「新装版 バス停留所」鳥人ヒロミ

新装版 バス停留所 (花音コミックス)新装版 バス停留所 (花音コミックス)
(2011/03/29)
鳥人ヒロミ

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陸上短距離選手の我孫子武は、バス停で出会った先輩藤本崇幸に一目惚れした。きれいな顔に似合わず口の悪い藤本は、故障のため選手生命を絶たれていた。まっすぐな気持ちを伝える我孫子に対し、プライドが邪魔して素直になれない藤本。そんな状況を抜け出そうと、我孫子は「男」を賭けたある勝負を迫ったが!?残酷なほど美しい青春と挫折―BL界の金字塔が短編再編集&描き下ろし収録で鮮やかに復活。

鳥人さんの懐かしい作品の新装版。
何作か読んでいる作家さんなのだが実はあまり得意ではない。今回は絶賛の声に背中を押されて手に取ってみた。旧版を読んだ記憶が曖昧な上に覚えている場面も飛び飛びで、ちゃんと読了したのかも定かではないのだが、一つだけ覚えていることがあった。それは先輩の「傷」だ。弱みであるその「傷」の生々しさとエロチックさはしっかりと脳裏に焼き付いていた。鳥人さんは他の作品でも傷を持つ登場人物が出てきたように記憶しているのだが、気のせいだろうか(その後すぐに『バスタオル/なんか言えよ』収録の「if~もしも~」だと判明)そんなこんなで鳥人さんイコール傷フェチの人というイメージで固まっている。

良い高校生ものだった。
思いやりは目に見えにくく好きだという気持ちも上手に伝わらなくて、各々が抱える物だけで手いっぱいになりながらもそれでも相手と関わろうとする姿に胸が詰まった。等身大というのだろうか、彼らの未熟さがたまらないのだ。

走れなくなった先輩の傷を抉るようなことばかりする我孫子の無神経さに読み始めは苛々さえしたのだが、彼らの価値観の違いを考えればそれも当然のことなのだ。走りたくても走れない先輩と、走りたくなくても走れてしまう我孫子。同じ部活に身を置く高校生が持つ遠すぎる価値観の違いにハッとなる。
我孫子は先輩が失ったものの大きさを本当には理解できていない。
先輩は我孫子が抱える葛藤を知る由もないのだからわからない。
それぞれの事情があって、相手を好きだという気持ちと並んで青臭い性欲があって、そういったものに翻弄されてすれ違ってしまう様がとても良かった。亀裂が決定的になってしまう納屋での喧嘩と暴行の際の台詞は鬼気迫っていて息苦しく、いったん本を閉じたほどだ。「女じゃない」と先輩が言い続けたことの意味もやっぱり我孫子には通じていなくて、「負けてあげる」ことを知らない年下の厄介な性質にくらくらした。

最後まで彼らの陸上に対する価値観が重ならなかったところも、我孫子の競技人生の結末もほろ苦くて好きである。しかし、先輩と同じ「傷」を持つことでしか開放されなかった我孫子の才能を考えると、無意識下でも彼はそうなることを望んで走っていたのかもしれないなと思ったりもした。それはわからないが、先輩が自分から持ちかけた「約束」など反故にして意地もプライドも投げ捨てて告白するくだりは素晴らしかった。納屋の場面でもそうだが、みっともなくて恥ずかしい台詞を肝心の場面で迷うことなく使えるのは、鳥人さんの魅力なのかもしれない。

鳥人さんの漫画は受けが性的に開放されている話が多い。BLによくある(そして私が愛する)「一棒一穴主義」の否定だ。先輩が我孫子に暴行を受けるくだりも、その傷を武器に「約束」を仕掛ける強さも、大学生になってからの生活も、性行為の享楽的な部分と本質(暴力性のようなものとでもいうか)から目をそらさずに描こうとしているように感じた。そういった設定が苦手であることに変わりはないのだが、昔はよくわからなかった面白さがわかるようになった気がします。
他の作品も読んでみようと「JUNET文庫」を買ったのだが、「ピアス」本誌を買っていた頃(10年ぐらい前。西炯子が表紙だった時代)に掲載されていた作品がちょうど収録されていて嬉しくなってしまった!それが最初に書いた「if~もしも~」と「なんか言えよ」だ。この作品を「ピアス」で読んだとは思っていなかったので驚いた。今の雑誌カラーよりもかなりマトモ(褒めてます?)な時代だったのだなぁ。懐かしい。




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