「真夜中クロニクル」凪良ゆう

mayonaka.jpg真夜中クロニクル (リリ文庫)

太陽の下に出られない病気を持つニーナは、気難しくて偏屈だ。そんなニーナが、夜の公園で7つも年下の陽光と出会う。どんなに邪険にしても無邪気に寄ってくる陽光を煩わしく感じるが、ニーナは次第に心を詳していく。そんな二人がすべてから逃れるため、星降る夜に飛び出した―。温かな恋心でニーナを包み込む陽光と、寄せられる想いに戸惑って踏み出すことができないニーナ。時を経て変化に呑まれながらも、成長していく二人が辿り着いた先とは。

凪良さんの新刊。
勢いにただただ圧倒された。後書から著者にとってすごく大切な位置づけの作品だということが伝わってきたが、本来なら攻めの設定や二人の活躍する場所、諸々の小道具の甘さ(拙いという意味では断じてない。sweetの意)は私が苦手とするところなのだけど、すべてをなぎ倒して進む陽光の力に完敗した。「年下ワンコ」という記号の使い方があまり好きではないのだけど、彼はそんな言葉では表現できないような子だった。

無償の愛と盲目の恋が長年にわたって褪せずブレず陽光の内にある姿はファンタジックですらあるのだけど、彼が恋するニーナの状況を考えると肯けなくもないのだ。なぜなら出会った頃からニーナは「変わらない」から。少なくとも、陽光が少年の数年間は変わらない。外に出るのは夜間だけという引きこもった生活だから、変わりようがないのだ。彼がそういう生活を送るようになるに至った経緯が前半詳細に描かれるが、劣等感やコンプレックスを扱ったBLはとても多い(というより私が選ぶのだけど…)中でも、人生を大きく変えてしまう病気を授かってしまったニーナの苦悩は一際強い。裕福な家庭に生まれたことは幸運だったのかもしれないが、それはそれで外の世界との隔絶が可能な環境に身を置くことに拍車を掛ける。陽光が出会ったニーナは言葉通り「彼だけのもの」だったのだ。一目惚れをした相手を長年想い続けるのは、そう困難なことではないと思う。自分の変化と相手の変化が噛み合わない時にこそ、困難は起きるものだと思うから。だからこの二人の奇跡は、ニーナが外を向き始めても関係が何ら変わらないところにあるのではないかな。少しづつ外の世界を知り仕事を始めるニーナ、俳優業が軌道に乗らず焦る陽光。小さなすれ違いを繰り返しても、陽光は何も変わらずニーナへの想いを持ち続けるのだ。

陽光の大人びて芝居がかった台詞も、天性の明るさをいつだって押し出せる能力も、彼が劇団に所属して子役として活躍をしていたからなのだよね。子供心に陽光は、大勢とは違うことが大変であることを実感として知っている。でも、陽光はニーナの人生をどうこうしたいとは一度も言わない。別れの手紙に王子様のようなことを書いてもそれは子供の夢物語でしかない。ただ、彼は「綺麗だよ」「好きだよ」とシンプルなこの二つを伝え続けるのだ。子供の言葉だから当然なのだけど、それがニーナには有り難くもあったんじゃないかな。最初に書いたように陽光の明るさは私の得意とするキャラではないしメールも語り口調も甘すぎて苦手だ。しかし、そういった苦手なんてどうでもよくなるような陽光なのだ。とにかく、彼の気持ちの強さに圧倒される。

無償の愛にせよ盲目の恋にせよ、人が人を強く(本当に強烈に)想うことで前進する人生がある。それが「恋愛」だと一言では済ませられない救済のような気持ちがある。陽光の一途さに救われたニーナだけど、彼らは夫々に孤独を知っているという描写がとても凪良さんらしいと感じた。どれだけのバックアップがあったとしても、立つのは独り、自分自身なのだと。そこからの人生もまた自分で歩くものなのだよという強い気持ちを感じた。どれだけ頼りにしても、道筋を照らす明かりになっても、依存ではないんだよね。

こんな関係があったら良いな、それはものすごい希望だなと読みながらずっと思っていた。
彼らが歩んできた真夜中の時間が結実して明るい未来への扉を開く。
陽の下に出ることは叶わなくても、ニーナの人生はもう暗くはないのだ。

良い本を読みました。



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