終わりの話。
私は百合物を嗜まないので、この話が「百合的」なのかよくわからない。でも、上司と年上部下、女二人の関係は妙にリアルだった。来るもの拒まずの上司は告白を受けて部下と付き合う。初めての同性の恋人は、女同士だからこそわかる狡さや可愛さをもったちょっと面倒くさい人だった。しっかり者の上司の口癖は「大丈夫」だ。二人の職業はSEなのだが、マネージャーの立場にある上司は部下の仕事の進捗具合を不安に思いフォローを入れる。その際に部下は「大丈夫です」と云うのだが、笑いながら上司はこう云うのだ。「あなたの大丈夫はわたしの次に信用できない」と。なんてことない仕事の会話なのだが、このやり取りのリアルさといったらない。部下の周囲の空気を読むことの出来ない浮き具合や、それを笑って流しながら不満や不安をためていく上司。誰にも言えない後ろめたい恋愛は互いの気持ちだけが頼りで心もとないものだ。同性だからこそ浮きあがる立場や給与の差によるコンプレックス。二人の関係にはシビアな金銭事情が背後にあるような気がして仕方なかった。「自分よりも稼いでいるのだからマンションを買えばいい」と云った部下の言葉は喧嘩の売り言葉に買い言葉だが、その悪意のようなものは胸に刺さる。
誰も「大丈夫」なんかじゃなかったのだ。同性同士の重圧に知らず押しつぶされていたのは二人とも同じで、その綻びは部下の両親が上司に会いに来たことで決定的になる。娘の恋人の正体に気付いている両親の不安げな様子に上司は「終わり」を決意する。二人には覚悟が足りなかった。同性と添うということは、常より覚悟が必要なことなのに。ラスト、葉書を送ってくるところにシギサワさんの女性キャラの「タチの悪さ」のようなものが凝縮していると思うな。それでもそこにあった感情は確かに「恋」だったのだ。面白かったです。



***

***

以下はまったく関係のない雑記。

つい先日携帯電話の機種変更を行いました。実に3年ぶりです。
で、ですね。
拙宅に携帯からアクセスして驚いた。

「超見づらっ!!」

今まで使っていた携帯からは割ときれいに見えていたし、お気に入りのテンプレートだったので特に変えようとは思っていなかったのです。でもさすがに自分でも読みづらいレベルは迷惑だろうと設定を解除しました。

で、そのことと関係があるのかは不明なのですが…
「愛はね、」の記事に通常よりも多くの反応を頂きまして(ありがとうございます!!)
もしかして、「これでちょっとは読みやすくなるぜ、やれやれ」的な方がいらっしゃったのかなとか思いました。
か、関係ないかな??
何が言いたいかというと、拍手をありがとうございます!の一言なのでした。

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