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「神とペン」柳沢ゆきお

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神とペン (F-BOOK comics)

興奮する読書体験だった。
これはなんだろう?読んだことがあるようなないような、知っているような知らないような。
なんてヘンテコで面白い漫画を描く作家さんなのだろう!一瞬でファンになってしまった!

神とペン
表題作からやられてしまった。神様と同居するエロ漫画家の話。私はこういった不条理話にとても弱いのだ。神様はただそこに居るだけで、この世に起きる幸も不幸もどうすることも出来ない。役立たずの神様は人と同じように心を痛めそれ以上に無力さを嘆く。だからこそ、たった一つだけ叶えることの出来た願いにグッとくるのだ。余談だが最初にタイトルを見たときに「表現規制風刺モノ?」と一瞬頭をよぎった。何を連想したのか、蓋を開けてみれば関係なかったわけだけど、でも、完全に無関係だとも言い切れないような気がするのだ(セーラー服を着た少年(人外)と大人の組み合わせですし…)ともあれ、良いタイトルだと思う。ただ一つ残念なのがオチの元ネタがわからないことだ。つげ義春でいいのかな?気になります。

まつりのあと
兄弟の再会モノ。7年前の一件から再会するまで兄がどうやって生きてきて、その間弟が何を「越えた」のか、詳しく描かれることはない。だけど切羽詰まった苦し気な兄の表情がすべてを物語っているし、中性的で美しい弟が見せる憐れみと媚と愛しさが混ざった絶妙な視線がすべての感情を伝えている。確かにその関係は「禁忌」なのだけど、背徳や後ろめたさを軽く飛び越えてお互いを選びとるしかないような力強さがあるのだ。柳沢さんの漫画はどこか小野塚カホリを彷彿とさせる。それはお二方の描く禁忌や不条理の形と、それと相対するときの人々の軽やかさにあるのかもしれない。血を流しても、消えない傷を作っても、たとえ不幸になっても、互いを選ぶ強さがあって、そして「死」の匂いが濃厚なのだ。兄が弟を心の底から欲したのが14年前、その時から二人の運命は決まっていたのだと思うとくらくらする。祭描写に人身御供といったアイテムの使い方といい大変好みだった!

せめて美しい言葉を。
恋人同士の話。ゲイの卑屈さとノンケの不器用さが招くすれ違い喧嘩からのエロに驚いた。某さんのブログで「メガシャ」という言葉を拝見して思わず笑ってしまったのだが、まさにその通りだ!なんてフェティッシュ!なんてエロス!眼鏡萌えがないという残念な腐女子ですがこれはさすがに滾りましたよ。素晴らしいです、ごちそうさまでした。

さすらう よるの ながくへ ららら
7年会っていなかった彼をなぜ彼は呼び出したのか、特別親しいわけではなかったのにどうして流星群の夜に誘ったのか。そこにある感情がたとえ恋愛ではなくても、非日常のイベントを共に過ごした思い出というのは、自分が考えるよりも深く底の方に漂っているのかもしれないね。会いたいと願った時に来てくれたことを後生大事にしていた彼と、必死に走った彼がまた笑いあえる日がくるといい。既視感がある話だけど揺さぶられます。

プリーズタッチヒアトゥオープン
ワケアリ親子と担任の先生の話。この漫画がどんな雑誌に掲載されていたら納得するだろうか。意味もなく考えているのだが答えは出ない。思春期の子供に振り回される大人と、大人の事情に振り回される子供の極めてフェアで温かいヒューマンドラマだった。色々なものをアッサリと飛び越えて見せた大人達のそばで、少年も彼らの愛情に応えられるような大人になっていくのだろう。語られていない部分が若干消化不良だったが(先生はいつ父親だと気がついたのか、認知の件、など)それ以上に魅力があった。BLだと思って読むから異質に感じるのか、そもそも絵柄が異質だからなのか、うーん、やっぱり面白い人だと思った一作でした。

四次元ラヴァーズ
ゲイと二次元にしか興味がない韓国人留学生の話。こちらも「プリーズ」同様にBLというよりは、いくつもの差別を描いたヒューマンドラマかな。「お前なんて人間はこの世にたった一人しかいないんだから!」という雪君の言によると、だから「正しい」と奢ってもいけないし、「間違っている」と卑屈になってもいけないのだ。人は皆独りで夫々の正しさや間違いを抱えて生きている。最初は言葉の壁を作って閉じこもっていた雪君が差別を受ける岡田の為に日本語を叫ぶのが良いね。独りと独りの境界を飛び越える手段はいくらだってあるのだ。


次回作も楽しみです!良い本を読みました!

***

***

日常に舞い降りた神様といえば『海の仙人』である。
ちゃんと紹介したことはなかった気がするのでこの機会に。
宝くじが当たって会社を辞めて一人海辺で暮らす河野の元に、ある日「ファンタジー」と名乗る謎の男がやってくる。見える人には見えるし、見えない人には見えない男は自分を神様のようなものだという。なんにもしない神様と河野と恋人と元同僚が過ごす日々のこと。少し寂しくて、とても美しい話です。芥川系は敬遠される方が多いけど、絲山さんは腐女子界隈との親和性が高い気がします。男女の孤独がヤオイ的というか。オススメ。

海の仙人 (新潮文庫)海の仙人 (新潮文庫)
(2006/12)
絲山 秋子

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こんばんは~♪コメント失礼します。
毎度yoriさんのクールで丁寧な文章を読ませて頂くたびに、自分のブログ記事の薄っぺらさに凹むtatsukiです。

そうそう、私も兄弟モノが一番お気に入りなんですが、“人身御供”だから許されるという価値転換が堪らなかったのでした。
えへへ、yoriさんの指摘で今ようやく思い出しましたよ。
天使も人身御供も(ゲイ/擬似)親子も喪服も、思えば私が最も敬愛している漫画家さん=あとり硅子さんがよく使っていらしたモチーフだったので、実はあとりさんもちょっぴり頭を過ぎったんですよね。
但し、あとりさんの作品からは血の臭いみたいなものは一切感じられないので、作品のトーン的には小野塚さんや山岸さんの側に近いように感じますが…。
短編集を総括するのは難しいのですが、柳沢みきおさんの作品はやっぱりBL的には何処か異端な臭いがあって、そこが惹かれるんだと思います。
この懐かしいような新しいような作風を今後も追いかけていきたいな、と思います。
では!

>tatsukiさん

こんにちは~、コメントありがとうございます!

いやいやいや、納得し切れていないうちに感想を書くものではないなと痛感しました。反省です…。

「プリーズ」ですが、先生が「誰のために」そこまでする必要があったのだろうか?というのがまず疑問としてありました。この話の主人公を息子君と父親に設定するならば、仰るようにまさに二人の前に現れた「天使(小悪魔的ですが)」というのはピッタリの表現だと思います。「変態」と無神経に父親のことを罵る息子にお灸をすえる目的半分、以前から見知っていた父親との恋愛を成就させる目的半分、あと、親子の縁結びもかな?かなり際どい綱渡りを平然とやってのけている先生だなと思いました(私は職業“先生”に対して厳しい反面、過信している傾向があるので、彼の語る言葉をマルっと信じて袋小路にハマッたのかも)

短編集は何に焦点を絞ればよいのかわからないですね…。後半2作品と前半でなんとなく区切れるかな?後半2作は受けと攻めの関係性に著者の萌えがなくて(だからBLとして異質?)、tatsukiさんが仰るように、受けの登場による攻めの変化が中心になっている。影響を受ける関係が必ずしも「恋愛中」ではない。その部分に私はよしながふみっぽさを感じたのかもしれません(断言できなくてスミマセン)あぁ、恋愛を描いていないから異質というのもあるかな。「四次元」は片思いの話なのにそれ以外のテーマを強く感じました。

古今の漫画家さんの名前がいっぱい出てきましたね!それは柳沢さんにとって不名誉なことではなく、語る素地がいっぱいあるという意味で、やっぱり面白い方だなぁと思いました。

お相手してくださりありがとうございます!!



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